カエルくん(以下カエル)
「今月は見た映画も多いから記事にしていない作品も結構あるよね……」
亀爺(以下亀)
「やはり夏休みシーズンじゃから映画もアニメを中心に注目作が目白押しじゃたからの」
カエル「今回はまだ記事にできていない作品を短評として感想を書いていこうという記事になります」
亀「どうしても小規模映画は後回しになりがちじゃからの。公開初週に観に行ける作品ばかりではないしの」
カエル「それじゃ前置きも手短にして、映画の感想に入ります!」
パワーレンジャー
作品紹介
日本の『スーパー戦隊シリーズ』を基にハリウッドが実写化した大規模公開ヒーロー映画。ちなみにアメリカでの興行が微妙、中国ではコケたらしく、続編が作られるには日本で70億円売り上げないといけないという話もあったらしいが、そこまで届くこともなさそうでどうなるかは未定。
しかしキャラクター関連商品は好調という話もあり、続編製作もありうるかもしれない。
アメリカの高校生の5人はある日、廃坑にて謎の光を放つメダルを手に入れる。そのメダルを手にしてからというもの、超人的な力を発揮するように体が変化し戸惑う5人。一方、海の底から謎の女性の死体が引き上げられたのを皮切りに、金の強奪事件も発生する……
5人は町を守るために立ち上がる。
カエル「では大規模公開だけれど、記事にはしていなかったパワーレンジャーだけれど……Twitterでの短評はこのようになっています」
#パワーレンジャー 短評
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2017年7月19日
うーむ、微妙……
うまくは作ってる
よく出来ている
でもそれが褒め言葉にはならないかなぁ
何が悪いというわけでもなく、全体的にグッとこない
青春モノとしてもヒーロー映画としても特撮としても言葉に困る
あ、悪い映画ではないよ
亀「この作品はアクションを中心としたヒーローパートと青春パートの2つがあるわけじゃが、その2つともに微妙……という評価じゃの。
こう言っては何じゃが、続編を意識しすぎてこじんまりとした物語になってしまった印象がある」
カエル「何かが悪いってこともないんだけれどね……
うまくできているとは思うんだよ。キャラクター設定も中心人物のレッドを白人としたら、男性は黒人、アジア人を起用してアメリカ的なグローバルな戦隊ヒーローになっているし、女性陣も美しいし」
亀「しかしどうにも面白くなりそうで面白くならない作品じゃったの。
まあ、このブログは特撮好きでも怪獣映画好きじゃから若干意識がブレるのかもしれん。ヒーロー映画のノリはあまり理解できないタチじゃし」
カエル「あとはアクションも確かにすごいんだけれど、ツッコミどころもあって少し違和感もあって……
特に戦隊モノらしく各機体が合体するシーンがあるんだけれど、あの機体はなんだろうね?
ハリウッドの合体、変形ロボットの悪いところだけれど、原型がほとんど無いんだよ。日本だとどのパーツも変形に必要なものとして使われているけれど、ハリウッドはパーツが消えてしまったり、その原型がなかったりして……結局変形、合体シーンは見せないというのもなんだかなぁと……」
亀「一応背中にわずかに原型はあるが、それをやるならもっとしっかり造形して欲しかったという印象もある。
それと誰もが知る名画のテーマソングが流れるが……あれもわしはイマイチじゃった。あの映画が好きなだけに、パワーレンジャーとあの作品にもテーマソングの持つ意味とも合っていないように感じられたかの」
カエル「音楽でいうと特撮らしい音楽が流れるシーンもあるけれど、10秒くらいで終わっちゃうし……何がしたいの? という気分だったかなぁ」
亀「しかし、しっかりと計算されていて悪い作品ではないぞ。
ただパンチがないというのと……あとはどうしてもキャラクターが新規に作られたものじゃから、知名度のなさが響いたの。やはりバットマン、スパイダーマンなどの知名度があるからみんなヒーロー映画を見に行くわけじゃからの。
全く知らん新規のヒーロー映画では、興業も厳しい戦いになるのは仕方ないじゃろうな」
歓びのトスカーナ
作品紹介
イタリアのアカデミー賞と言われるダビット・ディ・ドナテッロ賞に17部門ノミネートされ、作品賞、監督賞、主演女優賞などを5部門を受賞したイタリアを代表すると言っても過言ではない作品。
精神診療施設に入所する2人の女性が抜け出し、旅を続けながら絆を深めていく過程をじっくりと描く。
躁病気味で周囲を困惑させるベアトリーチェが入所している医療施設に、鬱病や自傷行為などの精神疾患を抱えるドナデッラがやってきた。彼女に興味を持ったベアトリーチェは様々な手で彼女に近づいていく。
やがて彼女の過去を探り出そうと2人は施設を抜け出して旅を始めるのだった……
カエル「イタリアは精神病院を廃止した国でもあるんだよね。日本では160万床の精神病院のベットがあるけれど、そのうち日本は35万床あると言われていて、世界屈指の精神病院大国でもあると言われているから、真逆な国と言ってもいいのかも」
亀「これは賛否のわかれる話であるかもしれんが、日本は島国の村社会みたいなところがあり、問題を抱えておる人は隔離したいお国柄なのかもしれんな。しかし、それで精神疾患を抱える人は社会との関わりをさらに閉ざされてしまい、社会復帰がさらに難しくなってしまう。
精神疾患を抱えた人も社会の一員であるという意識の元でイタリアは精神病院を廃止たようで、アメリカも精神病院を廃止しておるようじゃな」
カエル「その意味で見ても結構びっくりする映画でもあって……普通にバスが走って、週に1度は街に送ってくれるんだよ。買い物などもできる。で、仕事も与えられて週に1度お給料ももらえるというね」
亀「もちろん映画としても高評価じゃな。イタリアで高い評価を受けるのも理解出来るものになっており、ドナデッラが抱えた思いなどを知れば知るほどに彼女への感情移入もできる作品に仕上がっておる。
世間からは異常者扱いされてしまうベアトリーチェやドナデッラであるが、彼女達がどういう人間か分かるにつれて、人間味を増していく構成は見事じゃ。決して精神病
の患者はモンスターではないというのもわかる作品じゃの」
カエル「精神疾患をモチーフにした作品だと1967年に公開されたフランスの『まぼろしの市街戦』も名作だけれど、何が正常で何が異常か、というのは物差しの問題でしかないことがはっきりとわかる。
僕たちが抱えている常識というものが、どれほど偏見に満ちたものなのかがわかる作品が多い印象だね」
亀「正直なところ、鑑賞直後は趣味ではないという印象じゃったが……こうして思い返してみるとトンデモナイ傑作じゃったというのがわかる。2度、3度鑑賞することで味が変わってくる映画といえるかもしれんの」
ヒトラーへの285枚の手紙
作品紹介
スイス出身の俳優でもあるバンサン・ペレーズが監督を務める。ドイツ人作家ハンス・ファラダが実際に抵抗運動を繰り広げたオットー夫妻を元に、1946年に執筆した小説『ベルリンに一人死す』を映画化した作品。
1940年6月、ベルリンに暮らすオットーとアンナの夫妻の元に息子、ハンスが戦死したという一報が届く。悲しみに暮れる夫妻であったが、その悲しみは怒りに変わり、やがて政権を批判したハガキを街中にそっと置いていくという抵抗運動を始める。
ゲシュタボはこの事件の捜査を開始、やがてその手はオットー夫妻の元にも伸びようとしていた……
カエル「ナチスドイツをテーマにした作品はなるべく観ようという方針があり、当然のように今作も見に行ったけれど……確かにいい作品なのはわかるけれど、でも期待したものとは違ったかなぁ」
亀「現実に存在したオットー夫妻描いた作品というだけあって、確かに重厚な作品には仕上がっておるが……どうにも期待したものとは違った印象じゃの。
わしがナチスドイツをテーマにした映画を好きなのは、ドイツの抱える複雑な思いが映画的な深みを与えておるからじゃ。
自分たちの国の過去であり、それは否定しなければいけない。しかし、それは果たして本当にただ否定すればいいというものではなくて、もっと複雑な感情が入り混じる。
それが映画として溢れているからナチスドイツの映画が好きなのじゃが……」
カエル「近年でいうと『帰ってきたヒトラー』であったり『顔のないヒトラーたち』や戦後処理のお話だけれど『ヒトラーの忘れもの』などはそういう、ドイツや周辺国の抱えるナチスという闇へのアプローチが深い作品も多かった。
それからユダヤ人から見たナチスの残虐行為を暴いたアカデミー外国語映画賞を受賞した『サウルの息子』も素晴らしい名作であり、見た後にズンと気持ちが沈んだ作品だった」
亀「しかし、本作からはその葛藤の深さも残虐行為の強さも残念ながら感じることができず、ナチスドイツに反抗したドイツ国民という視点で描かれておった。
もちろん、それはそれで重要なものじゃし、面白い題材であるのは間違いないが……前述の名画たちのような重さを期待すると少し残念に思う作品ではあるかの」
カエル「悪い映画ではないけれどね。地味だけれど重要なことを描いている映画なのは間違いないし」
逆光の頃
作品紹介
同名の漫画を実写映画化した青春青春映画。京都を舞台に幼馴染に恋をする男子高校生普通の生活を、思春期特有の危うさや煌めきなどを切り取った作品。
京都の金箔職人の家に生まれた高校2年生の赤田考豊は自分の将来に何となく不安を抱えながら日々を暮らしていた。幼馴染のみことへの恋心であったり、友人との関係性などに悩みを抱えながらもケンカや一緒にバカをやることで成長していく。
主人公を『PとJK』などの高杉真宙、ヒロインを『サバイバルファミリー』などの葵わかなが演じている。
カエル「この作品は66分と少し短めだけれど、劇場では正規料金だったんだよねぇ……不満といえば不満なんだけれど、じゃあ作品としては? と言われると、中々これも一言では表しづらい作品で……」
亀「面白いかつまらないかで言われると……どうじゃろうな?
好きか嫌いかと問われると好きな作品じゃ。あの思春期特有の微妙な心情であったr、未来に対する漠然とした不安、将来の進路への悩み、他人は成長しているようなのに自分は一切成長していないような気がしたり……そういう思いを見事に描いておる。
そして、あの恋愛描写もわしは好きじゃな」
カエル「なんかわかるんだよねぇ。それまでずっと友達だったはずの相手が、恋愛対象になっていく戸惑いとかさ……もっと大人になればもっと簡単に好きって言えるけれど、そんな一言で簡単に表せるような思いでもない。
それを言葉にしてしまうと全てが変化してしまう恐怖もあるし……」
亀「まあ、思春期特有の思いじゃの。
本作における高杉真宙、葵わかなは過去作に比べると良い演技をしておったとは思えん。しかしの、あの独特の空気感を生み出すことには成功しておる。
それから圧倒的な美しさを持っておったのが古都、京都であって……京都のプロモーションムービーかと思うほどじゃったな。その目線で見れば今作は完璧な1作ということができるじゃろう」
カエル「多分これは異論もあるかもしれないけれど、第3章がない、比較的ハッピーな『秒速5センチメートル』って印象かなぁ。
あのラストがなくなったことで毒は減ったかもしれないけれど……その分面白みは減った印象かなぁ」
最後に
カエル「というわけでとりあえず今回は4作品を短評形式で感想を書いてみました」
亀「ちなみに7月鑑賞は他に『空の味』『人生フルーツ』『私はダニエルブレイク』などもあるんじゃが、それらは別の機会にするかの」
カエル「あと7月公開で気になっている作品は……
『夏の娘たち〜ひめごと〜』
『丸』
『ケイト・プレイズ・クリスティーン』
『ハローグッバイ』
『ダンサー セルゲイ・ボルーニン 世界一優雅な野獣』
『狂覗』
『ボン・ボヤ〜ジュ〜家族旅行は大暴走〜』
などになっています」
亀「単館系に手を出し始めるとキリがないから、少し考えなければいけないの……この中でも狂覗は絶対に見に行くじゃろうな」
カエル「結構評判のいい映画でもあるからね。
それにしても7月はやっぱり多い! 夏休みシーズンだし、夏映画がいっぱい公開されることもあるんだろうけれど……」
亀「他にも映画祭などもあるからの、手が回らん。
時間がいくらあっても足りないの」
カエル「まあ、お金のことも考えるとギャンブルとかにハマるよりはマシだけれどね……」