物語る亀

ネタバレありの物語批評

映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』感想 エンツォ、君こそが鋼鉄ジーグだ!

カエルくん(以下カエル)

「ここでまさかの鋼鉄ジーグが海外で映画のモチーフになるとは……1年前に言われても『そんな馬鹿な話があるか!』っていうレベルじゃない?」

 

亀爺(以下亀)

「1年前にはすでにイタリアで完成して上映もされておるが、にわかには信じられなかったであろうな」

 

カエル「ジーグって日本だとそんなに人気がないよね?

 日本で人気のロボットアニメというと近年のものは除くとしても、やっぱり『マジンガーZ』とか『ガンダム』などになってくるわけで、あの年代のロボットアニメの中でも特別目だった作品ではないし……

 じゃあ永井豪作品としては? と言われても代表作とも言えないし……

亀「そうじゃの。永井豪作品と言えば『キューティーハニー』やら『ハレンチ学園』『デビルマン』などもある中で、ジーグが代表作と呼ばれることはない。スーパーロボット大戦の中でも何回かは出ているはずではあるが、しかし人気タイトルで目玉の作品、ということはない印象じゃの」

 

カエル「ビックリだよねぇ。日本のアニメが海外では大人気という例がたくさんあるけれどジーグほどに日本と海外(一部地域とはいえ)の評価が乖離している作品ってそんなにないかもしれない。

 海外人気も高い作品というと『アルプスの少女ハイジ』とか『ドラえもん』なども人気ではあると聞くけれど、これらは日本でも人気のある作品だしね」

亀「海外で何が流行るかは全くわからないという好例じゃろうな。

 それではそんなジーグをモチーフとした本作の感想記事を始めるとするかの」

 

 

 

 

 

映画チラシ『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』

 

1 ざっくりとした感想

 

カエル「じゃあ、まずは感想から入るけれど……タイトルから受ける印象とは実はちょっと違う作品だったかな? というのもあるんだよ。

 何ていうか……このタイトルだとジーグの実写版みたいな印象を持つ人も多いかもしれないけれど、実はそんなことはなくて。むしろ、ノリとしてはマーベルヒーロー系の方が近いかもしれない。もちろん、ハリウッドほどの派手なアクションやCGは使われていないけれどね」

亀「本作がジーグでないとできない作品か? と問われるとそうでもないからの。例えばジーグの代わりに『マジンガーZ』であったり『タイガーマスク』などであっても成立するお話じゃ。

 その意味ではジーグを前面に押し出したこのタイトルというのは、少しの誤解を生じさせる可能性もある。

 『ジーグ、関係ないじゃん』というの」

 

カエル「だけど、見終わってから最初の感想は『ジーグだよ! 君はもう、鋼鉄ジーグだよ!』というもので!」

亀「予告の段階などでは『鋼鉄ジーグ』という既存のアニメ作品ばかりが取り沙汰されることにより、そちらばかりが目に入ってしまう結果になっが……本作の最大の特徴はむしろそのようなキャッチーな部分ではなくて『ヒーローとは何か?』という根源的なものになっておる。

 そしてそれは多くのヒーロー映画とは一つ違うものになっておる」

カエル「結構展開的にも驚きの部分もあるんだよ。『え? 本当にその展開に!?』というハリウッドなら……あまりないとまでは言わないけれど、でも多くが選択しないような展開があって。

 それを経てのラストを見た後は『君は鋼鉄ジーグだ!』と叫びたくなる作品に仕上がっているね!

 

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アクションについて

 

カエル「そしてヒーロー映画に重要なアクションパートのお話だけど……」

亀「決して手放しに褒められる、ということではない。特に近年はこの分野はハリウッドが強く、CGをフル活用したとんでもない絵や力を持つ作品を次々と生み出しておるからの。

 そちらを期待していくと肩透かしに合うじゃろう」

カエル「主人公のエンツォは超人的な力をある理由により身につけるわけだけど、その理由もちょっとおざなりだったり……まあ、これはどのヒーロー映画でも似たようなものかもしれないけれどさ。

 その力も単純にパワーがすごい! というもので、ジーグのような磁力がどうのとか、後は電気パワーだ、糸を飛ばせるだ、というものではないんだよ。

 力がとんでもなく強いのと、ちょっとした能力があるだけ」

 

亀「もちろん、その能力も含めて普通の人間に比べればとんでもない超能力ではあるのじゃが、ヒーロー映画の区分で考えるとそれはどうじゃろう? 派手なものとは言い難い。

 特に戦闘シーンも迫力満点か? と問われるとそうでもないからの。

 派手な変身シーもないし、コスチュームを身にまとって戦うわけではない。もしかしたら、日曜日の朝にやっておるようなヒーロー特撮番組の方が派手で見た目的な面白さはあるかもしれないの」

カエル「でもさ、ヒーロー映画ってそういうことじゃないと思うんだよね。

 確かに視覚的に面白い映像というのは映画としてすごく重要だし、それが娯楽として成立するには大事なのはわかるんだけれど、でも本当に大事なのは『ヒーローとしての有り方』とか『なぜ彼がヒーローであり続けるのか?』ということだと思うんだよ。

 そういった精神性に関しては一歩も負けていない!」

亀「じゃからこの映画を見終わった後は『君こそがジーグだ!』という原作者の永井豪のメッセージと全く同じことを思うように出来ておるのかもしれんの」

 

 

以下作中に言及あり

 

 

 

 

2 ヒーローとは何か?

 

カエル「じゃあここからは致命的なネタバレはしない程度に作品について語っていくけれど、この映画のテーマって一言で表すと表題のような『ヒーローとは何か?』ということにたどり着くと思うんだよ。

 もちろん、これは多くのヒーロー映画が語ってきたことであるし、その結論もこの映画にしかできないことだ! というほどのことではないかもしれないけれど……」

 

亀「多くのヒーローというのは『自らが正義である』ということに疑いを抱いておらん。まあ、そうでない作品もあるが、基本は『正義の味方』であるヒーローを描いている作品が多いの。

 一方でこの映画の主人公、エンツォは街のチンピラでしかない。警察には追われるし、カモッラ(反社会的組織)の下っ端のようなことをして暮らしておる。もちろん犯罪に手を染めることは当たり前のような生活じゃ。そのまま生活しておっても、おそらく長いことは生きられないの」

カエル「そういう存在が超人的な力を手にするという、ダークヒーローの要素の方が強い作品だよね。

 その意味では今作は『バットマン』『仮面ライダー』に近い作品とも言えるかも。結構グロテスクな描写も多いし、PG12ということでエログロのどちらの視点からもドキリ! とする描写があるし

 

亀「そんな男が如何にして正義に目覚め、鋼鉄ジーグとして、司馬宙として生きることを決めるのか? というのがこの映画の主題じゃな。

 正義とは自ら名乗るものではないじゃろう? 他の人に『君は正しい! 君は正義だ!』と言われて、その存在は初めて正義のヒーローになるという物語じゃの

 

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エンツォとヒロインのアレッシア

アレッシオの性格などもすごく特徴的で違う意味でドキリとする

(C)2015 GOON FILMS S.R.L. Licensed by RAI Com S.p.A. – Rome, Italy. All rights Reserved.

 

永井豪の戦略

 

亀「そしてそれは永井豪の表現したもの、戦略とも見事に合致しておると思うのじゃよ

カエル「永井豪の戦略?」

亀「永井豪ももちろん現代における天才の一人であり、大レジェンドであるが、その先人にはやはり手塚治虫やちばてつやというレジェンドがおる。その2人などを相手にして、どのように戦うか? どうやって自らの存在感を示すか、ということを考えていた時に……さて、どうしたと思う?」

 

カエル「え? 永井豪作品の特徴といえば……お色気描写が多かったり、あとはバトル漫画が多い印象かな?」

亀「そうじゃの。永井豪は手塚治虫やちばてつやが『エログロはやらない』という信念を聞いて、では逆にエッチなもの、ちょっと王道とは外れたものを書いていこう! ということを意識したと語っておる。

 そのためにスタートしたハレンチ学園などは当時論争を巻き起こしたが、それだけの強い影響力を手にしたとも言えるわけじゃ。そして同時に『デビルマン』などに代表されるように、それまでの常識的とされていたストーリー展開を手塚治虫などとは違うやり方で抜け出し、ある意味では『悪と称される存在を描く』という手法を展開させていっておる」

 

カエル「その意味では本作がジーグである必要性は感じないけれど、悪党から正義の味方へ、ということを考えると永井豪作品の根本を違えずに表現しているってことなのかな?」

亀「わしはそう思うがの。

 現代の物語としてはそこまで珍しいものではないかもしれなんが、今から約50年前にこのような物語を描いていた、という事実はもっと評価されていいのかもしれん。

 そしてその精神性を持った作品がイタリアから生まれた、というのも中々に面白い現象と言えるかもしれんの

 

 

 

 

最後に

 

カエル「今作は脚本がすごくうまい! とか映像が豪華! ということはないけれど、でもヒーロー映画が好きな人だったり、こういったダークヒーローが大好き! という人は見ておいたほうがいい作品だと思う!

 多くの人に受けれ入れられる要素に溢れた作品だと思うよ!」

亀「ハリウッドのヒーロー映画にはあまりないレベルのエログロじゃしな。

 近年の邦画ではもっとえげつない作品も多くあるが、今作は『誰でも楽しめる映画』としてはギリギリのラインを攻めたと言えるかもしれんの」

 

カエル「キャッチーだし、流行りそうなものだけどなぁ……続編があったら絶対見に行くけれど、制作は……さすがに厳しいかな?」

亀「日本での興行もそこまで伸びなさそうじゃしの。

 じゃが、続編が作られて日本で公開されるようならばわしは絶対に行こうと思うぞ!」

カエル「これを機に鋼鉄ジーグの知名度向上もあるかな?」

亀「……向上しても本家のジーグの新作が作られる、などということもないと思うがの」

 

 

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