カエルくん(以下カエル)
「この作品はさ、結構予告編などでも伏せられたところが多いみたいで、秘密が多いから、ネタバレなしにパートはどこまで語っていいのか迷うところだねぇ」
ブログ主(以下主)
「まあ、なんかあるんだよ。なんかあって、宇宙にいる6人の男女が大変な目にあうんだよ」
カエル「……うん、まあ、何も間違ってないけれど、その説明って『エイリアン』も『ゼロ・グラヴィティ』も『スターウォーズ』も同じような映画ってことになってしまうよね?
基本的に物語って『何かトラブルがあって、それを解決するために(目標に向かって)頑張る』ってものだし……」
主「その意味では本作は『エイリアン』だけでなく『スターウォーズ』や……もしかしたら『ガメラ』などの系譜にある作品かもしれない。いや、1番近い作品は『もやしもん』なのか? いやいや『プラネテス』も相当近いぞ?」
カエル「……うん、頑張って煙に巻こうとしているのは伝わってくるよ」
主「若干マジで言っているところもあるんだけどなぁ。
それにしてもさ、ライフというタイトル自体は悪くないけれど、同じ名前の作品があまりにも多すぎるから困るよね」
カエル「近いところでは『光』もそうだよね。今年だけで何作『光』が出てくるんだ? って思ったし」
主「検索するときも大変だし、本作が歴史に残る大傑作だとしても『どのライフの話をしているの?』ってことになりかねない。
原作のままのタイトルなんだろうけれど、これだけは考えたほうがいいかもしれない
……別に誰が悪いって話でもないんだけれどさ」
カエル「じゃあ、感想記事を始めるよ」
1 ネタバレなしの感想
カエル「では何が起きたかなどの事件については一切語らずに、本作の感想を語っていきましょう」
主「面白かったよ。
宇宙でのゴタゴタを描いた映画ではあるけれど、構成も見事なものだったし、それ以外の……例えば宇宙空間での生活であったり、未知の存在との接触の恐ろしさであったりなどと言った恐怖なども描かれていた。
以前に『パッセンジャー』の記事でも語ったけれど、SFって2作品あると思っていて、今年公開の映画でいうと
『パッセンジャー』や『メッセージ』などのように哲学的、思考実験の要素の強いSF
『ガーディアン・オブ・ギャラクシー リミックス』などの娯楽作品としてのSFがある。
本作はちょうどその中間かな?」
カエル「序盤と後半では印象が変わるもんね。緩急が見事についたうまい映画でさ、確かにB級映画のように思えるシーンもあるんだけれど、宇宙の生活などの描写はすごくリアリティもあったし、フワフワと浮いた描写などのCGも力が入っていて、見ていて引き込まれた!」
主「基本的に話のメリハリが出来ているんだよね。
たった6人だけしか出てこないし、物語のほぼ全編が宇宙空間の密室劇なんだよ。これだけでドラマを作るのは実は結構難しいけれど、本作は見事にうまい具合にメリハリの効いた作品になっている。
本作は104分とそんなに長くなくて、おそらくEDが5分ほどだとすると本編は100分を切る。その短い尺だからこそ、余計なことをせずにちょうどいい塩梅で作品を作り上げたという印象だな」
カエル「飽きなかったもんね。もしもこれがあと10分続いていたら……もしかしたら集中力が切れていたかもしれないけれど」
主「全体の構成も見事だなって印象だよ。
あとは個人的な話になるけれど、結構自分の好みに合うところもあって、なかなか優れたエンタメ作品だったね。
あ、あと自分はホラー苦手だけど、この作品は幽霊とかそういうホラーではなくて、スリラーに近い作品なのでお化けなどが苦手な人でも大丈夫!」
カエル「……結構怖いって評価も多いけれどね」
主「そう? 自分はそうでもなかったかなぁ」
キャストとあいつについて
カエル「本作はキャストがすごく豪華なんだよね!
まず主役が『雨の日は会えない、晴れた日は君を思う』や『サウスポー』などでも主演をしたジェイク・ギレンホール。
それからこちらの方が主役っぽい女リーダー役には『ミッション・インポッシブル ローグネイション』などのレベッカ・ファーガソン。
そして『デットプール』などのライアン・レイノルズなどが出演しているけれど……」
主「ライアン・レイノルズとライアン・ゴズリングが被るんだよなぁという話は後にして……
やはり目を引くのが真田広之! 船内唯一のアジア人スタッフとして日本人が搭乗しているけれど、1人だけ日本語を話していたり、結構優遇されているんだよ。日本市場を狙ってきているのが伝わってくる。
中国人ではなかったのは宇宙開発を巡る世界情勢を考えてのことかもしれないけれど、たった6人だけで物語を作る上でのキャラクター設定と考えても、仲間でありながらも目を引く個性が際立っていたよ」
カエル「でもさ……なんで日本人が海外映画で日本語を話していると、謎の片言風に聞こえてくるんだろう?
『ハクソー・リッジ』でも思ったけれど、日本語として成立しているし何もおかしなところがないはずなのに、なぜか違和感があるような気がする」
主「これって自分だけなのかね?
英語の中に1人だけ日本語だから浮いているだけなのか? それとも脚本が日本語になるからGoogle翻訳などみたいにちょっと違和感があるように変換されているのか……観客としての自分が変に感じているだけなのかわからないけれど……」
カエル「そしてあいつの存在感がすごかった!
こう……ツボをしっかり押さえてくるというか!」
主「本作に続編があるかはわからないけれど、あいつはまた見てみたいなぁ。
詳しくはネタバレありで話すけれど、自分はあいつ大好きで! 途中からどちらを応援すればいいのかわからなくなるほどだよ」
以下ネタバレあり
2 序盤について
カエル「一応ネタバレありとは言っているけれど、ラストに関するネタバレはしないので悪しからず。結構最後にも大どんでん返しがあるという評判でもあるんだよ」
主「まず序盤がうまかったね。
宇宙ステーションの日常を描いているけれど、それがカメラワークもあって上下左右がなくフワフワとした世界を描き出していた。しかもあまり画面酔いしないように、ゆっくりとしたものでもあって結構見やすいんだよね。
これで本作が宇宙を舞台にした物語としての演出的な挑戦を、しっかりと前面に押し出すことに成功していたんじゃないじゃな?」
カエル「それぞれのキャラクター説明も良かったよね」
主「ちょっと日本人のシュウだけ色々詰め込み過ぎだった気もするけれどね。日本市場へのアピールもあるだろうけれど、ポリコレ対策もあるのかな? この作品の中では男主人公のデビット、女主人公のローリー、日本人のシュウ、あとは黒人医師のヒューが目立った印象かな。
ただ、これも……なんというか、キャラクター説明の必要性を考えたら絶妙だと言えるけれどね」
カエル「全部見終わった後だと、まああのキャラクターはこの程度の説明でいいかって気もしてくるってことだね」
主「6人だけの密室劇って難しいけれど、キャラクター設定にも成功している。これ以上多いとゴチャゴチャするだけだし、モブを一切出さないでスマートに約100分の物語にする上では、ベストな配置なんじゃないかな?
男女比、人種、それぞれの役割を考えても見事に考えられていると言える」
真田広之は中々美味しい役をもらっていました
少し疑問に思ったところ
カエル「序盤で人間らしさがうまく表現されていて、それが壊されていくからこそ感じる恐怖感に満ちていたけれど……でもさ、ちょっと気になるのが、これは最近のハリウッド映画に多いことだけど、搭乗している人達がちょっと失敗が多すぎるというか……」
主「結局判断ミスと統制がとれていないことによる失態が多かった印象だな。
最初の実験結果は仕方ないと思う。確かにああいう反応をするのはあの状況では可能性としてはあり得ても、同じ状況ならそうするかもしれない。どういう生態かわかっていないからこそ、より慎重さが求められるのは当然としてもね。
ただ、その後の判断があまり良くなかった」
カエル「あの状況下では助けに行っちゃダメだよね。もちろん人情としてはわかるけれどさ……」
主「宇宙空間での生活ってある意味では究極のサバイバルなわけじゃない? 多分その教育って徹底されているはずなんだよね。宇宙飛行士になることを題材とした作品では多く出てくる描写だけど、全体の危機に瀕したときに1人を見捨てることができるかっていうのは重要なことだろう。
全体を生かすためには1人に犠牲になってもらうしかない時もあるはずだ。それがうまくいってない印象だな」
カエル「でもさ、ハード面での欠陥がなければソフト面での欠陥を出してもらうしかないわけ、そのためには誰かが判断ミスをする必要があるけれど……」
主「う〜ん……これって今のSFの難しさなのかもね。危機を迎えるためには誰かがバカなこと……というと変だけれど、ミスをしてもらわないといけないという。
あのラストの選択もそうだし、はっきり言ってしまえばあいつを封じ込める機会っていくらでもあったと思うんだよ。自分は細胞分裂によって新しいあいつが出てくるのかな? って思ったけれど、そうじゃないし。
たった1人を見捨てることができない人道主義から全体の危機に陥ってしまったのは……正直、あんまり納得することはできないかな」
カエル「それが作品的にマイナスかと言われると難しいところだけどね」
3 あいつについて
カエル「あれはさすがに宇宙生物だからのファンタジーだよね……多細胞生物なのにすべての細胞が脳神経であり、筋細胞にもなるということってありえないもんね」
主「いや、ああ言う生物はあり得るんじゃないかな?」
カエル「……え? いるの?」
主「昭和天皇も研究されていた粘菌がそうだよね。粘菌というのは菌の一種だけど、1つ1つは単細胞生物のような性質も持っていて、アメーバのような動きを示すことあるけれど、集合すると多細胞生物のように振る舞い、まるで知性があるように迷路を解いたりする。
さすがにES細胞のような万能細胞と同じかと問われると難しいところがあるけれど、原始的な存在だからこそ、どのようにも変化ができるのだろうと言われている。今でも研究が進んでいるけれど、動物のようでもあり植物のようでもあり、興味深い存在であるよ。
でもあの極限状態でまだ生存しているというのはさすがにファンタジーでしょう。火星の環境では炭素(食料)1つ見つけるのも難しいだろうし、水分はほぼないし」
カエル「さすがにああいう成長体にはならないだろうけれど、原始的な生物だとするとああいう万能性があってもおかしくないってことなんだね……」
主「一気に進化しすぎだけどね。
でも面白い発想だと思う。
エイリアンなどのようなトンデモのようでもあるけれど、途中の科学的な考察の部分は確かにありえるかもしれないなぁって思いもあった。特に宇宙から連れてきた生物だし、何があってもおかしくないし」
カエル「宇宙空間や絶対零度でも生存できるというとクマムシが有名だしね」
主「もちろんさすがにありえないことも多かったけれど、きちんと理屈は付いているようには思ったかな」
フォルムについて
カエル「結構怖かったとか、ホラー映画のように宣伝もされているけれど……」
主「実は個人的には全く怖くないどころか、むしろあいつに惚れ込んでしまったんだよね!
怪獣映画が大好きだからさ! あのフォルムとかっていかにも怪獣映画に出てきそうじゃない。ビオランテとかレギオンのようなフォルムをしていて!
触手の1つ1つもかっこいいし、顔も精悍だし、昔見た怪獣映画の敵役を思い出した。大体スタートってああいうやつから始まって、どんどん人間を食べたりして成長して巨大化して、ゴジラなりガメラと戦うっていうのが王道じゃない?」
カエル「そうなってくると宇宙ステーションでの戦いも怪獣映画のように見ていたの?」
主「どっちを応援すればいいのか全くわからなかったんだよね。
元々菌類も好きだし、さらにそれが怪獣のように変化する。それが人間を襲うわけだからさ、もう大好きなものが詰まったのがあいつなわけだよ。どうせここからあれでしょ? また新たな怪獣映画が始まるんでしょ?」
カエル「いや、あいつが怪獣映画に出てくるとは全く思えないけれど……」
主「じゃあ出そうよ! あれほどのキャラクター性があるクリーチャーは久々だよ! もう人類を次々襲ってもらって、しかも細胞が1つ残れば無限増殖するわけだからさ、すべてを焼き尽くすしかない。これほど怪獣映画に向いた存在もないよ!
ああ、観たい! あいつVSガメラが見てみたい!」
カエル「……うん、ライフの感想とは全く違うものになってきたね」
最後に
カエル「じゃあ、最後になるけれど……」
主「最初で冗談のように語ったけれど『プラネテス』と言ったのはちゃんと意味があって……プラネテスは宇宙を舞台にしたスペースデブリ(宇宙ゴミ)を拾うお仕事ものの漫画&アニメなんだけれど、00年代最高のSF作品の1つなんだよ。
もしかしたら、本作も違う方向性で……宇宙空間で働くお仕事ものの一面が出せたかもしれない。
結構いろいろと考えられた1作だったんじゃないかな?
単なるB級映画ではない。
特に足が悪いから宇宙空間にいて、感覚がないからこそピンチに気がつかないという設定は痺れた」
カエル「確かにスリラー(ホラー)としての一面もあるけれど、決してそれだけではないというか……」
主「怖くないと言ったら嘘になるらしいけれど……でも面白いから是非とも鑑賞してほしいね。
あと怪獣映画が大好きな人は必見! なかなか素晴らしい造形だったから!
ガメラVSあいつは結構マジで言っているからね!」
カエル「うん、実現不可能だろうけれどね」