クロムクロの6話までを鑑賞したので、その感想や考察を書いていこうと思う。
今期は豊作で良作が多い中で、クロムクロもやはり注目度は高い作品となっており、おそらくカパネリとクロムクロは近年のオリジナルロボットアニメ作品の中でも、抜きん出た注目度を集めているのではないだろうか。(マクロス、ガンダムはもうロボットアニメというよりもそういう一つジャンルだからね)
1 ゆっくりとした脚本構成
とりあえず5話まで鑑賞したわけだが、2クール故のゆっくりとした展開が今作の特長かもしれない。
1話2話が話の導入として日常とバトルで魅せる2話でセットの1エピソードなのはわかるのだが、3、4、5話が基本的にケンとユキナの深堀に使われていて、ふたりの魅力と妹の小春と和尚のキャラクターの深堀を少ししただけであるが、再び6話においてバトルシーンがずっと続く、作画カロリーの重い回となった。
いくら2クールと言えども、ここまでゆっくりとした展開といいのはあまりになく、これでいいのか? と疑問に思うことが多かった。
だが、ようやく6話まで鑑賞することにより、この作品の脚本構成やどのような展開を辿ってきたのか、掴み始めてきた。
本作の脚本構成に注目してみると
1、2話 導入からのバトル
3,4,5話 バトル描写は少なく、ユキナの日常をケンが加入することでかき回す
6話 バトルと衝撃? のラスト
と、これだけ見るとバラバラであまり構成が上手くいっているとは思えない。初めから計算されていないのかな? と思うような構成だった。(実際今週までそう思っていた)
だが、1話において2話で一まとめになっていたことと、この作品が岡村天斎作品だと思い出して、1つわかったのだ。
「あ、これはDARKER THAN BLACK と同じなんだ」
説明しよう。
普通は2クール作品となれば、以下のような構成をすることが普通だろう。
1〜3話 起
4〜6話 承
7〜9話 転
10〜12か13話 結
2クールの場合はさらに13、14話からこれを発展させた上で繰り返す。
つまり、3話ごとのエピソードをさらに重ねることによって、物語の厚みや深みを増すのが一般的な2クールアニメの作り方だと思うのだが、クロムクロの場合は以下のようになる。
1,2話 出会いと世界観説明(導入)
3,4話 ふたりの生活の変化と日常
5,6話 仲間の紹介と衝撃のラスト → ここまでが起
この作品は2話で他の作品の1話分の構成になっており、1話、3話、5話というのは他の作品で言うところのAパートが終わっただけに過ぎない。
なので、今は6話が終わったところなのだが、他の作品で言えばこれは3話分に該当する起の部分が終わったところという話である。
2 なぜ『ゆっくりとした』作品と感じるのか?
このような作り方をしているわかると、おそらく先に書いた本作が『ゆっくりとした展開』と感じる理由もわかるのだ。
他の作品はさっさと1話ごとに1エピソードの区切りをつけて、次の展開へと話を進めているのに対して、クロムクロは2話で1エピソードという構成のためにエピソードの内容は濃いものの、展開としては少し遅いと感じてしまう。
この辺りの脚本構成がスピーディだった例を考えると、前期の『僕だけがいない街』が当てはまる。原作を全て消化しようと説明を少なくして、走ってしまった印象もあるのだが、1エピソードの切れ目をしっかりと意識して、気になる部分で次回へ続かせたことにより、視聴者を飽きさせないような作り方にしていた。
現代は昔と比べると、アニメに限らず映画や小説など、どの物語媒体も衝撃的でスピーディな展開を求められているし、それが普通の作り方なので、このような2話で1エピソードであり、6話も使って起承転結の4段で考えた場合の起を終えるというのは、やはりゆったりとした展開の作品だな、と感じる。
ゆったりとした展開が合っているか?
それはそれで良いのだけれども、ゆったりとした展開が合っているのか? と問われると、私は少し疑問に感じてしまう。
例えば、その長くなった1エピソードで何か深い描写(仲間や今後の伏線の描写等)があれば納得がいくものの、今の所掘り下げられているのは主人公の剣之介とユキナくらいである。
それ以外のキャラは一応妹と和尚が際立っているかな? というもので、ほとんど顔見せと軽い紹介で終わっており、それほど深い印象に残るキャラクター紹介はできていない。
特にノエルと荻布美夏の二人がおそらく重要なサブキャラクターになるのだろうが、今の所さしたる活躍もなければ深堀もされているとは思えない。
それ以外にも肝心の敵の正体が見えてこなかったり(鬼とは一体なんなのか?)あのロボットが何なのか全くわからないことが気になってしまう。
その辺りをすべて開示するのは流石に早計であるものの、この序盤の伏線張りやキャラクター紹介などが足りなくて、後半がジェットコースターのように駆け足になってしまった印象の岡村作品も多い為(DARKER THAN BLACK -流星の双子-とか世界征服~謀略のズヴィズダーとか。まあ、好きなんだけど)この辺りがやはりこの先に向けて気になるポイントではある。
それから、6話ラストの戦う相手が人間だった、というのも視聴者には「そうだろうね」というものなので、引きとしては弱いように感じてしまう。
それならばいっそ、ユキナがたくさんの相手を殺してしまって後でそれがわかるとかならばより一層悲壮感増していったり(その場合は剣之介の役割がなくなってしまうが)、出てきた敵が学校の同級生とかならば引きとしても面白いものになりそうだが、ただの人間となると「ふ〜ん」で終わってしまうように思える。
むしろ相手の正体を焦らしに焦らす『機動戦艦ナデシコ』のように遅い段階で明かすのでもよかったのかなぁとか。
文句ばかり言っているようなので、少し褒めると、PA特有の女の子のムッチリ感というのが堪能できるのもポイント。
特に5話における荻布美夏の太もも描写などは、割と痩せ型の少女が多い現代アニメの中でも、いい感じのムッチリ感が合ってよかった。あのキャラクターを見ていると、TARI TARIの紗羽を思い出す。(個人的にはPAで一番好きなキャラクター)
まだ始まったばかりなのでどうなっていくのかわからないが、ここから先あっと言わせる展開もあるかもしれないので、楽しみにしていきたい。