物語る亀

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物語愛好者の雑文

映画『ちはやふる 上の句』感想 

 最近ちはやふるブームに乗っかってまたまたちはやふる関連の記事を書こう。これで今週は3回目であり、ブログを始めてまだ間もないが、おそらく感想系の記事ではちはやふる関連の記事が一番多いかもしれない。

 この手の映画はレビューが難しい気がしている。褒めても「え、あの映画を褒めるの?」なんて言われるし、酷評しても文句言われるし、そもそもこの手の映画を見に行くだけで映画好きと思われない気がして……(自意識過剰)

 前回の記事はこちら。

 ちなみにいまのところ過去最高のブクマ数に感謝しております。

 

 

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 1 正直苦手なタイプの映画

 以前に書いたこの記事を参照してほしいのだが、私はドラマをあまり見ないし、どちらかというと苦手にしている。

 

 

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  ハリウッドなどの海外映画はこの嘘臭さがあまり感じられない。その原因の1つは私がアメリカなどを始めとした海外の常識を知らないからである。

 

 例えば日本の映画作品で中学校、高校の授業のシーンを撮ると、たまに大学のように長机がずらっと並び段差があり、そこに座って授業を受けている場面が出てきたりする。するとその授業風景は私の常識から乖離しているから違和感のあるものになってしまう。それは役者の演技1つ1つにしてもそうだ。

 だが、海外の作品の場合、その国の常識を知らないから少しおかしいような光景であっても、こちらはスンナリと受け入れてしまう。あまりにもオーバーリアクションだとしても「海外の人間だからおかしくはないだろう」なんて考えてしまう。

 

 日本のドラマは特にオーバーリアクションなどを取る傾向が強く、あまりにおかしいと思うことが多いので見るに堪えない作品も多々あるのだが、本作もテレビ主導の作品らしく、その手の違和感が非常に多かった。

 

 例えば太一の髪の色である。

 漫画では明るい茶髪に塗られており、白黒の絵ではむしろほぼ白なのでそれなりに明るい色であることが予想できる。

 だが、それをそのまま映画に持ち込むと非常におかしな高校生になってしまい、不真面目な生徒か、コスプレ感が非常に強くなってしまう。その意味で太一、肉まんくんの髪の色は明るすぎて高校生にはそぐわないように感じてしまった。

 他にも違和感を非常に強く感じる場面は多かった。

 

 

2 違和感があった部分

 その違和感を強く抱いた部分は、例えば説明的なセリフである。

 太一が告白されて断った際に、その友達が言ったセリフが「金持ちで、頭が良くて、顔もいいからって調子乗るな!」みたいなセリフだったと思うが、それを実際に聞いた瞬間に「太一という人間は金持ちの息子で、頭が良くて、顔もいいんだよ」って注釈すら見えてしまう気がしてかなりゲンナリした。

 他にも激しい運動をしているにもかかわらず、汗をかかずに顔も紅潮していない部分だったり、顔のアップで汗はかいているものの明らかに水を垂らしただけのような汗の出し方など、「なんだかなぁ」という気分になってしまった。軽く1キロ2キロ走ってから撮影するだけでも変わるだろうに、そこまでメイクが大事か?

 

 それからこれは役者の都合なのかもしれないが、やはり制服がみんな綺麗過ぎるのが気になった。モブの一人ひとりもその日に支給された制服を着用しているのは当然なのだが、実際の学校生活では様々な着こなしやシワにシミ、日焼け、ボロなどがあるものにもか関わらず、それがないので画面が『嘘くさく』なってしまっていた。

 

 漫画の実写映画化に関しては今でも賛否両論が吹き荒れる話であり、それだけで記事が1つは書けてしまうものなので詳しい説明は今回は割愛させてもらう。(今週の物語の作り方シリーズの題材にしようかな)

 ただ、今回語りたいことは『原作に忠実にするのか、リアルにするのか』という選択である。

 

(追記 詳しくはこちら)

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原作付き作品の難しさ 

 ファンは原作に忠実にすることを非常に強く望むが、考えてみれば漫画やアニメだから成立する表現というものもたくさんある。先ほど挙げた髪の色などはまさしくそうで、金髪でも青髪でも赤髪でも漫画等では問題ないが、実際に金髪の高校生がたくさんいるような学校では違和感やコスプレ感が非常に強くなってしまう。

 

 映画の暗殺教室のポスターを見てもらえばそれはよくわかって、あんな生徒がいる学校はこの世の中にどこにもない。

 私などは実写というリアルな形にするならば、なるべくリアルにするように改変した方がいいと思っている。特にちはやふるの場合、リアルなテイストの強い漫画であるのだから、より現実的にした方が面白みも増すような気がしていた。

 

 だが、本作においてはリアル感よりも漫画感を非常に強くした。例えば畳の下からかるたをすかし、登場人物を眺めるという下からのアングルというのは、リアルな絵の作り方ではできない。

 他にも音楽の使い方、ギャグシーン、かるたが刺さる様子などはCGも使い過剰に演出されており、それがより漫画感を強めている。特にかるたの意味を説明するアニメのシーンなどは特に良くて、この演出をもっとやればよかったのに、なんて思ってしまうほど。予告編もアニメ版ちはや役の瀬戸麻沙美を使っていたので、アニメファンも意識した作りなのはよくわかった。

 

 私はこの漫画感の強い演出は今作ではある程度成功していると感じている。るろうに剣心やバクマンはその演出である程度成功しているし、下手にリアル感を追求するくらいであれば、漫画感を強くして虚構性を強めるのも1つの手ではある。(まあ嘘臭さは抜けてないけれどね)

 

 

3 役者の演技力

 元々経験が少ない若い役者にそんなに期待していないというのもあるが、今回はこの手の作品にしてはそれなりに良かった。

 まず千早役の広瀬すずは私は文句なし。明るくて綺麗だけど、かるたのことしか頭にない馬鹿で天然、これは広瀬すずにぴったりだなぁと思いながら見ていた。作品自体が後10年早く作られるか、千早がもう少し年上ならば綾瀬はるかでも良かったかもね。

 新も出番は少なかったこともあり、そこまで違和感はない。でも結構設定を弄ってきたのは面白い判断だろう。やはり爺ちゃんが痴呆というのは、現代社会では表現しづらいのであろうか?

 

 問題は……太一役の野村周平である。

 そもそも原作と映画を統一する必要性はないと思うが、さすがに今回の太一はチャラすぎるように感じてしまった。アニメ版だと宮野真守がイケメンボイスでアンニュイに演じていたし、ギャグ描写もそのアンニュイが前提の演技だっただけに、違和感が大きかった。

 

 あと気になったのはセリフが台本を読んでいるだけだったこと。なんだか会話が相手が何を言っているかわかっている前提のものだったから、緊張感がないというか、予定調和の演技だったように見えてしまった。

 またこれは野村周平のせいではないが、会話の相手が名優國村隼の場面も多く、余計にその差が目立ってしまった格好かな。國村隼はやはり一枚も二枚も上手だ。

 とは言ってもこの辺りはまだ若い役者なので大目に見る部分でしょう。

 これだけボロクソ言ってはいるが、後半の試合のシーンが始まるとやはり太一になっていき、最後の机くんとのやりとりの際は太一に見えたのだから大したものだ。

 

 今回一番輝いたのはやはり机くんかなぁ。見せ場が多かったし、挫折から成長までしっかり描いてもらっていたし。

 

 と云うわけで、この手のテレビが主導の若手俳優てんこ盛り映画としては中々悪くない作品だった。家族や恋人と気軽に見るにはちょうどいいんじゃないかなぁ?

 もちろん映画の奥深さを知りたいとか、名画群に比べると劣るけれど、ちはやふるにそれは望んでないだろうし。

 下も見ようと思う出来ではある。

 もしかしたら映画もシリーズ化するかもね。 

 

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映画『ちはやふる』オリジナル・サウンドトラック

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