物語る亀

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物語愛好者の雑文

2016年上半期 オススメ映画7選を紹介するよ

亀爺(以下亀) 

「今年もあと半年かぁ……早いのぉ」

カエル君(以下カエル)

「そうだねぇ……今年もたくさんの映画が公開されているね」

 

亀「のブログを始めたのが2016年1月でそれまでは映画館に足を運ぶのは月1,2回というところじゃったが、ブログを始めて以降映画を見に行く機会が増えたの」

カエル「でも半年間で約30本って一般的には多いんだろうけど、この手のブログの割には多いのか少ないのかよくわからない数字だよね」

亀「方向性の固まっていなかった1月や2月は少なめなのも影響しておるのじゃろ。どれ、今回はその30本の中でも特別おススメしたい作品をあげていくかの。 

 ちなみに、正確には2016年に公開した映画でない作品も混じっておるが、2015年末の公開の作品として大目に見てもらいたい

 

 

 顔のないヒトラーたち

顔のないヒトラーたち Blu-ray

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カエル「いきなり2015年公開の映画だね」

亀「今年ではないのけれど、特別おススメしたい作品ということじゃ。

 イギリスのEU離脱も移民を危惧したイギリス国民の選択とされておるように、日本を含めて世界的に右極化の流れが来ているように見える中で、その影響もあるのか、一時期に比べてヒトラーやナチスをテーマにした作品も増えておるように思うの。 

 最近もヒトラーがコメディアンになり、国民的人気を誇る様を描いた『帰ってきたヒトラー』も盛況なようじゃが、『顔のないヒトラーたち』は戦後西ドイツにおいて世界でも屈指の知名度をほこる戦争犯罪を裁いた、アウシュビッツ裁判を描いた作品である」

カエル「結構難しそうな話だね」

 

亀「ゲラゲラ笑えるエンタメではないの。

 本作が秀逸なのはドイツ史上類を見ない大犯罪を暴くのが、他ならぬドイツ国民そのものであるということじゃ。ナチスが如何にしてアウシュビッツを計画し、どのような残虐行為が行われたのか。戦争を終えて10年以上過ぎて、ようやく暴かれる『真実』

 アウシュビッツを描く場合、残虐行為を行った看守や管理者はとことん悪者に描かれるのが多いし、それが観客のイメージじゃが本作はそうではない。あれだけの残虐行為を行った人間が、戦後はあるものは教師に、あるものは町のパン屋になり、普通の生活を送っておる

カエル「戦争が終われば普通のお父さん、お爺ちゃんなんだね」

 

亀「そうじゃの。こんな普通の人間も特殊な空間にいれば残虐行為に走ってしまうということじゃの。そんな人間を『正義感』で裁くべきなのか、国の罪を裁くべきかの葛藤もしっかりと重く描かれておった」

カエル「同じ敗戦国の日本にも重い問題だね」

亀「本作をみて日本の戦争責任を問うレビューもあるようじゃが、わしはそのような政治事情や信条を超えて、どの立場の人にも見てほしい一作じゃな。日本人が日本の戦争を裁く、検証する機会などがないということが、まあ日本らしいと言えるのかもしれんが……」

カエル「ブログを始める前に鑑賞した映画だから感想記事がないため『帰ってきたヒトラー』の記事をあげとくよ」

亀「似た時期の戦争映画だと『独裁者と小さな孫』も良かったの」

 

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キャロル

キャロル [Blu-ray]

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 カエル「アカデミー主演女優賞にノミネートされたケイト・ブランシェットの名演技が光る作品だね」

亀「もちろん、そうじゃが、そこだけが理由で本作を推すわけではない。

 近年はLGBTの問題が世界的に取りだたされており、他にも『リリーのすべて』などのような作品も注目を浴びておるし、ここ最近は直接LGBTがテーマではない作品でも、普通の友人として同性愛者が登場することも増えたように思うの」

カエル「元々テーマに差別問題を含んでいるとはいえ、ニューヨーク 眺めのいい部屋売りますでも普通に出てきたね。あとはオランダ映画の孤独のススメも監督が特に意図せずにその要素を含んだって語っているし」

 

亀「その同性愛という恋愛描写もさることながら、脚本や演出に関しても一級品であり、この二人の関係性の変化や心情を見事にくみ取っておる。また、一度見ただけでは気が付かないような小技もたくさん効いており、観れば観るほどに味わいを増していく一品に仕上がっておるの」

カエル「でもちょっと地味な印象はあるかな?」

亀「元々同性愛というデリケートで個人の信条に触れるテーマである上に、映画として相当うまいけれども、その分あまり映画に見慣れていない方にはわかりづらい作品になっているかもしれないの。それでも是非ともおススメしたい作品じゃ」

 

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マジカル・ガール

 

亀「純文学が『小説でしかできないこと』を追求した作品群を指すのだとするならば、わしは本作を『純映画』と名付けたい!!

カエル「……いきなりすごいこと言いだしたなぁ。結構癖の強い映画じゃない?」

亀「それは否定できんの。テーマもわかりづらいし、演出も尖っていて、説明もほとんどないし、なぜそうなったのかわからない描写もある。

 だが、本作は映画という媒体でないと味わえない、特別な一作に仕上がっているのは間違いないの

カエル「確かにこの世界観を漫画とか小説にするのは難しいよね」

 

亀「こうしてオススメはするが、マジカル・ガールに関してはあえて何も前評判や知識を入れないで見に行ったほうがいいじゃろう。おそらく人によってはまったく理解できないうえに、気分を害するような場面もある作品ではあるから、誰にでもおススメできる作品には仕上がってないが、だからこそ描けるモノに満ちた作品である」 

 

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ズートピア 

ズートピア オリジナル・サウンドトラック

ズートピア オリジナル・サウンドトラック

 

 亀「さて次は……」

カエル「亀爺! ここまでの映画全部暗めだよ! ちょっとここいらで明るい映画にしようよ!」

亀「……仕方ないの。じゃあカエル、お前のオススメを上げていきなさい」

 

カエル「まずはズートピアだよね! 誰にでもオススメできる、ディズニーらしい老若男女に喜ばれる作品だよね。世間的にも大ヒットだし、主も思わずうなったという!」

亀「……まあ、そうじゃの。非常に極端な言い分になってしまうが、『上手すぎて腹が立つ』というわけのわからない感情に駆られてしまうわ」

カエル(……亀爺は素直に褒めることができないの?)

 

亀「まあ、それは冗談としてもとにかく脚本、音楽、演出、キャラクターなど、どこをとっても上手いの一言に尽きるし、表のテーマも裏のテーマも社会的に重要なことを扱っており、見ごたえ十分。安心して子供も鑑賞できるし、大人もハマるエンタメの作品の究極系みたいなところはあるの」

カエル「欠点がないよね」

亀「……何か欠点はないのかと考えて、ようやくひねり出したのが『上手すぎること』というか『可愛げがない』とでも言おうか。計算づくで人間味を感じないというか」

カエル「もうイチャモンじゃん。多分、これからズートピアを見ないでディズニー映画は語れないというレベルまで達している作品だよね」

 

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劇場版 響け!ユーフォニアム

 まだ劇場版のDVDなどがAmazonにないようなので、テレビ版を特集したアニメスタイルを貼ります。

アニメスタイル007 (メディアパルムック)

アニメスタイル007 (メディアパルムック)

 

 

カエル「あのズートピアと同日公開で、あれほどの作品を相手にしながらも個人的に満足度では互角に戦って、内容も詰まった素晴らしい作品だよ!! 『世界よ、これがジャパニメーションだ!』 と言いたいほど!」

亀「……テンション高いの。ズートピアに人間味が感じられないと書いたが、こちらはズートピアほどの完成度はないものの(というよりもズートピアが異常なくらいなのじゃが)胸を熱くしたのはこちらのほうじゃな」

 

カエル「そうなんだよね! 確かに萌えキャラがたくさん出てくるオタクアニメで、そのメインターゲットは深夜アニメを見慣れたオタクであることは間違いないんだけど、それだけでは収まらない熱量がこの作品の中には詰まっているんだよ!

亀「……これだけテンションの高いカエルは初めてかもしれんの。特に『持つ者と持たざる者の対比』であったり、『譲れない思い』や、わしのように長く生きた亀からすると、人生の中では短いはずなのに比較にならない濃度をもつ、高校生という時代を見事に切り取った青春映画として高く評価されるべき作品なのは間違いないの」

 

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殿、利息でござる

無私の日本人 (文春文庫)

無私の日本人 (文春文庫)

 

 亀「なんじゃ、明るい作品はアニメしかないのかと思いきや、ここで時代劇の登場か」

カエル「亀爺のオススメするのは重々しい実写映画ばかりだからね、コメディ時代劇も入れとかないと」 

亀「どうしても心の奥底に訴えかけるような作品は暗い作品が多くなりがちだからの。逆にコメディなどは多くの観客を受け入れようとして話や演技、演出が軽くなる傾向にあるから、わしが推す作品の中ではどうしても一つ落ちる作品が多くなるのじゃが、本作は文句なしの出来じゃな」

 

カエル「まず、普通にコメディとして面白いし、笑いどころを交えながらも、本筋にはどんでん返しがちゃんと用意してあって、伏線もしっかりと貼られているよね。そのどんでん返しが、少なくとも僕にとっては全く予想できなかったことで、あの展開には驚ろいたよ!」

亀「役者も人気がありつつも実力派をしっかりと集めて、決して重苦しくなく、軽妙に誰にでも楽しめて、どんでん返しもあり、感動もある時代劇。これもどの世代でも楽しめる作品じゃろうな」

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ヒメアノ~ル

ヒメアノ~ル コミック 1-6巻セット (ヤングマガジンコミックス)

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亀「ラストはわしに語らせてもらいたいの」

カエル「いいけど……やっぱり最後はこれなんだ……」

亀「コメディあり、感動あり、ホラーあり、アクションあり、外連味ありとたくさん詰め込まれた映画ではないか」

カエル「……グロテスクとバイオレンスとエロティックも追加してね」

 

亀「やはり本作はうまさが際立つ作品じゃの。エロとグロの対比であったり、コメディをしっかりと入れることで緩急が効いた作品に仕上がっておる。何よりも演出が素晴らしくて、物語が始める場面というのは背筋が凍るような緊張感があったの」

カエル「……でも主は否定的だったじゃない。『グロがきつ過ぎる』って」

亀「かなりバイオレンスだしR15となっておるので、そこに耐性があるかないかは重要じゃな。もっとエゲツない作品はたくさんあるがの。

 おそらくその場面だけで見るともっとエゲツない作品も他にあるけれども、そこまでの演出であったり構成、演技が鬼気迫るものがあるせいで、より直接的に心にくる作品となっておる

 それに主も本作自体は否定しておらんぞ。圧倒的なうまさがあるし、エンタメとして成立するギリギリのラインだと思う、とは言っておるがの」

  

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最後に

カエル「オススメ作品としてはこんなところかな?」

亀「そうじゃの。好きな作品となったらニューヨーク 眺めのいい部屋売ります二ツ星の料理人なども入ってくるじゃろう。でも今年は駄作はまだ見つかっておらんの」

カエル「そうだね。どの作品も一定以上の面白さはあると思うよ」

亀「いやいや、わしの映画を選ぶセンスがいいんじゃよ」

カエル(……自画自賛ってセンスのない最低の終わり方だよなぁ)

  

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