物語る亀

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物語愛好者の雑文

映画『宇宙の法 黎明編』ネタバレ感想&評価! アニメとしては悪くないものの、描き方に制限があるのかな?

 

 

 

最初に語っておきますが、当方は特定の宗教団体との関係性は一切ありません

 

単なるアニメ映画好きだから観に行ったようなものだしねぇ

 

カエルくん(以下カエル)

「テレビシリーズを観ていないのに深夜アニメ原作の映画を観に行ったり、いい歳して一人でアンパンマン映画を観に行くような人なので、この映画もチェックしたとお考えください」

 

「……プリキュアを大人1人で観に行くのとどっちがハードルが高いだろうね?」

 

カエル「でもさ、この手の特定の宗教団体が製作した映画を観に行くのは初めてだったけれど、アニメ映画でしかも平日の朝一なのに、観客が結構多かったね。

 しかも、おじいちゃんおばあちゃんもいたりして、客層が結構謎だったなぁ」

主「まあ、宗教団体が製作したと思えば身構える部分はあるけれど、西洋の映画なんてキリスト教をモチーフとした映画に溢れているし。逆に、日本は宗教に対して独特の立ち位置にあるからか、あまり宗教色の強い映画って、こういう作品でもない限り少ないかもね。

 じゃあ、今作がどのような作品だったのか……興味本位の方も楽しんでいただけるように書きますか」

 

カエル「なお、特定の宗教に対するヘイト、あるいは賛辞を述べるつもりは一切ありません。

 また、そのようなコメントも一切承認しません。

 単なるアニメ映画の感想として楽しんでいただけますよう、宜しくお願い致します」

 

 

 

 


映画『宇宙の法ー黎明編ー』 予告編

 

 

 

感想

 

では、Twitterの短評です

 

 

色々語りたいことはあるけれど、まあ悪くはない作品だよ

 

カエル「実は前作の『UFO学園の秘密』を観ていないので、どのような作品かわからずにドキドキした部分もあるけれど、なんだか普通に面白い内容だったね。

 そりゃ、かなり宗教的なお話もあるにはあるけれど、でもファンタジーやSFの世界観と考えるとそこまで突飛なこともないのかなぁ、なんて思ったり

主「主人公のキャラクターデザインを見た時に『これ、デビルマンじゃない?』と思ったんだよね。

 つまり永井豪のような、一昔の前のキャラクターデザイン。

 それでいうと本作の多くが……設定やキャラデザ、あるいは戦闘描写や戦闘フォルムのデザインなど、多くの描写が2000年以前の、懐かしいアニメやジュブナイル小説を連想させられて、なんとも言えない気持ちになったなぁ

 

カエル「昔のアニメやジュブナイル小説って、なんというか、結構壮大な物語も多かったじゃない?

 普通に神様が出てきたり、宇宙規模のなんたらって話が出てきたり……まあ、具体例はあんまり浮かばないけれど、聖闘士星矢とかトランスフォーマーとか、そういった色々な作品の要素を足したら、こんな作品になるんじゃないかな?」

主「物語自体も結構面白いところがあって……親友との対立だったり、悪役との融和だったりと、見所もある。

 確かに神様がどうとか、宗教的な要素が気にかかるのはわかるけれど、あのファンタジー世界で絶対的な力を持つ存在なんだな、程度に理解すれば、まあそこまでノイズにはならないんじゃないかな?」

 

 

一方で欠点として

 

では、次に欠点をあげていきます

 

アニメの面白さとは何か? ということを考えさせられたね

 

カエル「アニメの面白さ? あれ、作画や演出がダメだったという話?」

主「いや、基本的に作画は悪くないよ。

 全体的には近年の大作アニメ映画に比べると見劣りする部分もあるものの、一部のシーンは確かに迫力があって、結構面白い。

 それなりに動くし、普通に見ていて納得するレベルではある。今年を代表する作画レベル! とは当然言わないけれど、でもまあ有りは有り。

 ただし、それを活かしきれているか? というと……それは微妙かも

 

カエル「え、でもさ、アニメで1番重要視される作画は悪くないんでしょ?」

主「……不思議なパターンでさ、作画のレベルに音響がついていってないように感じたんだよ。

 例えば、敵に追われて走るシーンがあるじゃない。この場面において、そのキャラクターが息を切る演技だったり、あるいは不穏な音楽や足音などの効果音をつけたりして、より臨場感を演出するわけだ。特に、声優の演技は重要で……ここで野獣のように叫びながら走るのと、悲鳴をあげながら走るのと、単純に息を切らせるのでは、同じ映像でも意味合いが変わってくる」

 

カエル「前者ならば半ば狂乱状態、悲鳴をあげていたらかなり敗色濃厚、後者では策があるか頭を使っている、などだね。また効果音もそれに合わせることで、色々な映像とすることができるけれど……」

主「本作が不思議なのは、そのような演技があまりないんだよね。

 映像としては走っているし、それなりに動いている。だけれど、キャラクターの息伝いや、音楽、効果音があまりないから、イマイチ臨場感が伝わってこない。

 映像がスカスカというのは何度も見てきたけれど、映像”以外”の音響などがスカスカというのは初めて観たかも。それだけに、本来緊迫感があるシーンも全く盛り上がらなくて、惜しいなぁという思いをした。

 脚本や物語はアップダウンがあるけれど、残念ながら全体の演出としてアップダウンを生み出せていない印象かな

 

 

 

 

役者について

 

声優陣について語りましょう

 

プロの声優陣の演技は当然悪くないです

 

主「『UFO学園の秘密』からの続投だったらしいけれど、人気声優がたくさん出演しているし、当然うまいよ。さっきも語ったように、細かいところの違和感はあるけれど、それは演出側の問題だろうから、あんまり役者どうこう語る事じゃないだろうし。

 そしてやっぱり……千眼美子ですよ……

カエル「やっぱり声優をやってもうまいよねぇ。

 ちょっと違和感がないわけではないけれど、でもアニメ声の声優と共演してもそこまで浮いていないだけでも素晴らしいし……何も知らないで鑑賞したら、本職の声優だと勘違いするかも」

 

主「この手の芸能人声優って大体違和感があるからわかるんだけれど、今回は『どのキャラクターを担当しているんだろう?』ってちょっと探した部分もある。

 まだ20代半ばと若いのに、ここまで声優としても演技を発揮できるのは稀有な才能だと思うし……いやぁ、本当、もったいないよなぁ」

カエル「本人の色々な葛藤の末の決断なので、こればっかりはしょうがないけれど、もっと色々な役を拝見したかったというのが正直なところだろうね

 

主「本作は本当に豪華声優陣だし、そこを楽しみにしてもいいんじゃないでしょうか?

 まあ、オススメしづらい作品ではあるんだけれどさ……」

 

以下ネタバレあり

 

 

 

 

 

作品考察

 

専門用語の多さについて

 

ここからネタバレありで語っていきます!

 

今作は結構専門用語が多いのよ

 

カエル「そもそもレプタリアン、とか言われてもね。結構専門用語が多くて、それを理解するのが大変だったかなぁ」

主「SFやファンタジーだと思えば、このような専門用語が多いのもなんとなくうなづけるけれどね。

 ノリとしてはスターウォーズの”フォース”とか”ジェダイ”とか”タトゥーイン”とかと一緒と考えて貰えばいいです。

 スターウォーズの用語はすでに一般的な知識として共有された感もあるけれど、これから初見で鑑賞すると、同じように混乱するんじゃないかな?」

 

カエル「なんとなく言っている意味がわかるからそれでいいか、みたいなノリで」

主「結構この作品を理解するには、深く考えないほうがいいかもね。

 ほら、ガンダムを見ていても『ミノフスキー粒子ってなんだ?』とか考え始めるとこんがらがるでしょ? そういうものがある、程度で受け止めてほしいかなぁ」

 

 

 

重要なシーンは描けない?

 

本作の不満点その1ですが……

 

なんだか、おかしいなぁと思うシーンが多いのよ

 

カエル「おかしいというと?」

主「間のシーンやキメのシーンがないのね。

 例えば冒頭で幼い子を持つ親子が敵に襲われる。そこで娘を抱きかかえる母親のシーンの次に、すでにある程度走って逃げているシーンに切り替わり、場所も森の中になっている。

 これはこれでもいいけれど、例えば走り出すシーンがあればよりスムーズに場面転換ができるよね。

 他にもさ、戦闘シーンで決めとなるべきシーン……敵がやられるシーンとか、あるいはあるキャラクターが弓矢で撃ち抜かれるシーンがあるんだけれど、そこも弓矢を放つシーンの次が、すでに突き刺さったキャラクターを描くんだよ。

 ここでキャラクターが弓矢に撃ち抜かれるシーンがあれば、映画としての衝撃のシーンが描けるのに、それがない

 

カエル「ちょっと展開が唐突感があったりとか、物語のメリハリを感じなかったりする原因かも……」

主「なんていうかさ、変な話だけれど絵コンテでは描いていたけれど、そのシーンは描けないからそのまんま抜きました、というような違和感があるわけ。

 じゃあ、なんでそんな違和感があるのか? と考えると、やっぱりこの映画が宗教的な映画だからじゃないかな?」

カエル「教義とかそういう問題?」

 

主「本作って戦闘シーンもあんまり血が出ないようにしていたりと、結構配慮されているのね。それは多くの……それこそ信者の方を中心に老若男女が鑑賞するから、ということもあるだろう。

 映画として、物語としてのタメの部分であり、そこを衝撃的に、華々しく描く場合もある作品も多い中で、本作はあまりそこを衝撃的に描かなかった。

 だからこそ、本当は山場になりそうなシーンなのに、イマイチ上がりきらなかった部分もあるのかも。

 この映画で描くべき決定的なシーンがないの理由は、血や暴力、あるいは死を連想させるものを描けないという制約があるんじゃないかな?

カエル「そう考えると納得がいくんだね」

 

 

 

 

物語の構成の問題

 

次に不満点2です

 

構成というか見せ方が悪いよね

 

カエル「本作はまずは現代のパートから始まり、事件が起きて3億3千年前の地球へとタイムスリップするという物語です」

主「最初に前作に出演したであろう主要登場キャラクター5人をしっかりとその能力も含めて見せるけれど、残念ながら主人公のレイと、仲間のタイラ以外は今回は活躍しない。

 なあここで5人の能力などを説明がてらに見せて、次作につなげたいという意図はわかるし、キャラクター紹介として意味はあったけれど、別になくてもいいのかな? って思いもある」

 

カエル「物語は3部構成になっていて、

 

  1. 現代パート
  2. 3億3千年前に行き、本作のヒロイン的立ち位置のザムザと交流を深めるパート
  3. タイラやダハールトの対決

 

となっています」

 

主「このうち2部目にあたる過去に遡るシーンなどは、その後の展開を考えると意義などもしっかりとわかるんだけれど……でもさ、ここで目的がずれてしまったようにも感じた。

 本来、作品の目的は敵に洗脳された仲間のタイラの奪還なのよ。

 だけれど、この中間ではタイラはほとんど登場しない。だからこそ、物語が停滞してしまった感がある」

 

カエル「ふむふむ……120分と考えると、ちょっと長い印象もあるよねぇ」

主「100分から110分くらいが適正なんじゃないかな? 結構削れるシーンはあったと思うよ。

 最終決戦もレイの戦い、ザムザの戦い、民衆の様子と3つの描写があるんだけれど、ここがぶつ切りになってしまって繋がっていない。

 せっかく1番熱いレイのシーンで、いきなり別の戦いを挿入されているから、盛り上がりが阻害されてしまう。

 この辺りはもっと丁寧な物語を期待したかったかなぁ」

 

 

 

演説描写について

 

え〜……ここはかなり言葉を選びながら語ることにしましょうか

 

本作には当然のことながら、神様のような存在であるアルファからメッセージを告げるシーンがあります

 

カエル「いつもならメッセージをわざわざセリフにするなんて……と言うところだけれど、でも本作はそれが目的だろうから文句も言いづらいというね」

主「まあ、宗教団体が製作していると聞くと、この描写も訝しげな目で見てしまうのはあると思う。

 でもさ、語っていること自体はそんな変なことじゃないわけ。

 他の星の宇宙人とも共生して、競争することでより良い社会を作ろう、そして愛をもって地球をよくしよう。

 地球に害をなす存在があれば、主人公たちが頑張って戦おう……まあ、そんなことを語るわけですよ」

 

カエル「……ヒーロー映画などではおなじみのメッセージかも」

主「差別などを許さない、融和を大切にしよう、神様を敬おうというのは、実は世界の作品を見ても語っていることは同じなわけ。

 それを考えると、決して本作の抱えるメッセージ性はおかしなものではないし、真っ当なものだとも考える。だからと言って、この宗教団体を信じましょう、とは自分は絶対に言いませんが、信仰は個人の自由です。

 ただ、ラストシーンも含めて自分の好みではないって話なだけ

 

カエル「……それだけ真っ当なことを語っているのに?」

主「結局”ドラゴンボールにお願いすれば何でも叶うよ”じゃないけれどさ、万能の神様が何とかしてくれるよ、という展開自体が究極のご都合主義だし……

 自分は本作で面白いのがタイラの闇堕ちとか、ザムザの葛藤とかだったから、それらの問題が全て理想論で終わってしまったのが不満」

 

カエル「不信心な人間だからね……」

主「不謹慎で不道徳的な物語にするわけにもいかないので、この結論には納得だけれど、途中まではしっかりと面白かった分、この終わりかたはね。

 ただ、宗教映画なのでこれで正解だと思います。

 理想を語らなければ意味がないし

カエル「あくまでも1アニメ映画ファンの戯言です」

 

 

 

 

まとめ

 

ではこの記事のまとめです

 

  • 穴はあるものの映像クオリティなども高く、楽しめる作品!
  • 千眼美子など、役者の演技は問題なし!
  • 脚本などの粗はあるが宗教映画と考えれば納得か

 

そこまで蛇蝎のごとく嫌うような作品ではないです

 

 カエル「もっとトンデモナイ作品が出てくるかと思ったら、意外とちゃんとした物語だったから驚きだよね」

主「まあ、これはこれでアリなんじゃないですか?

 最近では教祖様の息子がYouTuberデビューするなど話題が豊富ですし」

カエル「……なんか嫌味っぽくなったかも」

主「でもアニメ映画としてはそこまで悪くなかったかな。もっと悪い作品はいくらでもあるし。

 オススメもしないけれど、非難もしない作品となっています」

 

 

 

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