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物語る亀

ネタバレありの物語批評

映画『RANMARU 神の舌を持つ男』感想 ミステリーとコメディの組み合わせは難しいよなぁ…… 蘭丸

カエルくん(以下カエル)

「今回はドラマの映画化作品を語っていくわけだけど……」

 

亀爺(以下亀)

「ついにドラマも見ないで映画化した作品を見に行くわけじゃな」

 

カエル「まあ、アニメも全く知らないで劇場版を見に行くわけだしねぇ。今に始まった話ではないとはいえ……」

亀「このドラマがやっていたことすら知らず、劇場の予告編で『堤幸彦がまたコメディミステリーをやるんだぁ……』と思っていたほどじゃったからの。

 そんな人間が鑑賞しても面白く作れているのか? という意見も重要じゃろ?」

カエル「まあねぇ……いくらテレビで放映されていたとはいえ、正直言うと『コケた』ことで有名な作品でもあるしねぇ。

 3分間の振り返りがあるのも良かったね。初見でもわかりやすいよ

亀「そういうわけで、今回はドラマ版未見の感想ということで初めて行くかの。

 では、感想記事のスタートじゃ」

 

 

 


「RANMARU 神の舌を持つ男」web用特別スポット

 

 あらすじ

 

 絶対音感ならぬ『絶対舌感(何を舐めてもその構成成分がわかってしまう)』を持つ朝永蘭丸(向井理)は、その能力故に人とキスをすることができない。テレビ版にて理想の女性を見つけるが、その女性も実は薬で口内細菌が消えていただけだったことをしり、失恋してしまう。

 恋に破れて放浪生活を送っていた中で訪れた鬼灯村で、蘭丸に人工呼吸をした医者のりん(木村多江)の口内細菌が気にならなかった蘭丸は恋に落ち、そこで働くことに。そこへテレビシリーズの仲間である甕棺墓光(木村文乃)と宮沢寛治(佐藤二朗)が合流。

 しかし、そこではお約束の事件が発生してしまうのだった……

 

 

※ この作品のミステリー部分の核心(犯人、トリックなど)の直接的言及はしませんが、ニュアンスなどで伝わってしまう可能性があります。

 また、ネタバレありの記事でも犯人等には直接言及しませんが、その可能性がさらに強まることをご了承ください。

 

 

1 ネタバレなしの感想

 

カエル「じゃあ、ネタバレなしの感想だけど……なんというか、う〜ん……言葉に困るんだよね。

 決してくそみそに言う作品でもないけれど……絶妙につまらないんだよね……

亀「難しい話じゃの。少し前に公開されたコメディサスペンス映画は話の展開やキャラクター性が悪い意味でバカバカしいと思わされて酷評したが、この映画はそれも計算して行っているから、いい意味でバカバカしい映画に仕上がっておる。

 そして明らかな設定の破綻であったり、矛盾などもないし、ミステリーもある程度の筋は通っておる。それが映画向きだとか、映画レベルのミステリーなのか? ということは置いておくとしてもの」

 

カエル「だから、本当に悪い作品ではないはずなんだよね。おかしい部分もないし、それなりにしっかりとした脚本だし。

 あとは、堤幸彦監督の代表作とされる『トリック』とかと構成も似た様なものだし、描き方も似ているんだけど……」

亀「なぜだかつまらないの」

 

カエル「ギャグもてんこ盛り、個性的なキャラクターもたくさんいるのに……なぜか面白くないというね。

 劇場内でも笑い声は少しはあったんだよ。ただ、どのギャグも観客の一割くらいには響くけれど、全体が笑う瞬間というのは……なかったかなぁ

亀「設定のシュールさもあったのかもしれんな。それで観客が引いてしまったのか」

 

ギャグについて

 

カエル「ギャグがさ、絶望的に下手なんだよね。なんか……寒いというか」

亀「元ネタがわからんとなんとも言えないギャグも多かったの。わしなどはわかるギャグとわからんギャグがあるが……わかるネタでも面白いかと問われると、少し微妙かの」

カエル「もちろん、笑えるネタもあるんだよ? 例えば……蘭丸を助けた車とかさ。ただ、その描写で笑っていたのは、劇場でも自分一人だったというね」

 

亀「この映画を観に来る層がどこなのか、絞りきれていないというのも感じたの。例えば……あるネタをやるとしても、そのネタがどの層に受けるのか、という問題がどうしてもつきまとう。

 例えば……過去のテレビ番組のオマージュだとして、堤幸彦監督を知っておったらトリックのオマージュが出てきたら笑うかもしれん。しかし、知らん人にしてみればそれは初見のよくわからないネタでしかないからの。

 これは劇場やテレビでコメディをやる難しさかもしれんの」

 

カエル「観客の興味や得意ジャンルも様々だからね。この映画を観に行くから火サスが好きとか、ミステリーに詳しいかというと、そうでもないし」

亀「じゃから、その元ネタが何となくわかれば面白い。じゃが、元ネタがわからんと面白くないかもしれんの……」

 

 

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キャストについて

 

カエル「今回は……キャストに関しても良い、悪いを語れないよねぇ……

亀「そうじゃの。脚本、演出にコメディ要素が強いからの。それもあるのか、演技はリアリティが皆無で、ギャグ漫画的なキャラクターに統一されておった。

 じゃがな、特別誰かが浮いたということもないんじゃよ。みんな等しくどこかおかしい、だから誰かが浮くことも、特別目立つこともない。

 これはこれで、役者陣の演技レベルが統一されているということなのかもしれんの」

 

カエル「おかしいところはおかしいけれど、みんなおかしいから気にならないんというね」

亀「その中でも特に語るとしたら……佐藤二朗が異彩を放っていた……気がする、というくらいかの」

カエル「今回は本当に語ることが難しいね……」

 

 

以下 ネタバレあり

繰り返しますが、犯人等のネタバレはないですが、ニュアンスでわかってしまうかもしれませんので了承の上で読んでください。

 

 

 

 

2 基本的な構造

 

カエル「じゃあ、まず構造論からいくけれど……」

亀「基本的にはトリックと同じじゃと思う。探偵役がいて、その足りない知識や解説役、ヒントを出したりボケたり突っ込んだりというアシスタントがいて、舞台は薄気味悪い伝説がある……ということを考えても、やはりトリックに似ているの」

カエル「今作はそれに賑やかしの女性が1人追加されているよね。ミステリーには一切絡んでこないけれど」

 

亀「もしかしたら、そこが余計だったのかの? しかし、このバランス自体はそこまで悪くないように思うんじゃよ。佐藤二朗というオジさんで宮沢賢治のファンで、博識でボソボソキャラも悪いとは思わんし、木村文乃の……こういうとなんじゃが、かわいいといえばかわいいけれどという、絶妙なウザさなどもコメディ向きじゃ。

 そこに向井理という人気イケメン俳優を入れることによって、キャッチーなファンもしっかりと捉えておるしの。

 わしはこのバランスは……いい選択じゃと思う

 

カエル「だけど……なぜだか面白くならないんだよね……」

 

 

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ミステリーとして

 

カエル「じゃあ本作のミステリーとしてはどうかな?」

亀「う〜ん……難しいの。

 矛盾や論理としてはある程度理解できるものになっておるが、誰もが驚くラストやトリックかというと、そうでもない。だけど、ミステリーとして考えたら、まあこんなものではないかの? という思いもある。

 実を言うと、この映画の多くのこと……隠された真実などは、わしはある程度読めたんじゃよ

 

カエル「ああ、無駄な知識は豊富だもんね」

亀「無駄というな! じゃが、実際に過去のことを調べていると、割と良くある話じゃからな。この作品に重要な歌の意味も、結構有名な話じゃし。

 その意味では現代におけるミステリーが……これだけネットが発達し、色々な知識を観客が共有している中で、目からウロコのようなミステリーというものが難しくなっているのも事実じゃろうな

カエル「今ではネタのように言われる粉塵爆発とかも、昔はそこまで知れ渡っていなかっただろうしね」

 

亀「その意味では少しだけ堤監督に同情もするのじゃが……問題は、この映画の基本的な謎である過去のことと、この作品の謎があまりイコールだと思えんことかの

カエル「ネタバレになりそうだから結構ぼやかして書きますよ」

 

亀「つまり、何が謎で何を推理したらいいのか、あまりよくわからん。この事件の謎と、村の謎、さらに産業の謎もあるわけじゃが、それらが密接な関係であり、その3つの謎が絡まないと真相が見えてこない、というわけでもないというのが痛いかの。

 じゃから、謎のひとつはわしもわかった。じゃが、それが一体どんな意味を持つのか? と考えて、どうしても謎が繋がらなかったというのもまた事実じゃな」

カエル「う〜ん……田舎の村の話だからとはいえ、今時そんな古い伝説の話を持ち出してもねぇ……という気もするよね」

亀「日本全国、どこにでもある話じゃからの。

 もっと酷いことをしている地域もあったぞ」

 

 

3 メッセージについて

 

カエル「で、この作品はテーマもきちんとあるんだよね」

亀「最後できちんと社会派のようなテーマを説明しているしの。その問題は確かに、日本ではあまり問題視されておらんが、実は非常に大切なテーマであったりする。

 じゃから、この映画の根幹にあるメッセージ性というのはわかるんじゃよ、それが単なるゲラゲラ娯楽で終わっていないというの」

 

カエル「だけど……なんでこんなにつまらないんだろうね?」

亀「ひとえに、説明しすぎなのはあるかもしれんの

カエル「邦画の悪癖だよね」

 

亀「わしが思うに、映画というのは……映画に限らず、映像表現というのは言葉やセリフで説明するのが少なければ少ないほどいいと思っておる。

 なぜならば、言葉で表現するならばそれは小説などと同じであろう? 絵や画面構成、演出、音楽、複合された脚本が組み合わさった時に見えてくるテーマというものが映画の醍醐味ではないか? 

 じゃが、この何百館クラスの映画館となると、その多くを説明的になってしまうという問題を抱えておる」

 

カエル「まあ……仕方ないけれどね。ドラマ原作だし、不特定多数を相手にしている映画だし。小規模公開ならばコアな映画ファンを相手にすればいいだろうけれど……

亀「そういったこともあって、多くのことを説明するから観客の推理する楽しみや、深読みする隙を奪ってしまう。そうなると、面白みが減ったしまうわけじゃの。

 じゃから、この説明というのは本来は少ない方がいいんじゃろうが……例えば、この映画においてもっと複合的に、深い意味に取れるものがあるとかがあれば良かったと思うがの。しかし、それも全部説明してしまったからの」

カエル「説明されなくても分かる問題だと思うけれどね……」

亀「観客はそんなに馬鹿ではないじゃろうに」

 

 

 

最後に

 

カエル「結局さ、この映画を評すると……演出も含めてだけど『滑っていた』という表現になるのかな?」

亀「そうじゃろうな。どこもかしこも工夫は感じるし、それなりの努力はされていると思う。少しずつ分解していくと、結構理にかなったような作りになっておるような気がしておる。

 だけど、それが組み合わさった時に……絶妙につまらない作品となってしまうわけじゃな

 

カエル「不思議だよねぇ……こんなことってあるんだね」

亀「やはりギャグや演出面が足を引っ張ったかの。かといってコメディは難しいからの……映画のジャンルとして、一番難しいのはミステリーとコメディだと思っておるが、そのふたつが組み合わさった分、難しさが出てきてしまったの」

カエル「トリックみたいにもう少しホラーのような描写があっても良かったかもね」

亀「音楽も含めて演出面でも、もっと工夫があっても良かったかの。実験的すぎたわ」

 

 

 

RANMARU 神の舌を持つ男 ?鬼灯デスロード編<神の舌を持つ男> (角川文庫)
 
映画「RANMARU~神の舌を持つ男」オリジナル・サウンドトラック

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