カエルくん(以下カエル)
「今回は今年の日本アニメ映画の主役とも言える、3作品を語った記事だね」
ブログ主(以下主)
「やっぱり今年はこの3作品が特に注目を集めた(集めている)からな。あとはプラスして『シン・ゴジラ』もセットで語りたいけれど……一応邦画だしさ、そこまで手を伸ばすとヒッチャカメッチャカになると思ってさ」
カエル「一応これからもアニメ映画は公開されるけれど……」
主「ほとんどがテレビシリーズの総集編とか、続編だからね。『ポッピンQ』もあるけれど、年末だからさすがにどれほど名作でも語るチャンスはなさそうだしなぁ……」
カエル「まあ、ここで一度ある程度の総括をしておきたいってことね」
主「でもさ、2016年度は他にも語りたいアニメ映画がないわけではないんだよ? 『ズートピア』もあったし。あれも完成度の高さでいったら今年No,1だから。その意味でも大豊作だよね」
カエル「キャラクターものも面白かったもんね」
主「実写の邦画自体も面白かったしね。洋画があまり目立たない一年だったんじゃないかな?」
カエル「そうかもね。じゃあ、記事を始めようか」
1 アニメ界に起きた大事件
カエル「まずは『この世界の片隅に』の記事でも語ったことだけど、今年は2013年以来の大当たり年だよね」
主「よく言われるのは1984年がアニメ映画大ヒットの年だけど(『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』『風の谷のナウシカ』『~超時空要塞マクロス ~~愛・おぼえていますか~』など)近年の2013年も中々すごくてさ。
『風立ちぬ 』『かぐや姫の物語』『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語』に、さらに『言の葉の庭』とかもあったわけだ。
個人的にはこの2013年の3作品は現在のアニメ映画における、ある種の到達点だと思うわけ。完璧なアニメーションというのかな?」
カエル「評価が非常に高い3作品だよね。もちろんジブリの技術力の高さもあるけれど、風立ちぬとか、かぐや姫の物語は手書きアニメの完成系じゃない?」
主「もしかしたらこれから先、これ以上のアニメは出てこないかもしれないな。特にかぐや姫みたいな映画を作ろうなんて、普通は中々思わないものだし」
カエル「主の評価だとかぐや姫って『すごいし、やりたいことはわかるけれど、やっちゃダメなタイプの映画』だもんね」
主「すごいけれどさ、芸術的すぎて売れるわけがないよね。
今年でいうと『レッドタートル ある島の物語』だよ。ある程度安くやるならいいけれど、お金にも糸目をつけなかったらしいし。
そんな映画を製作してしまったことで、あれだけの売り上げを誇ったスタジオジブリがどうなったかというのは、説明するまでもない。かなり大きな代償がないと作れないタイプの映画なんだよ、かぐや姫って。
まあ、それはいいとして……2013年も素晴らしい作品が世に出た、屈指の年というのはわかって頂けたと思う」
カエル「でも……2016年と2013年じゃ、意味合いが大きく異なるよね」
主「そう。それが今年がすごいという理由だけど、それはこれから語るとしよう」
2 意外な大ヒット
主「2013年というのは、ラインナップを見て貰えばわかるけれどある種の『約束されたヒット』だったわけだ。もちろん、興行だけが全てではないけれど、
宮崎駿の引退作でジブリの最新作の『風立ちぬ』
同じくジブリで久々の高畑勲作品の『かぐや姫の物語』
メガヒットテレビシリーズの新作『劇場版まどマギ』
となっている。もちろん、これ以外にもキャラクターものを中心としてヒットした作品はあるけれど……予想以上の大ヒットということは、あまりない」
カエル「『言の葉の庭』も2億くらいと、大ヒットとまではいかないよね。公開規模を考えたら十分なのかもしれないけれどさ」
主「だから、ある意味では予想通りの年なのよ。ジブリもまどマギもそれまでの実績を考えると、あれだけのクオリティがあることは予想できたし、売れるというのもある程度予想できた」
カエル「宮崎駿の最新作が大ヒットと言われても『へぇ……』でおしまいだもんね。いつものことだし。当たり前に大ヒットするってすごいけれどさ」
主「だけど、2016年は……この3作品は結構意外なヒットだったと思う。もちろん、これから結果が出る部分もあるし『この世界の片隅に』は評価が早すぎると思うけれど、劇場が9割埋まるって中々ないから、多分このまま口コミでヒットするんじゃないかな?
まあ、それはそれとして……多分作り手側も予想していなかったブームだよ」
知名度の差
カエル「『君の名は。』なんてまさにそうだよね。プロデューサーが明かしているし、これだけのヒットになるなんて、誰も予想もしていなかったよ。多分、公開前に『50億円いくんじゃない?』と言ったら、さすがに笑って否定されただろうしね」
主「『言の葉の庭』が2億だから10倍、なんて語っていたのが、蓋を開けてみたら100倍に届きそうなんて、誰も信じないよ。一番困惑しているのは新海監督じゃない? 次作が難しくなるし。
まあ、話題なのに劇場に入れないというプレミア感もヒットの要因かもしれないけれどね」
カエル「『聲の形』も公開館数を考えたら異例のヒットだしね」
主「これももっと伸びたはずだよなぁ……とは言いつつも、地方での成績がわからないけれど。
何がすごいって、テレビなどで宣伝されたような映画ではないこと。つまり、口コミとかTwitterなどの影響が非常に大きかったと言われているわけだ。ここでも2013年との違いって、はっきりわかるよね」
カエル「……あ、そうか! ブランド名だね」
主「そう。2013年のヒットはジブリや宮崎駿という名前だったり、まどマギという名前があってにヒットだ。もちろん、京アニとか新海誠という名前の威力はあるよ? だけど、それは『ジブリ』『宮崎駿』『まどマギ』という名前に比べると、知名度などは落ちる。
しかもオリジナルは『君の名は。』だけであり、原作付きの2作品も……聲の形は全7巻の累計で300万部だからそれなりに知名度はあるけれど、誰もが知る名作とまでは……どうだろう、言わないんじゃないかな?」
カエル「ある程度漫画に興味がある人には知られていたけれど、一般層までというと微妙かもね」
主「そういう作品がここまでヒットしたということ、それが2016年の最大の特徴だよね」
3 新しい宣伝スタイル
カエル「これは……?」
主「新しいというよりも、より効果を発揮したのがわかる宣伝スタイルということだよ。
それまでのアニメ映画はやはり監督の名前だったり、テレビでの宣伝が非常に大きかった。キャラクターアニメなんていうのはまさしくそうで『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』の新作だから観に行く、という層も多かったわけだ。
そしてオリジナルアニメも、ジブリだったり……細田守も『時をかける少女』がテレビ放映がされたことにより徐々に興行収入を伸ばし、さらに日テレと組むことでさらに興行収入を爆上げしたわけだ」
カエル「それはアニメ映画に限ったことではないよね。やっぱりテレビの力は偉大だよ」
主「だけど……今年でいうと『シンゴジラ』も『君の名は。』も『聲の形』もそういったテレビ局がタイアップして……という作品ではない。もちろん、少しは宣伝するよ? だけど、テレビ局主導というほどでもないんだよね。
それがここまで流行ったのは、やはりTwitterなどのSNSの存在は大きいわけだ」
カエル「それは前の記事でも語ったような……」
主「まあ、そうなんだけど。さらに言えば、テレビ局主導の映画で大ヒットした作品って……今年何かあったっけ?」
カエル「う〜ん……パッとは思いつかないね。それなりの数の映画を見ているけれど……」
主「つまりさ、時代の変換点でもあるわけだよ。これは映画の宣伝における、さ」
新しい集金スタイル
カエル「これはクラウドファンディングのことだね」
主「そう。それまでもクラウドファンディングで予算を集めて、アニメを制作した例というのは少ないながらもあったわけだ。調べたら湯浅政明の『キックハート』とかもあったけれど、短編だしね。
だけど『この世界の片隅に』は、クラウドファンディングでアニメ映画を作る試みとしておそらく最大の成功例になると思う」
カエル「もちろん、監督は『それで制作費を全てまかなえるわけではない』と発言しているよ。だけど、データをスポンサーに示す上では非常に大きかったということも語っている」
主「もちろん実績豊富な片渕須直監督と、評価の確かだった原作というのもあるけれど、こうした集金スタイルによって、今まで頓挫していたものがこうして作られる可能性も出てきたわけだ。
これは『まどかマギカ』のような総集編映画を作たり、パチンコなどで集金をして続編を作るということができない……オリジナル作品や、誰もが知る大名作原作ではなくても制作される可能性のあるという、新たな道を示したことになる」
カエル「まあ、そうね。方法は広がったよね」
主「もちろん、テレビやラジオといったメディアの力は依然大きいよ。終わったなんていうつもりは毛頭ない。だけど、選択肢が増えたんだよね。これが非常に大きいわけだ。
さらに言えば、こういうTwitterだったり、クラウドというものはオタクと親和性が高い。ネットで語り合う文化が根強くあるし、お金は惜しまないから。こう言った部分も大きいよね」
4 新しい監督たち
カエル「あー……確かにね」
主「まあ、新海誠や山田尚子を最近出てきた監督というのは否定する意見もあるだろうし、片渕須直に至ってはベテランだけど……ここでは『メディアにおいて日の目を浴びる機会の少なかった監督』という程度で捉えてほしい」
カエル「新海誠とかも結構取り上げられていたけれどね」
主「だけど、2013年の監督たち……つまり宮崎駿、高畑勲に関してはもう語るまでもなく有名人だったわけだ。しかもジブリブランド付きだし。そしてまどマギは先述したように元々知名度がある作品だった。
確かにオタクの中では知名度は高かったけれど、新海誠や山田尚子を知っていた人って、そこまで多くはなかったように思うんだよね」
カエル「少なくとも名前で観客を呼べるほどではないよね」
主「これは、どちらかというと1984年に近い状況だと思う。ナウシカの宮崎駿、うる星やつら2の押井守、マクロスの河森正治という才能が、アニメ映画において日の目を見たわけだ。まあ、河森正治はまた別かもしれないけれど……
そして2016年も新海誠は間違いなく一般層でも知れ渡ったよね」
カエル「山田尚子もこれから『若き女性監督』として注目を集める可能性は大いにあるしね。新しい才能であることは間違いないし」
主「そして片渕須直は……こう言っては失礼だけど、クオリティは高いけれど売れてこなかったわけだ。今回も本来は小規模公開だったのが、ファンの熱意でここまでの規模の公開までこぎつけたわけだし。
言葉が難しいな……失礼かもしれないけれど、ある種の『マイナーな監督』だった人が、一気にメジャーに上がったよね」
カエル「ここからどれだけヒットするかのよるけれど、まあ、多分そうなるんじゃない?」
主「そう考えると、今年はやっぱり異常な年なの。2013の盛り上がりとはまたちがうものを見せている。
これが面白い変化だよね。今はまだわからないけれど、2016年はアニメ映画界において革命が起きた年と呼ばれる気がするんよ。それこそ、新たな時代が始まった年ってね」
カエル「新海監督もまだ40ちょっととアニメ監督として考えれば若いといえば若いしね。可能性はあるかも……」
主「だから、単純に『面白い作品がたくさん出た一年』ではないだろうということを言っておきたい」
最後に
カエル「だけどさ……アニメ映画界は良い変化があったかもしれないけれど、テレビアニメ業界はもっと悲惨なことになっていると言われているよね」
主「こっちは誰もどう対処したらわからないような状況だよな……アニメ映画もさ、1984年ってウィキを見ると19作品しかないんだよね。
だけど2016年は52作品あるんだよ。もちろん、テレビシリーズが人気だから劇場版も、というキャラクター型劇場アニメもそれだけ増えたこともあるだろうけれど、びっくりだよ。約3倍弱まで増えているわけだから」
カエル「アニメ映画は週に1本やっている気がするもんね。すべて見たわけじゃないけれど、結構このブログでも毎週のように語っている気がするし」
主「今月なんてアニメだけで何本あるのよ? 海外アニメも合わせれば10本近くあった気がする。
そんな状況だから、数打って当たったものが多いだけ、という指摘があれば、それは正解かもしれないけれどね」
カエル「でもさ、それでもここまでヒットはしないでしょ」
主「アニメを映画館で見る、ということに若者を中心に抵抗がない人が増えた結果でもあると思うけれどね。多分メディアとかではアニメってまだ過小評価されているけれど、これから無視できないコンテンツになるんじゃないかな?」
カエル「……本来はマイナーな文化だったのが注目を集めることによる弊害もあるけれどね」
主「まあ、そうだけど、でも悪いことでもないと思うし、時代の流れだよね。
多分、アニメ映画はこれから先もっと伸びると思うよ」
カエル「いろいろなアニメが出てくるのはいいことだよね」