カエルくん(以下カエル)
「今回はあれだけ楽しみにしていた『ひるね姫』の記事だけど、まさかの亀爺と僕でやるんだね」
亀爺(以下亀)
「年末ぐらいに009の新作映画が公開されたじゃろ? 3部作で、正確にはOVAになるのかもしれんが……」
カエル「あったね。このブログでも第1章を扱って、残念ながら酷評になってしまったという、例の作品」
亀「あれの監督が神山健治なんじゃのが……主の中では『あれは名義貸しのために総監督になっただけで、実際は監督業務に励んでいない。つまり、すべては石川Pが悪い』となに1つ調べもしないで結論をつけたらしいからの」
カエル「それだけ信じたかったんだね」
亀「そしていよいよ公開になったひるね姫じゃが……もはや、ここまで言ってしまえばわかっておるかもしれんが、結構評価が難しい作品になってしまったの」
カエル「賛否が割れているというか……否が目立つというか……」
亀「アニメーション技術は素晴らしいのじゃが、肝心のお話が……ということで主は意気消沈して渋谷でVR体験のために遊びに行ったらしいの」
カエル「相変わらずアウトドアかインドアかわかりづらい人だね……」
亀「さて、簡単な感想はすでに述べてしまったが、感想と解説記事を始めるとするかの」
カエル「……解説できるのかな? これ?」
1 神山健治監督について
カエル「じゃあ、まずは監督の神山健治監督について説明すると、神山健治が監督を務めるというだけで『おお!』となるくらいのビックネームではあるんだよね」
亀「アニメを鑑賞しない一般人でもわかる作品というのは、あまり多い作家ではないがの。
元々は背景や美術出身の監督で、その後に演出に転向、そして脚本なども書きながら押井守監督の主催する『押井塾』に入っておる。実際に押井守監督と制作したことはないようじゃが『攻殻機動隊SAC』シリーズ、つまりテレビシリーズの攻殻機動隊を担当したことによって、押井守の一番弟子と言われておる。
実際に心底尊敬しておるのも事実のようじゃし、ポスト押井守というのがあるのかわからんが、そのような立ち位置に1番近いとするならば神山健治となるじゃろうな」
カエル「攻殻機動隊のテレビシリーズはハマったもんね。オールナイト上映にまでいって、神山健治監督のインタビューを聞いたり、質問コーナーで質問させてもらってりして……
監督自身が影響を受けた作品の要素を入れることも多くて、例えば上記の『攻殻機動隊SAC』の中には『笑い男事件』というのもあるんだけど、その中の『目と口をつぐみ、孤独に暮らそうと考えた』というセリフは、監督が影響を受けたサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』からの引用だと明かしていたしね」
亀「元々サリンジャーは同一性……つまり読み終わった後に『自分のことを語っているのではないか?』と思いやすい作家であるが、それは神山健治の場合も同じじゃったようじゃな。
本作ではスターウォーズやガンダムとの類似性も指摘されておるが……実に様々なモチーフが複雑に入り組んでおった」
カエル「あるシーンなんて『ガンダムだ!』ってはっきりと思ったけれど、それにどんな意味があるのか? と問われると何もわからないんだよ……」
亀「単なる好きなものを詰め込んだオマージュということかもしれんの」
2 スーパーアニメーターたち
カエル「この作品はスーパーアニメーターがたくさん参加していることでも話題だよね」
亀「一般的にはわかりづらい部分かもしれんが、アニメにおける『絵の演技』では最も重要な作り手たちがたくさん集結しておる。
『君の名は。』もたくさんの凄腕アニメーターが参加しておったが、ひるね姫も負けておらん。
今回はそのスーパーアニメーターたちを紹介していくぞ」
井上俊之
カエル「日本を代表するスーパーアニメーターの1人である、井上俊之から紹介を始めるのね」
亀「いろいろな意見があるじゃろうが、わしは日本の優れたアニメーターの中でも井上俊之と沖浦啓之がTOP2だと思うの。西と東の横綱じゃな。どちらも大阪出身じゃから西と西の横綱じゃが……そんなバカ話は置いておくとして、この作品を支える重要なシーンを担当しておると聞いておる」
カエル「終盤の走るシーンを担当したらしいね。よくこのブログでも言及するけれど、走るシーンってさりげないようで重心の変化や、滑らかに走らせるのが難しいから腕のあるアニメーターが担当することが多いよね。
それこそ『君の名は。』でも終盤の走るシーンは沖浦啓之が担当しているし」
亀「井上作画の代表というと、やはりわかりやすいのは『AKIRA』のバイクレースのシーンや『魔女の宅急便』のトンボとキキの自転車のシーンじゃの。
それから『千年女優』の序盤から中盤に差し掛かる箇所で、列車を追うという重要なカットがあるのじゃが、そこを担当したことでも有名じゃ。今作でも大変なシーンを中心にお願いしたと監督が発言しておるの」
カエル「いろいろな人がパーフェクトなアニメーターと語るし、その映画における1番印象に残るシーンを調べてみたら大体井上作画だった! なんてこともあるよ。上手すぎることが個性、という、よく分からない次元にいる人でもあるね」
磯光雄
カエル「磯光雄といえば、やっぱりなんと言っても『電脳コイル』の監督として有名だよね!」
亀「本作も電脳コイルを連想させるカットが実に多く存在していたの。それ自体は偶然かもしれんが、この磯光雄が参加しているということもあるのかもしれん。
監督も参加すると聞いた時は喜びよりも驚きが勝ったと語っておる。
特徴としては……やはり爆発シーンなどが印象的かの。旧エヴァの劇場版にてアスカが戦う場面であったり、『ガンダム0080~ポケットの中の戦争~』の冒頭の戦闘シーンを代表作にあげる人も多いの」
カエル「この人もなんでも描けてしまうパーフェクトアニメーターという話を聞いたことがあるなぁ」
黄瀬和哉
カエル「今回は演出、総作画監督も務める黄瀬和哉だね。君の名は。でも作画監督の1人としてクレジットされていたね」
亀「I,Gの誇る三大神の1人じゃの。I,Gの取締役の1人でもあるから、経営者でもあるの」
カエル「最近だと『攻殻機動隊ARISE』の総監督も務めていたよね。ちなみに『ARISE』の監督は、ひるね姫でもエフェクト作画監督を務めている竹内敦志も務めているから、この後に紹介する西尾鉄也と絡めてもやっぱりI.G色が強い作品だよねぇ。
あとは……『イノセンス』の冒頭の娼婦人形とのバトルシーンが印象的かな」
亀「今回は監督が『全編デジタル化する』ということを公言しておったが、その煽りを食ったようじゃの。パンフレットを買って読んでみたが、その内容がデジタルやタブレットでの作画に対する文句ばかりで非常に面白かったわい」
カエル「やっぱり使い慣れた紙の方がやりやすいとかもあるんだろうね。キーボードが変わると文字入力がやりにくい、とかっていうのも確かにあるし」
西尾鉄也
カエル「こちらも I,G系を語る時に欠かせない、西尾鉄也だね。今作ではEDの作画を担当していて、監督も1発OKだったと称賛していたよ」
亀「やはり『人狼』のキャラクターデザイン、作画監督としての活躍や『スカイクロラ』などが印象的かの。
人狼に関して言えば上記の面々がほぼ全員かかわっており、日本のアニメーターが全力を挙げたと言われるほどの高クオリティ作品じゃ。じゃが、あまりにもクオリティが高すぎるため、プロにしかわからないような技巧や構図をたくさん入れてしまったために、わしらのような素人は却って普通に見てしまうという、まさしく職人気質が詰まった作品となっておるの」
カエル「この人ってよく押井守の本にも挿絵を描いているけれど、意外? と自画像が可愛らしい少年なんだよね。
そこいら辺も面白くて、個人的には好きだなぁ」
亀「共作のこちらの漫画もわしは結構好きじゃ。明治維新について簡単にまとまっておるから、勉強として読んでみるのもありじゃと思うぞ」
安藤雅司
カエル「安藤雅司はなんといっても『君の名は。』の作画監督として一気に脚光を浴びた印象があるね! もちろん、その前から『もののけ姫』の作画監督を務めたり、凄腕として名前は知れ渡っていたけれどさ!」
亀「何がすごいというと、『千と千尋の神隠し』『君の名は。』『もののけ姫』と日本歴代邦画興行収入のTOP4のうち、3作を作画監督しておるからの。もしかしたら宮崎駿や新海誠に注目するよりも、安藤雅司の動向に注目した方が売り上げの予測ができるのではないか? というほどじゃな」
カエル「それは馬鹿話として置いておくとしても……これだけの高クオリティ作品に仕上げるために妥協をしないで作り上げる、素晴らしいアニメーターという証明でもあるよね。売り上げが全てではないけれどさ」
亀「他にも『東京ゴットファーザーズ』や『パプリカ』などの高い評価を受けている作品の作画監督じゃからな。その誠実で実直な仕事ぶりが伝わってくるというものじゃろう。
本作では原画を担当しておるが、やはりこれだけのスーパーアニメーターが共演しているというだけでも面白いの」
エロール・セドリック
カエル「フランスのアニメーターが日本の作品の、しかもこれだけ大規模な劇場公開作品の作画監督を務めたっていうのはあまり聞かないよね?」
亀「もしかしたら、初のことかもしれんの。
しかし、やはり海外のアニメーターも素晴らしい。セドリックはここ最近話題になった『ドリフターズ』のOPを1人で手がけるなどをしておってな、若干海外テイストを感じさせながらも、しっかりと動かして独特の面白さがある作画をするの」
カエル「外国人アニメーターが日本で活躍すると、さらに面白い作品が一気に増えるかもしれないね」
今作は光などの演出も魅力の1つ
その他のスタッフ
カエル「あんまり語ってもあれなのでここからざっくりと紹介すると、総作画監督の佐々木敦子は今度続編が映画で公開されることになった『交響詩篇エウレカセブン』や、神山作品つながりでいうと『東のエデン』の作画監督だね。
あとは音楽の下村陽子は主にゲーム音楽が有名だけど『キングダムハーツ』や『スーパーマリオRPG』などの高い評価を受けるゲーム音楽を担当した人だし!」
亀「それから今作に登場するハーツというロボットをデザインしたコヤマシゲトは『ベイマックス』のコンセプトデザインもしておる。
そう考えるとこの映画は間違いなくオールスタースタッフであると言えるの」
カエル「超豪華クリエイター陣ばかりだよね! しかも、それを率いるのが神山健治監督なわけだから……主が期待を寄せるのもわかるよ!」
どことなくベイマックスの要素も感じさせるハーツ
あの作品に寄せてきた?
カエル「ここでいうあの作品って、当然のように『君の名は。』だよね」
亀「そうじゃな。
もちろん、これだけの豪華クリエイター陣というのは制作当初からある程度は決めておることかもしれんから、君の名はの大ヒットを受けて考え出されたものとは違う。じゃが、その予告編の作り方といい、それから先に小説版を発売するなどという手法は似ていると言っていいのではないかの?」
カエル「それでいうと『夢と現実』という2つの世界をピックアップした予告もそうだし、結構広告も打ったりして、すごく盛り上げようとしているのが伝わってくるよね」
亀「2016年は紛れもなく日本アニメ界の大躍進の年であったが、それに続けとばかりに力を入れてきておる。
特に今年に入ってからも様々なアニメ映画が公開されておるが、キャラクター物やテレビシリーズで人気が出た作品ではない、オリジナルのアニメ映画でここまで注目を集める映画は他になかったからの。
その意味でも本作にかける期待は大きい」
カエル「じゃあ、そんな本作の感想を書いていくよ!」
以下ネタバレあり
3 ……どうしてこうなった?
カエル「うん……まあ、この物言いでわかると思うけれど、決して絶賛できる作品ではないよね……」
亀「そうじゃの。悪い作品とまでは言わんが、どうにもチグハグな印象を受けてしまった。
まず、夢の世界と現実の世界が交互に入り混じるわけじゃが、これが意味がわかりづらい」
カエル「本当にねぇ……パンフレットを見たらさ、最後までのあらすじが書かれているんだよね。もちろん、パンフって映画を鑑賞した人がより楽しめるように作るものだから、ネタバレがあるのもわかるけれど……ここまで直接的に物語の説明をする作品もそうそうないよな、って思って。
多分パンフレットの制作した人も『これは物語の説明を入れないとダメだ!』って思ったんだろうね」
亀「しかも、何が悪いって決して意地悪な構造であったり、説明不足というわけでもない。会話による説明をしっかりと描いてあり、状況説明もしてくれているにも関わらす、わかりづらいというの……
何というか……救いようがないというかの」
カエル「もっと会話をたくさん入れたりしたらわかりやすくなったのかな?」
亀「いや、そういう話ではなくて……きちんとお話自体も筋が通っておるし、決してわかりにくい話ではないんじゃが、それが却ってこの映画をわかりづらくしておるのかもしれんの」
釘宮理恵の演技も可愛かったマスコットジョイ
夢と現実を描いた欠点
カエル「何がダメだったのかな?」
亀「結局は『2つの世界』を描いてしまったことにあると思う。
まずの、夢の世界と現実の世界があるわけじゃが……この2つの世界がどのような関係にあるのか、初見では理解しづらい。もちろん、見ていくうちに理解はできるのじゃが、最初から開示される情報があまりにも少なすぎるわけじゃ」
カエル「すごく寓話的なお話からスタートするもんね」
亀「そもそも、このお話の大目標が何なのかがわかりづらい。
鬼を倒すことなのか、渡辺を倒すことなのか、王(お爺ちゃん)に会いに行くことなのか、モモタローを救出することなのか……その全てが1つに繋がるようにはなっておるのじゃが、はっきりとした大目標が見えてこないのじゃよ。
これも結局はココネが『巻き込まれ型主人公』であることに由来しておる。自発的に何かをしたいわけではなくて、最終的になんだかんだで動くということが多いから、観客がお話にノッテいけないわけじゃな」
カエル「結構ご都合主義みたいな描写も多かった印象だしね」
亀「最初から物語に謎が多すぎる上に、その謎がどのような意味を持つのかわからん。
夢の世界と現実の世界
タブレットの謎
連行されていった父親
謎の男渡辺
鬼の存在
ざっと考えただけでもこれだけの謎が提示されるわけじゃろう? そしてそれをココネと答えを探しに行くわけじゃが……その流れにあまりついていけん。
あとは単純にどの層をターゲットにしておるのかわかりづらかったの。子供向けにしては難しいし、大人向けにしては子供むけすぎるギミックに溢れておったように思う」
モモタローという名前などに岡山要素を感じる
2つの世界の『独特な』設定
カエル「でもさ、君の名は。とかは2つの世界を描きながらもここまではわかりづらくなかったわけじゃない? それと何が違うの?」
亀「あまりにも世界観が違いすぎるわけじゃよ。
夢の世界は王道ファンタジー、現実の世界は現代のようでありながら、実は科学技術は現代の日本を遥かに凌駕しておる。ということは、本作はSFでもあるわけじゃ。
そうなると観客は『ファンタジーの世界』と『SFの世界』の2つを頭に入れなければいけなくなる。そして全くの同一人物のようで、実は違うキャラクターを整理して頭に入れて、さらに専門用語や世界観を理解して……とやらなければいけない作業があまりにも多い」
カエル「ということは……詰め込みすぎってこと?」
亀「簡単に言えばそうじゃの。
極端なことを言えばこの映画は約120分の中に2本の映画の設定が入っておるようなものじゃ。もちろん、その2本は繋がるぞ? 繋がるが、その設定をたくさん開示されて『はい、理解してね、説明したよ』と言われても物語は動き続けるわけじゃ。
しかも、物語の設定だけではなくて映像にも多大な情報量が詰め込まれておるわけで……明らかに情報量の過多じゃ。その上にテーマもあって、伝えたいメッセージもあって……というと、どうしようもないの」
4 過去の神山作品と比較して
カエル「神山作品って結構情報量が多いという印象があるけれど、本作もやっぱりそうなのかな?」
亀「そうじゃな。例えば絶賛しておるが『攻殻機動隊』のシリーズも決して1度見ただけでは簡単に理解できないような情報量になっておる。もちろん、これも全てが繋がるのじゃが……寓話のような例え話なども多々あるからの。
それが爆発してしまったのが『東のエデン』であると言える」
カエル「簡単にあらすじをいうと、主人公はワシントンで裸になって寝ていたところをヒロインに起こされて2人は出会う。なぜそのような状態になったのか、記憶は一切なくなっていて何も覚えていない。そして手元には100億円の残高が入った携帯電話があって、それで日本の閉塞感を救えと言われる……という、設定だけ聞くとすごく面白そうな作品だった」
亀「じゃが、劇場版の後編を見終わった後もどうにもすっきりとせんかった。もちろん、物語はある程度整合性もあったし、理屈もついておるのじゃが……なんともスッキリせん。
『お金をもらうのではなく、お金を払うことに喜びを感じる方が健全だと思う』という名言やメッセージは確かに素晴らしいのじゃが……どうにもノレなかったの」
カエル「……やっぱり設定に振り回された感があったよね?」
亀「本作を例えるならば……そうじゃな『整合性のあるミニマムなエヴェンゲリオン』とでもいうのかの?
壮大な設定はあるのじゃが、それに対して納得できるような結末を用意してはくれなんかった。しかしエヴァと違いある程度の整合性があるために、考察する楽しみもかなり減ってしまっておる。
さらにいうと作中に様々なオマージュもあるが、その点でも同じかもしれんの」
5 簡単に整理すると……
カエル「じゃあさ、このお話を簡単に整理すると……現実世界のココネは女子高生でモモタローの娘であるけれど、夢の世界のココネのようなエンシェンはお母さんだったということだよね?」
亀「そうじゃの。そして夢の世界のお話はモモタローが小さなココネに話したお母さんの物語であると」
カエル「で、魔法のタブレットは自動車の自動運転のオリジナルコードだった。おそらくお母さんはその実験中の事故で亡くなったけれど、そのトラブルの象徴が『オニ』として出てきたと」
亀「そうじゃの」
カエル「……ということはさ、このお話って結局一企業の自動運転のコードを取り合っていただけってことなんだよね?」
亀「そうじゃの。しかも会長=国王は私情から自動運転にこだわっていただけじゃな」
カエル「……えらい壮大な風呂敷を広げた割には、ミニマムなお話なんだよね?」
亀「しかも面白いのは敵である渡辺も悪いやつだと言われておきながら、やっておることは企業のトップを狙うための策謀じゃからの。
これで東京オリンピックを失敗させる! などであればまだ悪役らしいが、成功を望んでおるのが会長と同じじゃ。ただ、そのやり方が違うだけでの」
カエル「……結局会長のワガママに振り回された渡辺がクーデターを計画し、警察も巻き込んでココネとタブレット(自動運転のオリジナルコード)をとりにきただけってことだよね?」
亀「そうじゃよ。この映画のメインストーリーだけを追うと、単なる一企業のお家騒動みたいなものじゃからな。それを夢の世界を出し、国王だなんだと言って、壮大にしただけじゃ」
アクションシーンのクオリティはさすが!
この映画のまとめ
カエル「えっと、じゃあまとめると……
夢の世界=ココネの母の自動運転開発話
タブレット=自動運転のオリジナルコード
ハーツ=父と母が完成させた自動運転の車
エンジンヘッド=自動運転車の試作品、暴走する問題あり
新型エンジンヘッド=渡辺が作り上げた新型の自動運転車、問題はあるが一応動く
SNSの仲間達=母の昔の部下? 自動運転開発の担当者と思われる
鬼=自動運転中に発生し、事故を起こす危険なバグ
会長の目的……自動運転車を開発し、それを世界の注目を集める東京オリンピックで披露して娘に対する贖罪としたい。
渡辺の目的……自動運転車計画を失敗させて会長を失脚させ、新型自動運転車を発表し会社を乗っ取る。(会社には傾いて欲しくないので東京オリンピックは成功してほしい)
ってところになるのかな?」
亀「大まかにはそうじゃろうな。夢の世界にいるときに移動していたのも、ハーツの自動運転に任せていたから眠っている最中に大阪に移動していただけじゃろう」
カエル「……うん、理屈はわかるけれどさ……それで? って話に思えてくるんだよおね」
亀「それが全てじゃろ」
カエル「なんか、こう深いメッセージとかないの!?」
亀「じゃから、親子3代の継承する思いを自動運転車を象徴として託したわけじゃな。その親子の継承、受け継がれる想いこそがテーマなのじゃろう」
カエル「えっと……いつもみたいに『この映画の真のテーマはこれだ!』とかいう、批評的な解釈ってないの!?」
亀「……ないから困っておるんじゃよ、わしも。
すごく意味深そうなのじゃが、考えても考えても答えはすべて作中で示されておる。さらに言えば、すごく壮大そうなのに実はミニマムな話でもあり……だからこそ戸惑いが大きい。
公開されてから2日間、他の映画も見ずに色々なインタビューを探ってみたが……どうやらそれがすべてなようじゃな」
6 珍説? バカ話的解釈
カエル「え〜!? そうは言いながらも何かあるんでしょ?」
亀「……まあ、主が残したメモがあるが……正直、バカ話すぎて聞くに値するかわからんぞ?」
カエル「いいよ! それを聞こうよ!」
亀「それでは読み上げるがの……
『本作の渡辺のキャラクターデザインを見た瞬間に連想したのはあの男の存在である』」
カエル「……あの男?」
亀「そう、そのあの男こそがこの男!」
亀「庵野秀明じゃ!」
敵の渡辺
カエル「あ〜……どことなく似ているよね」
主『その目線で見ると一心会長はどこなく宮崎駿に似ているようにも見える。つまり、この映画はワガママを突き通す宮崎駿に愛想を尽かし、その地位に立とうとする庵野秀明を妨害したお話なのである。
ポスト宮崎駿論争に対する、神山健治なりの1つの回答でもあるのだ』」
カエル「あ……これだけでバカ説だってわかるわ……」
主『ではモモタローとは誰かというと、それは神山健治そのものである。
そして本作における鬼とはポストジブリ、ポスト宮崎駿を探す世間やマスコミの象徴である。そんな手書き時代の幻影を今は追っても時代の変化に追いつけない、だからこそ未来のガジェットの象徴である自動運転というデジタル技術によって、手書き時代の終焉をメタファーとして含んでいる映画なのだ』
カエル「う〜ん……理屈は通っているのかな?」
主『だが庵野秀明を退けて自分にその地位のお鉢が回ってきても、モモタローは拒否をしてしまう。つまり、自分は宮崎駿や……もしかしたら師匠である押井守のようになるつもりはないという意思表示なのかもしれない。
このまま歴史に残る名声や大きな賞は得られないかもしれないが、そのような人たちの跡を継ぐようなことはしない、という意思表示である。だからこそ、本作はガンダムなどの過去の様々な名作を連想させるモチーフがたくさん出てきた。
そのような過去の作品の模倣からの脱却を図り、新しい技術を使いながら新しい作品を作りげて欲しいという願いがこもっておるのではないか?』
注! バカ話として処理してね!
ココネが象徴するもの
カエル「……一応最後まで聞こうか」
主『この映画における様々なモチーフはこのように解釈することもできる。
日本屈指の自動車メーカー=スタジオジブリ
自動車=アニメ
鬼= SNSや世間の声、売り上げなど
自動運転=デジタル作画などの新しい技術
志島会長=宮崎駿などの偉大な監督たち
渡辺=庵野秀明などの宮崎たちの次の世代の手書き職人
モモタロー=神山健治』
カエル「……これって『魔法=アニメの作画技術』と看破したリトルウィッチアカデミアに影響されすぎていない?」
主『それではモモタローが神山健治だとするならば、ココネはいったい何か? それはこれから社会に出てくる、アニメ界に飛び込んでくるアニメーターたちである。
宮崎駿を見て育ち、その引退を一応見届けた今のアニメ界において、若手の師匠となる存在はモモタローのように歴史に名を残すまではいけないかもしれない。
だが、その背中を見て確かに受け継ぐものがあったはずなのだ。
ココネがこれから先、志島や母の跡を継ぐかはわからない。もしかしたらモモタローの跡を継ぐかもしれないし、全く違う道に進むかもしれない。だが、そこには確かにモモタローや母の影響があるはずなのである』
カエル「……まあ、一応テーマとはくっつくけれどさ」
主『本作の最大の特徴はすべてデジタルにて作画をしたという点である。紙を使わずに、黄瀬和哉に文句を言われようともベテランもみんなタブレットを使い作画をした。(ED担当の西尾鉄也を除く)
その意味を考えると、この論理というのは手法と暗喩の一致として無視できないものになるのではないだろう』
亀「以上じゃ」
カエル「……2日間必死に考えた結果、辿り着いた結論がこれ?」
亀「だから今回逃げたのじゃろうな」
最後に
カエル「でもさ……駄作だ! って笑えるほどの先品でもないんだよね」
亀「そこがこの映画の評価をさらにわからなくしておるの。わかりづらいことは間違いないのじゃが……じゃが、ハチャメチャな出来でどうしようもないという作品でもない。
実は色々と読み取ることもできるようになっているようにも思うのじゃが、その手がかりが何もないからこそ、どのように受け止めればいいのかわからんのかもしれんの」
カエル「……でも、これは大ヒットはしなさそうだね」
亀「難しいじゃろうな。
面白いかと言われると微妙じゃし、作画技術は素晴らしいが興味がない人が見てもわかるほどの分かりやすい技術にはなっておらんからの」
カエル「君の名は。の時に『これだけのスーパーアニメーターを連れて来ればヒットも当然だよ』とか言った人にもぜひ鑑賞して、講評してほしいね。本作も決してアニメーターの豪華さは負けてないからさ」
亀「そんな嫌味も言いたくなってしまうの」
ひるね姫~知らないワタシの物語~ (1) (角川コミックス・エース)
- 作者: 一花ハナ,神山健治
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2017/04/10
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