カエルくん(以下カエル)
「今週もアニメ映画が続くね! しばらくはアニメ映画を語る回が増えそうだなぁ」
亀爺(以下亀)
「来週以降は日本のアニメが続くが、今回取り上げる『ソング・オブ・ザ・シー』は海外のアニメ作品じゃの」
カエル「海外アニメというとどうしてもアメリカのピクサーとか、ディズニー、ユニバーサルが思い浮かぶけれど、この作品はアイルランドのアニメなんだよね。国籍を意識してアニメを見る機会ってあまりないけれど、多分アイルランドアニメって初めてかもしれないね」
亀「日本に住んでおるとアニメが自国で作られているのが当たり前に感じるかもしれんが、世界で見ると自国で作られるアニメがテレビでこれだけ放送している国もないじゃろうな。海外の子供たちは、日本産とは知らずに日本のアニメを楽しんでおるんじゃないかの?」
カエル「そしてこれだけ日本でアニメが作られると、海外アニメを見る機会って中々ないよね」
亀「それこそアメリカの大手メディアのアニメばっかりじゃな。その意味でも今回は楽しみじゃ」
万人に支持される名作
亀「まず、いきなり結論から言ってしまうと、今作品は素晴らしい名作じゃの」
カエル「急だね!」
亀「名作の条件というのはわしは2つあると思っておる。
1つは『誰にでも受け入れられて、減点をされにくい作品』
これは何かというと、例えば『バック・トゥ・ザ・フューチャー』とか、アニメでいうと宮崎駿作品じゃな。これらの作品は観客の多くが満足し、誰もが悪口を言いにくい、致命的な悪い部分がない作品じゃ。
もう1つが『賛否はあれども、カルトな人気を誇る作品』
これは最近でいうと『シン・ゴジラ』だったり、あとはアニメでいうと押井作品や今敏作品があがるじゃろう。好き嫌いが分かれるものの、ファンの熱意が強く、名作と呼ばれるだけのエネルギーを持っている作品じゃ。
今作は前者の『誰にでも受け入れられて、減点をされにくい作品』に該当するの」
カエル「誰もが認める名作ってことだね」
亀「そうじゃな。それだけの普遍性を持ち、おそらく何十年先までも残るような傑作に仕上がっておる。
これから子供連れで行こうと思っている親御さんにも安心して見てもらえる内容じゃ。ただ、わしは字幕で見たが、台詞の量が多いので子供には吹き替えの方がいいかもしれんの」
音楽と絵の融合
カエル「このブログでは何度も言っていると思うけれど、アニメにおける絵と音楽の融合ってすごい大事だよね! 今作はその歌の雰囲気もすごくいいし、楽しいよね!」
亀「静かに流れるシーンもあれば、大勢で一気に盛り上げるシーンもあるからの、見ているこちらも飽きずにいられるわい。
それから、キャラクターが日本のアニメ風ではないものの、わしはすごく可愛らしく思ったの。妹のシアーシャのけなげなんだけれども実は意志が強いところとか、兄のベンの元気でいたずらっ子だけれど、本当は寂しいところなど、キャラクターの描写が非常にうまくできておったな」
カエル「基本的にキャラクター造形が丸でできているんだよね。あれだよね、アンパンマン効果っていうかさ」
亀「ドラえもん、クレヨンしんちゃん、アンパンマン、ミッキーマウス、キティちゃんなどの多くの子供に人気のキャラクターは基本的に丸でできているというキャラクター造形じゃな。
それがあるからこそ、子どもにも喜んで受け入れてもらえるのではないかの? 特に犬とアザラシは人気が出るじゃろうな」
以下ネタバレあり
優しい世界
カエル「最初はお兄ちゃんも嫌な子供だったけれど、成長したりさ、その心に抱えている寂しさとかが伝わってきたよね」
亀「今作のうまいところは、やはりバランスの良さじゃな。物語を作る上では明確な悪役だったり、誰かが嫌な人にならねばならなかったりするもんじゃ。特にこの作品のような大冒険となると、ゴールを邪魔する敵……今作でいうとフクロウや、マカの魔女じゃな、そういった存在が必要になる。
じゃが、本作はその敵だったり、お兄ちゃんなども成長や意地悪をする理由を描くことによって、心底悪い敵というものを作らないようにしておるの」
カエル「最初はお婆ちゃんも嫌な奴だなって思っていたし、実は黒幕はこのお婆ちゃんなんじゃ? と疑っていたけれど、ただ不器用なだけなんだよね。本当に孫を心配しているし、嫁があんなことになったから、その気持ちもわかるし」
亀「お兄ちゃんも母親を失った悲しみもわかるけれど、妹ばかりに目がいく父や祖母などを見て、意地悪したくなる気持ちもわからんでもないからの……それをセリフではなく、絵で説明することができておった。
マカの魔女も息子を哀れんで石にして、さらにその感情に耐えられなくて魔法で封印するという、悲しき存在じゃった。描き方が良かったの」
作画面について
カエル「本当に素晴らしいよね。うっとりするような美しさだった。特にさ、動物が可愛いというのもあるし、最初に飛び込んだ海の中とかも素晴らしかったよね。
なんだろう、黒くない『まどか☆マギカ』というか、ファンタジーでありながら新しさを感じるというか……」
亀「これはインタビュー記事に書いてあったのじゃが『CGと2Dは対立しない』という言葉が印象的じゃった。
わしらはどうしてもアメリカの大手アニメ会社だったり、日本のアニメ制作の流れを考えると手書きの発展系がCGであると考えがちじゃ。しかし、そうではなくて『手書きの可能性を広げるのが CGなんだ』という監督の考え方には恐れいったわい」
カエル「そういえばさ、少し前に記事を書いた『ちえりとチェリー』もそうだったね。あれはパペットアニメ(人形を使ったアニメ)だったけれど、CGを背景などで効果的に使うことによって、新しいパペットアニメになっていたよね」
亀「スタジオジブリなどもそうじゃが、手書きで描かれた2Dのアニメで、このような神話的なファンタジー作品というのは、やはり永続性があるの。時代が経ても廃れないし、誰が見ても不思議とノスタルジーを感じてしまう。
逆にCGは現代ではファンタジーよりもSFの方に向いておると思っておるが、こういう形で融合することによって、また新たな可能性を引き出したかもしれんの」
ジブリの影がチラチラと
カエル「やっぱり監督も語っていたけれど、ジブリや宮崎駿の影響にあるなって思うシーンがちょこちょこあったよね。例えばさ、大きな犬に抱きつくシーンとかは、あれはトトロに通じるものがあったし、犬に乗って移動するのはそのままネコバスでしょ?」
亀「さらに海にシーンなどはポニョの影響もあるようじゃ。アニメにおけるファンタジーというジャンルはジブリと宮崎駿が大体やり尽くしたというのは、主の持論であるがの、やはりそれは国境を越えても一緒かの。
特にこの監督はジブリや宮崎、高畑も好きなようじゃが、その元となった東映動画のファンというのも大きいのかもしれんの」
カエル「今やジブリは宮崎駿が引退していこう、どうなるか不透明な状態じゃない? 来月には『レッドタートル ある島の物語』も公開されるらしいけれど、おそらく今までのジブリとは全く違うものになると言われているし」
亀「メディアもファンもポスト宮崎駿などと言って、細田守や新海誠を持ち上げておるようじゃが、そんなものはすでにないと自覚するべきじゃな。ポスト黒澤明の位置に座ったのは誰じゃ? そんな監督、おらんじゃろ?
日本においてはジブリやジブリ出身者がおり、海外ではその影響を受けた監督がいるという事実を大切にするべきじゃ。
必要なのは『宮崎駿』というわかりやすい名前ではなく、その志や技術を継ぐ次の世代が出てくることなのじゃから」
最後に
カエル「今回は単純だし、特に裏設定もなさそうだから、安心して観ていられるよね」
亀「そうじゃの。近年の子供向けアニメというと、アメリカが圧倒的なクオリティを持って元気に笑えて泣ける作品を作り上げ、日本はキャラクターアニメ映画作品を作りながら、『ルドルフとイッパイアッテナ』のようなアメリカのようなアニメ映画や、大人(オタク)むけアニメ映画を製作しておる。
どうじゃろうな、今作のような雰囲気を持ったアニメ映画というと、意外と今は無くなってしまったのではないかの?」
カエル「それこそ昔の手書き時代のディズニー映画とか、東映動画のような情緒的で幻想的な世界観だけど、最近はすっかり見なくなったよね」
亀「もしかしたらその原因の一つとしてCG技術の発達があるのかもしれんが、今作はそんな昔の作品の良さを思い出させてくれるような作品に仕上がったの」
カエル「僕たちもアニメ化をするときは、こういう雰囲気で作ってもらいたいもんだね」
亀「……この路線もいいがの、わしはピクサーの元気に笑えて泣ける路線も捨て難いぞ」
カエル「そうね……いっそのこと、ジブリさんの再建のために僕たちが一肌ぬぎますか! キャラクターデザインから何から、好きにしてもいいよ!!」
亀「わしは逆にIGや白組あたりにCGをたくさん使ってグリグリと動かしてほしい気もするのぉ……こういう話をしておれば、実は有名キャラクターなのではないかと勘違いする偉いプロデューサーとか現れないかの」
カエル「夢は大きく、ね! 妖精だっているんだもの、僕たちが夢を持ってもいいじゃないか!!」
(彼らの夢が叶う日は……多分来ないだろうなぁ)

ソング・オブ・ザ・シー 海のうた?オリジナル・サウンドトラック
- アーティスト: Various artists
- 出版社/メーカー: Universal Music LLC
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