カエル(以下カエル)
「今回は『修羅の門 第弐門』の連載も終わり、途中『修羅の刻』も挟んで始まった新連載の感想だね」
亀爺(以下亀)
「月刊少年マガジンで連載を開始したが、こちらも前作と変わらず人気があるようじゃな」
カエル「やっぱり川原作品があるのとないのじゃ、月マガも全然違うからね。なんというか、太い柱が一本通った感じというのかな」
亀「すぐに表紙になったり、月マガも推してきているからの……それだけ力が入った連載ということじゃろう」
カエル「しかも連載するのが項羽と劉邦だから、結構な長期連載になるだろうし」
亀「川原作品といえば『修羅の刻』などもあるように、歴史をモチーフにした作品も多々あるからの。その上手さも折り紙つきじゃし、違和感なく歴史を改変してきているから、その時代について知っている読者も面白く読める印象じゃな」
カエル「歴史を重視しながらも、大胆にアレンジしてくるのはすごいよねぇ。
それじゃ、感想記事に入ろうか」
登場人物
張良(子房)
本作の主人公。
言わずと知れた、劉邦の名軍師であり、策謀に優れている。
秦の滅ぼされた韓の遺臣であり、祖国や家族、弟も秦の始皇帝に殺されたことに深い恨みを抱き、始皇帝を討つことを誓う。
趣味? に道引があるが、我流のため他の人からは奇異の目で見られることが多い。
窮奇
張良の相棒であり、策に優れるが体、力に劣る張良の用心棒役。
国すら討てると言われる倉海の一族の最後の生き残りであり、その力は現時点において作中最強であり、人食い虎ですらも簡単に倒すことができる。
冷静な男だが、頭は人並みのようで張良の意図と外れた行動をすることが多い。
黄石
張良が倉海の一族に会いに行く際に、山道で出会った子ども。出会った時はおそらく、3歳以下だと思われる。
手に黄色い石を握っていたことからこの名前が名付けられた。子供らしい性格をしているが、時折未来や張良の行く末を指し示すようなそぶりを見せ、成長した後は人を見たり往く道を指し示したりと占い師のような役割をすることも多い。
劉邦
言わずと知れた人物であり、この作品でも非常に重要な意味を持つ人物。(おそらく、もう1人の主人公になるだろう)
性格は愚鈍と称されるが、黄石が『龍』と称するほどの大人物。人望と度胸に優れており、何もしなくても人が付いてくるような人物。
項羽
劉邦と対になる人物。
作中ではまだ描写はそこまで多くないが、窮奇と並ぶ体の強さを誇り、おそらく作中最強の1人。2巻現在では呉中に兵を挙げて、8000の兵を持つ。
感想
カエル「項羽と劉邦といえば、日本では中国の歴史の中でも『三国志』などと並ぶくらいメジャーな戦記物だけど、ここ最近ではあまり馴染みがない印象があるなぁ」
亀「三国志などは横山光輝の時代から人気もあるし、ゲーム化やアニメ化、さらには色々とアレンジを加えられているから、若い世代でも馴染みがあるじゃろうな。
しかし、項羽と劉邦となると……どうじゃろうか、司馬遼太郎や横山光輝が作品にしてはおるが、ここ10年、20年と考えるとあまり発表されておらんかもしれんの」
カエル「名前は知っているけれど、どういうお話なのか、誰が出てくるのか知らないって人も結構多いかもね」
亀「四面楚歌などの逸話などは有名じゃから、項羽と劉邦という名前は知っておるかもしれんが……その意味では今、漫画にするというのは、いいところに目をつけたと言えるのかもしれんの」
カエル「まずは何よりも、キャラクターの魅力だよね! まだ2巻と短いにもかかわらず、しっかりと描かれた魅力があるよ!」
亀「策謀に優れておるが力はない張良を主人公に添え、そこに力に優れる窮奇を配置することにより、ある種のバディものとしても成立しておる。張良のような頭のいい主人公というのも、現代における流行りでもあるかの。
そしてこの作品にどうしても足りない女性キャラクターに黄石を据えることにより、華を添えながらも余計な恋愛などは描かなくてもいいようにしておる。いやいや、うまい配置じゃな」
カエル「そして、史実を基にして話を作っているのは、この時代に詳しくないボクでもわかるんだけどさ! その……古い時代だからある種の伝説とかもあるわけじゃない? それをうまく改変しながら、現代風にアレンジしていくのもうまいよねぇ」
亀「それこそ川原作品でいうと『修羅の刻』がそうであるが、基本的に史実に忠実でありながらも、陸奥圓明流という架空の存在を交えて物語を作っておったが、違和感をあまり生じさせないようにうまくできておった。
この作品も同じじゃな。歴史を改変することなく、かといって現代風にエンターテイメントとして両立しておるし、キャラクター性も面白いから楽しんで読むことができる。
何よりも、歴史物ということは誰もがこの先の結末を知ろうと思えば、簡単に知ることができるのでもあるが……それでも失われない面白さがあるから、素晴らしい作家じゃの」
カエル「修羅の門もそうだったけれど、陸奥が負けたらこの作品が終わるということはわかりきっているし、バトル漫画では主人公が絶対に勝つってわかることは大きなハンデになるはずだけど……それでも面白いと思わせる力があるもんね」
亀「この力こそが川原正敏の最大の魅力でもあり、腕なのかもしれんの」
最後に
カエル「まだ現段階で既刊2巻と少ないけれど、いいスタートきっているよね」
亀「名前だったり、地名などが馴染みがないなどの作品の都合上仕方ない部分もあるが、そこもどのようにカバーしてくるか楽しみじゃの」
カエル「結構名前だけ紹介されても『誰だっけ?』ってなることも多いからねぇ……中国の歴史作品だから仕方ないけれど、結構名前が似ていることも多いし」
亀「『項羽と劉邦』というタイトルを初めて見たときなどは『関羽と劉備』の親戚みたいなものかな? と思ったりもしたものじゃよ」
カエル「……さすがにそれはどうかと思うよ」