物語る亀

ネタバレありの物語批評

映画『ゴッホ 最期の手紙』『劇場版はいからさんが通る 前編 紅緒、花の17歳』感想

カエルくん(以下カエル)

「今回も2作品合同の記事になります。

 組み合わせ自体は似たような時期に公開されたアニメ映画というだけで、特に他意はありません」

 

亀爺(以下亀)

「『はいからさん』に関しては後編が公開したらそちらとセットにするかもしれんの」

 

カエル「セットで語る作品の組み合わせについてもいろいろと考えてはいるんだけれどね……

 そして今回は舞台挨拶付きの上映に行ってきました!

 主演の早見沙織を始め、梶裕貴、瀬戸麻沙美、櫻井孝宏にようる舞台挨拶でした!」

亀「司会も松澤千晶だったからの……わしも最初に登壇してきた時に、思わぬ人が出てきたもので少しだけテンションが上がったもんじゃよ」

カエル「……まあ、登壇者は当然予告されるけれど、司会者まで予告されることはあまりないけれどさ……そこで有名な司会者が出てきたら、ちょっと嬉しいのはわかるけれど……」

 

亀「特に美女が出てきた時は嬉しいの。また声も凛としていて美しいし、聞き取りやすすくて、さすがはアナウンサーだと感心したものじゃ。

 特に今回は女性陣に品があって美しかったのが印象に残ったの

カエル「実は今年早見沙織を見たのが3度目? くらいになるはずなんだけれど、舞台挨拶を終えた時に舞台から降りる時のお辞儀がとても美しいんだよね。

 声だけじゃなくて、所作が美しいというのはファンになっちゃうところだよね。

 もちろん梶裕貴はいつも通り可愛らしいところもあったし、櫻井孝宏のベテランのマイペースな挨拶で笑いも多くあって、とても楽しい舞台挨拶でした!

 では、作品の感想に入りましょう!」

 

 

 

 

劇場版 はいからさんが通る 前編 紅緒、花の17歳

 

小説 劇場版 はいからさんが通る 前編 ~紅緒、花の17歳~ (KCデラックス)

 

 

作品紹介・あらすじ

 

 1975年に連載され、テレビアニメや映画、ドラマ化などの映像かも何度もされた、大和和紀による少女漫画を、前後篇の劇場版作品として制作された。本作はその前編にあたる。

 監督・脚本には『るろうに剣心 追憶編』や『機動戦士ガンダムUC』などの監督を務めた古橋一浩、総作画監督には『ケロロ軍曹』などの総作画監督も務める小池智史。

 また、主演の花村紅緒役には早見沙織、相手役の伊集院忍(少尉)には宮野真守など人気キャストを多く起用している。

 

 時は大正、17歳の花村紅緒は年頃になっても結婚する気などまったくなく、しとやかさのない元気いっぱいなじゃじゃ馬娘ではあったが、その明るい性格で人気者でもあり学校生活を謳歌していた。

 そんな紅緒に突如父親が用意した縁談が伊集院忍との縁談であった。祖父母の代から決められた許嫁ということを聞かされて、結婚なんてする気もなく縁談を破談にしようと騒動を巻き起こすのだが、忍はむしろそんな紅緒を気に入ってしまう。少しずつ心を近づけていく2人だったが、時代は少しずつ影を落としていくのだった……

 


映画『 劇場版 はいからさんが通る 前編』本予告【HD】2017年11月11日(土)公開

 

 

 

 

感想

 

 

カエル「まずは、何と言ってもまだ前編なので全体評価はまだ下せないというのは先に言っておきます。やっぱり終わってから前編と印象が変わることは良きにしろ悪しきにしろ、多いことなので……」

亀「まずは原作のカットが多い映像化において、スタートからラストまでを映像化しようという心意気に賛美は送られるべきじゃろう。これまで映像化は多くが中盤までで終わってしまったことが多いようじゃが、本作は最後まで描くということを宣伝でも語っておる」

カエル「この原作を映像化するときには量は多いよね」

 

亀「そのために、お話としてはかなり急展開であったり、走ってしまった部分はある。わしははいからさんの物語自体が初見なのじゃが、少しばかりキャラクターの心情の変化などに唐突な印象を受けた。

 例えば少尉が遠くに出向するわけじゃが、そのときに荒くれ者の部下と対峙し、仲を深めていく描写などであったり、また紅緒と少尉に大きな変化が訪れた時の紅緒の心情の変化がさすがに急展開すぎるようには見える。まあ、不可解と言うほどでもないし、上記の理由から察せられることではあるのじゃがな」

 

カエル「まぁ、でもつまらない話ではないけれどね」

亀「本作は後編もあるし、むしろ何度も映像化もされている前編は少しダイジェストにして後編で巻き返そう、ゆっくりと描写しようという狙いがあるのかもしれん。その意味でも、まだ最終評価は下せそうにはないかの。

 ただ満足度が低い作品ではないし、観に行く価値は十分にある作品じゃろうな

 

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袴姿にブーツで颯爽と桜の中を走るはいからさんの魅力がたくさん!

(C)大和和紀・講談社/劇場版「はいからさんが通る」製作委員会

 

本作の味

 

カエル「見どころとしては、まずは何と言っても花村紅緒の魅力だよね!

 袴姿にブーツという出で立ちからして、活発でカッコイイ部分を残しつつも、でも女性らしい可愛らしさもあって!

 キャラクターデザインでちょっと賛否は分かれているようだし、それはわからない話でもないけれど、でも現代風になっていてとてもいいんじゃないかな?」

亀「特に早見沙織の快演が光る。

 昨年も主演女優賞に選ばせてもらったが、暗い演技から今作のように快活な演技に至るまでなんでもこなすことができる、素晴らしい声優じゃな。特に活弁士のような歯切れのいい言葉使いが、聞いていて快感になってくる。

 特に乱暴な物言いをしても、声質からどこか気品や凜とした雰囲気を感じさせてくれて、不快にはならないという絶妙な演技であり……ケチのつけようがない演技じゃな

 

カエル「紅緒は士族の生まれで教育も受けているから、決して乱暴なだけではないもんね。そこいらの町娘とは違うよ、というのがよく出ていたよ!」

亀「もちろん他の役者陣も文句なし。キャラクターの問題もあるじゃろうが、かなりアニメ的な演技にしておったが、お馴染み感もあって安心してみていられる。

 特に梶裕貴の両性を演じ分ける技術も見事で、典型的なオカマ演技ではなく、不快感を持たれない女形の色気が含まれておって、こちらも快演といってしかるべきものになっておった

 

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古橋監督の代表作であり、アニメ史に輝く名作

 

カエル「作品の演出面については?」

亀「まず、わしはこの作品を古橋一浩監督作品という意識で見に行っておる。

 追憶編の大ファンなのでな。時代劇として優れており、アニメとしてもレベルの高い1作であった。

 今作にもその影響を感じる部分は若干あって、スタートがその色が濃いの。

 大島ミチルの音楽とともに、クラシック調であの時代を描き始めるという試みは追憶編を連想させる。その意味でも古橋節が効いており、一気に引き込まれるし、この先を期待したいものでもあったの」

カエル「予告編でも使われている紅緒の自転車での疾走などもアニメとしての快感もあったし、これは後編に期待したい作品だよね!

 僕はあまり詳しくないけれど、おそらく当時の情景そのまま映像化しているんだろうし……凝っている作品になっているんじゃないかな?」

 

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もちろん少尉を始めとする男性陣も魅力たっぷり!

(C)大和和紀・講談社/劇場版「はいからさんが通る」製作委員会

 

時代を映す『はいからさん』

 

カエル「では、ここからはちょっとだけ作品論に入っていきます」

亀「まず大事なのは少女漫画の歴史から考えていくことじゃな。

 少女漫画の主題は今も変わらず『恋愛作品』が非常に多いが、そうなっていったのは背景がある。1970年代は女性はまだ社会的に自立して生きるのが難しい時代であるし、家が決めた相手と結婚する、あるいはお見合い結婚がまだ根強く残っていた時代でもある。

 そこで女性が自分の人生を大きく変えるための革命……それが『自由恋愛』であった

 

カエル「もちろん、これより前の時代はもっとガチガチで、70年代になると自由恋愛の風潮が出てくるけれど、ちょうどそれが夢物語にならずに特に女性が憧れる希望の象徴になる時代なんだろうね。たくさんの少女漫画がここで生まれて、現代に続く雛形になったわけだし……」

亀「少年漫画でバトルものが多いのが、男の子にとって革命とは戦って勝ち取るものだったらじゃろう。その戦い方がファンタジーのようなものであったり、ボクシングなどの格闘技であったり、スポーツであったりというものがあったわけじゃな。

 そして女性は恋愛になる。

 だから、今でも少年漫画はバトル、少女漫画は恋愛が王道となっておる

 

blog.monogatarukame.net

少女モノ作品が変換した象徴としてのウテナ

 

 

カエル「そしてはいからさんの話になるけれど……」

亀「その社会情勢を見事に反映させた作品でもあるの。

 花村紅緒は大正時代に自由恋愛を求める女性であるが、多くの理由により結婚を迫れられる。それは家の都合であったり、運命的なものであったり、そして当時の社会情勢を考えても理にかなっておる。現代で見ると紅緒の言い分は最もなように聞こえるが、当時の価値観で考えれば、むしろ周囲の大人たちの意見の方が真っ当である。

 それらの『女性を束縛するもの』からの打破を描くのが、紅緒のキャラクターである

カエル「でも紅緒は少尉に少しずつ惹かれていくよね?」

 

亀「もちろん物語上の都合もあるじゃろうが、そういった運命や親との縁で結ばれた相手も愛は生まれるということを描いておることもあるのじゃろうな。

 皿を割ってしまうところに代表されるように旧時代からの脱却と、女性の社会進出、そして運命の恋愛を描いたところに人気の秘密があるのじゃろう

カエル「なるほどねぇ……」

亀「さて、これで記事は半分じゃが……うん? 電話がかかってきたの。では、少しだけ席をはずすとするかの……」 

 

 

 

 

ゴッホ 最期の手紙

 


映画『ゴッホ ~最期の手紙~』日本版予告編

 

作品紹介・あらすじ

 

 世界的に高い評価をされている印象派の巨匠フィンセント・ファン・ゴッホの絵画を素にアニメーションとして動かした長編油絵作品。

 俳優が演じた映像をデジタル技術で映し出し、それをゴッホの画風で模写し、約6万5000枚に及ぶ絵画を120人を超える画家が分担して描いている。

 監督はドロタ・コピエタとヒュー・ウェルチマンが務める。

 

 郵便配達人ジョゼフ・ルーランの息子アルマンは、自殺した画家のゴッホが弟テオに当てた手紙を託される。そこでゴッホの死の真相に疑問を抱いたアルマンは調査を開始していくうちに、衝撃の事実が浮かび上がる……

 

 

 

感想

 

 

カエル「では、続きましたガラリと印象の変わる作品ですが、ゴッホの最期の手紙の感想といきます」

主「これさぁ、色々と言いたいことがあるのよ……」

カエル「……あれ? 亀爺から変わっている……」

主「細かいことは置いておいてさ、まずはこのゴッホの油絵のアニメーションを作ろうという意図はとても素晴らしい。それだけでこの作品は賞賛されるべき作品だし、その素晴らしさは多くの人に伝わるだろう。

 例えば浮世絵を動かした『百日紅』などの作品もあったけれど、もちろん全編ではない。そんなことは相当難しいし、コストもかかりすぎるから中々やらないよ。

 でも、それを実際にやってしまった。

 こういうとちょっと語弊があるけれど、素晴らしさがわかりやすいアニメーションだよ

 

カエル「物語としてわかりやすい、とかではなくて、この映画がどのように画期的なのかわかりやすいという意味だね」

主「世界初の油絵アニメーションと言われるとロシア人のアニメ作家、アレクサンドル・ペトロフなどもいるわけで、なぜ『世界初』がつくのか? と少し疑問に思ったけれど……多分長編アニメーションだからだろうな」

 

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ペトロフの代表作

本作と『老人と海』が特に有名

 

主「ではそのペトロフの作品と比べると、自分は本作の方が見やすい印象があった。

 今作はロトスコープと呼ばれる手法を使っていて、これはウォルト・ディズニーの時代から使われている手法でもあるけれど、実際に演じた役者などを下敷きにして、その上からアニメーションの絵を描くという手法である。

 そのおかげもあるのか、人物がすごくしっかりとしているんだよね。動きなどにも違和感がなく、しかも2コマ打ち(1秒間に12枚のコマを使い、なめらかな動きになる)らしいからさ、かなりヌルヌル動くのよ。

 そのおかげで相当見やすい映画になっているように受け取った」

 

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ゴッホの絵が動く、これだけでも魅力がわかりやすく通じるでしょう
(C)Loving Vincent Sp. z o.o/ Loving Vincent ltd.

 

アニメーションの快楽

 

カエル「結構世間では評判がいいよね。主も絶賛なの?」

主「……まず、言っておくけれどさ、自分は絵画に関しては全く詳しくない。ゴッホなんて全然わからないし、印象派の絵画はその魅力もちんぷんかんぷんだ。好きな画家はフェルメールぐらい、あとは浮世絵とか、そんなものをたまに見に行くくらいの門外漢であることは先に言っておく」

カエル「本作はゴッホが好きかどうかによって評価が分かれそうだからね……」

 

主「そんな人間からすると本作は『絵画』としては素晴らしくても『アニメーション』としてはそこまで素晴らしいとは思えなかった。

 これはロトスコープの影響もあるんだろうけれど、役者の演技をなぞっているだけのように見えてしまったんだよね。

 当たり前の話だけれど、集められた画家は連続した絵を描くというアニメーションの専門家ではない。

 同じ『描く』という行為の専門家だとしても、求められることは全く違うんだよ

 

カエル「アニメーションって絵や筆致を真似しながらも、連続して動きを作るものだから、画家とはまた違う難しさがあるよね」

主「本作はロトスコープの元になる役者の演技が結構いい。

 そしてこの筆致もあって……ここまで描くならば、もはやアニメーションでなくて実写でいいのではないか? という思いが芽生えてしまった。

 アニメーションで本作を作る意味ってなんだろう? ってね」

 

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アニメーションの快楽性が高い名作の1つが『父を探して』

 

 

カエル「ロトスコープってただなぞるだけじゃないの?」

主「全然違うよ!

 ロトスコープの味を見たければ、ディズニーの『白雪姫』とかさ、a-haの『teke on me』のPVであったり、それこそ『君の名は。』の神楽舞のシーンを見て欲しい。どのように演出し、どのように動きを選択するのか……そこにアニメーションの快楽がある。

 映像的に豪華だから快楽性が伴うわけではないんだよ。

 その意味では本作はアニメーションとしての快楽性は弱いように思ったかなぁ……

 それと、120人の芸術家が描きました、とは言ってもさ、アニメって基本的にそういうものだし。

 みんなが見ているテレビアニメも数十人がかりで描いていることもザラだし、劇場作品ではもっと多くなるだろう。そしてペトロフなどの1人でアニメーションを描いてしまうことも、それもまたすごいことなんだよ」

カエル「もともと『父を探して』とか、今期でいうと『少女終末旅行』のEDとかのシンプルなアニメーションが好きなこともあるだろうけれどね」

 

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このような絵画が動き出すシーンは快楽性があるモノの、それがずっと続くと飽きてきちゃうところも……

(C)Loving Vincent Sp. z o.o/ Loving Vincent ltd.

 

映画として

 

カエル「そして1作の長編映画としてはどうだったの?」

主「う〜ん……ここも微妙だったかなぁ。

 今作の感想をいくつか読んでみたけれどさ、どれもアニメーションとしての絵については語っているけれど、物語に触れているものは少なかった。

 個人的には結構退屈に感じてしまった印象だな」

カエル「そこまで派手な物語ではないというのもあるのかもしれないけれど……」

 

主「まず、油絵が主体だから画面が見辛いというのはある。

 セル画のアニメーションが主体になったのは安いからだけれど、やはり鉛筆などだと線が主張しすぎないから見やすいんだよね。その意味では本作は……というか、油絵は相当目がカチカチしてしまう。

 そして人物の見分けも……これは個人の問題かもしれないけれど、そこまで見分けやすいとも思わなかったかなぁ。混乱するほどではないにしろ、ね」

カエル「油絵の問題点かもね。

 ペトロフの作品も絵画としての美しさはあっても、見やすいアニメーションではないのかな?」

 

主「全体的に今作はゴッホということもあるのか、色彩が暗めだったのも気になったかなぁ。

 本作の印象としては『かぐや姫の物語』とか『レッドタートル ある島の物語』に近い印象がある。

 作品としての挑戦する精神性であったり、意義というのはよく分かるし偉大なアニメーションと言える。

 だけれど、娯楽作品としてはエンタメ性に特化したというわけでもなく、見る人を選ぶという欠点がある。

 芸術作品だ、というならそれでいいかもしれないけれど……万人に受ける作品でもないし、オススメできる作品でもないとは感じたかなぁ。ただ、本作の素晴らしさはわかりやすいから、その意味ではバランスがいいのかも……

 短編向きの作品だったし、30分だったら自分も大絶賛していたかもね

 

 

 

 

最後に

 

カエル「というわけで、この2作品の感想の記事でした」

亀「……到達にわしの出番が削られたの」

カエル「あれ? そういえば主は? どこ行ったの?」

亀「好き放題話したら満足してどこかに去って行ったわい。大方、また何かの映画を見に行ったのかもしれんがの」

 

カエル「……ちなみに、亀爺はどこにいたの?」

亀「急に主から電話が来て呼び出されたら『ちょっとお使い行ってきてくれない? お釣りはお駄賃にしていいからさ!』などと言われて、コンビニに肉まんとピザまんを買いに言ったわい」

カエル「……本当に子供扱いされていたんだね……」

 

 

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