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物語る亀

ネタバレありの物語批評

物語における完成度ってなんだろう? 取捨選択のできている作品とそうではない作品の評価の違いについて考えてみた

カエルくん(以下カエル)

「ねえねえ亀爺。このブログでさ、よく『完成度』って言葉が出てくるけれど、実際完成度ってなんだと思う?」

 

亀爺(以下亀)

「……まあ、このブログで完成度という言葉を語る際は、映画が良くてテンションが上がっておることも多いからの。一週間もして改めて冷静に考えると『言いすぎたかな?』と思う部分も多々あるの」

 

カエル「よくも悪くもだよねぇ……まあ、いい方にテンションが高かったら怒られにくいからいいかもしれないけれどさ」

亀「シンゴジラなど、テンションが高すぎておかしなことになっておったからの

カエル「そうだよねぇ……冷静に考えるとツッコミどころも多々あったけれど、それでもそんな欠点を上回るほどの長所に溢れかえっていて、物語を語る難しさを感じたよね」

亀「『うまい映画』『面白い映画』はまた違うし、さらに言えば『穴は多いが魅力も多い映画』『穴はないが魅力もない映画』というものもあるからの。これは映画だけではないが、完成度だけで評価することはできんの」

カエル「じゃあ、今回はその『完成度』について考えていこうか」

亀「それでは記事の始まりじゃ」

 

 

 

 

 1 完成度とは何か?

 

亀「さて、カエルよ。急な話になるが、お主は学校の成績はどんなもんじゃ?」

カエル「え? 急だね……別に良くも悪くもないってところかな? 得意教科は学年でも上位だけど、苦手教科は赤点ギリギリってところで……」

亀「それはもちろん、100点を狙ってのことじゃな?

カエル「……まあ、得意や苦手はあるけれど、基本的にはみんな100点満点を目指しているよね。

 でもなんで急にそんなことを聞くの?」

 

亀「カエルよ。この場合、テストの完成度を100点満点でいうと、一体何点が『完成度が高い』と言われる点数じゃと思う?

カエル「え? 普通に考えれば100点だよね。100点に近ければ近いほど、完成度は高いと思うけれど……」

亀「そうじゃな。多くの人はそう思うかもしれん。

 しかしわしの考え方ではそれは誤りなんじゃよ

カエル「というと?」

 

 

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狙う点数と獲得した点数

 

亀「ではまず……テストの時間は大体1教科50分とか、90分ぐらいは設けられておるじゃろ?」

カエル「そりゃあね。ある程度の時間はあるよ」

亀「そして試験範囲もあらかじめ提示されておるし、習ったことをそのまま活かせば……まあ学年で1人くらいは100点を獲得できるものがおるわけじゃな」

カエル「そうだね。でも、それがどうしたの?」

 

亀「ではカエルよ。試験の事件が20分しかなかったらどうする?

カエル「え? それは……もうその試験は諦めるか、できるところだけ頑張って、できないところは後回しにしていくね」

亀「その結果獲得する点数というのは必ず低くなるものじゃ。

 学校の試験と違って、現実というのは似たようなものなんじゃよ。試験も全て回答できるような時間を与えられておるとは限らない。出題範囲も予め提示されていない。さらに言えば、途中まで回答したのに問題文を変えられることもありうる。

 映画作りに限らず、物語を作るということ、社会に生きることにおいて、万全な体制で物事に挑めることというのは……実はそう多くないのかもしれん

 

カエル「映画でいうとテストの時間が納期で、あとは予算とか、原作者や役者との調整であったりとか、そういう色々なことが出てくるわけだね」

亀「そうじゃ。

 イーストウッドの名画に『インビクタス 負けざる者たち』という映画があるが、その中でこのような言葉がある。

 

『……完璧な状態で戦える機会などありません』
『そうか、スポーツも人生も同じだな』

 

これはラグビーW杯に向かう代表チームのキャプテンに対して、モーガン・フリーマン演じるネルソン・マンデラが語った言葉じゃが、まさしくその通りじゃ。

 わしらは完成した映画や物語を見て好き放題言っておるが、元々納期、人員、予算、その他諸々が潤沢とは限らん。それでも物を作らねばならないところに、大変な意味があるわけじゃな」

 

 

 

2 完成度とは?

 

カエル「じゃあ、完成度の高さって100点満点でいったら何点ぐらいなの?

亀「それは難しい問題じゃが……はっきり言えば、100点満点の物語というのはそうそうない。それこそ、諸事情が絡むからの。

 それでもあえて点数で語るならば、時には80点の作品であったり、60点の作品を完成度が高いと称する場合もあるの。

 場合によっては80点作品よりも、60点の作品の方が『完成度が高い』こともあるの」

 

カエル「……どういうこと?」

亀「つまりの……カエルよ、先ほどの試験の例でいうと、回答時間が20分しかない場合、一体何点を目指すかの?

カエル「そうだねぇ……60点を狙えば平均点ぐらいだろうし、少し間違えても赤点は免れそうかな?」

亀「つまり、そういうことじゃ。入試などにおける『賢い』勉強法というのは、無理に100点を狙うことではない。できる問題とできない問題をしっかりと見極めて、できるものから無理なく点数を獲得していくことが大事だからの。

 さらに言えば、資格の試験の場合は100点満点中60点なり、80点という数字を獲得すれば合格というものもある。そのような試験の場合、無理に100点を狙うと大変じゃから、合格点のプラス10点ほどを狙うというのも、考え方としてはありじゃの」

 

カエル「……なるほどね。100点を狙うばかりが能じゃないってことか」

亀「つまりじゃ。もうすでに条件を見て不可能と判断した場合においては、目標点を下げるというのも、非常に重要な判断じゃ。そこの見極めができるかできないというのも社会人に求められるスキルじゃろうな。

 特に納期がタイトで毎週の放送や発表を義務付けられる週刊漫画やテレビアニメ、連続ドラマなどは特にその判断がシビアになってくる。休みなど、ほぼないのじゃからな」

 

 

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100点を狙って60点と、60点を狙って60点の違い

 

カエル「でもさ……そうなると、必ずしも完成度の高さってその作品の評価と=ではないということになるよね?」

亀「そうじゃの。ここで問題になるのが、100点を狙って60点の作品と、60点を狙って60点の作品、さて、完成度が高いと称されるのはどちらじゃと思う?」

カエル「え〜? 人によるだろうけれど……やっぱり100点狙いかな?」

亀「わしはそうは思わん。100点を狙って60点の作品は、40点分の減点がある。その減点というのは目についてしまい、気になってしまう部分になるのじゃ。

 しかし、60点を狙って60点を取るというのは、そのマイナス部分が目につかん。そうなると、完成度の高い作品となると、わしは考えておる」

 

カエル「ふぅ〜ん……まあ、確かに毎回ベストを尽くすというのは、完璧に仕上げるというのと似ていて違うもんね」

亀「じゃからな、難しいのは……完成度は高いが、つまらない作品というのも世の中にはあるのじゃよ。教科書通りの作品というか、セオリーに逆らわない、王道の作品が。

 そのような作品は大外れはしないし、ある意味では賢い。完成度も高いしの……しかしの、新しいものを作ろうという面白さには欠ける作品が多いの」

カエル「目指しているものが違うしねぇ」

亀「逆に、100点狙いの作品は粗があるし、その粗のせいで作品全体の評価が少し落ちるかもしれん。しかしの……その届かなかった40点が見えてくれば、それはそれで面白いのじゃよ

 

カエル「やりたいことがわかればってことね」

亀「これは高橋源一郎という小説家が語っておることじゃが、70点狙いの65点よりも、90点狙いの55点の方が魅力的に感じるものらしいの。プロとしてデビューさせるならば、後者の方を推薦したい、とも語っておる。

 物語の上手い下手を、完成度を語るというのは難しいのじゃ。その見えてこなかったもの、表現できなかったものも評価してあげたいというのは、人情じゃろうな」

カエル「そこで叩き出した点数が全てという考え方もあるけれどね」

亀「まあ、それはそれで間違っておらんからの。60点同士なら目標が何点でも同じだ、というのは正論じゃな」

 

 

 

 

最後に

 

カエル「ちなみにさ……このブログの記事でいうと、100点を狙って60点の作品って、何があるの?」

亀「あくまでもわしの独断と偏見じゃが……『ハーモニー』や『ルドルフとイッパイアッテナ』などはそちらに近いかもしれん。ルドルフは点数をつけたら、もうすこし高くなるがの。

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 逆に目標点をきっちりと獲得するタイプの映画は最近だと『われらが背きし者』や『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』かの。この辺りは職人的なうまさも感じさせる一方で、教科書通りすぎる気もしたの。悪い作品ではないがの」

 

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カエル「ふ〜ん……じゃあ、完成度が低いというのは、志は高いという意味なのかもしれないね」

亀「かつてオタキングこと、岡田斗司夫がまどマギについて語っておる時にいっておったがの『アニメなんて儲からないものを、志がなくて作る人間なんていないよ!』と語っておったが基本的にクリエイターというのは……まともなクリエイターというのは、皆同じようなものじゃ。

 その中でどこまでを諦めて、どこまでを追い求めるか……それが如実に現れるのが完成度なのかもしれんの……」

 

カエル「どんな映画でも、どんな作品でも一つは必ずいいところがあるというのが、淀川長治の信条だもんね」

亀「まあ、それが全く感じられない作品もあるがの。しかし、なるべくなら、そういった『見えてこない志』も評価したいものじゃ

カエル「……まあ、それなら酷評記事を減らすべきだよねぇ」

亀「個人的にはそこまで酷評をしているつもりというのは、あまりないのじゃが……難しいものじゃの」

 

 

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