今回は『ハイスクールフリート』の劇場版の感想記事になります
テレビシリーズも急いで見たからな
カエルくん(以下カエル)
「リアルタイムで観ていませんでしたが、今回に備えて履修したという形になっています」
主
「その結果が記事にも出るといいなぁ」
カエル「それでは、早速ですが記事のスタートです!」
感想
それでは、Twitterの短評のスタートです!
#ハイフリ
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2020年1月18日
悪いとは言わないが、良いともいい難いファン向けを出ない作品か
物語の弱さが気になるうえに無難にまとめた結果、印象に残りにくくなったかなぁ
噂では作画で心配されていたけれど一部怪しいシーンはあったが指摘するほどではないかな
あとはキャラクターが多すぎて理解が難しかった… pic.twitter.com/CNBkjzrpox
う〜ん……なんか、あんまりハマらなかったんだよなぁ
カエル「今回に備えてテレビシリーズも鑑賞した上で劇場に向かいましたが、それでも乗り切れないところがあったの?」
主「悪いとは言わない。
だけれど、いいともなかなか言い切れない部分もあった。
これは元々、特別な作品のファンでないこともあるのかもしれないけれど……キャラクターの見分けがなかなかつきにくかったり、あるいは戦艦の違いや細かい点がわからないというのもあるかもしれない。
だから、もっとハイフリについて触れてきているファンであれば、楽しむこともできる作品になっているのかもね」
カエル「この手の作品はファン向けの要素が強いから、テレビシリーズで付け焼き刃をした人間向きではないというのもあるのかも……」
主「ただ、初見さんに向けられた作品ではないことは間違いないと思う。自分なんかは『ノーゲーム・ノーライフゼロ』などをシリーズ初見で行ってどハマりしたけれど……今作はそのような作品ではない。
あとは……ちょっと噂で聞いていたから余計に気になったのもあるかもしれないけれど、一部の作画がイマイチだったという思いはどうしても拭えないかな。
でも全体的に叩くほどではない、という評価です」
テレビシリーズ版について〜吉田玲子の手腕が光る〜
それでは、テレビシリーズの評価といきましょう
言葉が難しいけれど、うまくまとまって”しまった”という表現になるかな
カエル「しまった、というのが象徴的だね……」
主「物語そのものは決してつまらないものではない。だけれど、序盤の展開から自分は『無限のリヴァイアス』のような、子供達だけで漂流するサバイバルアニメを期待していた。だけれど、女の子たちの可愛らしい日常をアピールする目的もあったのだろう、それは間違いだとは全く思っていない。
だけれど、結構早めに帰還してしまったり、あるいは物語の中核を担う親友との友情の側面が弱く感じてしまったり、またあのネズミの正体というか、黒幕もはっきりとしなくて物語のカタルシスにはつながっていなかったりと、全体的に勿体無い印象があった」
カエル「また、あんまり戦艦に興味がない、というのもこの評価の理由の1つかもね……」
主「ただし、さすがはシリーズ構成吉田玲子と唸ったシリーズでもある。
ちょっとそこについて語っていこうか」
テレビシリーズの上手さ①〜多くの女子キャラクターを活用する〜
まず、テレビシリーズの上手さの1つ目としては女子キャラクターですね
あのワチャワチャ感が良かった
カエル「シリーズ構成が吉田玲子ということで、やっぱり『ガルパン』を連想する方も多いのではないでしょうか?」
主「ガルパンしかり、あるいはシリーズ構成こそ横手美智子だけれど多くの話の脚本を担当した『SHIROBAKO』もそうだけれど、群像劇を書かせると抜群にうまい。各キャラクターの個性が伝わってくるんだよ。
特に凄いのは……いってしまえばそこまで注目を集めないような、モブではないけれど、主要とも言えないキャラクター同士の掛け合い。
絶妙に会話のキャッチボールがずれていくと言えばいいのかなぁ」
カエル「会話のキャッチボールをしてないの?」
主「例えばさ
A『あの荷物どこに置いたの?』
B『その荷物はあっちの棚に置いておいたよ』
C『はい、これがその荷物だよね』
みたいな会話があるとする。このパターンは”荷物”を中心に会話のキャッチボールができている。
一方で吉田玲子脚本の印象としては
A『ねー、あの荷物は〜?』
B『あー、それならばC子が持っていたんじゃないの?』
C『えー、それは知らないよ、D子がどっかやったんじゃない?』
D『あんた、いつも私のせいにする! さっきC子が棚に置いたでしょ!』
C『あー、また忘れちゃったー』
みたいな会話にする。”荷物”を中心としながらも、話の中心を若干荷物からずらすことで、キャラクターの魅力が伝わるような表現を多用するわけだ。
このワチャワチャ感が重要なわけ」
最近の作品では『リズと青い鳥』の朝食の会話が印象に残っている方も多いのでは?
その吉田脚本の魅力の1つが詰まっているのがテレビシリーズ10話だろう。
主「赤道祭りを中心に女子たちがワチャワチャやるだけの回だけれど、そこで各キャラクターの魅力、コメディ、また”後悔ラップ”などのようなよくわからないけれど可愛らしいものをしっかりと見せてくれる。
これらが群像劇における各キャラクターの魅力を発揮しているわけだ」
テレビシリーズの上手さ②〜説明台詞とキャラクターの魅力のバランス〜
これは難しい部分だよね……
テレビシリーズはあくまでも主体はキャラクターにあると思ったんだよね
カエル「もちろん戦艦の魅力なども伝わってきますが、それ以上にキャラクター描写に惚れた、という人も多いかと思います」
主「自分が吉田玲子脚本の作品を見るたびにすごいなぁ、と思うのは”映像を徹底して信じている”部分だと思うわけですよ。それこそ『ガルパン』なんてそうじゃない。わざわざ戦車のスペックなどを説明しないし、戦術なども必要最低限の話しかしない。
重要なのはスペックや戦術ではなく、その戦いの最中にいるキャラクターの心情である、と言わんばかりの台詞回しだ」
カエル「それこそ『リズと青い鳥』なんて、よくあれほどの信じることができるなぁ……と感じるほどだよね」
主「やっぱりさ、ある程度は語りたくなるものだと思うんだよ。自分なんかは説明過多な人間だからかもしれないけれど……例えば、台本におけるト書きの量なんかも監督によって多い方がいい人もいれば、多すぎると演出の裁量を奪うと怒る人もいると聞くし。
その辺りの裁量がとてもうまい。
今、日本で1番の脚本家という声も挙がるのも納得だよ」
今作の欠点〜軍事オタクが脚本を担当する難しさ〜
では、いよいよ映画版の評価になりますが……
やっぱり、鈴木貴昭の影響が大きかったなぁ……
カエル「今作の原案を務めていたり、それこそ『ガルパン』をはじめとして多くの軍事描写の考証などおこなっており、テレビシリーズでも脚本を書いていた鈴木貴昭が脚本を務めています」
主「今作がガルパンっぽいって言われる要因の1つが鈴木貴昭&吉田玲子の組み合わせだろう。
でさ……やっぱり、軍事オタクだからか、語りすぎちゃうんだよね。
この辺りの心情ってなんとなく想像できるものがあって、知識勝負をしようとしているわけではないと思うんだよ。ただ『観客にわかりやすく伝えよう』とした結果、説明の応酬になってしまっている印象がある」
カエル「これが軍事考証(リアリティ)とのバランスかぁ……」
主「ぶっちゃけさ、ガルパンが好きな人って確かに軍事オタクも多い。だけれど”戦車は一切わからないけれどキャラが好き”って人もたくさんいるんだよ。で、調べてみたらこんなに細かく描写をしている! となっていく。
軍事を知らなくても面白い、それが理想だと自分は思う。
だけれど、今作は戦艦うんちくをメインとしすぎたのかなぁ、という印象があった。
それから、細かいことを言えば序盤から中盤に入るあたりでゲームによる模擬戦があるけれど、そのルールなどはなんとなくしかわからなくて、見ていて面白みがあまりなかった。この辺りはもっと大きな嘘を……本当にドンパチやりあうとかもありだったかもね。
もちろんそのあとの流れもあるのも理解できるけれど」
全体のバランスとラストの持っていき方の問題
ちょっとだけネタバレになるかもしれないポイントですので、ご注意ください
……今作最大の欠点が”テーマの不在”なんじゃないかなぁ
カエル「一応、ある登場人物の成長がテーマと言えなくはないけれど……」
主「それをテーマにするには、今作の流れはおかしいよね。
- 序盤→多くのキャラクターを出してオールスター感を出す
- 中盤→一部のキャラクターの活躍を描く
- 後半→おなじみのメンツの活躍を描く
こういう流れだけれど、では”1本筋の通ったテーマ”とはなんだったのか? という思いが強い。最初に今作のラストにつながる伏線が張られるけれど、中盤などにちょいちょい挾みはするけれど、それがメインの物語には繋がらない印象があった。
だから、この話が何をしたかったのか、それが散漫になってしまった印象がある。
オールスタームービーであるのはわかるけれど……その部分を取っても、ちょっと中途半端な印象を受けたかな。
ただし、物語が致命的に破綻しているとか、そういう部分は感じなかったから、十分許容範囲だろう。
本当に悪くないんだよ、だけれど良くもない。
そういう作品ってどうなんだろう……自分なんかは、無難って1番ダメなパターンなのかもなって思いもあったり……
1年後にこの作品を覚えている人はファンだけになってしまうのではないか? という懸念があるかなぁ」