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物語る亀

ネタバレありの物語批評

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 4巻感想 タイトル、なげぇな……

漫画

 浅野いにおの新作であるデッドデッドデーモンズデデデデデストラクション(以下デデデデ)の4巻が発売されたのでその感想を。

 それにしてもタイトルが長いなぁ……

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 4 (ビッグコミックススペシャル)

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 4 (ビッグコミックススペシャル)

 

  

  私にとって浅野いにおとは最も『怖い』漫画家である。(この場合の怖いには恐怖感の他に、才能に畏れいるという意味も含まれる)

 その作風もそうだし、書かれている内容の深さというものがあまりにも人間の内面に迫りすぎているような気がしてくるのだ。特に前作、『おやすみプンプン』はあまりにも深い人間描写によって支えられていて、そのラストや話の展開などがあまりにも凄かった。

 私は小説でしかできない表現をしようとする運動を『純文学』と呼んでいるが、浅野いにおの場合は漫画でしかできないことをやっているので『純漫画』と言ってもいいのではないかと考えている。

 

 その浅野いにおの最新作は、宇宙人が東京に侵略してきたという設定のものだった。だが空に浮かぶばかりで何もしない宇宙人に対して右派の政権は徹底抗戦を主張し、宇宙人や宇宙船を次々と新兵器を持って落としていき、殺していく。

 この作品においてその戦っている相手の姿というものは見えず、主人公の女子高生、門出とオンタンなどはニュースによってのみ戦争状態を知っているような状況だった。これは今現在の戦争と似ており、その現地に行かない限りは我々一般市民は戦争というものをメディアで知る以外に知るすべはない。

 前回のラストにおいて、宇宙人のフォルムがはっきりと描かれたところで話は終わり、その姿はとても驚異的とは思えなかった。だがそれでも宇宙人である、もしかしたらスーパーテクノロジーを持ち、地球人を一瞬で壊滅させる武器を持つのかもしれないないと思いながら読んできたが……

 

monogatarukame.hatenablog.com

 

   

ここから4巻の内容

 冒頭でふたばという新しい少女が出てくる。彼女は田舎で暮らしていたのだが、大学進学を機に東京に出てきたいと思っていた。今や宇宙人と戦争状態にある東京に行くことは親が反対していたが、ふたばは宇宙人が本当に戦わねばならぬ相手なのか? ということを確認したかったのだ。

 そこに同行したのが女装男子である竹本だった。

 その二人が乗る飛行機は戦闘に巻き込まれるが、何とか一命を取り留めて飛行機は着陸。しかしその攻撃の際に、山ほどの宇宙人が撃墜された宇宙船から投げ出されて落ちていく様を見てしまう。

 

 大学に進学したオンタン達は、初日にふたばと出会い、SHIPという若者達で構成される左派運動家の集会が国会前であることを教えられて、興味半分でそこに向かう。すると右派の政権に立ち向かうように左派が反対集会を開いていた。

 それは誰がどう見てもSEALDsのようであり、『安保法案』を『宇宙人』に置き換えただけの演出だろう。こう言った時事ネタを(しかも政治ネタという非常に扱いづらい部分を)入れてくるあたり、とんでもない漫画家だなぁと思う。

 

 左派と右派の軽い衝突などもありながら、特にその話には興味のないオンタン達はいつもと変わらない日常を送っていく。

 だが、その裏では撃墜されて地上にいる宇宙人達が、密かに生き延びて生活をしているのだった。

 何人も寄り集まって小さなコミュニティを作り、何とか生き延びていた彼らと合流したのは追撃された宇宙人の『ツトム』。そこで恋人である『ユリコ』と再会する。何とか生き延びて、本国の救援を待とうというリーダーの言葉に励まされて、拠点に戻ろうとしている最中に謎の人間に襲われてしまい、『ユリコ』が惨殺されてしまう。

 さらにリーダーもやられて、『ツトム』とツトムを助けた名無し(この場ではマントとする)の二人だけで命からがら逃げ出したのだった。

 

 彼の言葉から察するに、宇宙人には人間に対処する手段というのはどうやらないようだ。それは体格も子供ほどに小さく、特に武器を持たない彼らからすると、人間というのは悪魔に思える。

 この辺りは戦争状態に突入した経緯などがわからないためになんとも言えないが、その大義となる『脅威』というものが疑われるものだ。

 そしてこの巻のラストで、ついにオンタンが宇宙人(と思われる謎の人間)を捕まえてきてこの話は終わる。

 

 ようやく主人公がこの戦争について学ぶ機会が出てくるのか……とゆっくりとしたペースに動きが出てきたので、一安心。今までは外でガヤガヤと生活を送っているだけだったからね。

 でも浅野いにおの特徴である生活感の濃さというものは健在で、それがこの時代の登場人物たちをより生きているという気にさせてくれる。だからこそ、同じ状況に巻き込まれた時、自分がどの立ち位置を取るかということを選択しなければならない気になってしまい、そこに深みが生じてくる。

 浅野いにおの売りでもあるこの生活感を描き出すために、ここまでの3巻は使ったのだろうな、と思うと、ゆっくりとしながらも丁寧で面白い作りになっていると思う。どうだろうか、もしかしたら完結した時に一気に読むと、また印象が大きく変わるのかもしれない。

 だが、私はそんな何年後になるかわからない完結を待っていられないので、また次巻も楽しみにしていようと思う。

 

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 1 (ビッグコミックススペシャル)

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 1 (ビッグコミックススペシャル)

 

 

 

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