物語る亀

ネタバレありの物語批評

君の名は。が大ヒットした理由の分析、そして新海誠の作家性に対する考察をしてみた

亀爺(以下亀)

「君の名は。の勢いが全く止まらないの」

 

ブログ主(以下主)

「少し前まで興行収入100億円突破で騒がれていたけれど、このままの勢いだと150億円は確実、200億円以上まで伸びるかもしれんな」

 

亀「何回か君の名は。関連の記事を書いてきたが、ここまでの超ヒットをするとは全く思っていなかったの

主「感想記事や考察記事を書いた時は、興行収入まで気にしていなかったけれど……シンゴジラが邦画1番でそれは抜けないだろうと思っていたからね。まさかその2倍を超えてくるとは……公開直後にそんなことを言っていたら絶対馬鹿にされていたよ。『そんなわけあるかwww 信者乙』ってさ」

 

亀「これだけ売れてしまうと色々と……厄介なことも多そうじゃの」

主「ヒットすると本来鑑賞する予定のなかった人だったり、対象としていない人も見に行くからね……そこにアンチも加わるし、ヒット作特有の評価が色々とついてくるからなぁ……」

亀「これから先も『君の名は。』の新海誠と言われてしまうし、この完成度……というよりも、興行収入を基準になるかもしれんの。色々と大変そうじゃ」

主「今回は君の名は。がこれだけヒットした要因とそれに伴う様々な影響について、語っていくよ」

亀「それじゃ、本題に入ろうかの」

 

 

 

blog.monogatarukame.net

blog.monogatarukame.net

 

 

 

1 ヒットの要因を探る

 

亀「まずは『なぜこれほどヒットしたのか?』という点についてじゃが……これに関しては色々な論評があるが、主はどう評価する?」

主「理由ね……もちろん、作品クオリティの高さとかもあるけれど、それは抜きにして語ると……まず、このヒットの要因を語っているのが結構年上の人達だと思うんだよね。メインターゲットである10代、20代の実情から語る人は少ないから、そこを意識して語りたいと思う」

 

亀「わしはもう老齢じゃがな」

主「……話がややこしくなるなぁ」

亀「それについては過去にもこの記事で語っておることを再び繰り返すことにもなるの」

 

blog.monogatarukame.net

 

アニメは過小評価?

 

亀「まずはここに辿り着くわけじゃな」

主「そう。今の若い層と年配の方との認識の大きな違いって、たぶんここなんだよね。例えば『新海誠はマイナーなアニメ監督だった』とよく言われるけれど……そしてそれは、ある意味では正解だけど、そこが過小評価されていると思うんだよね」

亀「オタクにしか知名度のない監督と言われておったの」

主「それはそうなんだけど……それが違和感の正体かもしれない。つまり、ヒットの要因分析って映画評論家とか、実写映画が好きな人が主に語るわけだけど。

 日本の監督と、例えば是枝裕和や三池崇史とかと比べて、新海誠の知名度がどれだけ劣るのかと言われると……実はそう変わらないかもしれないんだよね

 

亀「ふむ……つまりあれか。この映画のヒットの理由を探る評論家は実写映画の監督には詳しいが、アニメの監督には詳しくないから『マイナーな監督』とされてしまうというわけか」

主「さらにいうとさ、普通の人が……実写映画を見に行く、一般の観客が監督をどこまで注視するかというとそれはわからないんだよね。アニメは監督を重視する文化がある。それを考えると、実は新海誠の知名度というのは、元々相当高かったかもしれない

 

若者が熱中するものは?

 

亀「……アニメという表現媒体のファン数に対する認識の違いもあるかもしれんの

主「そうね。最近は若者の車離れとか、恋愛離れとか、テレビ離れとか色々叫ばれているけれど……じゃあ、その分その若者は何に集まっているのか、という疑問があるわけだ

亀「それは趣味の多様化もあるから一概には言えんが……アニメオタクは増えておるかもしれんの

 

主「その車とか恋愛とかに使っていたお金を、アニメに使う若者が増えているんだよ。そしてそれは男女の差もなくなっている。だから女性ファンも多い。おそらく、年齢の高いオタク評論家とかが思う以上に、若者にアニメが浸透している。

 やっぱりさ、アニメって……どうだろう、10年ほど前くらいまでは一部のアニメブランドを除いて……ジブリなどを除いて、子供が見るものという意識があったわけじゃない? 

 でも今は、むしろ子供が観れる時間帯にアニメはやっていなくて、劇場公開されるような作品は深夜アニメから人気が出た作品が多いわけだ。

 一時代前ではドラマやテレビ番組が学校の話題だったように、今ではアニメが普通に学校の話題になっている……もしくは、なっていた世代がお金を落とすようになったんじゃないか?」

 

亀「つまりアニメに対するハードルが格段に下がったということじゃな」

主「そう。映画評論家などは『青春映画だから若者に受けた』と言っているけれど、そうじゃなくて、細田守とかディズニーとか除いて……もしかしたら細田守もそうかもしれないけれど『アニメだから若者に受けた』とする方が正しいと思う」

亀「それは聲の形のヒットからもわかるかもしれんの。あれも上映規模を考えたら、異例のヒットをしておるが、それも『京アニ』というブランドというのが、大人やメディアが考える以上に強く、さらにアニメという媒体が好まれているという証拠かもしれん」

主「この論調が正しいか否かは『この世界の片隅に』がどれだけヒットするかでわかると思う。クオリティにもよるけれどね」

 

 

2 新海誠の知名度

 

亀「そしてそれだけオタクが増えたからこそ、オタクしか知らなかった新海誠の知名度も、分母が増えた分、絶対数で見ると実は高かったんじゃないか、ということも考えられるの」

 

主「そう。これは細田守が『時をかける少女』から少しずつ上映館数を伸ばし、テレビ局をバックにして知名度や規模を上げていったのとは別に、新海誠はずっと小規模上映でやってきたんだよね。

 だから数字からの人気、知名度というのははっきりとは見えてこなかった。新作を上映しているから見に行こうとしても、大都市圏しかやっていないし、そこまで足を伸ばす気もなかったということもあると思う。

 さらに、考えてみればさ……例えば『言の葉の庭』が1億5千万とか2億とかの売り上げを23館で達成したと言われているけれど、それって短編だったから映画料金が安い上に、劇場では公開日からDVD,BDが発売されていたんだよね。儲ける気がないの? っていうくらいのことでさ。

 だから余計に熱心なファンは映画館に通わないからリピーターは少ないしということで、数字として現れなかった

 

亀「それを考慮すると、新海誠の知名度や人気というのは相当に大きいかったのかもしれんな。それこそ、これだけ大規模に上映すればヒットするくらいには、の」

主「ここまでとは思わなかったし、100億が全てファンの影響によるものだとまでは言わないけれど、それだけの下地はあったと思う」

 

SNSの存在

 

亀「本作でよく言われておるのは、このSNSの存在じゃの。テレビ局で宣伝に入っていない作品のメガヒットの凄さというのが指摘されておる」

主「それは『シン・ゴジラ』も『聲の形』そうだよね。驚異的なヒットとされる作品だけど、テレビ局はあまり推していない作品が並ぶわけだ。これをSNSの存在抜きに話ことはできないよね、やっぱり」

亀「つまり、それだけ熱心なファンが宣伝したということもあるの。

 江川達也が語っておったが(作品を)絶賛している人が、面白くなかったと言う人を凄くディスるんですよ。見なきゃダメだよ、とか言ってというのは極論じゃが、そのように口コミの輪ができておるのも事実じゃろうな

 

主「見に行きやすいからね。デートでもいいし、ファミリーでもいいし、ひとりでもいいし、そこまで人を選ばない作品だから。わかりやすいし。

 バカにも受けるとか色々言われているけれど、それだけ大衆性がある作品なの。

 あと、こういうブログ書いているとわかるけれど『絶賛する人が、面白くないという人をすごくディスる』作品は確かにあるよ。シンゴジラもそれで炎上した記事もあったし。うちは大絶賛したから免れたけれど。

 でも、君の名は。はまだ否定しやすいと思うけれどね」

 

 

blog.monogatarukame.net

blog.monogatarukame.net

 

3 大衆性と作家性の両立〜売れるデメリット〜

 

亀「これは、確かに色々と叫ばれておるの」

主「これだけ売れちゃうとさ、色々な人が色々言うんだよ。バイキングでも取り上げられたらしいけれど、お昼の番組にアニメ映画が取り上げられるってことが、いかに影響力を持っているかわかるよね。

 さらに、売れたら逆に評価しないという人もいるしね。じゃあ、今、自分が見たらどういう評価をすると……もしかしたら絶賛しないかもしれない。『いい作品だけど、ここまで評価されるほどじゃないよなぁ』とか言ったかも。

 それはさ、オタクの性というか、そういうことを言う人は絶対いるよ」

 

亀「それはあるかもしれんの。自主制作で作られた映画だと、少し粗があっても『頑張ったね』とか言いたくなるものじゃが、大資本だと『なんだこの粗は!』と言いたくなるのも人の性じゃからな」

主「そう売れたものに逆らいたいという人は確かにいるんだよ。特に100億クラスだとさ、それだけの感動があるってハードルを高くするから。

 その典型がキャメロンでさ。『タイタニック』『アバター』と大ヒットしているけれど『世界一、二位の興行収入クラスではない』とかって言われるじゃない? 売れたというだけで自然にハードルは上がってしまうものなんだよねぇ」

 

新海誠の作家性は失われたのか

 

亀「さて、実はこの記事で主が一番語りたい部分であるが……この作品において、新海誠の作家性というものは失われたのかの?」

主「難しい問題だよね……個人的な感想としては『失われていない』と言いたい。

 だけど、失われたという意見もわかるんだよ

 

亀「その心は?」

主「新海誠に何を望むかという話でもあるんだけど……『秒速5センチメートル』や『言の葉の庭』がやっぱり基準になると思うんだよね。代表作というとこの辺りだから。

 ここを期待していたら、そりゃ作家性は失われたというよ。全然作風も違うしさ。

 だけど、世間的には評価されないけれど……映画としてはそこまで良くないけれど『星を追う子ども』を新海誠の転換点としている人間には、この作風もまた新海誠の作家性だと思うけれどね」

 

 亀「新海誠の何を見て、何を基準にするかというのは大切な要素じゃな」

主「そう。前にも紹介したけれど、下のCMも見て欲しい」

 


Z会 「クロスロード」 120秒Ver.

 

 

主「自分はこのCMを見て新海誠の変化と作家性を感じたし、この続編を見たかったからさ、君の名は。を違和感なく見れた。他にもみんなのうた『笑顔』のPVとか『だれかのまなざし』とかも見て、これもありだなぁと思っていたのね。

 そういう人間には『君の名は。』は間違いなく新海誠の作家性の出た作品だよ、と言える。だけど、こういう作品を見ていない人……特に映画しか見ていない人には、当然のように作家性は違うと思うかもしれない」

 

亀「あとは色々な人が入ったことにより、それまでの作家性が薄められたと思うかもしれんの

主「今までが異常だったからね。少人数で創ってきたという状況で、監督の個性とか作家性が濃い形で出ていた中で、これだけの大規模でしかも腕のあるクリエイターと組んだら、そりゃ監督の個性や作家性は薄まるよ。

 それは今までと制作スタイルの違いもあるから、仕方ないところだと思うけれどね

 

 

最後に

 

亀「というわけで『君の名は。のヒットの理由』について考察してきたわけじゃが……」

主「やっぱり賛否はあるよ。あって当然だし、それだけ色々な人が見たということでもあるし、一つの基準になるからな。

 別の映画を見ていたらさ『聲の形』で比較するのは同じアニメだし、わかるけれど……というか、自分もやったけれどさ。『 ハドソン川の奇跡』で『君の名は。より良い!!』って書いてあった時には驚いたね。比較対象全然違うだろ! って突っ込みたくなったし」

 

亀「2016年の代表作ということになるんじゃろうな」

主「それを考えると、何度も言っているけれど、この後が大変だよね……もういっそのこと個人制作とか、30館以下の公開館数の小規模でさ、秒速ばりに人を鬱々とさせるとか……」

亀「そこまでできる作家だったら心配なんて一切しないんじゃがな」

 

主「あと、新海誠やシンゴジラ、聲の形が大ヒットした理由で一つ言っていなかったことがあるんだけどさ……」

亀「……なんじゃ? まだあるのか?」

主「やっぱり、この物語る亀というブログであれだけ細かく分析して、大絶賛したことが大ヒットに繋がっているんだよね。その意味ではこのブログの存在ってすごく大きかったと……」

亀「それこそ妄想じゃし、0,1%も影響を与えておらんじゃろうから、安心して良いぞ

 

 こちらにまとめてあります。 

blog.monogatarukame.net

 

新海誠監督作品 君の名は。 公式ビジュアルガイド

新海誠監督作品 君の名は。 公式ビジュアルガイド

 
ピアノソロ 『 君の名は。』 music by RADWIMPS

ピアノソロ 『 君の名は。』 music by RADWIMPS

 
ユリイカ 2016年9月号 特集=新海誠 ―『ほしのこえ』から『君の名は。』へ

ユリイカ 2016年9月号 特集=新海誠 ―『ほしのこえ』から『君の名は。』へ