物語る亀

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物語愛好者の雑文

コミティア配布のオリジナル小説の序盤を公開します!

いよいよ明日はコミティア!!

私もY21bにて短編小説集と『映画 聲の形超批評』を配布させていただきます!

今日はその宣伝も含めて、短編小説の冒頭のアップと表紙を発表させていただきます!

(試し読み用ですね)

 

 

 

明日はこの看板を目印にしてください!

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映画 聲の形超批評

 

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こちらの表紙が目印。

内容は以前公開した聲の形批評の完全版になっています!

新しく記事を書いた部分もあるので、ぜひ買ってください!

通販などは・・ごめんなさい、もうちょっと考えさせて(明日の売れ行き次第なところもあります)

 

 

オリジナル小説

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オリジナル小説はこの表紙が目印!

 

内容をこれからあっぷしていきます。

 

表題作 青梅

 

『ねえ知ってる?』

 

 日に日に寒さを増す初冬の夕方に、公園の真ん中に置かれているゾウの滑り台の下の砂場に座りながら、笑顔を見せる望の言葉に朔はそっと小首を傾げた。

『え?』

『初恋の味』

 望は時折、こうした謎かけをする。その度にあれこれと考えるのがいつもの朔の役割だった。仕返しに望に謎かけをすることもあるけれど、答えを当てられてしまうことも多く、ごくたまに答えに困ったかと思ったらクスクスと笑いながらどこかへ走り去ってしまう。それを追いかけるのもまた朔に与えられた役割であり、結局のところいつも振り回されてばかりだった。

 けれど望が他の誰かに謎かけをしているところを、朔は一度も見たことがない。いつも他の人の前ではあまり喋ることもなくじっと本を読んでいるか、外の景色を眺めているばかりだった。

『初恋の……味?』

『そう。初恋の味が、甘酸っぱい理由』

 今回の質問もまた答えることが難しくてウンウン唸りながら、隣で首をひねる。その姿を小さな手で口元を押さえながらクスクスと笑われてしまった。

『ぶー、残念でした』

 こう言っていつも答えられない朔を見て満面の笑みを浮かべる。誰かに笑われるのは気持ちのいいものではないけれど、なぜだかこの笑顔だけは朔も口元を綻ばせてしまうほどの魅力があって、この表情を知るのが世界中で自分一人だと思うと、朔は照れくさいような、誇らしいような、不思議な気持ちになった。

 そしていつものように小さな体の小さな胸を張りながら正解を教えてくれる。

『江戸時代はね、お風呂もなかなか入れないし、歯磨きだって今みたいな香りのあるものはなかったの。だから女の人は好きな人と会う前、口の臭いを消すために梅の花や実をかじったの。その花や実が甘酸っぱい。だから初恋の味は甘酸っぱいの』

 両手で口元を隠しながらクスクス笑う。

『ねえ、それってなんだか』

 

『艶やかね

 切ないね』

 

 二人は全く同じタイミングで、全く違う感想を言ったことに目を丸くしてお互いを見やり、そしてハハハ、と砂場いっぱいに響きわたるほどの大きな笑い声をあげた。他には誰もいないこの世界に、笑い声だけが二人を包み込んでいた。

 

 梅は酸っぱいから嫌だな、と朔がいう。

 味覚が子供なんだよ、と望がいう。

 

 こんな世界がいつまでも続くと、根拠のない確信が二人の世界には存在していた。

 

 

ここまで!!

 

こちらは少年少女の交流を描いた作品になっています。

表題作とあって結構自信作です!

 

 

カーニバル 

 

君は、美というものはいつまで残ると思う?

 

 生まれたての赤ちゃんが可愛いという感情に関して僕は理解することができないけれども、多くの人が共有しているものだということは何の疑いようもない。男性と女性の差はあるにしろ、若い頃というのは誰だって美を持っている。もちろん顔に美醜もあるし、立ち振る舞いや育ちの良さというものもあるのは重々承知だけど、でもそんな醜いとされるものが好きって風変わりな人も世の中にはたくさんいるからね。

 若さを失いつつあるといっても、壮年の魅力というのも結構あるものでね、最近知り合ったまだ二十歳の女の子なんて円楽が好きなんて言ってたからね。円楽だよ? 笑点に出ている六十を超えたお爺ちゃん。まあ、若々しいから六十代には見えないけど。

 女の子? ……ふふふ、うん、まあね、家に連れてきちゃった。その後は言わないでもわかるでしょう?

 話を戻すけれどね、男性ばかりじゃないよ。アダルトコーナーに入れば六十代のおばあちゃんのアダルトビデオもこの間見つけたからね。需要があるものだなぁ、と感心はしたけれども、僕が欲しいビデオはなかったからまあ、どうでもいいや。

 

 じゃあ、問題はその後だ。

 八十代、百歳になってもその人間には美は宿るのか?

 まあ、この場合の美の定義付けが難しいけれど、まあいいや。そこは今語りたいことではないんだよ。

 僕はね、やはりその寝たきりのご老体であろうとも、そこに美があると思うんだよね。若い頃のエロスの溢れるような美ではないかもしれなけれども、そのシワクチャの手や虚ろな目の奥に、深遠なる何かが垣間見えるような気がしているんだ……

 

 

ここまで!!

 

こちらはちょっとドッキリするような仕掛けを施しています。

あんまり語りすぎると面白くないので、ここまでにしておきます。

 

ナミダダケ 

 

ワライダケって知ってるかい?

 

 そうそう、食べると笑いが止まらないっていうあれさ。とは言ってもさ、本当に笑ってるわけじゃあ、ないんよ。神経毒でさ、顔面が麻痺して引きつっている様子が笑っているように見えるってだけなんだがね。最近はやりの笑素とかとは違うもんだ。いやいや、そりゃ違法かもしれないけれど、そう危ないもんでもないっての。ワライダケで人が死んだって話、聞いたことがあるかい? ないだろ?

 こいつはそのワライダケみたいなもんさ、聞いて驚け、その名もナミダダケってんだ。ほれ、よく警察やら軍隊の突入するときによ、催涙ガスってもんがあるだろ? 俺っちは今じゃこんなしがないキノコ売りだがよ、その昔は学校でも一、二を争う俊英と言われたもんさ。

 特に好きだったのが化学でよ、そんときゃ禿げあがったおっさんよりも詳しかったもんさ。勝手に薬品棚をチョチョイっと開けてよ、色々な実験を繰り返してるときによ、なんかすげえ涙が溢れてきたもんだ。

 あ? わからんか? じゃああれだ、玉ねぎみたいなもんだと思えばいいさ。あれだってよ、その催涙物質が鼻から入って涙が……あ、もういいかい?

 とにかく、こいつはそれと同じでよ、涙が止まんなくなってくるんだよ。

 体への心配なんかねえよ、お兄さん、玉ねぎで人が死んだって話、聞いたことあるか? ないだろ? 玉ねぎで死ぬのは犬っころだけと相場が決まってんのさ。

 お兄さん、涙が出なくて困ってるんだろ? だったらこいつを口に放り込んでよ、一つ二つ噛み締めればそれでおしまいさ。あとはポロポロと滝のような涙が溢れてくるから、葬式だって安心だよ。なあに、一時間もすれば勝手に止まるからよ、そんな気にしなくていいって。

 じゃあ、一本六千円でいいよ。

 毎度あり!」

 

 

 競馬場にいた予想屋の親父の紹介で行った店の親父に、そんな怪しげなキノコを買わされた俺は、これから屠殺場に向かう子牛のような足取りで家に向かう。きっともう兄貴たちは証人である弁護士やら何やらを呼んで、じっと俺の帰りを待っていることだろう。

 

 お袋が死んだのはつい一月前の話。

 あれだけガミガミと口うるさかったお袋も、逝く時は本当にあっという間だった。朝に頭が痛いと訴えたが、もうそれなりにいい歳なのでどこかしら悪いところは出てくるだろうとほっといて家を出て、パチンコ屋へと向かった。そして今までないほどに確変をひきまくり、換金したら二桁万円は行くんじゃないかと思っているところで、兄貴から電話がきた。

 お袋が死んだのだ。

 しかしである。ここからは大事な問題なのだが、確かにお袋が死んだことは一大事なのだが、今はいつ止まるかわからない確変中であり、ここで諦めたら儲けは減ってしまう。ましてやお袋はすでに死んでいて、今更俺が駆けつけたところでどうしようもない。あとは全て兄貴が手配してくれているのだ。

 そう考えたら、俺にできることは一つ。

 このまま打ち続けることだった。

 結局そこからの確変ラッシュも長くは続かず、最終的には二桁万円に届かずに少しだけ膨らんだ財布を胸ポケットに、大勝記念に大酒を飲み干して呂律の回らない姿で家に帰ると、くしゃくしゃのワイシャツと皺のよったスラックス姿の兄貴がこちらをじっとにらみつけていた。その奥では姉と叔父の姿も見える。

 兄弟たちはみんな家を出たので直接会うのは一年ぶりくらいだったが、どことなく元気がなさそうだった。まあ、当たり前の話か。

 

 

ここまで!!

 

こちらはコメディですね。短編って結構語りにくいなぁ。

 

ラストが新作であり、コミティアのために書き上げました。

 

助手席

 

 スヤスヤと寝ちゃってさぁ。

 

 二人で旅行に行こう、なんて言い出したのはこの娘の方だった。まあ、それ自体は嫌なわけじゃなかったけれど、車で行きたい! と珍しく駄々をこね始めたのは、正直驚いた。頑固者で一度言い出したらいうことを聞かないから、こうなったら私が折れるしかない。

 出発前に約束したにも関わらず、この娘は窓ガラスに頭を預けて瞼を閉じている。二人きりの車中で、運転中に寝られると少し辛いものもあるけれど、それでもこの穏やかな寝顔を眺めると喉元まで出かかった文句が引っ込んでしまった。

 さすがに初心者マークは外れたととはいえ、免許を取ってそこまで長いわけでもないのに、きっと彼女の中では私が事故を起こす可能性なんてこれっぽちも考えていないのだろう。

 

 

ここまで!

本当にちょっとだけ。あんまり公開しすぎるとわかる人には内容がわかってしまうので。

短編だと少し公開するのも難しい。

 

 

短編小説集は電子書籍などで販売したいなぁと思っているので、地方の方などはお待ちください。

自分が手続きなどで諦めなければ出版すると思います。

 

東京は明日、雪の予報になっています。

はじめてということもあり、緊張半分わくわく半分というところですが、お祭りなのでたのしみましょう!!

なお、私がスペースをお借りしたHADAKA電球さんでは漫画も配布していますので、ぜひそちらもよろしくお願いします!!