カエルくん(以下カエル)
「なんだか久々の更新な気がするなぁ」
ブログ主(以下主)
「ここ最近ずっと同人誌を書くのに集中していたから、物語感想記事は久々な気がする。まあ、サバイバルファミリーの記事はアップしたけれどねぇ」
カエル「サバイバルファミリーも意外と伸びなかったねぇ。ここ最近アクセス数が右肩下がりだよ」
主「もう気にするレベルすら超えて、どうでもよくなってきたレベルだよ……それだけ君の名は。やシンゴジラ、この世界の片隅に、の人気が素晴らしかったということだろうね」
カエル「しかも1日以上空いた上での新作テレビアニメーションである『リトル・ウィッチ・アカデミア』の感想記事だしねぇ。
本当は月曜日中にアップできたら最高だったけれど……疲れていたんだろうねぇ」
主「ここからここ数週間お休みしていた分も含めて色々な作品の記事をアップしていきます。怒涛の勢いで更新していくので、楽しみにしていてよ!」
カエル「……毎日そんなことを言いながら『記事を1つ書くのも大変だぁ!』って言って量産できていないけれどね」
主「頑張るぞ! ドメインパワーをつけていこう! アニメだ! 映画だ! 漫画だ! 小説だぁ!」
カエル「あ、全然やっていないけれど過去記事のリテイクも忘れずにね。漫画はスパンが激しいから、次々アップしていかないとねぇ」
1 リトル・ウィッチ・アカデミアとは?
カエル「過去にも何度も言及しているけれど、このブログではリトル・ウィッチ・アカデミアという作品をどのように捉えるか、という視点において、少し独特な点があるからそこを説明しようか」
主「何度か語ったけれど、この作品は簡単に言うと『SHIROBAKO』なんだよ。このブログではSHIROBAKOも大絶賛しているんだけど……」
カエル「SHIROBAKOを知らない人に簡単に言うと、アニメ制作会社を舞台にしたアニメで、制作進行(アニメ制作の管理を行う部署)の女の子が日々苦悩しながらアニメを作る様子を描いた2014年の大ヒットアニメだよね」
主「一言で表すと『アニメを作るアニメ』なんだけど、これ以上ないクリエイター応援歌でもある。
普通に考えたらなぜこの作品が『SHIROBAKO』と被るのか、ということは理解されづらいけれど……そのテーマというか、根幹にあるものは全く同じ。つまり、この作品って『クリエイターの葛藤と成長』を描いている」
SHIROBAKOとの共通点
主「ここまでの感想記事を読んでいない人には『何を言っているんだ?』って思われるかもしれないけれど、このブログではこのような見方をしている。
憧れのシャリオ=好きなアニメ(好きな作品)
未熟な魔女=新人、若手アニメーター
魔法=作画技術
という構図なわけだ。例えば3話の空を飛ぶ魔法が使えるというのは『空を飛ぶ作画ができる』というアッコの成長=アニメーターの成長に繋がっている。
6話でいうと変身魔法っていうのは『犬や馬の作画』つまり動物の作画のことなんだよ。キャラクターの作画はある程度できるけれど、動物の作画になると動かすことができない。耳だけが変化するというのは可愛らしさやコミカルな要素もあるけれど、それ以上に『部分的にはいいけれど、全体的にはNGな作画』というのを表している」
カエル「SHIROBAKOでもそんな話があったもんね。新人アニメーターが動物作画ができませんって悩むお話」
主「実はそれとやっていることは全く同じ。
そうやって観ると、実は色々と面白くて……アーシュラ先生ってどんな人? って言われたら、これはSHIROBAKOで言う所の杉江さんなんだよ。技術の素晴らしい天才アニメーターだけど、時代に追いつけなくて老いてしまったベテランアニメーター。
でも実は主人公が過去に憧れた作品と深く関わっているという……ほら、結構似ているでしょ?」
カエル「なるほどねぇ。それを隠喩としてやっているだけなんだね」
主「だからこの作品って実はすごく大事なことを描いている。だけど、それを大上段に抱えて直接的に描くのではなくて『魔法少女アニメ』とすることで暗喩として機能させて、作品に深みを増しているんだよ」
この場面の作画も素晴らしかった
© 2017 TRIGGER/吉成曜/「リトルウィッチアカデミア」製作委員会
4話から6話の意味
カエル「じゃあ、ここでここ最近のお話について考えてみようか」
主「基本的には見事な3話構成だよね。しっかりと構成されていて、素晴らしい作品に仕上がっている。
じゃあここでその構成について考えてみると……
1〜3話 作品世界観とキャラクターの説明
(好きという思いの強さ
アッコの行動原理の説明)
だったんだけど、4話から6話は大きく変えてきている。
4〜6話 クリエイターへの指南
(クリエイターとしての心意気と時代)
について語られている。実はここがあることによって、この作品は実に大きなことを語っているということが見えてきたけれど、それは後述するよ」
2 五話について
カエル「じゃあ、ここで各話の感想記事になるけれど……4話はすでに語っているからいいとして、5話ってどうだった?」
主「全体としてのストーリーテリングとしてはイマイチかなぁっていう印象はある。ちょっと粗いというか、お話としての魅力はそこまでかなぁ? と。
ただこの作品の中で魅力的なキャラクターがたくさんいるけれど、アマンダとかは出番が少なかったから、ここでキャラクター全体を描写することでサブキャラクターを紹介してきた、というのは良かったと思うよ。
あと、竜を追うシーンの空の描写とか、ここいら辺は3話を意識しているんじゃないかな?」
カエル「ふ〜ん……でもイマイチなんでしょ?」
主「う〜ん……ちょっとお話として弱いかなぁ? という印象だった。先生たちが無能に描かれすぎな気がするし、逆にダイアナが有能すぎるように思う。あとキャラクターをたくさん出すことによって、もっと掘り下げてほしい……この話だとアマンダだけど、その魅力の描き方が断片的だったかなぁ? という印象。
まあ、コンスタンツェとかはすごく魅力的だったけれどね」
カエル「まあ、ちょっとダイアナが物語を終わらせるのに便利すぎるっていうのはあるよねぇ……」
主「ただ、それも考えようによってはすごく意味があるんだけど!」
アッコの失敗はクリエイターあるあるでもある
© 2017 TRIGGER/吉成曜/「リトルウィッチアカデミア」製作委員会
五話が語りたかったこと
カエル「じゃあ、そのクリエイター視点で考えてみると、5話ってどういうお話なの?」
主「まずスタートでアッコがいつものように小さな失敗をするわけじゃない? ここでロッテが『余計なもの入れるから失敗するんだよ』って言うでしょ? これはもちろん料理……というべきなのかはあれだけど、実は作品制作についても言及している。
若いクリエイターに多いのが『あれもこれもと詰め込みすぎ』ということ。それでまとまりがなくなって、すべてが台無しになってしまう。
アッコの気持ちはわかるけれどね。
『どうせなら美味しい方がいいじゃん』って確かに思いがちだけど、それは失敗の元だから」
カエル「ふ〜ん……なるほどねぇ」
主「5話も単体で考えるとしっかり構成されているんだよ。スタートでドタバタを作り、中盤でアクション、後半の会話劇で作品のテーマを表現している。
ということは、この作品で1番重要なのはやっぱりドラゴンとの対話なんだよね」
カエル「あのシーンが?」
主「つまりさ、このお話に学園の負債問題って、そのまんまアニメ業界を示しているわけだよ。負債が次々と膨らんでしまい、ニッチもサッチもいかない様子というのは昨今の問題を見事に表している。
このお話が『ハリーポッター』と最大の差別化を図っているとしたら、やっぱりここで……学園自体の財政難を描いたこと。そこは夢と魔法の国ではなくて、現実に存在しているような場所であると描いたことなんだよ。
そう考えるとこの『ルーナノヴァ魔法学校』って何か? というと、それは『アニメーション会社』な訳。新人アニメーターがいるその会社も、実は泥沼なわけだということを示している」
ダイアナの優秀性は時代の違いもあるのだろうけれど……先生……
© 2017 TRIGGER/吉成曜/「リトルウィッチアカデミア」製作委員会
ダイアナと先生の意味
カエル「そうなるとダイアナと先生の対比ってなんなの?」
主「あのドラゴンはネットで金を稼いでいるわけだけれど、それは先生たちの時代にはなかった技術なわけだよ。
それによって翻弄されてしまう様を描いている。つまり、古いやり方ではすでにニッチもサッチもいかないなんだよね。だけどダイアナという優秀な存在が現れたことによって状況は一変する。
この構図を読み解く鍵が『ネットで稼ぐ』ということなんだよ」
カエル「ふむふむ」
主「先生たちの時代ではネットはない。だから昔ながらの営業とか、そういうものでお金を稼いでいたけれど、それもすっかり立ち行かなくなった。
だけどそこで新しい技術を知る若い子=ダイアナを連れてくることによって、新しい活路が見出せるということだ。
実はこのお話はすごくこの作品世界とリンクしていて、ダイアナの解読した古代ドラゴン語というのは『クラウドファンディング』のことだよ」
カエル「クラウドファンディングはこの作品と密接な繋がりがあるね」
主「それこそ『この世界の片隅に』で注目を集めたけれど、この作品もクラウドがあったからこそ集金できて、続編を作り、テレビシリーズを製作できている。そのことを寓話的に描いている。
まとめるとこの話は
『ドラゴン(中抜き業者、悪徳スポンサー)によって苦しめられる学園(アニメ制作会社)を、新しい技術(クラウドファンディング)が救う』ということでもある。
ほら、これってSHIROBAKOが表現できなかったことでしょ? あれだけリアルでこれをやると見ていられなくなるけれど、魔法で寓話的にすることでマイルドな印象にしている。
素晴らしいよねぇ」
3 六話の感想
カエル「じゃあ、今度は6話の感想だけど……」
主「これはさっきも語ったように、アッコの失敗から始まるけれど、これは『動物の作画ができない』ということのメタファーでもある。
多分、これまでの失敗も意味があるんじゃないかな? ちょっとこの視点はなかったから、見返さないとわからないけれど……」
カエル「このお話で重要な役割を果たすのがあの御曹司とダイアナだよね?」
主「実はこの5話と6話はセットで語るべきだと思うんだよね。
廊下で話しているシーンがあるじゃない? あそこで御曹司が
『君は魔法とやらに没頭していたっけ? おかげでみんな気味悪がって近づかなかった』
『あら、結構好評でしたのよ?』
という会話がある。これはもうわかりやすい。つまり『絵ばっかり描いているアニメオタクとリア充』みたいなものだよ。
ダイアナってすごく美人で優秀なように見えるけれど、実はそれはルーナノヴァという限られた場所にいるからであって、実はすごく変わり者なんだよね。
CMでも『歴史と伝統を重んじる心 それこそが1人前の魔女になるために大切なこと』というセリフがあるけれど、まさしくそれを体現している存在なわけ。
ダイアナは優秀だけど、それは限定された技術(魔法)が問われる場所、という条件があって初めて発揮されるものである」
優秀なダイアナも魔法学校だからこそ
© 2017 TRIGGER/吉成曜/「リトルウィッチアカデミア」製作委員会
古めかしい技術=魔法?
カエル「なんでこの作品は魔法=古めかしいって連呼するのかな? それが作品テーマなんだろうけれど……」
主「TRIGGERがこだわるポイントなんだろうね。
この魔法=作画、という話は最初にしたけれど、さらに言えば手書き作画なんだよ。時代からするとCGとかが進化して、それこそ『GANTZ;O』とか『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』などのハイクオリティーアニメが公開された。
アメリカなんてほとんどCGアニメ映画じゃない? とんでもない傑作ばかりでさ……時代はどんどん手書きを蔑ろにしていくように見えてしまうわけだ」
カエル「まあねぇ……今の若い子に『金田バース』とかさ『板野サーカス』とかって言っても凄さがわかりづらいし、古臭いと言われるだろうし……」
主「例えば『王立宇宙軍』における庵野秀明のロケットが飛び立つシーンの作画なんて、それだけでため息が出るような異常と言ってもいい作画だけど、今の子はわからないよね。
なぜなら、デジタルやCGでできちゃうから。簡単に、とは言わないけれど、そういう激しいアクションなども表現できてしまう。
そうなると、手書きである意義ってなんだろうって話になってくるんだよ。手書きなんて金がかかって人もたくさん必要でさ。CGの技術が向上するにつれて、手書きの技術は衰退するし、必要なくなるんじゃないか? という懸念はある。
だから『魔法は時代遅れなんかじゃない』という言葉は『手書きアニメは無くならない! すごく素敵なんだから!』という意味なんだよ」
アンドリューって何者?
カエル「このお話で重要な意味を持っていたアンドリューだけど、彼って一体何者なの?」
主「簡単に言えばスポンサーだよ。
アニメ制作会社に投資するスポンサー。だけど、付き合いとかもあるから投資するけれど、実際は時代遅れだよね、って思っている。
スポンサーからするとなんで手書きにそこまで拘るのか、全く理解できないのは当然といえば当然で、損得勘定で動くのがスポンサーだし。
アッコの技術が未熟だからあんな形の魔法になった=作画になったけれど、そのスポンサーを連れ回すことで魔法=手書き作画とはいかに素晴らしいものか、ということを説明する旅なんだよ」
カエル「それってあのドラゴンとも関係してくるね。
あのドラゴンって中抜き業者とか、もしかしたら悪どいスポンサーということもできるだろうけれど、そういうアニメ業界とお金の姿を現したんだ……」
主「だからこの5話と6話はセットで語る必要があるわけよ。
語ることは結構似ているから」
憧れの大先輩も……
カエル「ラストが素晴らしいよね! あの涙で感動したよ!」
主「この6話のテーマは『手書きアニメの存亡』ということだとはさっき説明したけれど、この描写は何かというと、アッコが憧れる存在=シャリオの過去を描くことで、あなたが憧れたアニメーターも新人時代がちゃんとあって、それがすごく大事だったんだよ、ということが語られているんだよね。
つまり、我々観客はスーパーアニメーター……それこそ金田伊功や板野一郎、庵野秀明など誰でもいいけれど、そういう人たちの『完成された姿』しか知らないわけだよ。
だけど、その陰では絶対に失敗も多く抱えた下積み時代があって、その果てに輝かしい未来がある。それを幻想的な絵を持って表現したんだよ」
カエル「SHIOROBAKOでもあったねぇ……」
主「そうでしょ? 初めから完成された人なんていないの。人間は日々成長していくし、その旅がトンデモナイ高い場所に連れて行く。
それは最後のアッコの言葉でもわかるでしょ?
『自分で努力してなるものなんですよね』って。
それはどの仕事も同じじゃないかな? そしてそれは、本当は誰でもわかっていることなんだよ。
この4話から6話において、業界の様々な面を見せられた。学園の外、つまりネットからは悪口をたくさん叩かれて、財政的にも厳しくて、さらに手書きという技術自体が衰退するものかもしれない。
だけど、それを見た上で、踏まえた上で『私、なりたい。シャリオみたいにいつかきっとなりたい』という言葉がどれほど重要で重いものかわかるよね、ラストの涙で涙腺が刺激されたよ」
素晴らしい泣き顔! ここ3話の全てが昇華された瞬間!
© 2017 TRIGGER/吉成曜/「リトルウィッチアカデミア」製作委員会
最後に
カエル「長い感想記事になったからここでしめるよ!」
主「やっぱりこの作品、すごいわぁ。多分これが後々の伏線として効いてくるだろうし、大きな意味を持つことになると思う。
あとはその視点で語るをEDもまたいいんだよねぇ。SHIROBAKOの『Animetic Love Letter』は週間アニメは、アニメ制作会社からの視聴者に送るラブレターということを示した名曲だったけれど、本作の『星を辿れば』はクリエイター応援歌になっているよね。
6話のラストに星が輝いていたけれど、その星を辿ればいつか遠いところにたどり着くんじゃない? ということだよ」
カエル「当たり前だけど最初から完成している人なんてこの世の中のどこにもいないわけだしね……」
主「それは当たり前なんだよ。新人はできなくて当然だし、始めた当初からうまくいくわけがない。
だけど、それで少しずつ慣れていって、技術を覚えていく先で色々なものが見えてくるはずだから」
カエル「いやぁ、ここまで語るテレビアニメは初かもしれなねぇ」
主「相性が抜群にいいんだろうね。SHIROBAKOクラスのハマり具合だよ! いつかこの作品を批評本出そうかな? って思うほどだよ!」
カエル「やりたいことはたくさん出てくるけれど、書く時間がないっていうのは無しだよ」
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