亀爺(以下亀)
「このブログもこの記事で200記事目か。ちょうど半年と、いい節目になったの」
カエルくん(以下カエル)
「これも皆様の日頃のご愛好の賜物です。一見さんも常連さんも、ありがとうございます」
亀「記念すべき200記事目だから少し変わったことでもしようかと思ったが、この作品なら節目の記事としても相応しいと思ったものじゃ」
カエル「199記事目のFAKEがあまりにも良かったから、フィクションとノンフィクションの違いはあるとはいえ、そのハードルも高くなってしまったけれど、飛び越えていったね。個人的には今年トップクラスで好きな作品かも。毎回言っているような気もするけれどね」
亀「それでは感想を始めようかの」
1 ロックな青春映画
カエル「やっぱりロックって青春映画として王道だし、心を熱くするものがあるよね」
亀「モテたいからロックを始めるというのはいつの時代も王道だし、わかりやすくていいの。これがモテたいから小説書きます、とか、漫画を描きますという人間であれば、その精神を疑問視するがの」
カエル「……まあね。やっぱりバンドとか、今ならダンスもそうだろうけれど独特の格好良さがあるもんね」
亀「まあ、この映画を学生の時に鑑賞していたらまた感想も変わってきたかもしれんの。モテたいから始めるっていうのは、わかりやすいものの『かっこ悪い』と思いがちな年頃だったりするし」
カエル「……それは主とか亀爺みたいな、文系オタクのモテない僻みからスタートしているだけであってさ、多分大多数の男性は同意すると思うよ」
初期衝動としてのロック
亀「本作が好きな理由として、やはり初期衝動としてのロックという側面がしっかりと描かれているというのもあるの」
カエル「初期衝動とかいうと難しいけれど、ロックの本質って基本的には駄々っ子のそれと似たようなものだと思うんだよね。『ふざけんじゃねぇよ、大人ども! お前らに何がわかるんだってんだ!!』っていう子供らしい叫びこそがロックでさ」
亀「これが大人ぶって『そういう考え方もあると思いますが、私は同意できません』と言って議論を重ねていく、なんていう映画だとしたら、大人ではあるけれど魅力はないからの」
カエル「本当に校則や校長に歯向かうのであれば、生徒会でも作ってさ、生徒の意見をまとめ上げて、署名運動でもして、校長に民主主義的の数による力を見せるというのが一番正しいやり方だと思う。でもさ、そんなの全然ロックじゃない!!」
亀「本来、ロックというのは不良の音楽であり、大人は聞くなと言いつつも子供たちが隠れて聞くような音楽じゃからな」
カエル「そうだよ! だから今の『カッコイイ!!』って大人たちが認めてくれて、何かやらかしたらゴメンなさいなんて言うような、カッコばかりで中身がいい子ちゃんな奴らが周囲をキョロキョロしながら奏でる音楽をロックなんて言いたくなんだよ! ロックって大人に認められることか!? 社会に認められることか!? 違うだろう! どうしても抑えきれない衝動を音にすることだろう!!」
亀「……なんじゃ、今日はいつもより熱いの」
カエル「ロックンロールは傾奇者の音楽だ!! 初期衝動だ!! いい子ちゃん達はフォークソングでも弾いていろ!」
亀「……聞き捨てならんぞ!! いいか、フォークソングはな、ロックほど暴力的ではないが、社会に対して風刺を効かせながら……(以下割愛)」
一部お見苦しい点があったことを謝罪いたします。
なお、意見は人それぞれです。
以下ネタバレあり
2 映画の構造
亀「……とりあえず仕切り直して、映画の話に戻るぞ」
カエル「……そうだね。基本的には王道の青春映画で、ラストまで取り立てて驚かせるような展開は一切なかったね」
亀「そうじゃの。やること言えば、気になるあの娘のために音楽を作って、PVを口実に彼女と会って、その後彼女や学校、家族のイザコザ。そしてまたあの娘と会うために歌を作って、 PVを作って……の繰り返しじゃからの。
結局同じ流れの繰り返しだし、青春の王道だからそのラストも全部予想の範囲内なんだけども、それでも面白いからの」
カエル「やっぱり音楽の影響は大きいよね」
亀「そうじゃの。ディズニーアニメなどもそうじゃが、映像と音楽の融合の快感が大きくて、作中でもPVというのは映像の芸術だという趣旨のセリフがあったが、この作品の面白い部分はPVと同じ快感で繋がれておる。非常に極端なことを言えば、物語付きのPVを何本もつなぎ合わせたような作品とでもいうかの。作中では『バック・トゥ・ザ・フューチャー 』は言及されておったが、明らかにモチーフとなった作品も多々あったの。
その音楽も素晴らしいし、映像もカッコイイ。あまりにも良すぎて14歳でこれではレベルが高すぎるなぁ、と少し苦笑してしまうほどじゃ」
カエル「でもカバー曲のヘタクソさとかは良かったよね」
亀「そのシーンとのギャップはうまく撮れていたの」
キャラクターの良さ
カエル「何よりも兄貴の良さ!」
亀「このような作品において、主人公の導き手となる『兄貴分』や『師匠筋』というのが必要でな、例えば『スター・ウォーズ』でいえばオビワン・ケノービやヨーダ、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のドクとか、このような存在が主人公をさらに高いステージに引っ張りあげてくれるのじゃな。
その分師匠筋として魅力的なキャラクターじゃないと難しいところじゃが、本作品はその課題を軽く飛び越えておったわ」
カエル「兄貴ってどうしようもないニートで社会的には下層に属している立場の人間だけど、その分夢を追っかけていた人間だから弟の気持ちがよくわかっているんだよね。
『上手にやろうと思うな』とかさ『ロックは覚悟を持てよ、冷笑されるってな』とかいい言葉が多いよね」
亀「やはりあの兄貴がいるのといないのとでは、作品の印象が大きく変わるじゃろうな。
あとは敵役の校長もいい味を出しとったな。分かりやすい悪党で若者の妨害ばっかりやっておるというのも」
カエル「魅力的なキャラがたくさんだよね。それこそ学校の嫌な奴だった男の子もそうだし、バンド内でも作曲の男の子とかね。結局行動理由が女の子になると、親の言うことも投げ出してバンドに走るっていう」
ラストシーン
カエル「やっぱり青春映画と言ったら逃避行だよね! イギリスへ逃げるっていうさ!」
亀「まあどこから来るかはあるものの、こんな問題が頻発したから、イギリスもEU離脱を決意したのかもしれんが……青春映画は『現在の否定』と『現在からの脱出』が主なテーマになっている作品も多いから、このラストはやはりスカッとするの。『卒業 』のラストなどは少し苦笑いするものだったが、今作品も若さで乗り切ってしまってその後のことは何も考えておらん。
じゃが、その逃避行がいいの」
カエル「結局さ、この作品は初期衝動映画だと思うわけよ。最初から最後まで、よく考えて行動しているような生徒は少ないけれど、14歳ってそんな年頃じゃん。厨二病っていえば話が早いけれど、その無謀な若さがあるからみんな惹かれていくね」
亀「そうじゃの。細かいことを言えば『若いことの喫煙はダメでしょ!』とか『あんなボロ船じゃ遭難しそう!』とかもあるんじゃが、そういう細かいところは放っておいて彼らの初期衝動に任せて突っ走るのが正解じゃの」
最後に
亀「それにしても音楽が本当に最高じゃった。映画館で思わず身を揺らしてしまったのはいつぶりだったか」
カエル「これはサントラも買わなきゃね! ちょうど公開と合わせて発売しているし」
亀「……余計な出費が増える映画じゃの」
カエル「何言ってんの! 初期衝動でしょ! 頭で考えるんじゃなくて、衝動で買わないと!!」
亀「……そうじゃの、カエルのいう通りじゃ。ということで、そのサントラCDはこちら!!」
カエル「宣伝で終わりかよ!!」
(曲も映画も本当にいい作品だったよ)