物語る亀

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物語愛好者の雑文

甲鉄城のカバネリ 3話までの感想と分析と今後の展望への期待

 今期のノイタミナ枠であり、今期1絵が動くとも称される『甲鉄城のカバネリ』を3話まで見たのでその感想や構成などを書いていきたい。

 熊本地震の影響で1話とんだ分、制作期間が長いとはいえ、ここまで一切ダレることなくここまであの絵を維持しているのは驚愕である。元々ノイタミナ作品は絵のクオリティは非常に安定しており、大外れは少ない印象があるが、その中でも特に動いているのではないだろうか 

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 1 基本的な設定は『進撃の巨人』と同じ

 これは多くの感想ブログやツイッターでも指摘されていることだが、基本的な話の作り方は少なくとも1話に関しては進撃の巨人と同じものである。

 元々スタッフ陣が進撃の巨人と同じであったりと、進撃の巨人を思わせる部分は多いのであるが、それにしてもこの類似性というものは面白い。

 

 例えば城塞都市で普通に暮らしている街の人達が、突発的なトラブルにより巨大な塀が壊れてしまい、敵が侵入してくるという構図は全く同じである。違いがあるのは戦う相手が圧倒的な力を持つ巨人か、一人ひとりは大した力を持たないが、ほぼ無限大に沸いてくるカバネと呼ばれるいわゆるゾンビであるということであろうか。

 敵を変えることによって、進撃の巨人の持つ相手の圧倒的な力量差による絶望感こそ減ってしまったものの、相手がほぼ無尽蔵に湧き上がるゾンビということで、数の上での絶望感はさらに増している。

 

 人が人を捕食するという生理的嫌悪感も進撃の巨人のヒットした要因のひとつであるだろうが、ゾンビものにおいて人を捕食するという性質は定番のものなので、未知の恐怖にはなり難いものの安定した怖さを演出している。

 

 映画におけるゾンビものというのはどちらかというとB級と言われる作品が数多いものの、アニメになると昨年もがっこうぐらしのヒットなど、安定している題材だと思う。過去作の傾向やヒットした要因をうまく分析し、取り入れてさらに絵として映えるように工夫された作品と言っていいだろう。

 

 

2 美樹本晴彦と世界観の相性

 今作のキャラクターデザインは美樹本晴彦が担当しており、失礼ながらも『古臭いデザイン』のキャラクター像になっている。今では古臭いと言われてしまう平井久司のデザインも、ガンダムSEEDやスクライド等で人気を集めたのがわずか15年前であり、美樹本晴彦が担当した初代マクロスはもう30年ほど前の作品となる。

 それだけの時代を経たアニメーターのデザインでは、現代のオタクには古いと称されてしまっても致し方ないことであろう。

 

 しかし、本作は世界観自体が『和風スチームパンク』である。

 これは進撃の巨人が明らかに中世西洋の技術力しか持ち得ないにも関わらず、現代の我々よりも進んでいるのではないかという謎技術が出てくるのと同じで、スチームバンクというSF設定により特殊な世界観を演出することで、短い浴衣や主人公の謎衣装が浮かないような形になっている。

 この辺りは美術としても魅力的であり、背景などの美しさもありマッチしていて、作品自体の魅力を増す結果となっているように思う。

 

 すでに古臭いと思われるキャラクターデザインであっても、活かし方一つでいくらでも新しい世界観を導き出せるという証明になったのではないだろうか。この温故知新のような技術に敬意を表したい。

 

世界観

 キャラクターデザインだけではない。

 私は1話の時点で本作を「進撃の巨人と屍者の帝国を合わせたような」と称したが、これはゾンビ(死人)とスチームバンク、さらにノイタミナ作品の組み合わせを示唆したものであるが、今になってみると和服の感じだけかもしれないが『サクラ大戦』を思わせるし、モブからはどことなくもののけ姫の雰囲気も感じる。

 これらの、もう20年ほど前の作品のエッセンスの凝縮を、進撃の巨人という新しいストーリーラインに載せることにより、これだけ魅力的に仕上がるというのは面白いことである。

 

 一時期バトルロワイアルの大ヒットにより、現代でもデスゲームものというのは量産され続け、一定の人気があるが、これはその設定自体が奇抜で目を引くものであるという理由が大きいだろう。

 1話における衝撃と設定の魅力は進撃の巨人も劣るものではなく、今後もこのようなストーリーラインを模倣する作品が次々と出てくるのではないだろうか?

 

 

3 この先の展望予想

 さて、ここまでは順調に面白みを増しているカバネリであるが、本作は今後どのような展開となっていくのだろうか?

 

 ゾンビものになぜB級映画が多いかといえば、そのゴールが見えないことにある。

 

 例えばこれがゴジラなどの怪獣映画の場合、ゴジラだったり敵対する怪獣を倒すなり海に返せば、物語は終わりを迎える。エイリアンであろうと、ターミネーターであろうと、その構図は大きく変わらない。

 それはホラーにおいても同じで、ジェイソンだろうと貞子だろうと、その怪奇現象の大元を倒せば全てお終いとなるはずだ。

 

 ではゾンビ映画のお終いとは何か、ということを考えると、一番のハッピーエンドはゾンビを駆逐して全て丸く収めることであるが、街一つが壊滅するほどの大量に増えてしまったゾンビ相手に全部を駆逐するというのはほぼ不可能である。

 大量破壊兵器を使えば終わるかもしれないが、それは後味の悪いものとなってしまう。

 

 結局のところゾンビを絶滅させるというのは相手が死人である以上難しいと言わざるをえない。基本的には逃げ回るしかなく、ラストの展開までを迷走するから最後はB級となってしまうわけである。

 
 本作に話を戻すと、一応3話時点では幕府がある街へと行くことを目標としているものの、最終目標が開示されておらず、結局は逃げ続けるしかないような状況である。このまま逃げ続けるのはいいが、それでは辿り着いたらハイおしまい、ではやはり味気ないものになってしまうだろう。

 本作の予定放送話数を確認してはいないのだが、おそらく1クールであると考えれば、すでに物語は1/4は消化している。

 ここから最終ゴールが見つかればいいのだが、それが見つからないと、前半は良かったのにね、で終わる可能性もあるので、そこをどのようにクリアしていくのか注意しておきたい。

 

その他気になったポイント

 最後に個人的に気になった部分を幾つか挙げると

 

  • 熱は感じないのに痛みは感じるというのは個人的に謎
  • カバネの身体能力表現にムラがある(人を襲う時はゆっくり動くのに、列車を襲う時は飛びついてくる)
  • ウイルス性というがこれは血を媒介としないと感染しないのか(空気感染ならば少しの傷でカバネ増殖するよね?)

 

 といったところだろうか。

 細かいところなので気にしすぎかもしれないが、ここが伏線なのか否かも注目していきたい。

 とりあえず本作が今期1動く作品であるのは間違いないと思うので、どこまで作画を含めて持つか楽しみしていきたい。

  

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