ブログ主(以下主)
「今年は本当にヒーロー映画が多いね。
毎月何らかの大作ヒーロー映画が公開している気がする」
亀爺(以下亀)
「2代巨頭がこぞって映画化して、作品を発表している段階じゃからな。そりゃあ、作品の数も多くなっていくことじゃろう」
主「みんな大好きだからねぇ。
もちろん、全部のヒーロー映画が苦手ということじゃないけれど……まあ、苦手な作品が多いかなぁ」
亀「好きな作品も『ダークナイト』や『デットプール』『LOGAN ローガン』などのヒーロー映画のお約束とは少し離れた映画といえるからの。
探せば色々とはまる映画もあるのかもしれんが……」
主「シリーズが長いから、今から追うのが辛いってのが本音だよね。スターウォーズみたいに昔から見ていたなら、今でも追うことができるけれどさ……今から全部見ますか? なんて聞かれたら、まず無理って答える。
『猿の惑星』シリーズなどもそうだけれど、話は壮大だし、シリーズも長く続いているしで、新規参入が難しいんだよなぁ」
亀「アニメも似たようなものじゃがの。
今から『機動戦士ガンダム』であったり『Fate』シリーズに入門しようと思うと、膨大な数の作品を観る必要が出てくる。それを経ないとわからない味や設定などもあるからの。
まあ、若い時でもなければ追うことも難しくなってくるかもしれん」
主「シリーズ化した作品ってさ、ファンは付いているしネームバリューもあるけれど、それがかえって敷居の高さにつながってしまうところもあるよねって話で……
ご新規さんを大切にするのか、ファンを大切にするのかって対立することではないにしろ、共存させるのも非常に難しいし。その意味ではハリウッドは結構うまくやっていると思う。このシリーズに限らず、途中から見てもわかるようには作ろうとしているし」
亀「そんなわけで今回もあまり予習することもなくワンダーウーマンを見ることになるが……その感想を書いていくとするかの」
1 感想
亀「では、まずはざっくりとした感想から書いていこうかの。
ワンダーウーマン
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2017年8月25日
う〜ん……薄々勘付いていたけれどヒーロー映画と相性が良くない
今作もつまらなくはないけれど、よく言えばバランスがいい、悪く言えば突き抜けない映画だった
これ、ハリウッドのアクション映画全般に言えるけど画面が暗いのが気になるし……
主「まとまっている、手堅い映画だよ。
いろいろな要素をバランス良く組み立てて構成することに成功している。ちょっと苦言を呈するようなTweetではあるけれど、酷評ではない。ただ、個人的に合わなかったというのが本音というだけ」
亀「バランスがいいのに不満というのは、どういうことなのかの?」
主「う〜ん……
この映画ってさ、みんなはアクション映画として、ヒーロー映画として見に行くだろうけれど、どの部分がメインの見せ場になっているのか? と言われると、少し微妙な気がするんだよ。
例えば今作の世界は第一次世界大戦中で戦争映画としての側面もあるわけだ。さらにいえばある種のスパイアクションものでもあり、バディムービーでもあり、恋愛映画でもあり、もちろんアクション映画でもある。
じゃあ、この映画の最大の売りってどこだったんですか? と言われると……それはこれ! ってものがないんじゃないの? って話でさ」
亀「突き抜けたものがない、ということかの?」
主「ジャンルが行方不明になっている印象もあるんだよね。
『いやいや、この映画はヒーロー映画だろ?』って意見が聞こえてきそうだけれど……自分はこの映画をヒーロー映画とは呼びたくない。正義のヒーローを語る上では、絶対にやってほしくないことをしてしまっている。それは直接的なネタバレになってしまうからさ、後々話すけれど」
亀「今回も荒れそうな記事になりそうじゃの」
主「でも、全体的にはそこまでおかしいものだとも思っていないよ。サスペンス、アクション、恋愛、ミステリー、コメディ……それぞれの要素が盛り込まれている。ただ、それが全部70点から80点くらいまとまっちゃっている気がするだけでさ。
自分は100点と0点が混在しているような、賛否がはっきりと分かれるような映画の方が好きだからさ。それくらい突き抜けたものが欲しかった。だけれど、この映画が取り組んだテーマであったり、あとはにわかだけれどさ、DCEUがどんな状態なのかは、こんなブログをやっていれば嫌でも聞こえてくるわけよ。
そのプレッシャーもある中でもこの作品を作り上げたということは賞賛するべきだと思うし、海外の評価が高いのもうなづける。その理由も後で説明する」
亀「……ヒーロー映画に詳しくないのに語るとは、改めて考えてみると中々じゃの」
主「まあ、そうでもないと語れないアニメ映画もあるからさ」
確かに美しく、彼女の魅力がたくさん出ていました
保守的な映画?
亀「実は一部ではワンダーウーマンという作品に対する評が割れておって、アメリカ本国ではジェームズ・キャメロンが苦言を呈したことでも話題になっておるの」
主「他にもガル・ガドットの発言などが物議を醸しているらしいけれど、それはもうどうでもいい。そこは今回問題にはしないし……はっきりと言えばこの映画らしいとすら思う。
この映画って保守的な映画だな、という印象を受けたね」
亀「ふむ……これも実は日本では一部で言われておることではあるがの」
主「まあ、先述のように物語自体も結構守りに入っている。色々な要素を入れて、それを整えていて……というのもあるんだけれど、なんだかさ、基本的に古い映画や物語のような作品だな、という印象が強いんだよ」
亀「元々漫画があって、それが古いということも関係しておるのかもしれんがの」
主「う〜ん……
今作の基本的なプロットって『ターザン』なわけじゃない? 頭のいい紳士のような原作と野蛮人である映画版のちょうど中間ぐらいの知能などの設定にはなっているけれど……孤立したジャングルの中で育ったターザンと、アマゾネスの島で育ったダイアナとか、外から来た異性の影響によって外の世界を知るとか……かなりの類似点がある。
別にそれはいいんだけれど……今作ってその古典的な物語から全く逸脱していないように見えるわけだ」
亀「外に出て行った田舎者は町の常識などに戸惑いながらも、目的を達成するために時には戦うというのは、確かに童話などでもありそうじゃの」
主「今作の『ストーリー』が女性である必要性があったのか? というのも疑問の1つでさ。男性であるターザンを女性に変えただけのようにも見えるわけだよ。
あのラストも含めて英雄譚では王道の物語であるし、アメリカなど全世界で評価されたという割には案外普通だなぁって。もっと女性じゃないとできない描写などを足していくのかと思いきや、別にそうでもない。ジェンダー論からしても平凡。
そういうところが違和感があったかな」
以下ネタバレあり
2 今作をヒーロー映画と認めたくない理由
亀「では、いきなり核心をついていくがの……今作をヒーロー映画として認めたくない理由とは何かの?」
主「すごく単純な理由だよ。
この映画がプロパガンダ映画になっているから。
いや、映画というのはある種のプロパガンダではあるんだよ。例えば今のアメリカや日本で『民主主義って素晴らしいよ』というメッセージを発したら誰も疑問に思わないけれど、それは明確なプロパガンダであって、中国などでは上映できなくなる。
最近では性同一性障害だとか、同性愛はOK、むしろ尊重しようよという作品が多く公開されているけれど、国によってはそれはNGで死刑だってありえる。むしろ、アメリカですら賛否が分かれるデリケートな問題だね」
亀「日本でいうならば『移民を受け入れることが世界を救う!』などというメッセージの作品があれば、賛否が分かれるじゃろうな。西洋では当たり前の価値観じゃが、それが日本や他の文化圏でも同じ価値観とは限らない、というのは説明するまでもない当たり前の話じゃ」
主「別にプロパガンダ映画なのはいいんだよ。自分が感動した映画だって、プロパガンダみたいなところは絶対あるし。
『強いメッセージ性に感動しました』って、それはもうプロパガンダだろうし。
ただ、その内容が気に食わなかった」
亀「やはり、敵がドイツというところかの?」
主「そうねぇ。
結局さ、この映画を見ているとドイツが悪者でイギリスが正義、みたいに見えてくるのよ。確かにアレスに唆されたのかもしれないし、ドイツが一方的な悪だとは描いていないのかもしれないけれどさ、現実の戦争に対してヒーローが介入する際に勝者の陣営につくことに違和感がある」
亀「大量破壊兵器がダメだ! というのはもっともなことではあるが、ではイギリスなどの連合国側は何もしていないのか? と言うと、そんなわけはないしの。あの時代に関して言えば、どこの国も非道なことの100や200はやっておるのじゃろうな。ただ、それをうまく隠匿したか、誤魔化したかというこでしかないじゃろう」
主「マスタードガスは確かに歴史的事実だけれど、どこの国も似たようなことはやっていたはずでさ。
さらに言えば、今アメリカなどの西洋諸国が頭を悩ませているテロリストだって、アメリカなどが支援してきた歴史があるわけだ。100年前の話じゃないよ、ほんの30年とか、そこらの話。まるでテロリストが正義の使徒であり、ソ連と戦う映画だってあったわけだ。
正義って……そんなもんだよ。
状況が変われば正義も変わる。
だからやなせたかしは『飢えている人に食事を分けてあげる人がヒーローだ』と言って、アンパンマンを作った」
亀「そういうヒーロー像とはわけが違うのは重々承知じゃが……やはり考えてしまうかの」
主「結局連合国側や、勝った方が正義なんですかって言いたくなった。ドイツや日本が悪いで終わりですか? って。
いつまでそれを続けるんだ?
悪と称される相手がドイツなどから近代では共産圏になり、今ではイスラムに変わっただけじゃないかって思いもある。普段の架空の悪党であればこんなことは思わないだろうけれど、今作は明確に歴史を語ってしまっているから余計に気になったね」
スティーブ君はいい人だけれど、連合国がみんなそうだとは限らないよね
結局のところ……
主「それでいうと、最終決戦もすごく気になったね」
亀「最終決戦というとアレスとの戦いかの?」
主「そうそう。
作中では『トップを倒したからと言って終わるほど単純ではない』みたいなことを言っていたのに、結局アレスを倒して全部おしまいなんだってのが拍子抜けした。おとぎ話と違うんだよ、人間の世界ってもっと複雑なんだよと教えた直後だったのに、結局はそうなってしまっている。
それが映画としての終わり方としてはありだと思うし、わかるんだけれどさ。メッセージと内容の乖離が激しいよね」
亀「そのあとに人間同士の戦いに関与するわけにはいかんしの。それこそ『るろうに剣心』になってしまうし……」
主「それで『私は彼のことを胸に抱きながら生きるのよ』でしょ? 綺麗だけれどさ、結局恋愛関係からスタートなのかい! ってこと」
亀「ハリウッドを代表するスタジオとして例に出すが、近年のディズニー映画は『女性の解放』をテーマにした作品も多い。特に『モアナと伝説の海』に関して言えば、モアナと一緒に冒険する男性は出てきても、恋愛する対象ではなかった。恋愛を描かない、もしくは恋愛に束縛されない女性像を描いてきたんじゃな」
主「結局今作も異性愛であり、恋愛感情からスタートするんだなってさ。
日本じゃ『女は一人じゃ眠れない』が大批判を浴びていたのに……そしてその批判は当然のものかもしれないけれど、でもこの映画もその価値観からどれだけ進歩しているのか? と考えたら、そんなに進歩していない気がしてくる。
だから保守的な映画だってのは、そういうこと。
女性の解放運動を描いている割には、旧社会然とした状況からの脱出を描いているとは思えない。
自分はキャメロンの主張と同じではないけれど、後退というのはわかるよ。あ、結局こうなるのねっという印象だった。
まあ、それはそれでいいんだけれどさ、映画の話だし」
亀「近年は女性解放のお話でも『キャロル』や『ハンズ・オブ・ラブ 手のひらの勇気』といった、素晴らしい作品が生まれておる。それらに比べると、女性解放のシンボルとしながらも、力が弱い印象を受けるの」
主「そしてこの次のテーマに続くのです」
3 なぜこの映画は高評価を受けたのか?
亀「はっきりと言ってしまうが、このブログはヒーロー映画を……アクション映画を見る目がほとんどない。アニメ映画には自信があるがの。
その中で見つけた着眼点がここじゃな」
主「そのヒーロー映画やアクション映画がどのように主人公たちを描いてきたか、この1点に強く興味があるんだよね。自分はハリウッドならヒーロー映画、日本ならアニメ映画が世相を表す鏡だと考えている。
こういったヒーロー映画で何を、どのように描くかということで現代のアメリカなどが抱える問題などを分析していこう、という着眼点で語ることにする」
亀「そして、今回は『なぜワンダーウーマンが高い評価を受けたのか』ということじゃな」
主「これはもう簡単でさ。
現代における正義って誰もわからなくなっている。それはマーベルも同じで、正義の所在やその正義が本当に正義なのだろうか? と悩む映画を次々と発表しているわけだよね。これは冷戦終結後以降、本当の正義というものが見えなくなっているわけだ。
だけれど、これは間違いなく正義と呼べる存在がいるんだよ」
亀「それがワンダーウーマンじゃと?」
主「そう。
つまり、女性だよね。
女性が社会に出てバリバリ働くということ、男社会に負けないようにと戦うこと、それって多くの人が認める正義なんだよ。近年はそういう映画が多いでしょ? 働く女性、頑張って! あなたをいつも応援しているよ! というような映画がさ。
ちょっと恋に仕事に疲れても、ハッピーな日が待っているわ! という映画。逆に男性主体で恋に仕事に疲れても……という映画ってあまりないよね。アクション映画があるけれど、そのアクション映画ですら『……俺のやっていることは正しいのか?』って悩むような映画ばかりだし」
亀「相対的なものじゃろうが、日本も男性が疲れていて女性が元気というのはよく言われる光景じゃの」
主「『牛乳石鹸CM』騒動なんてまさしくその男女の状況の違いを描いていたよね」
勇ましく、強い女性たちこそが現代のヒーロー
『男性的』な映画
主「誤解を恐れずに言わせてもらうと、この映画って結構男性的な映画なんだよね。例えばさ、あの時代の戦場の最前線に立つのは男性の仕事なわけだ。現代でも女性は少ないかもしれない。
でもその場でワンダーウーマンが立ちはだかって、剣を振るって敵を倒すわけだよ。これは男社会に切り込む女性像として成立している」
亀「ワンダーウーマンを男性として考えると、そのまま昔話のような世界になるの」
主「そしてある意味では新入社員の奮闘記とも言えるわけだ。
田舎から知り合いに誘われて都会にやってきてスーツに身を包んだけれど、内面は田舎者丸出しの新入社員が社会に飛び出していく。そしてその田舎で培ったパワーや技術でトラブルを解決していくけれど、もっと大きな問題が……といえば解りやすいじゃない?」
亀「女性のための女性の映画でもあり、社会に切り込んでいくという映画でもあり、大人になるという映画でもあるということじゃの」
主「この切り口がうまかった。そして監督もバディ・ジェンキンスという女性の監督が、それまで男性の文化であり男性主体だったヒーロー映画に、ガル・ギャドットという軍隊経験もある男社会で生きてきた女性とともに乗り込んでいくんだよ。
これだけもう現代のヒーローじゃん。
だから、この映画こそが現代の求める『正義のヒーロー』そのものなんだよ。そしてそれは女性なの。さらに言えば、男社会に切り込んでいくかっこいい女性、それこそが正義のヒーローだ」
亀「作品のテーマと監督やキャストの経歴、そして社会情勢などががっちりと噛み合ったわけじゃな」
主「自分はワンダーウーマンという作品自体ではなく、そういった座組の面ですでにこの映画は大成功していると思う。内容には思うところもあるけれど、でもこの映画にはが女性こそがヒーローだ! という明確なメッセージ性があるってことなんじゃない?」
最後に
亀「しかし、アメリカに行ったこともないのにアメリカの事情について語るの」
主「映画って本当に色々なものが出ているんだよ。もちろん、映画だけじゃないけれど、その時代に流行ったコンテンツてその国、時代について何よりも雄弁に語ってくれる。
自分がヒーロー映画を見に行く理由としたら、やっぱりそれが1番かな。賞レースを勝ち残った作品と興行的にヒットした作品、この2つには明確な理由がある。そうじゃなかったらヒットはなかなかしないから」
亀「そう考えると今回の吹き替え版も凛としていながらも強い女性を演じることも多い甲斐田裕子が演じておるのは納得じゃの」
主「吹き替え版で見たかった……! 時間がなかったから字幕版だけれど、吹き替え版は甲斐田裕子に小野大輔に、しかも榊原良子だよ!
この布陣だったら確かに納得しちゃうじゃないか!」
亀「『ガンダムUC』のマリーダ・クルスが大好きじゃから、余計に悔しいかもしれんの。特に今回は俳優陣を使わなかったしの」
主「あー、悔しい! 多分印象も全然違ったんだろうなぁ!
甲斐田さんの声質って凛としてかっこいんだけれど、母性や女性の柔らかさがあって、絶対この作品とピッタリだったのに!」
亀「……ここまで吹き替え版にこだわる人間も珍しいじゃろうな」
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