カエルくん(以下カエル)
「えー、ついにアベンジャーズシリーズの新作が公開です!
特に今回は本作に合わせて過去のMCU作品を全て鑑賞しているので、予習も万全だね!」
主
「……まあ、ヒーロー音痴なのは変わらないけれど」
カエル「今回は特に予習が重要な作品でもあり、ファンとそれ以外の人の印象が大きく変わる作品かもしれないね」
主「なるべくならば予習をしてから観に行って欲しいけれど……自分は好きだから全作見たけれど、結構数が多いからきついよなぁ……
観に行きます! という人はシビルウォーくらいは見ておいたほうがいいかも……」
カエル「では、そんな本作の感想記事のスタート!」
1 感想
カエル「では、いつものようにTwitterの短評からスタートです」
#アベンジャーズインフィニティウォー
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2018年4月27日
世間は高評価ですね
ヒーロー音痴として、個人的にはいつものディズニーできっちり70点〜80点をとった印象
今のマーベル映画を考えたら最適解と言えるのかなぁ
カエル「え〜っと……先に言っておくと、世間評価は大絶賛が続いています!
もちろん、ど平日である初日に鑑賞するような人たちがメインで評価していると思うので、マーベルファンの贔屓目こみなところもあるかもしれませんが……それでもとても人気のあることがうかがえる1作になっています!」
主「さすがはマーベル、迂闊なことは言えないなぁ」
カエル「……今までなんども批判的な意見もしてきたけれどね。
それで、本作の個人的な感想はどうなの?」
主「まあ、こんなものじゃないですか?
結構『ネタバレ厳禁!』という意見もあるし、公式もそれは言っているので自分も配慮しているし、それもよく理解できるんだけれどさ……自分としてはこの作品が出した結論は、今のマーベル映画の現状を考えても最適解だと思うけれど、意外ではなかった。
ただ、それを実際に行ったことは確かに面白い」
カエル「えっと……褒めているの?」
主「ほどほどにね。
アクションも豪華だし、見所も満載、150分と長尺ながら飽きなかったという意見も多く見受けられるのもわかる。でも……ディズニーアレルギー云々は抜きとしても、本作は『見事に作られた1作』の領域を超えなかった印象かな。
あとは……これ、マーベル映画ファンはこれでいいの? という思いもある。
個人的には……一部の人しか分かりにくい例えになるけれど、ファイアーエムブレムファンからしたら『暁の女神』以降の……『覚醒』などの作品に関して『これは違う!』というような違和感は発生しないのかな?」
カエル「またエムブレマーしかわからない例えを……
簡単に言えば他のマーベル映画に比べると違和感があるってことだね」
主「まあ、自分はマーベル映画ファンではないから、見逃しているポイントもあるんだろうけれどね」
監督のルッソ兄弟について
カエル「じゃあ、今回監督を務めたルッソ兄弟に関しては?」
主「自分は過去作はそれこそマーベル映画である『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』と『シビルウォー・キャプテン・アメリカ』しか見ていないけれど、特にマーベル作品の中では人気も高い作品の監督だよね」
カエル「やはり『シビルウォー』などはマーベル映画の中でもアベンジャーズのような全員集合する作品の中で、特に高く評価する人は多いんじゃないかな?」
主「では、その特徴としては……これも個人的な思いだけれど『ヒーロー映画の持つ歪み』に対してきっちりと光を当てている印象がある。
例えば『ウィンター・ソルジャー』に関しては、彼らの存在が新たな危機をもたらすとされている。
そして内部侵略されてしまった組織を変えるために、命令違反をしてでも力を行使するという……『歪み』がある。
そして『シビルウォー』に関してはその正義がぶつかり合う様を描き、政府と個人のどちらの信条を重視するのか? ということにも言及している。
何よりも『シビルウォー』が優れているのは『マーベル映画の欠点』に対して回答を出している点だ。
本作もそれは同じであり、その欠点から逆算していくと、あのネタバレ禁止の部分は非常に計算されたのであるということがわかる」
MCUの大きな欠点
カエル「……マーベル映画の欠点?」
主「もちろん、色々あるよ? シリーズが多すぎて予習しようにも難しいとかさ、あとはハルクとソーが強すぎて、バランスを取るのが難しいとか……この手の様々なキャラクターが登場する作品において、強さの違いっていうのはとても難しい問題で、バランスを取るのが厄介な部分でもある。多分シビルウォーでハルク、ソーが出なかったのは力のバランスをとるためだろうね。あの2人はチートだからさ」
カエル「ふむふむ……でもそれ以外の欠点があるんだよね」
主「ものすごく単純な問題だよ。
それこそ、日本で人気の『スーパーヒーロー全員集合』とかさ、仮面ライダー、プリキュア全員集合も同じジレンマがある。
つまり、キャラクターが多すぎて全員を活躍させるのが非常に難しいことだ」
カエル「普通は1人のキャラクターに焦点を絞って、さらに脇役数人が活躍するだけだけれど……本作は他にも多くのキャラクターが登場して、みんながスターだから見せ場を作るのが大変だよね……」
主「その解決策の1つが『敵を出さない』ということ。
つまり、味方同士の消耗戦にしてしまう。
これならば敵側の描写もいらないし、陣営ごとの違いも打ち出せて、多くのキャラクターにスポットライトを浴びせることができる。
しかし、それでもこの問題は解決には至らない……それどころかストレンジ、スパイダーマン、ブラックパンサーとさらにキャラクターは増えていき、他にも様々なキャラクターが合流し……にっちもさっちも行かなくなる。
さて、それに対してどのような結論を出したのか? というのが、本作の回答だね。
自分はとても納得したよ。
合理的で、面白い結論だ」
吹き替え声優陣について
カエル「今回はマーベル映画ということで、吹き替え版で鑑賞しました。
例えばトニー・スタークが藤原啓治であったり、吹き替え声優の力も今作の魅力をさらに引き出しているのは間違い無いでしょう!」
主「特に今作で素晴らしいのがサノス役の銀河万丈!
もはや声優に興味があれば知らない人はいない、大ベテランであるけれども、さすが敵として出てくるだけで全ての言動に納得できるような、威厳に満ちた演技だった。
もちろん、演じているジョシュ・ブローリンや特殊効果のスタッフの力量もあるけれど、吹き替えで見た場合の説得力が大きかった理由の1つでもあるね」
カエル「他にも藤原啓治、中村悠一、宮内敦士、三宅健太のお馴染みのヒーローたちに加えて、芸能人声優でも加藤浩次なども熱演していたね」
主「そして本作で高く評価したいのが、やはり何と言っても山寺宏一!
スターロードいう、3枚目の要素も兼ね備えたコメディ要素も強いキャラクターを見事に演じており、シリアスになりがちな作品に対して、笑いと緩和の……緩急で言うところの緩を見事に担当していた。
もちろん決めるべきポイントではきっちりと決めており、さすがは山ちゃん! という技量を見せつけた格好だったな」
カエル「もちろん、アニメなどでも活躍するキャスト以外でも洋画の吹き替えで活躍するキャストも多く、非常に豪華で聞きごたえがある布陣です。
どうしても洋画は字幕派の方が通な印象もあるけれど、本作は是非とも吹き替えでも楽しんでください!」
以下作中言及あり
2 欠点と違和感と……
本作への疑問
カエル「では、ここからは致命的なネタバレはなるべく避けつつ、具体的に感想を述べていこうとしようか」
主「まずはさ、欠点だけれど……正直、これってアベンジャーズなの? という意識が大きかった。
なぜかというと、宇宙の話がほぼ……7割くらいだったじゃない?
しかもディズニーが絡むからなのかわからないけれど、マーベル映画のSF描写はほぼ全てSWのように見えるんだよね……
本作ももうフォースを出してもいいんじゃないの? と言うくらい、既視感があった」
カエル「もともとGotGの面々を出すんだから、そうなるのはわかりきっていたけれど、それでも宇宙の描写は多かったかなぁ」
主「自分の意識では『アベンジャーズは地球を守る!』という存在だと思っていたからさ、宇宙スケールになるとどうにもついていけないポイントもある。
そして画面が暗いシーンもそれなりに多くて、ちょっと見づらいかな? と思う部分もあったかなぁ……そこまで気にするほどでもないかもしれないけれどね」
キャラクター数が多すぎることによって
カエル「上記でも述べたけれど、キャラクター数が多いことについてはどう思う?」
主「基本的には見せ方自体はうまいと思う。
特に、今回は政府がどうのこうということはほぼなく、ヒーローたちが独断に基づいて行動している面も多く散見された。
それ自体は英断だと思うし、余計なことをして尺が足りなくなるよりは、本作でヒーローに焦点を絞ったのは良かった。
ただ、どうしても同時進行で話が進むからさ……その切り替え方が大変だったろうな、という苦労が見えるかな」
カエル「あっちの話をやっていたら、今度はこちらの話で……さらにサノスのお話もやっていたら、どうだろう……アイアンマン組、GotG(ソー含む)組、キャプテン・アメリカ組で3つに分かれていたのかな?」
主「基本は時系列通りに進んでいることもあるだろうし、ごちゃごちゃしないように配慮はされているだろう。
ただ、どうしてもキャラクター数が多すぎる弊害は感じられた部分があって……それぞれのキャラクターが『この映画で』魅力を発揮できていたか? というと、少し疑問がある。
まあ、これも人気作を多く生み出してきたシリーズの特権かもしれないけれど……本作はその意味では『ファン以外には魅力が伝わるかわからない作品』かもしれないね」
それぞれに見せ場を与えたいのもわかるけれど……
カエル「まだ不満があるの?」
主「あとは大きく分けて2つ。
1つはシビルウォーと違い、新しい力の象徴としてワカンダが出てくるじゃない?
そこでヴィジョンに関する大きな出来事があるけれど……なぜそれができなかったの? と言われた時にバナーが『その発想がなかった』というのは何だかなぁ……と思ったよ。
過去のアベンジャーズでは頭脳担当だったスタークとバナーが、少し下に見られたようで……なんだかなぁ、という思いはあった。
言い方は悪いけれど『こんな小娘に!』というね。
そこはワカンダの技術があれば……とかで良かったと思うけれどな」
カエル「細かいことだけれど、積み重ねてきたものがあって、キャラクターへの愛があるからこその疑問かもね」
主「そしてもう1つがワカンダでの戦いであって……あんな大多数VS大多数の戦いがヒーロー映画らしいのか? という思いもあった。
もちろん、ヒーロー達が敵に対して無双しているシーンもあるし、強敵との戦いを出したい、またウカンダの魅力的な仲間達も出したい、ということもあっての描写だろうけれど、自分には今までのヒーロー映画とはちょっと違って、違和感があったかな……」
カエル「それまでの作品でも軍隊が戦うシーンがあったとはいえ、あんなにピックアップはされていないからかな?
戦闘描写の新機軸であって、あれはあれで面白かったと思うし、ファンの人が喜ぶならそれでいいとも思うけれどね」
そもそも論として
カエル「……まだ何かあるの?」
主「いや、そもそもとしてですよ。自分はこの映画に納得していないところも多くあってさ。
みんな、あの衝撃的な展開を見せられたところで『……ふ〜ん』とならないのかが不思議で」
カエル「え? あれだけ衝撃的なのに?」
主「いや、だってさ……あれだけ超科学があって、魔法があって、宇宙で呼吸もできてと色々なことをしているわけじゃないですか? ソーなんて神様ですよ。
そこであんな簡単な動作で生命を半減できるものがあって、6個もトンデモナイ石があって……と考えるとさ、あの展開が何なの? って思わない?
何回死んだと思ったやつが……パターンを見てきたんだよ!
ロキやバッキーだって生きていたじゃないか!
どうせドラゴンボールみたいなことになるんじゃないの?」
カエル「……冷めた見方ですね」
主「そもそも論として、このシリーズは誰かが散らないとドラマを作り出せないわけでさ。
ヒーローたちに協調性がなさすぎる。
日本のサラリーマンならクビですよ、彼ら。まあ、社長とかもいるけれど。
その結果がシビルウォーなわけで、毎回同じようなことで喧嘩して、同じようなドラマになって……でさ、他にやり方はないんですかね? って思いもあるよ」
カエル「王道だとは思うけれどなぁ」
3 考察
ヒーローたちの正義
カエル「では、ここからは考察パートに入ります!
まず、本作が描いたサノスについて考えていきましょう」
主「まず、自分のマーベル映画の見方の前提にあるのが『彼らの正義は歪んでいる』ということだ。
はっきり言わせてもらえば、自分はヒーローたちを正義の味方だと思って見たことは1度もない」
カエル「……そんなこと言っているからヒーロー映画が苦手なんだろうね」
主「まあ、そうなんだけれどさ。その理由が『彼らの人間性』にある。
何度もマーベル作品で言及されているけれど、彼らヒーローの存在はいわば核兵器に匹敵するものである。強力な抑止力でもあり、それだけの強い力と影響力を抱えていることは、何度も言及されていたし『シビルウォー』はそれが原因で作られた協定が問題があるからこそ、対立してしまったわけだ」
カエル「以前の記事でも述べたけれど、簡単にそれぞれのヒーローの『歪み』を表記すると以下のようになります」
- アイアンマン→強烈な力を抱えるものの、人格的に不安定なところがある
- ハルク→そもそも力のコントロールができない
- ソー→元々は傲慢な性格。現在は安定している。
- キャプテンアメリカ→自分の正義を遂行しすぎてしまう
主「特にキャプテンアメリカの正義は危ういものであり、彼を制御できる機関や人は存在しない。
それは……はっきりと言えば、テロリストと同じだ。
バッキーに関してもそうでさ、彼が多くの人を傷つけた大犯罪人であることは変わらない。だけれど、私情によってバッキーを守ってしまうし、そのことに疑問をあまり抱いていないようにも見える。
自分にしてみれば、キャプテンアメリカの正義は……見方を変えればテロリストと同じようにも見えるわけだ。
それはキャプテン以外でも同じであり、その歪みが面白くもあるんだけれどね」
サノスの正義
カエル「続いて、本作の敵であるサノスの正義について考えていきましょう!
これはとても大きいよね。
確かに全生命を半分にする、というのはとてつもない悪だけれど、その理由は限られた資源を守り、より幸福に生きるためだ、というのは納得する部分もあるかも……
それこそ地球で言えば、全世界の人口が100億人を超えた場合、それで地球資源の奪い合いなどに発展することはあり得るわけで、そもそもそれだけの人を人類は生存させることができるのか? という疑問もあるにはあるよね……」
主「特に生命単位で考えると、思うところもあるよなぁ……
例えば、人類が生存するためには他の生命を食べなければいけない。そのためには多くの生命が犠牲になり、その犠牲の上に人類は成り立っている。人類を守るということは、その下では多くの生命がその犠牲になるとも言えるわけである。
それを考えると、サノスの方が全ての生命に対して、全く事情を考慮することなく平等に半分にするという発想の方が、ありがたいと思う生物もいるような気もしてくる」
カエル「それはそれとしても、これだけ強い意志と覚悟を持つ敵はそうそういないよね……」
主「はっきり言ってしまえば……自分はソノスの正義を支持するところもあったよ。
大切な命を守るためにどのようにするのか? ということを考えた場合、その選択肢もあった。結果的にストレンジも色々な考えがあった上で、その方がいい結果になると思い、それを選んだ。
もちろん、サノスのいう脅威が何なのかはわからない以上、ヒーローたちも自分たちの選択を示すことは難しい。
本作は『サノスの脅威』ばかりで『サノスが語る脅威』に関してはそこまで言及されていない以上、ヒーローの正義とサノスの正義を比べることは難しいけれどね」
正義VS正義
カエル「では第3フェイズをここまで見てきて、一応その中間評としてはどんな感じなの?」
主「自分としては、この第3フェイズは特に『正義と正義の戦い』に焦点を絞っていたようなところもあると思う。
もちろん、これはルッソ兄弟が第3フェイズのスタートを監督したこともあるだろうけれどさ」
カエル「あとは『家族や身内の問題』が多かったかなぁ……ソーはいつも通りとしても、ブラックパンサー、ドクターストレンジも元々は身内というか、主人公に近い存在がヴィランだったもんね」
主「『正義の反対は悪ではない。そのまた別の正義である』なんて使い古された表現だけれど、何か1つ間違えていたら、主人公たち……ヒーローたちもヴィランのようになったかもしれない。そう思わせるような描写が散見されたようにも思える。
それが今のアメリカの問題であり、映画を深くしようとしたらそのような描き方になるのかもしれないな」
最後に
カエル「では、これで最後になりますが、何か言い残したことは?」
主「う〜ん……自分はアニメ好きだからさ、やっぱりどうしても連想するのが『グレンラガン』なんだよね。特にグレンラガンの前半で……あんまり直接的にいうのはなんだけれど、サノスとグレンラガンの初期の敵であるロージェノムは思想的には似ているところがある。
もちろん、パクリだなんだって話ではなくて……やはりそういう思想を抱く敵というのは、どこの国とか関係なく存在するんだな」
カエル「では、ここから先がどのようになっていくのか、ますます注目していきましょう!」