物語る亀

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物語愛好者の雑文

機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096 12話までの(ガンダムUC Eepisode 4) 感想

亀爺(以下亀)

「ユニコーンも半分終わったの」

カエル君(以下カエル)

「1度OVAで見ているとはいえ、面白いよね」

 

カエル「Eepisode 4は主も1番好きだっていうよね」

亀「まあ、ガンダムに何を求めるかによって評価は変わるじゃろうが、1番好きなガンダムは0080と言っているような人間には好評価じゃろうな。戦闘面に関してはもっとすごいエピソードもあるし、どうしても目玉は懐かしのMS大集合になってしまうから、派手さがない分評価しないという気持ちもわかるの」

 

 

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 Eepisode 4のあらすじ

 宇宙から降下してきたジンネマンたちは砂漠に不時着するものの、ギルボア不在の船は着陸に失敗してしまう。ジンネマンとバナージは二人で砂漠を歩き、自力で助けを呼びに行くことになる。

 恩人であるギルボアをその手で討ち、さらにダグザの死を目の前で見てしまったバナージの気分が晴れるわけもなく落ち込んでしまうのだが、ジンネマンの言葉により、戦争の悲しみを痛感する。

 

 一方、リディと共に地球へ降下したオードリーであったが、匿ってくれるはずであったマーセナス家にもビスト財団のマーサから圧力がかかり、守り抜くことができなくなってしまう。さらにリディはラプラスの箱とマーセナス家、ビスタ財団の真実を知り絶望する。

 そしてオードリーを守るために形だけでも求婚するのだが、オードリーは逃げ出してしまう。

 逃げ出したオードリーはその先に着いた喫茶店でのマスターとの会話で何かを決意する。

 

 砂漠を抜けたバナージはネオジオン残党のロニと出会う。そしてユニコーンが示した次の座標であるトリントン基地襲撃を始めるネオジオン軍と、それを止めたいバナージの思いが交錯する……

 

全体の流れからのEP4の立ち位置

カエル「今回はラプラスの箱とかについて、新しくわかったことはなかったね」

亀「そうじゃな。全体の流れからするとちょうど半分に位置するのがこのEP4じゃが、大まかな状況にはそこまで変化がない。ラプラスの箱の正体やありかは分からんし、誰か重要人物が倒れることもない。ロニは倒れるが、結局はこの話にしか登場しないキャラクターじゃからの。

 おそらく、UCをさらに短い1本の映画にした時、1番削られるのはこのエピソードかもしれんな。じゃが、この話で重要なのは、バナージ、オードリー、マリーダ、リディなどの重要人物が変化していく過程にあるんじゃ

 今回はここを中心に話していくぞい」

 

 

2 キャラクターの変化

カエル「今回は大きな変化を迎えたキャラクターはいなかったけれど、じわじわとくるお話が多かったよね。特にバナージの砂漠の場面とオードリーの喫茶店の場面がすごく感動したよ

亀「このエピソードではキャラクターの深掘りに焦点を当てておる。例えばバナージは砂漠において恩人を自ら落としてしまったことに、自責の念に駆られておるが、そこを救うのがジンネマンじゃ。

 どうしても映画や物語の中で戦争を描くと、敵というのは鬼畜な悪魔だというふうな描き方をされてしまうのが常じゃ。テロリストやナチスは悪で、連合軍は正義とな。じゃが、正義と悪なんて歴史とその国が置かれた状況などに左右されるものであるのは明白じゃ。

 過去の記事で『ガンダムの魅力は敵が悪とされていないことだ』と書いてあるが、今回はネオジオンと行動を共にすることで、彼ら側の正義と戦う理由が開示される。バナージが学ぶのは戦争の悲惨さじゃ

 

カエル「『……ああ、哀しいな。哀しくなくするために生きているはずなのに、なんでだろうな……』

『何があっても泣かないなんて奴を、俺は信用しない』

 この辺りはユニコーン屈指の名言だよね」

 

亀「一方のオードリーはというと、名もなきダイナーの主人と会話をする。メタにいうとこの相手がオードリー……いや、ミネバの叔父にあたるガルマの中の人というのも重要じゃな。すでに亡くなってしまったガルマを映すには、こういう風にするしかなかったのじゃろう。

 老主人の理念は『全ては善意から始まった』というものじゃ。これはわしも納得するものでな、連邦の、ジオンの、そのはるか昔の時代から続く、それぞれの『正しい』という信念で時代は動いておる。

 じゃが、当たり前のことながら正義と正義、善意と善意はぶつかり合う時もある。だから戦争が起き、最後にはあのような末路になってしまった……」

 

カエル「現実の戦争もイスラム過激派だって、自分の信じるイスラム教が唯一絶対の宗教だから、それを広めようという『善意』のつもりで戦争しているのかもしれないね」

 

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3 裏の主人公『リディ』と『マリーダ』

亀「この作品の主人公は当然バナージであり、ヒロインはオードリーじゃが、もう一人の裏の主人公として存在しているのがリディとマリーダじゃ

カエル「裏の主人公?」

亀「そうじゃ。主人公の対になる存在、ライバルであり兄貴分である存在じゃな。例えばファーストガンダムはアムロに対するシャアみたいな存在じゃ」

カエル「リディは何となくわかるけれど、マリーダもそれに入るの?」

 

亀「わしの考えではな。正確には裏ヒロインというべきか。マリーダについてはEP6にでも話をするかの……

 リディに与えられた役割は『もう一つのバナージ』じゃ。実家であるマーセナス家とビスタ財団はこの騒動の原因と言える共犯関係にある家で、その呪縛という意味では二人とも立っている土台は同じだった……愛する女性も含めてな。

 ではリディとバナージを決定的に分けたものはなんじゃったのか……わしは、『人間の可能性』を信じられたか否かだと思うのじゃ」

カエル「人間の可能性?」

 

亀「そう。ガンダムにおいてはニュータイプ論争のように重要なテーマとなっておる。リディは軍人らしく、人間の可能性を信じることはせず、あくまでもリアリズムでもって行動しておった。一方のバナージは学生ということもあって、どうして戦わなければいけないのか、人間の可能性を信じて、時に裏切られて傷ついておった。

 だが、どれだけ苦しくても決してその可能性を信じることを諦めることはしなかったんじゃ。そして2人を分かつ決定的な出来事が起こる」

カエル「撃てません、のシーンだね」

 

亀「『可能性に殺されるぞ』なんてのは、それを象徴する言葉じゃな。

 あのシーンにおいてどちらが正しいのか、というと意見が割れるじゃろうが、わしはリディだと思う。軍人の責務として聞き入れるかわからん説得をするよりも、確実に撃って無効化するというのは理にかなっておるしの。

 じゃが、ここで撃ってしまったリディと撃たなかったバナージの差というのは、この先さらに大きくなっていくのじゃ。

 あのシーン自体が原作からの改変ということもあって賛否はあるようじゃが、ユニコーンという作品は人間の可能性を信じるというのがテーマの作品ということをOVA版は徹底しておる。わしは良改変じゃと思っとる」

 

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4 『血』に縛られしものの物語

カエル「でもさ、EP4に不満を持つ人の不満点は、やっぱりロニさんの描写があまりにも薄いことだよね。バナージがそれほど入れ込む理由がわからないっていうかさ。原作や漫画版を読んでいたら、納得出来る流れでもあるんだけど……」

亀「それはそうじゃの。描写の薄さは仕方ない時間の尺が決まっておる以上、仕方ない部分ではあるが……

 だがロニの役割もまた、大事なものなのじゃ」

カエル「役割?」

 

亀「そう。先に挙げた通りバナージもリディも自覚はないかもしれんが、家の宿命を背負って生きておる。もちろんオードリー……いやミネバも『ザビ家の最後のひとり』という宿命を背負っておるし、マリーダも『プルシリーズ』としての宿命を背負っておる。

 そしてそれはロニもまた同じじゃ。ロニは父親の残したシャンブロで一方的な戦闘を繰り広げるが、その理由は父と母の仇を討つという復讐じゃ。もちろんこれも大きな理由ではあるが、父も母も連邦と戦って死んでおる。このように戦いに身を投じる一族であるし、宿命を果たすためならば民間人に銃口を向けることすらも構わない女性じゃ。

 ロニもまた、その宿命に縛られてしまったものじゃ。だが、バナージと語り合うことでそれから解放されたように見えるものの、全ては後の祭りとなっておる。それが最期のセリフ『哀しいね』に全て込められておる。

 ……宿命に縛られた者、というと、もうひとりおるがその話は今度にしよう」

 

 

最後に

カエル「EP4ってそんなにテーマとかキャラクター性とか、大切な話なんだね」

亀「そうじゃな。派手な戦闘シーンばかりではなく、こういったキャラクターを深掘りするシーンを入れていくことによって、その後に繋がっていく。そしてその言葉の力も相まって、より見る者の心に残る作品になるんじゃ。

 特にUCは脇役を含めて様々なキャラクターの魅力で成り立っておる。もしかしたら、もうキャラクターではなく、人物といった方がいいかもしれんの……」

カエル「次はいよいよバンシィ登場から一気に盛り上がるね! すごく楽しみ!」

亀「これはまだまだ目を離せぬな」

 

 

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