カエル君(以下カエル)
「今回は広瀬すずが主演の映画のお話だけど……」
ブログ主(以下主)
「この手の映画のレビューって、結構難しいんだよ? 絶賛すると『映画をわかっていない』と言われるし、非難すると『あの映画の良さがわからないなんて!』ってことになるし」
カエル「青春アイドル映画に分類されると思うけれど、結構賛否が分かれるジャンルだよね。そりゃ、アイドルとか女優の魅力で成り立つものが多いジャンルだと思うけれど……」
主「その分お話とかがおざなりになってしまったり、演出が一貫していなかったりね。さらに言うとさ、若手俳優……特に10代の俳優なんて、よほどのことがない限り演技がうまいわけがない。ベテラン俳優が何十年もかかって身につけた演技力が、ルックスがいいからといって手に入るわけがないじゃない? 人生経験がものをいう部分が大きいしさ。
その意味でも作るのに独特な難しさがあるジャンルだよね」
カエル「その俳優の魅力を最大限引き出すような演技プランや演出、脚本にしてあげたいけれど、それがその俳優と作品の方向性が一致しているとも限らないわけで……」
主「そういう映画を何作も見てきたからなぁ……
『この人ってこの役に向いてないんじゃない?』とかさ、あとは『この題材だとこの人の良さが全く活きないでしょ』とか。
では本作がどうなったのかは……これから論じていこうかな」
カエル「それでは感想記事の始まりです。
ちなみにこの記事は予告編以上のネタバレなしで書いていきますので、安心して読んでください」
(C)2017 映画「チア☆ダン」製作委員会
1 ネタバレなしの感想
カエル「ではまず、大雑把な感想からいくけれど」
主「1つ謝らなければいけないことがあります。
今月の映画の注目作を紹介する時に『本作は地雷臭がするけれど……』などと語りましたが……
大変申し訳ありませんでした!!」
カエル「お! ということは……」
主「絶賛です!!
この映画は青春アイドル映画の金字塔だと思うし、すべてのテーマが一貫して映画の中であふれている大傑作!
ただ、この映画が誰にでもお勧めできるか? と言われるとそれは難しい部分もあって……演出が結構派手なんだよね。もうリアリティなんて特に重視していなくて、そこが違和感を持つ人って絶対出てくると思う。
だから、この映画は『派手でコテコテの演出が好き!』 という人にはオススメだけど『地味でリアリティのある演出が好き!』 という人には全くオススメできない」
カエル「アイドル映画って派手な演出が多い印象があるけれど、本作はまたさらに一歩踏み込んだ派手さだよね。なんというか、リアリティなんてクソくらえ! というような感じすら受けたよ」
主「近年の邦画でいうと『SCOOP!』とか、あとは『少女』のようなリアリティだったと思うんだよね。
なんというか……『え? こんなことありえないでしょ?』という馬鹿馬鹿しさにも満ちているんだけど、それが一貫することで作品世界に陶酔出来るというかさ。邦画って……特に本作のような楽しい邦画ってこれだけ派手なものでもいいと思うんだよね。そこのリアリティラインをあまり弄らないことで、観客が現実に戻る隙を作らなかったように思う。
ただ、逆に言うとスタートでのめり込めない人はトコトンダメだと思う。ずっとこれが続いていくからさ」
ちはやふる+ラ・ラ・ランド=チアダン!
カエル「『ちはやふる』の要素はすごく感じたよね」
主「どれだけスタッフが狙っているかはわからないけれど……本作の主演が広瀬すずで、相手役が真剣佑で、しかも福井弁なわけじゃない?
これで連想するのはやっぱり『ちはやふる』だよね。題材こそ違うけれどさ、高校生の部活のお話であり、人気アイドル女優(俳優)がいっぱい出てくるという意味でも似た部分はあるし」
カエル「特にこの映画の場合は予告で『名探偵コナン』の新作が流れたから、それもあるかもしれないけれどね。今回のコナン、ちはやふるを意識しすぎでしょ? って思いもあるし」
主「その目線で見るとさ、嫌な同級生、村上麗華役の柳ゆり菜が、松岡茉優が演じたクイーンのように見えてくるんだよ。あの高飛車で自信に溢れている感じとかさ。もちろんイコールではないし、魅力的なのは松岡茉優の方だけど……」
カエル「このブログでは2016年最優秀助演女優賞を獲得したのは『ちはやふる』の松岡茉優ということもあり、だいぶ贔屓にしています」
主「あとはやっぱり『ラ・ラ・ランド』の要素も感じたかな?
ラ・ラ・ランドって一言で表すとLAを目指す夢追い人応援歌であるわけで、アメリカを目指す本作とほとんど一緒でしょ? 特にチアダンスで踊って歌ってという意味では、ある種のミュージカル映画と同じような要素を抱えているわけで……
自分はラ・ラ・ランドは『映画とハリウッドについて完璧に語った映画』という批評をしたけれど、もちろんこの映画はそこまでのスケール感はない。だけど、それに勝るとも劣らないメッセージ性を完璧に詰め込んでいる」
カエル「だから『ちはやふる』+『ラ・ラ・ランド』という評価になるんだね」
主「上手いのはチャゼル監督のラ・ラ・ランドだろうけれど、自分はむしろチアダンの方が好きだね。というか、チアダンを構成する要素、全てが大好き!
その理由はネタバレありの項目で語っていくよ」
2 役者について
カエル「では、ここいら辺で役者について1つ語っていこうか」
主「今回はこの項目が非常に重要なために、結構長々と語っていきます!」
広瀬すずについて
笑顔があふれて可愛い広瀬すず
(C)2017 映画「チア☆ダン」製作委員会
「まず、主演の広瀬すずだけど、彼女はやっぱり時代が選んだ少女だと思う。一部で発言などがヘイトをよんでいるけれど、そんなことも関係ないくらい圧倒的な存在感と、カリスマ性を持ち合わせている」
カエル「特に今回みたいな……言葉が悪いかもしれないけれど『能天気なまでに元気な女の子』を演じさせたら天下一品だよね!」
主「しかもさ、自分はサッカーに詳しくないけれど、是枝裕和監督の『海街diary』の時はサッカー描写においてその運動神経の良さを評価する声が多かったんだよね。
結構走るシーンが多い映画にもたくさん出ている印象だけど、その走り方も綺麗で女の子走りになっていない」
カエル「今回はダンスということもあって運動神経がすごく問われる役だと思うけれど、全く違和感がなかったのがすごい!」
主「他の……言い方はあれだけど、モブの子ってダンス能力を中心に選ばれたと思うんだよ。だけど、そういった子と全く遜色のないダンスを披露している。これだけ忙しい中でそれだけのものを披露できるというのは、やっぱり才能だと思う」
カエル「主はなんで広瀬すずがここまで評価されると思う?」
主「ちょうどこの番宣で知ったんだけどさ、広瀬すずって台本を現場で一切読まない女優なんだよね。これは素晴らしいよ!」
カエル「え〜? 台本を読まないってちょっと怠慢な気もするけれど……」
主「歌舞伎って練習が数回しかなくて、すぐに本番を迎えるんだよ。通し稽古を何回かやって、それで終わり。もちろんそれだけの基礎と経験がある役者だからということもあるけれど……
これは萩本欽一も言っていたけれど、演劇において練習はしすぎないほうがいいんだよ。練習をしてしまうと『頑張って覚えているんだな』という作り物感が出てしまう」
カエル「台本を読んでいるな! って役者もたくさんいるよね」
主「演技の難しいところだけど、台本に書かれた言葉をただ読むだけではダメなんだよ。そこに感情をのせなければいけない。だけど、本当の人間関係って台本がないじゃない? 次の瞬間に誰がなんというか、全く予想ができない中でやり取りをしなければいけない。
だから『自然に見える演技で魅せる』ってすごく難しい。樹木希林とかリリー・フランキーの凄さって、全く演技しているように見えないじゃない?
広瀬すずの場合、台本を読まないことで演技プランを現場で練って、その場で修正をしているんだと思う。だからすごく自然な感じになるって、広瀬すずの魅力がすごくひきたつんじゃないかな?」
カエル「やっぱり是枝監督作品の影響ってすごく大きそうだよね」
主「是枝監督作品の子役って全く演技しているように見えないからね。そのために台本を渡さないということもしているらしいし、役者の素が見える。
もしかしたら、是枝方式によってとんでもない天才が生まれてしまったのではないか? という思いすらあるよ」
昨年日本アカデミー賞助演女優賞を受賞した作品。こちらでガラリと違う演技を披露しました。
中条あゆみ
カエル「次は部長役の中条あゆみについてだけど」
主「自分は初めましての役者さんだね。セトウツミとかも興味があったけれど、まだ見れていなくて……」
カエル「本作ではもう1人の主人公という重要な立ち位置にいる人だよね」
主「彼女の存在が本作をより魅力的なものにしている。
この役の存在が今までのアイドル映画や部活ものに対する不満点を一気に吹き飛ばしてくれた。そのためにはもちろん彼女の凜とした美しさなどもあるわけで、明るくて元気いっぱいの広瀬すずと対照的になっていたんじゃないかな?
これ以上語るとネタバレになるので言えないけれど……サイドストーリーもまたいいんだよね」
カエル「その辺りはネタバレありの方で語ろうか」
山崎紘菜
カエル「TOHO系の映画館で流れる上映前のインフォメーションの案内人の人! あのおしとやかな印象と全然違う姿でびっくりしたよ!」
主「個人的には本作で1番好きな子をあげろと言われたら、やっぱりこの子になるのかな? ヒップホップのダンスもなかなか良かったと思うし、見せ場も多かったし。
彼女の成長がまた涙腺を刺激するんだよね」
カエル「分かりやすい成長をしてくれるキャラクターということもあるんだろうけれどね」
右が山崎紘菜、中央が中条あゆみ、左が柳ゆり菜
(C)2017 映画「チア☆ダン」製作委員会
富田望生
カエル「本作では異彩を放つ女の子だったね! 結構見せ場も多くて、印象深いシーンも多いよ!」
主「本作が他のアイドル映画と一味違ったのはこの娘の存在がすごく大きいと思う。かわいい女の子を集めました! という作品が多いアイドル映画の中で、一つ飛び抜けた存在になったのは、彼女がいたからだよ」
カエル「見た目だけではなくて色々と複雑な役を見事に熱演したし、ダンスもこの体型で見事に踊りきっていたし!」
主「この作品を語るときに重要になるのは間違いなくこの娘の存在でしょう。この娘がいるのといないのとでは、本作品の見えてくる形が全く違うものになる。名脇役だったし、これから先が期待出来る存在だとも思うよ」
天海祐希
カエル「ベテランだし、そこまで心配することもなかったけれど感動で涙腺が緩むシーンも多々あったよね!」
主「あの演出はずるいよねぇ……それは置いておくとして。スパルタ鬼教師というとラ・ラ・ランド繋がりで『セッション』が思い浮かぶけれど、さすがにあそこまでの鬼教師にはなれないだろうなんて思っていたのね。
鬼教師(笑)みたいな風になるだろうなぁ……って。だけど天海祐希は日本の作品の中では……あくまでも本作のようなリアリティラインのアイドル映画として考えてみれば、立派な鬼教師になっていたんじゃないかな?」
カエル「ちょっと体が硬いのもご愛嬌というところかな?」
主「まあ、年齢も年齢だしね。
いつもの天海祐希といえばそうなんだけど、本作におけるもう1つのストーリーを構成する上では非常に大切な存在を見事に演じきったね」
この5人が重要! 左が富田望生、その隣が福原遥
(C)2017 映画「チア☆ダン」製作委員会
その他の役者について
カエル「じゃあ、その他の役者についてだけど……」
主「まずはまいんちゃんこと福原遥もかわいらしさに溢れていたね。そこまで存在感がある役でもないんだけど、この娘も大事。
あとは先ほども語った真剣佑だけど、日本アカデミー賞新人賞を受賞しているだけあって良かったよね。今回は『ちはやふる』と違って爽やか系高校生だったけれど、それも見事に演じていたし。
なんだか彼が出ている作品って好きになりやすいんだよなぁ……それは偶然だろうけれど、今後の日本男性俳優陣では欠かすことのできない存在になる可能性もあるんじゃないかな?」
カエル「男性陣でいうと男子高校生役の健太郎がすごく良かったよね!」
主「男性陣では彼が1番良かったし、感情移入がしやすいキャラクターだった。今後に注目したい俳優だよ」
もっとも印象に残った男性俳優、健太郎の今後に期待!
(C)2017 映画「チア☆ダン」製作委員会
今作のMVPは?
カエル「じゃあ、役者についてこれだけ長々と語ってきたけれど、今作のMVPは誰になるの?」
主「いません!」
カエル「え!? あれだけ語ってきたのに MVP抜き!?」
主「今作がすごく大事なことは、このMVPのような突出して良かった俳優がいないことにある。
もちろん、主演の広瀬すずは非常に可愛いし、存在感はあるよ? だけど、本作のテーマなどを考えても彼女1人が活躍するような映画ではないんだよね。
だからこそ本作が非常に意味がある。その理由もネタバレありの記事で語っていこうかな」
3 1つのテーマで繋がる作品
カエル「じゃあネタバレなしの記事を終える前に、本作の見どころについて少しだけ語っていこうか」
主「はっきり言うと『完璧な映画』ではありません。
自分もこれだけ絶賛しているけれど、改善点や疑問点が0だということはない。だけど、それすらも乗り越えてしまうほどの魅力に溢れている映画だと言える。
この後の批評記事で語っていくけれど、いい映画って『1つのテーマで全てが繋がる』ということがある。そしてこの映画もそうなんだよね。
その目線で見ると、このふざけたタイトルのように見える『~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』という言葉も、非常に重要な意味を持つんだよ」
カエル「そのあたりもネタバレありで解説だね」
主「あとは冒頭でも語ったように、演出も音楽も過剰です。なので『自然な演出こそが1番!』という人には全く向いていない。
もしかしたら冒頭15分でノレなかったら、ずっとダメかも。それはどの映画でも一緒だけど……自分の場合は開始10秒で『この映画好きかも!』と思わせられたから、ほとんど感覚の世界になる」
カエル「好きという感情ばかりはどうしようも無いよね」
主「というわけで、本作は誰にでもオススメできる映画ではありません。『映画好きはこの映画を批判するよ』という意見もあるけれど、それも納得する部分もある。監督がドラマ出身というのもあるかもしれない。
だけど、やっぱり自分はこの映画は青春映画の金字塔だと思うし、マイベスト青春アイドルムービーになったかもしれない」
今回はイケメン男子高校生役の真剣佑。お父さんの千葉真一のような存在になるか!?
(C)2017 映画「チア☆ダン」製作委員会
この映画の見所
カエル「見どころとしては何と言っても出演俳優陣の可愛らしさや努力する様に注目してほしいよね」
主「そこがこの映画を語る際に最も重要なことの1つなのは間違いないし、売りでもあるからね。役者のファンなら満足すること間違いないし、魅力も最大限発揮されているんじゃないかな?」
カエル「あとは脚本についてだけど……」
主「あんまり『本当にあった出来事だ!』という意識で見に行かない方がいいよ。過剰な演出が続くけれど、本作は脚本も結構大げさな部分もあるから。だけど、御都合主義のような場面も散見されるけれど、決してそれだけじゃない。
結構緻密に……とまでは言わないけれど、計算された脚本だね。説明過剰気味ではあるけれど、近年の邦画ではマシな方と言えるんじゃないかな?」
サイドストーリーに注目!
カエル「サイドストーリー? これってどういうこと?」
主「この映画って『想像する余地』が結構大きくてさ……細かい演出があるんだけど、そこってあまり映画の中で語られない部分なんだよね。
そこに注目していると『あ、この人の本当の気持ちって……』とか、なんとなく連想する部分が結構ある。特に脇役とされる役者陣にそれが多いので、ちょっと気になったら頭の片隅にでも入れておいて、鑑賞後に思い返すとより面白いよ」
カエル「これも批評記事で紹介していこうか」
最後に
カエル「というわけでネタバレ抜きの感想記事を終えたけれど……」
主「本作はもしかしたら今年度No,1に好きな作品かもしれない。もちろん、鑑賞直後というのもあるけれど……まさかここまでの作品になるとは……」
カエル「好きって気持ちはすごく大きいって主もよく語っているよね」
主「うまいは技術でいくらでも獲得できるけれど、好きだけは作り手側がどうにもできない要素だから。
好きって最大の褒め言葉なんだよ。もはや理屈すらも超えた、感性の世界のお話だからね」
カエル「さて、では次は批評記事だけど……こちらも早くあげないとね!」
主「何としても今日中に仕上げたいけれど、映画の時間もあるしなぁ……
だけど頑張って書いていくので、ちょっとお待ち下さい!」
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