私の数少ない読書における自慢の一つが、有川浩のデビュー作を初版で読んだ、ということである。
そこから先、ずっと追いかけていたので有川浩が人気者になっていき、スター街道を走っていく姿を一緒になって追いかけていたのである。ただの1ファンであるものの、今のメディアに引っ張りだこな姿は素直に嬉しいものである。
「本が好きなんでしょ? オススメの作品を教えて」という、ざっくりしすぎて難しい質問でも、有川浩ならば年代、性別、知識量、趣味等をあまり問わずに誰でも楽しめるためオススメしていたが、ほぼ全ての人に「面白かったよ」と言ってもらえた。
今回はそんな有川浩の作品を紹介していきたい。
有川浩ってどんな作家?
有川浩は2003年に電撃ゲーム小説大賞を受賞してデビュー。その後2作目でハードカバーで発売されるという、特異な経緯をたどる。
普通は電撃系は文庫が基本で、どの作家も中高生向けの文庫ライトノベルを書いていたが、当時は橋本紡や甲田学人などがハードカバーで刊行されており、文庫以外に力を入れていた時期だった。その結果が大人のライトノベルレーベル、メディアワークス文庫の設立に繋がったのだろう。(有川浩はメディアワークス文庫の立ち上げ時、シアターをこのレーベルから発売している)
ハードカバー路線は大成功を遂げ、図書館戦争シリーズで一気にブレイク、その後は一般文芸に進出し、さらにファン層を大きく広げ、今では映像化も大成功するなど、出版界を代表する人気作家である。
しかし、それほど人気の作家では余計に何を読めばいいかわからないかもしれない。そんなあなたにオススメの作品を、特徴をまとめながら紹介していこう。
自衛隊3部作
有川浩のデビュー作である『塩の街』や『空の中』『海の底』の3作品。
元々大の自衛隊好きで、さらにガメラシリーズが好きとあって、アクションやSF要素、怪獣などが多く盛り込まれている。まだ有川作品の中では恋愛要素は少なく、男性にも読みやすいものになっている。
初期の作品ながらもエンタメとして高い完成度を誇るシリーズ。
映画化、待ってます!!
こちらは新人賞を受賞した時発表されたライトノベル版

塩の街―wish on my precious (電撃文庫)
- 作者: 有川浩,昭次
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2004/02
- メディア: 文庫
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一般文芸に転向した際に加筆修正したバージョンはこちら

- 作者: 有川浩
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/01/23
- メディア: 文庫
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あらすじ
突如宇宙から降ってきた『塩』によって、人が次々と塩の結晶になってしまう事件が発生。東京は荒廃してしまった。
そんな東京で暮らす秋葉と真奈の元に、ある人物が訪れる……
有川浩のデビュー作。「デビュー作には作家の全てが詰まっている」というのはよく言われることだが、有川浩もその例にもれず、ベタ甘な恋愛、自衛隊(武器)、特徴的な(荒唐無稽とも思える)設定、切ないお話などという要素が詰め込まれている。
電撃文庫版は中高生向けということで主人公等の年齢が下げられたが、その後のバージョンでは修正されている。
オススメ
あらすじ
航空自衛隊員が高度2万メートルで謎の爆発、炎上する事故が発生する。
その事故で父を亡くした斉木俊は海でくらげのような生物を発見する。俊はそのくらげに『フェイク』という名前をつけて、天涯孤独の身を慰めるかのごとく、家族のように育て始める。
一方、航空機製造元の社員の春名は事故の調査を実行する……
自衛隊3部作の2作目。
高知を舞台とした少年たちの成長と、航空自衛隊を舞台に事故の原因を追求する2つの話が繰り広げられる。甘い恋愛も健在ながら、SFと現実を見事にリンクさせ、さらに日本の航空機開発の歴史などを盛り込み、しっかりとしたストーリーを作り上げている。
特に宮じいのキャラクターが好きで、こんなおじいちゃんが欲しかった。
オススメ
あらすじ
お祭り中の米軍横須賀基地にエビのような生物「レガリス」が上陸し、人間を襲い始めた。人々が襲われる中、夏木と冬原は逃げ遅れた子供たちを引き連れ、潜水艦へと避難する。
警察、自衛隊、政府、米軍の思惑が交錯する中、子供たちは無事に帰ることができるのか……
私の中で有川浩のベスト作品。
こちらは例えるならば15少年漂流記系なのだが、1人1人の子供達の成長が感じられる作品になっている。恋愛成分は有川作品の中では抑えめながらも、各陣営の思惑などが複雑に交差する様なども警察小説や政治もののようで面白い。
今では有川浩は恋愛作品ばかりの印象だが、自衛隊三部作はしっかりと社会情勢や歴史なども調べているので、恋愛が苦手な人にも楽しめる。
ちなみに当時からマスコミは嫌いな模様
図書館戦争シリーズ
あらすじ
検閲が公式に認められて暴走するメディア良化隊に対抗するために結成されたのが、図書隊と呼ばれる表現の自由を守る図書隊が制定され、武器を使用しての抗争を行っていた。
笠原郁は新人として図書隊に入隊し鬼教官、堂上篤のもと憧れの王子様を探しながら、日々奮闘してく。
有川浩の名前を一気に高めたシリーズにして代表作。
シリーズものなので作品数は多いものの、連作短編のようなものなのでサクサクと読みやすい。
岡田准一主演で映画化したので、知名度も一番高いだろう。
恋愛あり、バトルあり、政治あり、社会問題ありと色々な要素が詰まった作品になっている。
あらすじ
昔読んだ懐かしい作品の感想を検索した向坂は、そのブログの管理人である人見 利香と仲良くなりデートに行くことになる。
だが、あまりにも常識外の行動をとる利香に対して怒りをぶつけてしまう。
しかし利香には特別な事情があるのだった……
私が有川浩作品において最も高く評価するのは、実はレインツリーの国なのだ。もちろんもっと面白い作品もあるし、完成度の高い作品もある。
だが、有川浩が巻末に載せたあとがきや解説を読めば、その理由ははっきりとわかる。
今、日本のメディアには『自粛』という名のメディア規制や、『配慮』という名の差別がまかり通っている。アメリカでは小人症の名優もいるものの、日本ではそのような人はテレビに出ることはないだろう。
解説に書いてあったが「障害を持っていたら、テレビアニメのヒロインになることもできないんですか?」という言葉は、日本の表現者全員が深く心に刻まねばならないものだろう。そのような登場人物が、障害者という特別な存在ではなく、単なる友人や恋人として出演する時代が来て欲しいものだ。
痛快娯楽作品
こちらもドラマ化された作品。
あらすじはもはや不要でしょう。タイトルのつけ方が秀逸で、これだけで人目をひく上に、どんな内容かなんとなくわかるので、うまいなぁと感心してしまう。
こちらも連作短編なので読みやすいし、ゲラゲラ笑える作品になっている。余談だが、会社でこの本を読んでいたら、5人ぐらいに貸してと言われた。(転勤した1人目に借りパクされていることを今、思い出した)
オススメ

- 作者: 有川浩,大矢正和
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2009/12/16
- メディア: 文庫
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あらすじ
貧乏劇団『シアターフラッグ』に、才能あふれる声優が入った。それを機に本格的に演劇に取り組むつもりだったが、遊び感覚の劇団員に出て行かれて借金だけが残ってしまう。
兄にすがりついてなんとか300万円を調達してもらうが、2年で返せなければ解散することに。演劇という儲からない業界で、300万円を稼ぐための奮闘劇。
シアター、面白いし2巻以降も続刊しそうだなぁと思ってたら5年が過ぎてしまった。舞台は観ていないので、そこである程度話がまとまったのかしら?
登場する声優のモデルになったのは天才、沢城みゆき。天才との遭遇によって始まる物語とは面白い始まりだなぁ。
あらすじ
高知のPRのための部署に配属になったが、実際何をするかと伺ったところ何も決まっていないとの回答がきてしまう。
さて、どうやって高知県をPRするか、その奮闘を描く。
こちらも映画化されているが、むしろおもてなし課に関してはそのエピソードがかっこいい。この作品が発売されたのは2011年の3月ということで、東日本大震災があった月だが「地方を応援する小説がここで動かねばどうする」ということで、売り上げを寄付に回したという。(さすがに全額ではないと思うが……)
こういう行動もカッコイイのが有川浩である。
あらすじ
一言。馬鹿な大学生たちの馬鹿な日常話。以上
ゲラゲラ系で有川作品ではもしかしたら一番はっちゃけてるかも?
本当にこんな大学生がいたら嫌だが、どこかの大学(特に森見登美彦の出身校あたり)にはいそうだなぁ……と思ってしまう。
恋愛作品
本当にベタ甘な恋愛作品。
私はあまりにも甘すぎて、最後まで読めなかった。例えるならば、練乳に砂糖を限界まで加えてイチゴを食べるくらいベタ甘。
でもそれが好きな人には好評でしょうね。

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- 作者: 有川浩,徒花スクモ
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こちらは短編が収録されているが、ラブ多め。
その他
こちらも阪急電車を取り上げた連作短編。
次々と登場人物が変わっていく構成が面白くて、なかなかいい作品だった。こちらも映画化済み
ドラマ原作作品。
フリーターが家なんて買えるのか? という疑問もあるだろうが、それは置いといても面白い作品だった。
基本的に有川作品はどれも当たりが多いし、大外れというものはない。
平均点の高さが魅力的な作家でもある。
私も最近の作品はあまり読めていないが、これを機にまた読み直してみようかな?
以上、有川浩の紹介でした。