カエルくん(以下カエル)
「今回は漫画『とつくにの少女』の紹介記事だね」
亀爺(以下亀)
「最近は『魔法使いの嫁』を筆頭に、少女と人外系の交流漫画が増えてきたような気がするの」
カエル「ファンタジー色の強い作品が人気だよね。グルメ漫画ブームもひとしきり過ぎたかなっておもったら『ダンジョン飯』が一気に流行ったし」
亀「発行元のマックガーデンからしたら、魔法使いの嫁の大ヒットを受けて二匹目のドジョウを狙ったのかもしれんが……しかし、普通は二匹目は一匹目よりも小さいはずであるのに、もしかしたらこの作品、魔法使いの嫁を超えるかもしれんぞ」
カエル「どうかなぁ。魔法使いの嫁の方がなんというか、漫画的だし、とつくにはそこまで万人受けではないような気もするけれど……」
亀「そうかの? しかし、これから先が楽しみな作品ではあるの」
カエル「じゃあ、紹介と感想スタート!」
あらすじ
この世界は二つの国に分けられていた。
人ならざる異形の者が住む『外つ国』と、人が住む『内つ国』
二つの世界が交わることは決してなかった。その理由は外つ国に住む、異形の者が持つ『呪い』のせいであった。異形の者が触れたものには『呪い』がつき、醜い姿=異形の者になってしまうのだ。
そんな『外つ国』において、人の少女と異形の者が暮らしていた。
女の子はシーヴァ。
異形の者は『先生』
平穏に暮らして二人だったが、その日常は長くは続かなかった……
登場人物紹介
シーヴァ
本作の主人公の少女。
まだ幼く、セリフは全てひらがなで表記される。
年相応に天真爛漫な少女で、人であれば誰もが恐れる異形の者である先生を恐れない。いつかは自分を育てたおばさんが迎えに来ると信じている。
先生
シーヴァの保護者。
外つ国の者であり、人には恐れられる存在であるが性根は優しく、森に捨てられたシーヴァを拾い、育てている。
シーヴァに呪いを移さないように触らないように注意しながら、二人での生活を送っている。シーヴァのためならば暴力をも辞さない模様。
なお、矢が刺さっても死ぬことはない。
感想と魅力紹介
カエル「まずはなんといっても、この世界観だよね」
亀「独特な筆致から描かれる世界観というのは、見るものを圧倒するものがあるの。以前に紹介した『くまとやまねこ』という絵本があるが、それの絵を担当した酒井駒子に絵のタッチは似ておるように思うの」
カエル「光と影の陰影が主な絵のタッチなんだけどさ、人であるシーヴァや内つ国の人が白を基調としたデザインなのに対して、森や造形、先生などの外つ国の異形たちが黒を基調としているから、対比効果として抜群だよね」
亀「このような絵で漫画を描くというのは中々大変じゃろうが、他の漫画作品とは違った魅力を醸し出しておるの。普通の漫画というとトーンだったり、ペンがどうこうという話になりがちじゃが、こういう……デジタルでは難しい表現で描くという部分にまだまだ漫画という表現の持つ可能性を感じさせてくれるの」
カエル「この絵のタッチがあるから、2巻の帯にあったように漫画というよりも詩とか絵本とかのような印象を受けるよね」
亀「うむ。それも含めて非常にいい雰囲気になっておる。強いて難点を言うならば、動きとなると見づらいところかの? 影の描写が多くなってしまうために、今どのような動きをしているのか分かりづらかったり、背景と人物がごっちゃになってしまうシーンもあったかの」
カエル「でもさ、それほど激しいアクションを求められている話でもないじゃん? 静かに、ゆっくりと進行していくこの空気感がすごく好きだけどなぁ」
亀「特にお気に入りの場面はどこじゃ?」
カエル「1巻のこの部分だね」
カエル「シーヴァが傘を持って森を出かけているけれど、この陰影のつけ方だったり、人物と背景のバランスだったり、すごく好き! ここで一気に引き込まれて、思わずため息が出ちゃった!
ここだけ引き伸ばして部屋に飾りたいくらいだよ!」
亀「このような特徴的な場面も次々と出てくるからの、絵のタッチから目が離せん」
引きがうまい
カエル「特にこの作品を読んでいて思うのが……まあ、その巻数の最後の話の終わり方がうまいよね。
『え? どうなっちゃうの!?』って気になる引きをしている」
亀「最近でいうと引きがうまい漫画というと『僕だけがいない街』があったが、そこまでミステリーやサスペンス風味が強くないが、そこはキャラクターの魅力だったり、絵の魅力でカバーしておるの」
カエル「早く次の巻が読みたい! ってなるよね!」
亀「そうじゃの。ここから先どうなるか、楽しみじゃな」
最後に
カエル「これだけ独特の絵の作品だけど、結構注目を集めるんじゃないかな? それこそ、来年の漫画大賞とかノミネートされたりして!」
亀「漫画にも大きく分けて『エンタメ系』の作品と、純文学ならぬ『純漫画系』の作品があると思うが……つまりは娯楽として楽しめる漫画と、漫画としての最先端だったり、表現の幅を広げることに挑戦する作品に大別すると別れると思っておる。
もちろん、どの作品もいろいろな試みはされておるから、はっきりと2分できる作品ばかりではないじゃろうが……」
カエル「この作品はその純漫画系になるのかな? それでも娯楽としても面白いけれどね。
どうせならカエルも描いて欲しいな!! 池の周辺とかにちょっといるだけでいいけれど!」
亀「いやいやいや、そこはやはり亀じゃろう。この筆致で描かれた亀など、それこそ芸術品じゃぞ?」
カエル「それは亀爺の願望でしょ? カエルだって十分芸術的になるよ!」
亀「さて、それはどうかの? カエルは賛否が分かれるし……」
以下 見苦しいため割愛
そして終了 作品は素晴らしいのでオススメします!