今回は『葬送のフリーレン』のアニメ版の感想記事になります!
この冬アニメの中でも、かなりの人気作だったね
カエルくん(以下カエル)
うちも毎週楽しみにしていた作品です!
主
感想漫画も準備していますが、自分の脚本が遅くて最終回には間に合いませんでした
カエル「今回は、フリーレンの何が面白かったのか、という点について物語面と映像演出面から考えていきましょう!」
主「それでは、記事のスタートです」
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ChatGPTによるこの記事のまとめ
- TVアニメは二つの主要なテーマ「定点観測者(フリーレン)からみた人間の歴史の変化」と「定点観測者(フリーレン)からみた人間の感情の変化」に焦点を当てた
- 2度目の旅はフリーレンにとって重要な感情の学びの場となっており、フェルンとシュタルクの関係性はフリーレンの人間理解の深化を促している
- 映像作品としての優れた点は「コマとコマの間の補完」と「動かない絵の演出力」
感想
まずはざっくりとした感想からいきましょうか
フリーレンって、こういう話なんだなぁ…とアニメ版で初めて理解した気がする
カエル「原作は全巻読んでいて、結構好きなんだよね?」
主「まあね。
昔は漫画を何度も繰り返し読んだりしていたけれど、今は1度読んだら読み返すことはしなくなってしまったかなぁ…。それで解像度が低い、ということはあるかもしれないけれど、正直、そこまでお話にピンときていないところはあった。
だけれど今回、TVアニメをみて初めて『あ、フリーレンってこういう話なんだ』って理解したよ」
今作が描いたテーマ
それはあらすじを理解していなかったとかいうレベルじゃないよね?
TVアニメ化をするときに、何をテーマとするのかがとても明確だったっていうお話
カエル「テーマ?」
主「それは主に、この2点だと感じた」
- 定点観測者(フリーレン)からみた人間の歴史の変化 → 時間
- 定点観測者(フリーレン)からみた人間の感情の変化
この2点を描こうという意図が、特にTVアニメ版からはありありと感じたんだ
カエル「時間と感情、だね。
フリーレンがエルフだから一切成長しないという設定だからこそ、見えてくるものなのかなぁ」
主「時間を描くというときに、普通であれば……主人公が人間の作品であれば、親子数世代にわたる物語になるだろう。
代表的なのはガルシア=マルケスの『百年の孤独』でさ、こちらは世代を重ねる一族100年の物語なんだ。
だけれどフリーレンは受け継ぐことがなくても、ほとんど歳を取らないに近い長命のエルフだからこそ、定点観測的に人間を眺めて描くことができる」
時間を描くフリーレン
まずは時間について語っていこうか
ここは色々なエピソードが入っているよね
カエル「わかりやすいところでは……エピソード22の『次からは敵同士』の食堂のシーンです」
©️「葬送のフリーレン」製作委員会.
ここは最近の話だから、はっきりと覚えているんだよね
カエル「フリーレン一行が1級魔術師試験の1次試験が終わって、食堂で食事をするシーンですね。この町で1番という評判の店ですが、実はかつてフリーレンも勇者一行時代に訪れていました。
その時の店主は『後世にこの味を絶対に伝える』と豪語していましたが、代替わりをしたその店の味は変わっていました。フリーレンは『あれだけ豪語していたのに…』と言いながらも、もっと美味しい店を探す手間は省けた、と喜ぶというお話です」
この話は時間を描いているんだよね
主「他にもフリーレンがかつて訪れた村では、子供だった人が老人になって……という話もある。こういった描き方になんの意味があるのかというと、それは定点観測者による時代の変化と、人間の進化なんだよ」
原作と比較
でもさ、そこは大きく原作を変わっていないんだよね?
いや、味付けをかなり変えてきている
カエル「……物語そのものは変えていないのに、味付けを変えているの?」
主「原作はかなり淡々とした描き方を徹底している。例えば、漫画の吹き出しのトゲとか言われるものは、ほぼ使っていない」
↑ この中では下の吹き出しがトゲなどと呼ばれるもの
主「フリーレンの原作は……どう言おうかな、よく言えば淡々としてる作品なんだよ。悪く言えば、色々なところがふわふわとしている。もしかしたら、それすら意図的なのかもしれない。だとしたら、大したもんということになるだろう。
その中で時間を見出して、そこを描き出したことがTVアニメ版の功績だと考えているし『葬送のフリーレン』が特異だと感じるポイントだ」
一級魔法使い試験編で見えた”時間”の描き方
それが結実したのが一級魔法使い試験編ということだけれど……
フリーレンは徹底して、世界でも有数の魔法使いとして描かれてきた
カエル「そりゃ1000年生きる魔法使いだし、とんでもなく強いのは当たり前じゃない?」
主「その意味では無双系のフォーマットの上に成り立つのだけれど、アウラとの戦いなどはまさに無双系だった。
やっていることは、なろう系に近いんだよね。
だけれど一級魔法使い試験編は、全く異なる様相を見せたと感じている」
- 一次試験 → 人間の魔法使いのキャラクター紹介
- 二次試験 → ラスボスフリーレン(人間VS伝説)
- 三次試験 → 人間の可能性の提示
このように解釈できる
カエル「一次試験はエルフではない人間の魔法使いのキャラクターを紹介ということでいいとして、二次試験からの説明をお願いします」
主「何度も言うようにフリーレンは変化しない、定点観測者なんだよね。そして年齢を重ねているから、めっちゃ強い熟練した魔法使いだ。
だけれど人間はその定点観測者を超える……それは綿々と受け継がれていく技術の進化によるものであり、言い換えれば歴史そのものとも言える。
つまり二次試験は、コピーされたフリーレンに挑むフェルン&それをサポートする人間たちと言う構図は、もちろんフリーレン自身も加わっているとはいえ、その人間の歴史と進化の可能性を描くことに成功しているわけだ」
そして三次試験では最強の魔法使いであるゼーリエの試験となるわけだね
ここで明確に人間の可能性の果てなさにゼーリエも気がつくわけだ
主「このように、物語表現として歴史と時間を描いている。
1つのテーマとして”時間”を設定することで、ただのファンタジーではない強みを手に入れている印象だ」
感情を描くフリーレン
転生の物語
次に感情の部分ということだけれど……
まず、基本フォーマットとして今作は”転生系の物語”ということが重要だ
カエル「……転生系? でも異世界にも行ってないし、フリーレンは生きているけれど……」
主「何度も語るように、フリーレンは定点観測者ということが本作のキモなわけだ。
そしてこの冒険はフリーレンにとって2度目の冒険となる。1度目は当然、勇者一行のパーティであり、この2度目の冒険はフリーレンの後悔である”人間の感情”を知るための旅となる」
異世界に行かないし、転生もしていないけれど、内実的にはやり直しの物語であり、フォーマットは異世界転生系なんだよ
主「つまり、先ほどの時間と重なるところがあるけれど、人間たちが文化となり歴史となる一方で、フリーレンは取り越されてしまう。
その長命なことこそが、生き残る要因となり……自分以外(一部のエルフを除いて)は変化していってしまう。
これは自分が変わらずに異世界に行くというフォーマットに近しいものがあるんだ」
なぜ今回はフリーレン、フェルン、シュタルクのパーティなのか
今回は、この3人で旅をすることに意義があるということだけれど……
特にフェルンとシュタルクの冒険だよね
カエル「この2人もとても人気だよね!
くっつきそうでくっつかない、ラブコメの1番面白いところで留まっている印象がある!」
この2人と一緒の冒険というのが大事なんだ
主「前回の冒険では男3人にフリーレン1人というパーティだった。そして、フリーレンは人間の感情に疎いから、ヒンメルの好意に気がつくことが全くできない。
そしてこの旅は、その感情を取り戻すための旅なわけだ。
そうなると、かつてのフリーレンが分からなかった感情……恋愛、あるいは他者を大切に思う気持ち、というものを知る必要がある。
それを教えてくれるのが、この2人の役割だ」
フェルンの未熟さ、シュタルクの鈍感さ
この作品だと、フェルンってとても未熟な存在として描かれているよね
それもまあ、当然と言えば当然だけれどね
カエル「確かに村を襲われてから戦災孤児となって、その後はハイターに育てられているんだよね。そしてフリーレンの弟子になっている経緯だよね」
主「そう考えると、年頃の男性と触れ合う経験がほぼほぼなかったのではないか。
だからこそ、フェルンは自身の感情をコントロールできていないし、把握することもできない。
まあ、思春期ってやつだよね。
一方でシュタルクも鈍感系なので、そこをカバーすることができない。そしてフリーレンは、そんな2人を眺めることしかできない」
この構図が大事なんだ
カエル「つまり、2人の仲が深まっていくのをフリーレンが眺める構図が大事なんだね」
主「その通り。
そうすることで、定点観測者のフリーレンはかつての自分に足りなかったもの……他者を慮る心、というと語弊があるかな? でも恋愛という狭いものもと違う……いや、違わないけれど、でもそういうものですらない……信頼とか、友情とか、そういったものも含めた感情を観測することになる。
だからこのパーティは大切だし……何ならばラヴィーネとカンネの関係、そしてこの先の原作の話もそうだ。
基本的に今作の物語は”感情”を中心に人間関係の変化で描かれているんだ。
それを強調したのがTVアニメ版と言えるのではないだろうか」
TVアニメとして技術的に優れていた点
優れていた2点
技術的にはフリーレンって何が上手かったと感じるの?
映像作品としてはこの2点だろう
- コマとコマの間の補完
- 動かない絵の演出力
ここに関しては、明確に斎藤圭一郎監督の強みが出たと感じている
コマとコマの間の補完
斎藤圭一郎監督って『ぼっち・ざ・ろっく』の監督でもあって、しかもまだ31歳と非常に若いんだよね
とても若手なのに、2年連続でホームラン級の作品を打ち上げて……今後、間違いなくとんでもない存在になる予感があるね
主「『ぼっち』の方が、わかりやすいけれど……コマとコマの補完がとても上手い。
漫画とアニメというのは、ただ単に漫画のコマ割りで動かせばいいというものではない。そのコマとコマの間にどのような動きが入り、やり取りが行われているのか……そこの動きは感情にも関わるから、とても重要な翻訳が必要となる。
そしてそれは今作でも発揮されていた印象だ」
例えば、どういうところになるの?
今パッと思い浮かんだのは、フリーレンがフェルンに服が溶ける薬をかけられたシーンだ
©️「葬送のフリーレン」製作委員会.
この動きはとても話題になった
カエル「12話のシーンだね」
主「上のコマの流れを見て貰えばわかるけれど、原作はそこまで動きが派手なわけではない。フリーレンはのんびりとベッドから腰を下ろし、フェルンに薬を渡している。
だけれどアニメはベットから飛び降りて、さらに構図を変えて整理されていないカバンの中身を見せることで、フリーレンのだらしない性格を見せている。
自分はコマとコマの間をどのように翻訳するのか、というと、今作のような動きだったり、あるいは構図などで魅了する。最近は漫画のコマ割りそのままにする例もあるようだけれど、今作は本来あるべき漫画→アニメの翻訳の姿の1つだと思うよ」
動かない映像の演出力
絵が動かないって、本来TVアニメではダメなんじゃないの?
いや、そんなことない……というか、自分は動かない絵をどうやって魅せるかが大事だと感じている
カエル「……動かない絵を魅せる?」
主「今作もそうだけれど、バトルシーンは派手に動き回る。
わかりやすいのはアウラとの対決で、そこはかなり激しく動き回っていた。だけれど、その後の……特に監督自身が絵コンテを務めた11話が、かなり良かった」
11話は、原作もダイジェストになっているんだよ
カエル「アウラとの戦いが終わって、平穏が訪れた場面だよね」
主「ここは動きそのものは、そこまで多くない。
元々フリーレンはちゃんと省略すべきところ……例えば顔を後ろに向けたまま口パクを省略するとかは、きちんとやっている。
全ての話を動かすことは、制作サイドの疲弊も招くんだよ。だから、あまりいいとは思えない。
特にこの回は絵自体はあまり動かないけれど、その分音楽を含めた総合演出力で魅せることに成功している」
原作ではフリーレン1人で祈りを捧げているが、アニメではフェルンが入っており、より厳粛な雰囲気が増している
主「さらに動きが少ないことで、その前の激しい作画とのメリハリになっている。
その落差で1つの戦争が終わり、ようやく平穏な時が訪れたことを描いている。
だから激しい作画が話題になるけれど、より重要なのは、この11話で……全体としてのクオリティをコントロールするだけでなく、それがとても意義があるように演出されている。
この辺り、とても上手いなぁ…と感じるね」
最後に
というわけで、この記事はここで終了です
とても語ることがある作品だったね
カエル「これだけのヒット作、おそらく劇場版や2期も動いているだろうけれど……問題は監督が超忙しいってことだね!」
主「できれば監督のオリジナルもみたいんだよなぁ。
学生時代の作品も見たけれど、静謐な雰囲気などがとても気に入った。むしろ11話のような作風こそが、監督の個性なのではないだろうか。
今後はオリジナルも見てみたいけれど……この様子だとどんなに早くても5年は無理だろうなぁ」
投げ銭も受け付けています