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物語る亀

ネタバレありの物語批評

『ガンダム0080~ポケットの中の戦争~』感想と物語の構造分析、批評をやってみた

アニメ

カエルくん(以下カエル)

「……あの、クリスマスの記事がこれでいいの?」

 

ブログ主(以下主)

「……あ? クリスマスだからこの記事なんだろう?」

 

カエル「確かにバーニィを思い返す日でもあるけれど……クリスマス映画って他にもあるじゃない。それこそ『東京ゴッドファーザーズ』とかさ、戦争ものだったら『戦場のメリークリスマス』もあるわけだし……」

主「馬鹿野郎!! 

 確かにどちらも大名作だし、すごく面白いし、オススメする作品だよ! 

 だけど、クリスマスは『機動戦士ガンダム 0080 ポケットの中の戦争』を見るというのが、法律で決まっているんだよ! 無理なら MADでもいいからそれを見るんだよ! それをしらねぇのかよ!」

 

カエル「知らないよ! そんな法律なんかこの世のどこにもないよ!

主「なんだよ! だったら『物語る亀法』として成立させてやる! 絶対成立させてやるんだからな!」

カエル「うわ、なんかよくわからないけれど……表現規制ではないけれど、すっごい表現規制ぽい法案だわぁ……何、このオススメしすぎる逆表現規制……」

主「うるさい! これからこの作品の良さをこれでもかというほどに語ってやるから、覚悟しとけよ!

 そして今回はさすがに数十年前の作品だから、ガンガンネタバレして語っていくので、そこはご了承を!

 むしろあのラストを語らずして、何を語るというのか!!」

 

カエル「……クリスマスに1人というのもあるのか、テンション高すぎてついていけないわぁ……」

 

 

 


GUNDAM 0080 ポケットの中の戦争 MAD 【いつか空に届いて】

 

 

1 ガンダム初心者向けの簡単な説明

 

カエル「じゃあ、まずは0080の説明からしようか。まあ、この記事を読む人はさすがにガンダムを何も知らないという人は少ないと思うけれど……」

主「ガンダムの外伝的作品なんだけれど、この作品はOVAとして単体で成立しているから、ガンダムを見ていなくても大丈夫。

 もちろん、初代の1stガンダムを見ておいたほうがいいのはその通りだけど、この作品単体でもある程度楽しめると思うよ」

 

カエル「じゃあ、基本的な説明からすると……どこまで知っているのが大事かな?」

主「単純に宇宙戦争があって、連邦とジオンが戦っている。そしてガンダムという超高性能のロボットがある……実際はロボットというと違うんだけど、初見さんはロボット認識でいいよ。

 それが小さなコロニー……つまり宇宙ステーションみたいな人間の居住区で少し戦争を行うよ、という作品なわけだ。

 以上、これだけ覚えておいて」

カエル「え? それだけいいの?」

 

主「いいよ、それで。

 もっともっと知ってほしい情報もあるけれど、それを言いすぎると大変になるから、戦争中ということとすごいロボットがある、ということでいい。

 大事なのは『連邦もジオンも正義と悪ではない』ということだから」

 

 

 

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ガンダム作品での立ち位置

 

カエル「外伝作品であることもあるけれど、少し変な立ち位置になっているよね。戦争ものだけど……もちろんドンパチもあるけれど、ガンダムって多数対多数なはずなのに、この作品は基本的に小規模なんだよね

主「あとはファン目線でいうと『一般人が主人公』というのも不思議だよね。普通のガンダムってニュータイプとか、特殊な訓練を受けている『選ばれし戦士』が主人公であることが多いわけだ。もちろん、全てではないけれど。

 しかもこの映画って主人公がアルという少年なわけだよ。だからガンダムとか、ザクなどのモビルスーツ(ロボット)に乗らない。

 これって凄いことだよね!

 主人公が乗らないロボットモノって中々ないよ!

 

カエル「普通は主人公が活躍してナンボだもんね。それでおもちゃとかの人気も変わるし」

主「だけど、この作品はそんなことをしていない。だから非常に特徴的な個性を持っている。

 さらにいうと……ガンダムである必要性がないというのもわかるんだよ。自分も語ってように、ガンダムの本当に基本的な知識さえ分かっていれば、それでいいから。

 個人的評価としては、戦争映画というジャンルにおいてこの作品は稀有なものに仕上がっていると思う。

 すべての戦争作品の中で、実写も含めてTOPかもしれない。まあ、にわかなのは認めるけれどさ」

 

カエル「それだけ言わせちゃうほど好きなんだね」

 

 

 

 

2 この作品をオススメする理由

 

カエル「じゃあ、主がこの作品をそこまでオススメする理由って何?」

主「まずは6話と短いということ。すべて見ても2時間ぐらいという短さなんだよね。

 例えばガンダムとかは劇場版でも3作あるし、結構長い作品になっているわけだけど、もちろんそれが壮大なテーマであったり、スペースオペラとして素晴らしい作品になっているのも事実だけど……

 本作はこのミニマムなサイズで表現し、それが2時間でまとめられているという点においても素晴らしいということができる

 

カエル「なるほどね。ガンダムという世界観において、この時間以内で収めることができた、それだけで大絶賛ということだね」

主「あとはやっぱり構成のうまさ。

 基本的にこのブログにおいて……というか、自分の価値基準において、戦争ものは『正義VS悪』という図式になると途端に冷めるんだよね。戦争において正義も悪もないから。

 ガンダムの画期的なところって、そういう主人公が正義とか、敵が悪とかっていう図式を大きく乗り越えたところにあると思っているわけ。それを一番ミニマムでありながらも、中立的視点に立った作品なのが本作なわけだ」

 

カエル「確かにね。基本的にはアルの視点で物語は語られるけれど、じゃあどっちが正義なのかというと、それは答えなんてないし……」

主「そこが本当に素晴らしい作品なんだよね」

 

モビルスーツのかっこよさ

 

カエル「これはあるよね。戦闘描写は少ないけれど、その戦闘は結構しっかりとしているし」

主「自分はガンダムに限らずロボットの良さっていまいちよくわからないんだけどさ、機械類にほとんど興味がないし、車も電車も飛行機も同じに見えるし。

 だけど、はっきりとわかるのは『ケンプファー』はカッコイイんだよ!

 

MG 1/100 MS-18E ケンプファー (機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争)

 

 

カエル「にわかに聞く『モビルスーツで何が好き?』って聞かれてケンプファーって答えるとにわか扱いされるモビルスーツランキング1位のケンプファーさんだ!」

主「いや、逆に言うとそんなにわかでもわかるような格好良さに溢れているモビルスーツなんだよ!

 もちろんケンプファー以外にも、今作のガンダムである『NT-1アレックス』もかっこいいし『ジム・スナイパーII』『ハイゴッグ』もファンが多い機体だよね。

 戦争ものとしてもいい味を出しているわけだ」

 

カエル「でも、これがまたうまい味を出しているよね」

主「そう! 単純にカッコイイというのもあるけれど……だからこそ最後の戦いにおいてバーニィが乗り込む機体が普通の『ザクII改』というのが素晴らしいわけだ!

 ここが対比構造になっているんだよね。ワンオフ機(特別な機体)と量産機の戦いという絶望感もあって、ラストの……バーニィVSクリスという戦いにいい味を出している!」

 

 

 

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3 作品の基本的な構造

 

カエル「じゃあ本作の批評に入っていくけれど……」

 

主「まず、基本的な構図としてあるのはクリス=連邦の兵士バーニィ=ジオン兵、という対立構造にある。

 ここは誰が見ても異論がない部分でしょ?」

カエル「まあ、そりゃあね」

主「さらにいうと、この2人って他にも色々な対立構造になっているわけだ。一番わかりやすいところでいうと『女性と男性』の対比だよね。これは説明するまでもないと思う。

 他にも特徴的なのは、アルにとってみると『古くから知る人と新顔』という対比もある。

 そして1番大切なのは……『正直者と嘘つき』と対比なんだよね」

 

カエル「あー……確かにそれはあるかもね」

主「バーニィはすぐに意地を張るし、嘘をついて誤魔化してしまう部分がある。だから嘘つきの象徴でもあるわけ。この作品において『嘘』ってすごく重要な要素でもあるしね。

 一方でクリスは『正直者』の象徴なわけ。確かにテストパイロットではあるけれど、アルには何も嘘を言っていないし、いつも正論で生きている存在。

 この2人の姿を見ることによって、アルは成長をしていくわけだ」

 

カエル「最後はその『正直者VS嘘つき』の戦いでもあるわけだね……」

 

 

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対比と共通するもの

 

主「だけど、ただの対比構造の上にあるだけではないんだよ。この2人にはすごく大きな、共通する思いもある」

カエル「えっと……それは何?」

主「例えばお互いに実戦経験はほぼないこと。だけどその説明をするときに、バーニィは『あと1機撃墜でエースになれる』とか嘘を言ってしまうというのも、根底にある見栄がるいい描写だよね。しかも伏線になっているしさ。

 それから2人とも命に関わる大きな失敗……というか、ミスとも言えないけれど……辛い思いをするわけじゃない? 

 その失敗するという事実自体は一緒なんだけど……大切なのはバーニィは嘘で失敗し、クリスは正論で失敗するというところ。まあ、避けようがなかったんだけどね」

 

カエル「あの刑事さんの名台詞の場面だね。

『死んでも仕方のない命なんて1つもないんだよ』っていう」

主「ただの名もない刑事だけど、すごくいい味を出しているんだよなぁ……この『民間人にとっての戦争』というのも、ガンダムにおいておざなりになりやすいポイントだよね」

 

カエル「そしてバーニィは『嘘が下手だな』の場面だね」

主「そう。ここが同じような結果に……つまり『他者の死』という結果を招くんだけど、その原因となるものが違うというのが、この作品のうまさだよねぇ。

 そしてこのことが頭にあり、クリスが最終決戦地で街ではなく、森を選んだということ……もちろんバーニィが逃げたこともあるけれど『引き返せ』と言われながらも追いかけたということが、この経験からきているという伏線にもなっている。

 本当にうまいよね。1つの行動、1つの描写が後々にも意味を与えるわけだから

 

カエル「伏線がきっちりと効いているわけだ」

 

 

 

 

4 アルの役割

 

カエル「そしていよいよアルについて語るわけだ」

主「この作品において非常にうまいのは、何度言うようだけど『少年アルの目線』であるということ。

 どういうことかというと、元々アルって戦争大好きな少年なんだよ

 

カエル「こういうとすごく語弊があるように聞こえるけれど、モビルスーツが大好きで、ロボットが大好きで、銃とかにも興味がある少年なんだよね。

 その意味ではそこいら辺にいる……エアガンは今は禁止だから……銀玉鉄砲とか傘でチャンバラごっこをしている子供たちと全く同じ存在だね」

 

主「そしてそれは『観客』と同じなわけだよ。

 この作品を見る人は基本的にガンダムのファンなわけだ。ガンダムのファンって……決めつけるようで悪いけれど、やっぱり『モビルスーツ』とか『戦争』が好きな人が多いと思う。もちろん、キャラクターが好き、声優が好きとかもあると思うけれど、それだけじゃなくて……やっぱりガンダムという『戦争の物語』が大好きな人が多い」

カエル「もちろん、現実の戦争を支持している人なんてほとんどいないよ? だけどさ……『物語としての戦争』はやっぱり好きなんだよね

 

主「それは悪いことではない。現実で人が死んでいくところなんて見たくもないけれど、映画や漫画においてその場面で涙を流すというのは多いから。

 そういうことが非常に重要なストレス解消になっていく。

 だからアルも『現実としての戦争』ではなくて、本などに描かれている『物語としての戦争』が好きってだけなんだよ」

カエル「そしてそれが『アル=視聴者』という構図に繋がっていく、と」

 

 

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アルの成長がもたらすもの

 

カエル「そうだよねぇ……だから僕たちはこの作品を見てラストで涙をするわけで」

主「バーニィの行動の意味をクリスは知らないし、そもそも相手がバーニィということも知らない。バーニィも相手がクリスだということを知らない。

 この作品において戦争の意味や意義、その全てを知っているのはアルだけなんだよ。

 そして当然のようにメタ的な意味になるけれど、視聴者も知っている。

 そのテープはアルのポケットの中に隠されるわけだ。だから『ポケットの中の戦争』なわけ。でもそのポケットは、観客の心の中でもあるんだ」

 

カエル「なるほどねぇ……」

主「この作品の非常にうまい部分は対比効果の先に、それを眺める傍観者の図を採用したこと。そしてそれを一介の少年にしたことで、我々に感情移入をしやすくして、戦争の意義とか、意味とか、虚しさとかを教えてくれるところなんだよ。

 これって簡単なようだけど……ガンダムにおいてこれを行ったという意義が非常に大きい。単なるドンパチで終わらせなかったんだから」

 

 

 

 

5 バーニィの思い

 

カエル「ここは結構語られていることかもしれないけれど……ラストのビデオメッセージは触れないわけにはいかないもんね」

主「結局のところ、バーニィの嘘の合図は何なのか? っていうことだよね。

 バーニィはさ、嘘をつくとき目を逸らす癖がある。だから『自首しようかと思ったけれど』の一連のところは目を逸らすけれど……それは嘘というよりも、真実を語っていないわけだよね。

 勇ましいことを言っているようだけど、やっぱり怖いんだよ。だけど、アルにはそんな素振りを一切見せないわけだ」

 

カエル「ここは本当にバーニィの成長を感じさせるよね……」

主「それまでのバーニィの嘘は見栄がほとんどだったわけだ。だけど『嘘が下手だな』のシーンぐらいから、その嘘の意味が変わってきた。他の人を気遣うような嘘になるんだよね。

 ここが本当に感慨深いよねぇ」

 

 

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対比構造の果てに……

 

カエル「そしてその対比構造の果てにあるのが、あのラストメッセージなわけだね……」

主「この作品でバーニィの最後のセリフが『クリスによろしくな』であり、さらにクリスの最後のセリフが『バーニィによろしくね』なんだよ。だから、この2人の間には軋轢なんて一切ない。

 それどころか……クリスはわからないけれど、好意すらあったわけだ。

 だけど、そんな2人が戦って、そして一方が倒されてし死んでしまった……そのことを知っているのは、何度も重ねるけれどアルだけなんだよ」

 

カエル「だからこそあのラストが余計に涙を誘うわけだよねぇ」

主「少年期の成長において、初恋のお姉さんと信頼できる兄貴分っていうのは物語における王道なわけだ。アルにとってのクリスがどういう存在かは微妙なところでもあるけれど……

 信頼できる兄貴分の最期によって、一気に成長する物語っていっぱいある。それこそ『天元突破グレンラガン』も同じような構造じゃない?

 でも、ここでの成長っていうのがすごく少年期にとって辛いものになってしまうということ、そして親友のクラスメイトが何も理解できずに『戦争はすぐに始まるさ』という言葉……

 この重みがすごいよね」

 

カエル「さらに言えば、その言葉はZ以降を思えば当たるわけだしねぇ……」

主「この作品が突きつけた……ガンダムの業とでもいうものは本当に深いし、大切なものだと思う。

 戦争ものとしても白眉の作品というのはそこだよね。我々が『架空の戦争を楽しむ』という行為そのものに言及したとも言えるわけだからさ……」

 

 

 

 

最後に

 

カエル「クリスマスって結構戦争ものも多いよね」

主「やっぱりハッピーな日に悲惨な現実を描くことによる効果はあるだろうな。クリスマスソングも名曲は失恋ソングが多いの法則と同じだし」

カエル「そういう時期も良かったのかもね。あと、日本では雪が降るから、それが余計に物悲しくなるというか……」

主「そういう季節的なものもあるだろうなぁ……」

 

カエル「……ちなみに、主はクリスマスにブログを更新していていいの?」

主「……あ? どういう意味だ?」

カエル「いや、別に恋人がどうこうじゃなくてさ、家族と過ごしたり、友達とクリパしてもいいわけじゃない?

 なんでひとりでカチカチとブログを更新しているのかなって……」

 

主「ウルセェ! すべての人間が聖夜を祝うと思うなよ! そしてこちとらキリスト教徒でもなんでもねぇんだ!」

カエル「うわぁ……コテコテの誤魔化し方だなぁ」

主「そういうお前はどうなんだよ!」

カエル「え? これから兄弟たちとパーティだよ。

 ちなみに亀爺も孫や子供達とパーティだって。今日は絶対に来れないって言ってたし……あ、こんな時間だ! ボクも早くいかないと!

 じゃあね! 主!」

 

主「カエル達もクリスマスを送るのか……」

 

 

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