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物語る亀

ネタバレありの物語批評

さよならフットボール(全2巻)感想 新川直司 躍動感のあるサッカー漫画

 先月の話になるが、月刊少年マガジンにて『四月は君の嘘』の新川直司の最新作が掲載されたので、その前日譚になる『さよならフットボール』を読んだのでその感想などを書いていきたい。

 作者の名前を意識したのは『四月は君の嘘』からなのだが、改めて調べなおしたら漫画版の『冷たい校舎の時は止まる』の作者だったのね……(知らずに読んでいた)

 

 個人的にサッカー漫画はあまり読まないのだが、本作は巻数が少ないこともあって手を出したら、今まで読んだサッカー漫画の中で一番面白いかも(と言ってもサッカー漫画自体5作も読んでいないが)

 

 

 

 あらすじ

 主人公、恩田希は小学生から誰よりもフットボールが好きで一番上手かったが、中学入学と共に試合に出場できなくなってしまう。

 理由は単純に『女だから』

 まだまだ女子サッカー部がある学校は少ないために、男子と混じって部活動をしているものの、練習はともかく試合に出してくれるはずもない。

 昔からの幼馴染たちが次々と成長していくのを見届けるある日、希は小学4年生の時に転校していった谷(通称ナメック)と再会する。

 当時は小さくていじめられっ子だったが、中学生になると体も大きく成長していた。

 

「サッカーはフィジカルだ」

 

 女であるだけで試合に出場できない希はその言葉に反感を抱き、何とか新人戦の1回戦に出場することを画策するのだが……

 

 

 

1 キャラクター紹介

 恩田 希

さよならフットボール(1) (KCデラックス 月刊少年マガジン)

 本作の主人公でおそらく技術だけならば作中で一番うまい少女。誰よりもサッカーが大好きだが、歳を経るごとに厚くなる男女のフィジカルの差に焦りや不満を感じている。

 活発で周囲を巻き込む台風のような少女だが、そのエネルギーに惹かれるのか意識している男子は多い模様。だが、本人はフットボールが恋人、というような性格のため、ラブコメの波動は感じるもののそちらの方面はあまり期待しないでね。

 ポジションはMF。

 

 谷 安昭(ナメック)

 希のライバル。元々はサッカーも下手くそで、希の後をつけていく子分のような子供だったが、小4の時に転校してしまう。その後もフットボールを続けていき、中学生となった今では体も大きくなり、部活のレギュラーにまで成長した。

 希のことが気になっているものの、『やり返すことが恩返し』という思いや再会の緊張もあり、結果的に希を煽るような形となり、試合をすることになる。

 ポジションはDF。

 

 他にもサッカー部監督の鮫島だったり、希のことが好きな主将の山田や、竹井などの男子達、マネージャーの越前などの魅力的なキャラクターが登場する。

 わずか2巻のため全員を描ききったとは言えないものの、どのキャラクターも続きが読みたいと思わせるほど、いいキャラクターをしている。

 

 

2 女子サッカーの先駆け

 現在の日本において人気スポーツといえば野球とサッカーが双璧だろう。一時期は野球人気が落ち、サッカーがこのまま日本中を席巻するかと思われたが、今ではメジャー組の活躍やWBCなどもあり野球も盛り返してきている。

 本作は2009年に連載開始なので、2011年のなでしこジャパン優勝による女子サッカーが盛り上がる前に描かれた作品とあり、時代を先取りした作品といえるだろう。

 

 これは多くのスポーツにいえることだが、小学生までは男女の差というものはあまりなく、むしろ女の子の方が早く体が大きくなる傾向があるほどだが、中学生以降は骨格による筋肉量や体格に差が大きくなるために、男女に分けられるというのは当然の話である。

 だがこれは野球も似たような面があるが、バレーやバスケなどに比べて女子生徒がそのまま野球、サッカーを続けられる環境はようやく整い始めたところであり、まだまだ完全とはいえない。

 そのため、ソフトボールやフットサルが女性のスポーツとしての受け皿になっているのが現状である。

 

(ちなみに余談だが、私はオリンピックで野球を復活させるのであれば、『野球、ソフトボール』ではなく『野球男子、女子』『ソフトボール男子、女子』として復活させて欲しい。女子野球はプロリーグもあるのだから、世界大会何連覇を果たしてもメディアに取り上げられない現状を打破してほしい思うし、ソフトボールをやる男性もいるのにそちらは無視となると、それこそ性差別ではないだろうか?)

 

 本来であれば男子と女子が同じフィールドに立って戦うスポーツはそう多くないし、接触プレーの多いサッカーなどは考える余地もないのは当然の話である。だが、やはりお話とすれば何らかのハンデというか、弱い部分がある主人公の方が判官びいきな日本人にとっては応援しやすい。

 他にも身長のバスケ選手や相撲とりなど、近年でもその競技を行う上では身体的ハンデとなりうることをクリアしながら、スポーツを行う作品が次々と誕生している。

 

 

3 内容について

 新川直司といえば先ほどもあげた『四月は君の嘘』で大ブレイクを果たしたが、今作は主人公のタイプも違ければ、文化系のピアノと体育会系のサッカーと題材も全く違うものの、その面白さは決して劣っていない。

 ページ、コマのひとつひとつから伝わる躍動感もあるし、キャラクターも可愛かったりと魅力に溢れている。男子が少々掲載ページ数が少ないこともあって描かれていない部分もあるが、綺麗にまとまっているもののなぜ2巻で終わってしまったのか、残念に思うほどである。

 

 私自身は野球漫画はよく読むものの、サッカーは全く詳しくないために、作中で登場するサッカー選手の名前をなんとか知っているレベルの知識しかないものの、そんな人間でも問題なく楽しめる作品になっている。

 特に技術を絵で描くというのは難しいものだと思うが、2巻の終盤などというのはそれが読者に伝わるように勢いや流れをしっかりと描いており、「漫画が上手いというはこういうことか」と関心してしまった。

 

 この続きが是非とも読みたいなぁ……と思っていたところに、月刊少年マガジンにて続編にあたる『さよなら私のクラマー』が連載開始されたので、こちらも注目していきたい。

 

blog.monogatarukame.net

 

 

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