カエルくん(以下カエル)
「よし! ここでバカ邦画について1つ語っておこうか!」
ブログ主(以下主)
「いきなりバカ邦画呼ばわりとは中々に失礼な奴だ! そこになおれ!」
カエル「え!? これを言い出したのはそっちじゃないの!? Twitterでつぶやいたじゃない! 『今週公開のバカ邦画その1』って!」
主「バカとは何事だ! そんな罵詈雑言、呟くわけないだろう! Twitterは公の場だぞ!」
カエル「……えっと、これは何かな?」
#帝一の國 短評
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2017年4月29日
今週公開バカ邦画その1
だけど単なるバカ邦画ではなくて、バカさの中にもしっかりとメッセージ性も詰めた良作
伏線もきっちりと貼ってあったしギャグも良かった
満足度の高い作品
主「……まあ、褒めているからOKでしょ!」
カエル「あー!! ごまかした! 全部人のせいにしようとした!」
主「バカ話は置いておくとして、感想記事を始めるよ!」
カエル「……全部うやむやにするつもりだな」
1 ざっくりとした感想
カエル「じゃあ、まずはざっくりとした感想だけど、結構面白い作品だったよね!」
主「予告編を見てもわかるけれど、本作ってかなりのコメディタッチのバカ映画でさ、原作もギャグ漫画みたいなものだし。
男ばかりが出てくると女性向けな印象があるかもしれないけれど、むしろこれはバカがバカをやっているのが大好きな男むけの作品。アニメでいうと『男子高校生の日常』とか『坂本ですが?』に近いノリの作品でもある。
もちろん、男性陣もバカだけどカッコイイし、唯一の女性である永野芽郁も可愛らしくて、キャストを楽しむだけでもイイ」
カエル「しかも女性ファン向けのような『熱く』抱き合うシーンなどもあったりして、黄色い悲鳴が上がりそうな場面もあったしね! それでいて王道の清らかな恋愛描写もあったりしてさ!」
主「じゃあ、それだけのバカバカしいコメディ映画で終わっているのかというと、そうでもない。政治に対する風刺も効いているし、若者に対して望む姿勢、メッセージ性もきちんと入っている。
バカ映画の振りをしているけれど、実は映画として伏線を引いてきたり、演出的にも派手なことをしていたりと色々と多様な視点からも耐えられる作品に仕上がっている。
もちろん、バカ映画として楽しんでほしいし、かなりガバガバなところもあるんだけど! そんなものを無視してしまうくらいに笑える楽しい作品だよ」
菅田将暉の新境地!? 愛すべきバカヤロウ!
(C)古屋兎丸/集英社
役者について
カエル「この映画って結構最近人気の若手俳優ばかりじゃない? しかも、みんな普段はイケメンな役ばかりやっていてさ。
だけどこの作品だと、もちろんイケメンではあるんだけど、しっかりとコミカルに演じていて……男性も好感を持てる人たちになっているんじゃないかな?」
主「菅田将暉もここ最近は多くの映画に出ていて、しかもその多くがイケメンヒーロー役だったけれど、今作は一転してコメディに挑戦だけど、これがまたハマッたね!
ちょっと嫌な、頭のいいバカな主人公を見事に演じきっていた」
カエル「あとすごいのはライバルの東郷菊馬役の野村周平だけど、もはやイケメン俳優とはいっっっっっっっっさい思えないような、下劣で卑怯、品性の欠ける男を熱演していたよ!」
主「こんな引き出しがあったのかよ! ってびっくりだよ!
他にもしっかりと『かわいい』男の子になっていた志尊淳、策略に優れる優男を演じた千葉雄大などもそれっぽかったし、今作のラスボスになるのかなぁ……氷室を演じた間宮祥太朗も良かったんじゃない?
何よりも竹内涼馬がさ、一昔前の少女漫画から飛び出してきたかのような存在感で! ここまで爽やかさを感じさせる役になったのも、役者の演技力もあるんじゃないかな?」
カエル「そして唯一の主要キャストでは女の子の永野芽郁がしっかりと可愛らしかったんだよね!
お嬢様だけど一般的で、EDのノリノリのギタープレイ……と言っていいのかはわからないけれど、それもかわいらしくて!」
主「いやー、元々最強系女子って好きなんだけど……『ラブファイト!』の北乃きいとかさ」
カエル「えらいニッチな趣味だね……」
主「探せば意外といるし、ギャップ萌えなんだろうな。こんなに可愛くて可憐な女子が実は強い!? みたいな。だけど乱暴なだけではなくて、しっかりとお淑やかでもあって可愛らしくて、芯も強いという存在を演じていたんじゃない?」
ただの嫌なライバルを熱演した野村周平
(C)古屋兎丸/集英社
ハイテンションコメディ
カエル「本作の役者陣がよかったのって基本的にハイテンションなコメディ映画だから、というのもあるよね?」
主「そうだね。若手の役者ってどうしても演技が過剰になってしまうというか、大げさになってしまったりする。自然な演技って結構難しいし、演出も大規模映画は派手に、わかりやすくしたいし、さらに若手とベテランが組むとどうしても比べられてしまうから演技力の差がバレてしまう。
だけど本作は全部ハイテンションでしょ? だからむしろ派手なコメディの方が演技が気にならない。もちろん、演出などもそのハイテンションぶりを盛り上げるために工夫されているし。
終始バカバカしいお話なんだよ。
ツッコミどころ満載なんだよ。
だけど、それが面白いから特に気にならない。
ツッコンだら負けだよ!」
カエル「他にもベテランもすごく輝いていたよね」
主「今作は吉田鋼太郎とか山路和弘なども出演しているけれど、この2人が並ぶと声が非常にいいから耳が幸せなんだよね。一瞬『なんだこの夢のような空間は!?』と思うほどだった。
もちろん、威厳のある役者ばかりだから国の重要ポストに就いているというのも全く違和感がないし、雲の上の世界として楽しんで見ることができたな」
以下ネタバレあり
2 政治を物語にするということ
カエル「結構政治劇って珍しい題材だよね。しかも、高校生が主役で若手俳優がたくさん出ていて、おそらくターゲット層も中高生からせいぜい20代くらいだと思うけれど……」
主「これは一昔前のラノベ界で『経済と政治はライトノベルにならない』と言われていたんだよ。つまり、ファンタジーやSFのような中高生も好きそうな題材はライトノベルにしやすいけれど、大人向けの要素が多かったり、専門用語が飛び交う政治と経済はライトノベルには向かない、というものだね。
だけど『狼と香辛料』が登場して、経済でも工夫次第でライトノベルになることが証明されたわけだ」
カエル「もちろん、本作は漫画だからちょっと違うかもしれないけれど、元々はジャンプスクエアに連載されていて、月刊誌とはいえジャンプだからさ、やっぱり中高生から20代向けの作品なわけだよね」
主「大人の、血で血を洗う泥沼の抗争劇になりそうなテーマをしっかりとコメディを交えることで見やすくしているし、わかりやすくしている。だけどしっかりと政治劇の面白さも兼ね添えている。
この『高校生活』と『政治』を合わせるというのは若者向けにもなっていて、いいアイディアだよね。自分はコメディ映画に風刺を求めるけれど、しっかりと批判精神を持っている」
少女漫画から飛び出してきたような大鷹弾
一人だけ異彩を放つほどさわやか!
(C)古屋兎丸/集英社
ガバガバな設定
カエル「まあ、コメディだからさ。突っ込んだら負けかもしれないけれど、結構『え? それアリなの!?』という話もあって」
主「あの糸電話とかガバガバだったなぁ。女性問題は政治に致命的な影響をもたらすのは理解できる。電話の盗聴などもあの連中ならばやるかもしれない。それはわかるんだけど……
じゃあなんで糸電話なんだよ! その場面を見られたら、それこそ写真を撮られて女性問題になるだろうが!」
カエル「あの盗聴器も大きすぎてあれじゃ気付かれるだろうし、外部生テストも『理科』『社会』って小学生か! と言いたくなるんだけど、誰もそこには突っ込まない。本当に頭のいいバカばっかりなんだなぁ。
ガバガバの極みといえばやはり『マイムマイム作戦』だよね!」
主「あんなもので多くの人が騙されるとは思わないけれど、でも絵になっていて良かったなぁ……」
カエル「いや〜でもさ、そのガバガバな設定がツッコミどころとなっていい味が出ているんじゃないかな? 本作って基本的にツッコミ不在だから、もう観客がいちいち突っ込みたくなってしまうという……」
主「こんな形でも観客と作品の一体化ってするもんだなぁ……と勉強になったよ」
3 勝利条件の明確性
カエル「政治劇だと結構勝利条件がわかりづらくなりやすいような気がするけれど、本作は誰にでもわかりやすいんじゃないかな?」
主「誰だってこの国のトップは総理大臣であることを知っているわけだ。そしてそこを目指すというのは目的として分かりやすい。だけど、それだと学生の青春感などがなくなって……本来野心家というのは悪役の役割になりがちだからね。
だけどギャグを交えることでその野心家の面も和らげることもにも成功しているし、友情、恋愛も盛り込んでいる。
じゃあ本当の勝利条件とは何か? というと……それは『帝一の国』を築き上げることであり、そこであの行為をすることだ」
カエル「ここがすごく良かった! 帝一って見方によると野心家のただの嫌な奴に見えるんだけど、その本当の目的を聞くと実は結構純粋な男で……いや、まあ純粋で真面目なのはずっとそうなんだけど!
そして後半のその本当の目的が達成されたシーンにおいて、今までのゲラゲラや帝一の思いが見事に昇華されていって……」
主「単なる野心家というだけでなくて、その真の目的を知ることによって帝一の見方がすっかり変わる。
これで『野心家として成り上がりの物語』と『本当の目的、青春の物語』という2つの物語が見事に交わっている。
成り上がりの物語って多くの人にわかりやすいけれど少し血なまぐさくて、青春の物語は美しいけれど万人に受ける勝利条件ではない。その2つがセットになり、しかも切っても切り離せないことで多くの人に理解しやすい物語になったのではないかな?」
過去の千葉雄大の演技でも1番良かったのでは?
(C)古屋兎丸/集英社
若者の革命
カエル「この話って簡単に言えば『保守派VS革新派』の対決でもあるわけじゃない? これはメディアやハリウッドなんかはリベラルな風潮が強いというのもあるけれど、青春の物語としても分かりやすいものになんじゃないかな?」
主「歴史的に見ても若者は革命を志すわけだよ。例えば明治維新を成し遂げた維新志士たちも若者が多かった。
あまりいい例ではないかもしれないが、学生紛争や共産化運動に邁進したのも大学生だし、オウムの信者も若者が多かった。
世界的に見ても若者というのはリベラルな人が多いんだよね。なぜならば、保守というのはどうしてもその時代を作り上げた先人、いわば老人たちが権利を握りがちである。
だからこそ、若者はその権利や自分がうまくいかない理由を保守派のせいにすることも多い。だから革新を望むんだけど……それは同時に『革新=青春』でもあると言える」
カエル「まあ、保守派として動くよりも革新派となる方が物語としても面白いよね。歴史的な賛否はあるにしろ、ゲバラとかも根強い人気があるみたいだし」
主「ドラマとしても結構うまいと思うよ。意外な展開にもできているし、背水の陣となることで主人公のピンチも演出できている。
元々権力志向がある帝一が保守派から革新派に移るのもキチンとした理由があるし、それもわかりやすいもので……物語の作り方としてもしてもしっかりしている」
褌だけで和太鼓を叩くシーンは漢の世界! よくぞここまでやった!
(C)古屋兎丸/集英社
ギャグの中の伏線
カエル「この作品って伏線の引き方とその回収がうまいよねぇ」
主「なんでもないようなことが実は伏線となっているんだけど、ギャグの中にそれを隠すことによって、目立たないようにできている。
例えば光明の発明品と手信号はふたりの絆と『そんなことで通じ合えるのかよ!』というギャグになっていたけれど、その伏線が後半にしっかりと生きていた」
カエル「あの発明品が生きてくるとは全く思わなかったからねぇ」
主「あとは弾との外部生の勝負だけど、テストでは3点差で帝一の勝利だった。だけど生徒会長の選挙でもほぼ同数の戦いだったけれど……だけど結末はああいう風になったわけじゃない?
敗北を認められずに苦悩していて、なんとかテストではなんとか勝利したけれど、どうしても勝てない状況に陥った時にどうするべきか。その対処法が成長を感じさせるものになっていたのも良かった。あの選択も意外性があったし、ある程度は納得できるものだったし」
カエル「お父さんの『1票差で負けた』に対する回答になっているんだよね。父と同じような状況に陥った場合、その二の轍は踏まないぞ! という……」
主「その手の伏線の張り方と回収のうまさも多かったし、細かく丁寧に作り込まれている作品だったよ」
最後に
カエル「劇場内でも笑い声がたくさん巻き起こっていたし、お金という実弾の危うさや信頼に対する物語もあったり……もちろん青春劇もあって良かったよ!
自分は『祈! 甲子園出場!』という横断幕が地味に面白くてさ……パッと見ると『祝!』なんだけれど、祈願なんだ! って意外性の面白さがあった!」
主「そういうところも細かく面白かったんだよね。
日本でコメディはあまり流行らないという話もあるけれど、この作品は多くの人に鑑賞してほしい作品かな。もしかしたら今年では1番笑った映画かも……」
カエル「コメディって人を選ぶところがあるし、日本では映画館であんまりゲラゲラと笑いにくいというのもあるけれど、これは大人数で見ることができる映画館向きの作品だと思うよ!」
ユリイカ 2016年3月号 特集=古屋兎丸――『Palepoli』『ライチ☆光クラブ』『帝一の國』…少年と少女の永遠
- 作者: 古屋兎丸,伊集院光,間宮祥太朗,内藤瑛亮,木村了,三津谷亮
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2016/02/27
- メディア: ムック
- この商品を含むブログ (1件) を見る