物語る亀

ネタバレありの物語批評

江川、石田、井筒の君の名は。と新海誠に対する悪評に関して思うこと

カエルくん(以下カエル)

「2016年の映画界の話題の中心は、よくも悪くも新海誠だったような気がするね」

 

ブログ主(以下主)

「明らかに邦画、洋画を問わず、実写の映画よりも存在感を示したのがアニメ映画だったしな。シンゴジラもアニメ界に縁の深いスタッフが集結しているし、アニメを実写でやっているという意見もある」

 

カエル「もちろん主がアニメ好きっていうのも大きいかもしれないけれど、毎日のようにアニメの話を聞いていた気がする。

 それこそキネ旬も『この世界の片隅に 』を1位に選んだし。トトロ以来の快挙なんでしょ?」

主「ジブリが実質解体した後のアニメ映画界を象徴する出来事になったんじゃないかな? 色々な問題もあるし、中には『10年後には衰退している。なぜならば一流アニメーターが高齢化していて、新陳代謝がないからだ』と語る人もいるような状況ではあるけれど、それも含めて色々と考えていかなければいけないよね」

 

カエル「で、今回はまた新海誠について語るのね」

主「宮崎駿でも売れすぎだよなぁ、って思ったけれど、新海誠は特にそう思うんだよ。いや『君の名は。』は200億の価値がない! とは言わないよ? 作品クオリティが高くても全く流行らなかった作品なんていくらでもあるし、売れた作品が名作なわけでもない。

 だけど、売れるということは色々と注目を集めることでもあって……あまりにも罵倒が多すぎると思うのね

 

カエル「宮崎駿にはそんなこと言わない人も、新海誠だと言いやすいっていうのもあるのかもしれないけれど」

主「今回はそんな意見に対して色々と思うところを書いていこうかな、と思っている」

カエル「了解、じゃあ記事を始めるよ」

 

 

 

 

 1 江川達也、石田衣良、井筒和幸の発言

 

カエル「じゃあ、まずこの騒動を知らない人のために解説だけしておこうか。Yahoo!トップニュースにもなったりしたから、興味がある人は知っているかもしれないけれど、後々にこの記事にたどり着いた人のためにもね」

主「まずは江川達也の発言から。

 バイキングというテレビ番組内での発言で

 

『プロからみると全く面白くない』

『作家性が薄くて売れる要素ばかりぶち込んだ、ちょっとライトな作品』と語っている。

 ちなみに同時期に岡田斗司夫も『バカにもわかる映画にしたことがヒットの要因』と語って炎上している。言葉だけを見ると罵倒しているようだけど、岡田斗司夫は相当評価しているけれどね」

 

カエル「次が石田衣良だけど、要約すると『新海誠って高校時代いい恋愛をしていないからこんな映画を撮っているだろうね』ってことだよね。詳しくは以下のリンクを辿ってね」

 

www.excite.co.jp

 

主「そして最後が井筒和幸だ。

 まあこれがある意味では一番ひどくて『あんなオタクの自慰動画を、1000万人が観るようになったら、オレは終わりやと思うけどね。あれは「映画」ちゃうから』と語っている」

 

 

 

語り口と芸風

 

カエル「まあ、揃いもそろって炎上しそうな面子が揃ったね……」

主「岡田斗司夫と江川達也はそういう芸だから。炎上芸とでもいうものでさ、張本勲が『カツ!』っていうカツ芸と一緒。あとはプラスに思われているけれど野村克也のぼやき芸もそれに該当する。

 逆に言うと素直に褒めちゃいけないっていうのもあるんだよね。それは自身の芸風と違うから。嫌な奴を演じることで、嫌われることでお金を貰うという仕事を結果的に選択した」

 

カエル「えー? それでいいの?」

主「ブロガーだったら結構わかりやすいんじゃない? 有名ブロガーでも炎上芸ってあるし、長谷川豊はやりすぎたけれど、あれも炎上芸でしょう。

 究極はトランプで、過激なことを言って炎上すればするほど支持者も集まるという構図になっていた。まあ、本人も当選は予想外かもしれないけれど……」

カエル「でもさ、正論で勝負してほしいよね」

主「正論なんて誰も相手にしないんだよ。

 目立たなければ意味がないという考えならば、むしろもっとも効果的。自分へのヘイトと引き換えにお金を集めるというね。

 こういう評論もある意味では『表現』だと思うけれど、表現の本質が人の感情を煽るということなのであれば、怒りを煽るというのも1つの真っ当な表現だよね」

 

カエル「う〜ん……ちなみに、このブログは?」

主「やだよ! 自分は『楽しい!』を煽りたいし、そんなの誰だってそう。その意味ではこの人たちはすごいんだよ。誰にでもできそうで、誰にでもできることじゃない。これをうまく活用すればマツコや有吉のような『怒り芸』になるし。その見極めが大変だけどね」

カエル「石田衣良は……後にするとして、井筒監督については?」

主「あの人はもうそういう人だから仕方ない。芸風とか関係ないでしょ。

 多分、喜怒哀楽の中で怒が人生の中心になる人だと思う。そういう人には近づかないのが得策だよ」

 

 

 

 

2 批判意見は正しいの?

 

カエル「でもさぁ、ひどい話だよねぇ」

主「そうなんだけど……石田衣良なんかは、少しかわいそうだなぁって思いもあるのね」

カエル「え〜?? でもあんなに酷いこと言っているのに?」

 

主「……こういうとなんだけど、新海誠の作品からリア充オーラなんて皆無じゃない? 新海作品は童貞臭い、オタクの妄想であるという評価、評論はもう聞き飽きるほど出てきた。

 石田衣良の批評は別に彼が特別変なことを言っているとは思えない」

カエル「でもさ、人格とか人生まで断言するのは……」

 

主「そこも難しい話でさぁ……一般的に言う幸福な人生を送れた人が優れた表現者になるわけではないのよ。

 むしろ、その逆の例って非常に多い。

 例えばコミュ症とか、厨二病とか言われるような人は現実目線で考えれば社会生活を送る上では問題を抱えている。だけど、だからこそ日々を生きる中で感じる思いだったり、内向的な性格や発想が優れた表現に繋がるわけじゃない?」

カエル「……その不幸がいい発想になるということ?」

 

主「そういう場合も多々あるって話で推奨しているわけではないけれど。

 それから、童貞臭いとか恋愛経験少ないっていうと罵倒しているようだけど……実際罵倒しているのかもしれないけれど、それはそれだけピュアである、ということの証明でもある。

 確かにその思いは見ていて痛々しいと受け取られる可能性はあるが、それもまた武器になるんだよね

カエル「長所は短所、短所は長所ってこと?」

主「それが個性ってことでもある。石田衣良の最大の失敗は……というか想定外は、まさか新海誠が反論してくるとは思わなかったことじゃないの?」

 

 

 

 

3 過去の名作と現代の名作

 

カエル「じゃあ、井筒監督は!? 彼は非常に酷いことを言っているよね」

主「じゃあ、はっきりと言わせてもらうけれどさ」

カエル「おう! はっきり言おうか!」

主「まあ、言いたいことはわかるよ

カエル「……やっぱりそっちなんだ……」

 

主「というか、この論争はもうされ尽くした感もあるくらいの論争で、わざわざ取り上げるまでもないかな? って思いもある。

 例えば、これって小説でいうところの『純文学VSエンタメ小説』みたいなものでさ、古舘伊知郎が一度『本屋大賞と芥川賞の違いがなくなっている』と指摘しているんだよね。

 小説の世界って、やっぱり無言の品格の違いとでもいうか、ジャンルによる暗黙の格差がある。それはなんとなくわかると思う」

 

カエル「結局ライトノベルは直木賞候補とかに絶対ならないしね」

主「一昔前までは芥川賞もミステリーとSFは必ず除外する、という暗黙の了解があった。それはやはり一言でいうとエンタメすぎるから、ということになると思う。まあ、直木賞も SFはダメという暗黙の了解があるんだけど。

  ライトノベルなんか中央の文壇では全く話題にならないんじゃないの?

 

カエル「でもさ、ここ10年くらいのラノベの動きって無視できないよね?」

主「もちろん。村上春樹の1Q84が全6巻で何百万部売り上げたって話題になるけれど、SAOなんて巻数こそ全然違うけれど、シリーズで1500万部超えているんだよ。1000万部超えた日本の単一シリーズの小説なんてものは、ここ数十年ラノベをおいてほとんどないんじゃない?

 現代の若い子が小説を読むきっかけとして、ラノベは間違いなく機能しているし重要な立ち位置にある。

 だけど、絶対に文壇は評価しない。それはおかしいと言えばおかしいけれど、賞の性格上仕方ないと割り切るしかない」

 

 

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作品の品格

 

カエル「井筒監督も似たようなものなの?」

主「自分は白黒映画とか、古い映画が好きだからよく見るのね。井筒監督の言う『本物の映画』ってやつですよ。

 古い人は……井筒監督とか、年末の番組で北野武も語っていたけれど『女子供を騙すような映画』ばっかり流行るようになった、と。その意見はわからなくはない。黒澤だ、小津だ、ヒッチコックだ、トリュフォーだって映画を見てきた人たちにしてみれば、今の売れている映画なんてゴミみたいなものだから」

 

カエル「え? そんな酷いこと言うの?」

主「みんな大好き宮崎駿だって同じこと言っているじゃない。『アニメは年間1作みればいいんだ』って。『テレビアニメは媚びていて、アニメという文化をダメにする』みたいなことはよく語っているわけだよ。

 それはわからなくない。アニメに限らず、実写映画も流行るのヒーローだ、魔法使いだ、怪獣だ、超能力だSFだ……そんな映画が『本当の映画』なのか? ってこと。そういう映画は『女子供を騙すような映画』であって、本当の人間や社会を反映したような映画ではない、という意見でしょ? それはそれで合っていると思うよ」

 

カエル「じゃあ主は井筒監督の発言を支持するの?」

主「そんなわけはないけれど……

 もう井筒監督や北野武が支持するような一流の映画って、伝統芸能みたいなものだと思うのね。

 上岡龍太郎は『テレビが出てきて、芸人は素人芸ばかりになった』と語るわけだ。それはその通りだよ、本来漫才とかって落語の合間にやるものだしね。一流の芸っていうのは落語だとか、浄瑠璃とか歌舞伎とかのことを言う。今のお笑い芸人なんていうのは上岡龍太郎に言わせれば素人の集まりだよ。まあ、この素人芸の中には彼特有の褒め言葉でもあるというのが難しいところだけど。

 だけど、それが時代の流れなわけ。その結果、落語とかは確かに一流の芸かもしれないけれど、国民に密着した芸とはどんどん言えなくなっている。このままいくと国が保護する芸になるわけだ」

 

 

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ヒット作品の意義

 

カエル「本当に一流のものは廃れるってこと?」

主「それもあるし、本当に一流のものと井筒監督が言うような映画ばかりになったとしたら、映画業界全体が衰退する。なぜならば、国民が理解できなくてそっぽを向くから。

 映像表現は日々進化している、できることも増え、それに伴いわかりやすくて強烈な作品をみんな支持するのは当然のことなんだよ。それは確かに観客がバカになったというのかもしれないけれど……表現技法の進化ということもできるわけだ

 

カエル「表現者が観客をバカにしたらおしまいだよね」

主「あんなの映画じゃない! っていうのは楽だけど、じゃあ本当の映画を作れば200億円稼げるんですか? 赤字にならないんですか? ってこと。

 趣味で映画を作るならいいけれど、商売だったらある種の媚っていうのも必要だしね。

『売れなくてもいい! 本物を作り上げる!』って精神は素晴らしいけれど『売れなきゃ意味ないでしょ? 偽物でも売れるものを作る』というのも正しい。前者ばかりだと映画オタクしか相手にしないし、業界や会社が潰れたら元も子もないし」

 

カエル「劇場にお客さんを呼んだという功績が非常に大きいわけだしね」

主「すごく簡単な一言で表すと『やりたいことが違う、見えているものが違う』で片付く問題だけどね」

 

 

 

 

最後に

 

主「今回は少しまとまりのない記事になったかな?」

カエル「まあしょうがない面もあるよね。単純に『井筒がおかしんじゃないの?』で終わらせないで、しっかりと考えてみようってことでもあるし」

主「井筒発言って擁護のしようがない部分もあるけれどね……

 確かにシンゴジラを40分で出た、というのはいただけない。だって、そこからが面白いんだから。

 でもあの映画は怪獣映画マインドが理解できない人が見ても何も面白くないだろうし、井筒監督のような思想を持つ人は1番嫌うだろうね

 

カエル「……個人の思想までは創作者はコントロールできないからね」

主「でも、そういううるさ型のお爺ちゃんはそこそこ大事で、いなければいないで毒づく相手もいないしね。

『ウルセェ糞爺!』って言える相手がいるっていうのも創作においてはエネルギーになるんじゃない?」

カエル「老害にしか過ぎないと思うけれどねぇ」

 

 

 君の名は。の感想、考察はこちら。

考察はネタバレありです。

blog.monogatarukame.net

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アニメ評論家、氷川竜介が書いた『シンゴジラ、君の名は。この世界の片隅に』のヒットの理由を書いた同人誌(と言っても評論のプロが書いているけれど)

深い話も多く、オススメです

2016年ヒット映画の秘密 ロトさんの本Vol.36

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君の名は。 B2ポスター 2017カレンダー 壁掛け

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