カエルくん(以下カエル)
「久々にシンゴジラの話題だね」
ブログ主(以下主)
「うちのメインコンテンツの1つだからねぇ。今年は洋画ばっかり注目を集めていて、邦画にヒット作があまり無い印象があるな」
カエル「いつものキャラクターアニメ映画を除けば、今年興行収入の良かった映画って洋画ばかりだからねぇ。昨年のシンゴジラだとか、そう言った作品クラスの熱狂度と興行収入を誇る作品は無いねぇ」
主「昨年がいかに異常だったのか痛感するよ……自分が傑作だ! と褒めた映画はことどごとくコケたorあまり注目を集めなかったし……」
カエル「こればっかりは個人の趣味趣向もあるけれど」
主「結局アニメ以外はそんなに邦画って流行らないんだねぇ。まあ、それもわかるけれどね。今年大規模公開邦画で『素晴らしい!』と絶賛する映画って……パッと連想するのは『帝一の国』くらいかなぁ? あれは面白くてメッセージ性もあったし、キャッチでーありながら深いといういい作品だったけれど……」
カエル「じゃあ、ここでシンゴジラの海外興行収入について考えていくよ」
主「誰もが語る邦画の問題点に切り込む話になるよ」
1 事の経緯
カエル「まずは、なぜこんなことを語ろうと思ったの?」
主「昨日ふとネットサーフィンをしていたら気になる記事を見つけて……『シンゴジラの感想』の記事だったけれど、まあ、結構な酷評だったのよ。それはいいよ。個人の感想であるし、賛否が分かれる作品だからさ、政治的思想性によっても評価が分かれるものになってしまったし。
でもさ、その中で気になったのが『日本でしか流行らなかったシンゴジラ』という項目で……その理由を分析しているんだけど『日本を両手を挙げて賞賛する右翼映画だからだ!』って言っていたのね?
まあ、その意見はスッゲェ言いたいこともあるけれど、それもいい。
じゃあさ、ここで疑問だけど……本当にシンゴジラは海外に受けなかったの? って話で」
カエル「あー……中々面倒くさい話に踏み込んじゃったんだね」
主「一時期雑誌の記事でもあったし、海外では盛り上がっているという人もいれば、全く盛り上がっていないとする人もいる。
じゃあ、その辺りについて考えてみようか、というのが今回の趣旨」
カエル「結構この手のデータって読み取り方でなんとでも言える部分もあるからねぇ」
興行収入91万円の衝撃
カエル「まず話題に上がるのがアサヒ芸能が記事にしたとされる『欧州の興行収入91万円!』の記事であって、この記事を根拠に海外では受けていないとする人も多い印象があるかな」
主「アサヒ芸能じゃんよ……という思いもあるけれど、これは確かに衝撃だった。え? 91万円!? というのは確かに数字としてインパクトがある。炎上商法で売れていくための煽りタイトルだとか、そういう勉強には丁度いい題材だよね。そりゃ拡散されるわ。
で、この数字の裏側を説明しようか」
カエル「91万円の裏側ってあるの?」
主「まずね、これは欧州とあるけれどスペインの興行収入なんだよね。
『いや、スペインでも興行収入91万円は……』と思う人もいるだろうけれど、公開規模は64館と比較的小規模、さらに公開していたのはたった3日間という中での興行収入だ」
カエル「3日!?」
主「そう、3日のみ。で、さらにカラクリを説明すると5作セットのカルト映画祭りみたいなツアーの1作だったんだよね。入場料も日本より圧倒的に安い上に通し券で買うとさらに1本あたりはお得になる計算なわけ。
ちなみにこのツアーの中には『ジェーン・ドウの解剖』もあって、日本でも公開されたから見たけれど、正統派ホラーでめっちゃくちゃ怖いの! ノリとしては青山シアターの『未公開映画を上映する』に近いものがあるかも。たぶん他の作品もそれなりにいい作品なんじゃないかな?」
カエル「海外の良作映画を紹介する、みたいなツアーだったのかもね」
主「そう考えるとこの数字ってある程度納得で……ツアーだし1日1回上映、さらに3日間しかないと考えるとなんとなく納得出来るよね。
ちなみに他の国ではオーストラリアが約900万円、ニュージランドが130万円、韓国が360万円、タイが320万円くらい売り上げている。計算が面倒くさいので1ドル100円計算です」
こちらのサイトを参考にしています
海外映画をどれだけ見るか?
カエル「う〜ん……これだけ見ると結構興行収入で苦戦している印象があるけれど……確かに大ゴケって印象もあるかな?」
主「でもさ、じゃあ、インド映画で過去最高収益を上げた映画が日本で公開されたけれど、それを知っている人はどれだけいるの? 邦題は『バーダバリ 伝説誕生』って映画を聞いたことがある人がどれだけいる?」
カエル「見た人自体がそんなにいないかもねぇ。アクション大作で無茶苦茶で力技なところもあるけれど、結構楽しめる作品ではあるよ。粗いけれどさ」
主「他にもイタリアで賞レースをとりまくっていた『皆はこう呼んだ 鋼鉄ジーグ』であったり、アカデミー賞にノミネートされた『メッセージ』もヴィルヌーヴ監督の過去作でありカナダで大絶賛、賞レースを取りまくった『静かなる叫び』が2008年公開なのに、今年になってようやく小規模公開で上映されている。
本国の評価と海外の評価(公開規模、売り上げ)が一致しないのはよくあることあんだよ。もちろん、上記の3作品とも見所もある、下手な映画を見るより楽しめる作品で、いい映画だよ」
カエル「案外こんなものなのかもねぇ。題材もゴジラという、カルトな怪獣映画だしさ……」
主「日本では比較的大規模上映された『ガーディアンズオブギャラクシー リミックス』や『ローガン』も大ヒットとまでは言い難い。たぶん10億円ちょっとくらいで落ち着くと思う。大正義ハリウッドの誇るマーベルの新作ですらそうなんだから、他の国の映画なんてご察しだよ。
その現象って多分万国共通なんじゃないかな?」
2 北米収入から考える
カエル「アメリカの興行収入でも伸び悩んだという話もあったけれど……」
主「ここは見方によるんだよなぁ。北米での興行収入は2016年にアメリカで公開された外国語映画の興行収入ランキングを見ると、約1億5000万円の売り上げだ。最終的にはもっと伸びているみたいだけどね。
これを多いと見るか、少ないと見るかはちょっと考えものかも」
カエル「公開館数が400とも500とも言われているから、決して少なくはないけれど……」
主「ただ、アメリカの場合本当に大規模上映ならば何千館も公開するからね。その中では少ないほうだし、公開期間も少なかったとされている。
で、大事なのは『じゃあこのランキングでは何位くらいなの?』という話だけど……全体で21位、邦画勢ではTOPの成績になっている」
カエル「う〜む……こりゃまた微妙な順位……」
主「インド映画が結構上位に食い込んでいる。1位が11億5千万、2位が5億くらいだから、そう考えると1位が大ヒットしたんだなぁってのがわかる。
ちなみにランキング中で日本公開されていて自分が見た映画だと……5位に『人魚姫』が入っているね。アジアを中心に大ヒットをしたけれど、日本では1月公開も小規模上映であまり話題にならなかった作品。映画好きラッパーが批評していたよ。
笑えるし面白い作品だったなぁ」
カエル「話をシンゴジラに戻して……これってどう受け取る?」
主「まあ、こんなものじゃないのか? っていうところ。先にも挙げたけれど『鋼鉄ジーグ』は日本にも縁があるけれど、じゃあ売れていますか? と言われるとね。イタリアでは『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』って約57億円売り上げているんだよ? だけど、そのジーグの母国ではそこまで話題になっていないことを考えても、まあ、こんなものじゃない? という思いはある」
カエル「ふぅ〜ん……じゃあ、大コケというのは少し違うんだ。もっと売れるかな? と思ったら、案外思ったほどでもないけれど、ということで」
主「邦画でトップだしねぇ。この数字なら悪くはないんじゃない?
目標値がすごく高かっただろうから、コケたと言いたくなるのもわかるけれど……」
邦画があまり受けてない
カエル「なんだ! じゃあコケたコケたというのは気にしないでいいんだ!」
主「……そうとも言っていられないけれどね」
カエル「え?」
主「上記のランキングを見てもわかるけれど、邦画ってあまり評価されていないのよ。世界的にはそこまでメジャーなジャンルではない。もちろん、世界的にはハリウッドが1強だということもあるけれど。
シンゴジラがコケたという人に言いたいのは、シンゴジラがコケたんじゃなくて、邦画が売れてないだけ。シンゴジラは健闘している。
海外興行収入ランキングを見ても、出てくるのはアニメばっかりで……いまだに黒澤明の名前が出てくる。もちろん、それだけ偉大な監督ということはできるけれど、黒澤明を超える実写監督が出ていないということでもあるんじゃないかな?」
カエル「そんな無茶なことを……」
主「他の国もそうだけで、元々映画って国内需用がすごく高くて海外ではあまり受けが良くないんだよ。好きな人は見るけれど、マニアばっかり見るというか。映画がそんなに好きじゃない人ってハリウッドか邦画の2択だと思うんだよね。わざわざデートでフランス映画を見に行かないでしょ?」
カエル「デートでフランス映画を見る人は映画が好きか、フランスが好きかのどちらかだろうね」
主「多くの一般的な映画好きは適当な話題作を見に行くと、やっぱり安心のハリウッド超大作、もしくはアニメか、若者向けの邦画(国内制作映画)になる。
これも万国共通のことなんじゃないかな?
さらに映画は映画館でかけられてナンボみたいなところもある。そうなるとたくさんの映画館に上映してもらわなければいけないけれど、海外は特に簡単ではないよね」
カエル「八方ふさがりなんだね……」
主「だけど『君の名は。』を見ても相変わらずアニメは順調なんだよ。過去最高収益を叩き出したし。
もちろん、日本アニメの世界的なブランドもあるけれど……自分に言わせてもらえば実写邦画に比べてアニメは相当努力している。自分がアニメが好きだというのもあるけれど、音響であったり、絵の作り方のこだわりが全然違う。
キツイことを言わせてもらえれば、実写邦画はヌルいんだよ。そのほとんどがアニメの快感に勝つことができない」
カエル「そこまではっきり言わなくても……趣味ややりたいことの違いもあるし……」
主「結局さ、役者の名前とか音楽家の名前とかばっかり気にしているからじゃないの?
海外で評価されている日本人役者もほとんどいないんだよ?
そんな内向きだから海外に見向きもされないんじゃない?
これから日本人はさらに減少していく中で、それでいいの? って言いたい。どんどん先細りする一方だよ。
黒澤明の例を出したけれど、かつては邦画が注目された時代もあったんだよ。だけどその熱さを持続させることができなかった。それが最大の問題点じゃないのかな?」
カエル「……それだけお金を使ってこだわった『たたら侍』があんなことになると、映画って博打だよなぁって思うけれどね」
主「金を使えないのもわかるし、いろいろなしがらみもある。保険を掛けたいのもあるけれど、今の大作邦画ってそんなに面白いとは思わない。時々いい作品もあるけれどさ……
でも小規模ならいい映画ってあるんだよ。昨年なら『ヒメアノ〜ル』とかさ。
そういう気概のもった作品を作らないと、より邦画のガラパコス化が進むだけだと思うけれどね」
最後に
カエル「さて、ではこれでおしまいになるけれど……」
主「つい先日放送されたクローズアップ現代を見て、アニメ業界の闇を描いていたけれど……アニメだって順風満帆なわけじゃない。闇がすごく多いんだよ。その中で頑張っている人がいて『クールジャパン』なんてものが生まれている。
その中で行なわれている工夫の1つが『BLAME』などのアニメ映画だけど、映画館で音響調整を直接音響監督が行うというものだ。それによってより迫力のある映画体験が味わえる。
そういう努力を行うことが国内のアニメ盛況を呼び、そして海外にそれが波及していると思うんだけどね」
カエル「アニメに比べて邦画は工夫が足りない! ってよく言っていることだよね……」
主「音響の良い映画館で公開されているのがアニメやハリウッド大作ばかりだよ。IMAXで見たいと思った邦画がどれだけある?
そういうところだと思うんだよ」
カエル「良い作品が流行らないのは悔しいもんね」
主「このままだと衰退していく可能性もあるからね。
この問題っていっぱい考えなければいけないことでしょう。あれだけ言われた『Jホラーブーム』もどこ行ったのよ? 結局ブームで定着しなかったし……もったいないよねぇ……」