物語る亀

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物語愛好者の雑文

映画『シンクロナイズドモンスター』と『星空(2017年日本公開、台中映画)』感想 

カエルくん(以下カエル)

「今回も2作合同の作品感想となりますが、今回のコンセプトは?」

 

亀爺(以下亀)

「なになに……

『人生は戦いだ! 女の変身特集!』らしいの」

 

カエル「……え? どういうこと?」

亀「どちらも少し変身したり、特徴的な演出がある作品ということじゃの」

カエル「……無理矢理すぎない?」

亀「ちなみに他の候補としては『覆面系ノイズ』と『永遠のジャンゴ』で『音楽で現実と戦え! 特集』なども考えておったようじゃの」

カエル「……ちょっとまって、若者向けの恋愛スイーツ映画の覆面系ノイズと、ナチスドイツに迫害された音楽家たち(ジプシー)のジャンゴを扱った映画を一緒に語るって無理がありすぎるでしょ!?」

 

亀「だからやめたんじゃろう。

 とりあえず公開からは少し過ぎてしまったが、今回は『シンクロナイズドモンスター』『星空』の2作について語っていくとするかの」

カエル「……まあ、メチャクチャではあるけれど音楽特集に比べたらまだあり得る組み合わせなのかなぁ?」

 

 

 

シンクロナイズドモンスター

 

ポスター/スチール写真 アクリルフォトスタンド入り A4 パターン1 シンクロナイズドモンスター 光沢プリント

 

作品紹介・あらすじ

 

 『プラダを着た悪魔』など多くの映画に出演している人気女優のアン・ハサウェイ主演と製作総指揮に名を連ねたカナダの作品。監督・脚本にはスペイン出身で『エンド・オブ・ザ・ワールド 地球最後の日、恋に落ちる』などの監督も務めるナチョ・ビガロンド。

 

 酒による失敗により彼氏と別れて地元へと帰ってきたグロリア(アン・ハサウェイ)は、街に残った幼馴染のオスカーと再会する。バーテンダーになっていたオスカーに誘われるままに大好きなお酒をたくさん飲んでしまい、次の日の朝に起き上がるとテレビのニュースは韓国ソウルで大怪獣が暴れまわったというニュースが流れていた。

 テレビに映った怪獣をよく見ていると、その動きが自分のものとシンクロしていることに気がついたグロリアは色々と行動を起こすのだが……

 


アン・ハサウェイ主演!映画『シンクロナイズドモンスター』予告編

 

 

 

 

感想

 

 

カエル「というわけで、まずはシンクロナイズドモンスターの感想から行きますが……典型的な低予算映画ながらも、工夫された作品であるという印象だね

亀「おそらく、本作はそれなりの予算しか出ていないから怪獣を大暴れさせることは難しいと判断した制作陣が、その状況を逆手に取った作品なのじゃろうな。そしてその試み自体はある程度成功していると言っていいじゃろう」

 

カエル「まずは何と言ってもアン・ハサウェイの魅力だよね!

 今更語るまでもない、おそらく読者の方のほうが自分よりも詳しいであろう、大作映画にたくさん出ている現代のヒロインであり、今もっともノリに乗っている女優の1人でもある彼女の可愛らしさが存分に発揮されていて!」

亀「今作の役としてはそんなに可愛い訳ではない。酒に溺れて男に捨てられる、無職のダメダメウーマンじゃからの。可愛らしい役では間違いなくない。

 しかし、そんな女性であってもアン・ハサウェイが演じると『まあ、しょうがないかな』と思うような愛嬌のある女性になっておる

カエル「あれだったら男の人もいくらでも寄ってくるんだろうなぁっていうのが伝わってくるし、地元でもチヤホヤされるんだけれど、それも納得出来る演技だったね」

 

亀「他にも褒めるポイントとしては怪獣の造形などは良かったの。

 少し怖くもあるが、どこか可愛らしさを感じさせてくれる。わしなどは『ピグモン』などを思い出したかの」

カエル「動きがコミカルだからね。憎むべき敵ではないということが伝わってくるよね。

 この作品の売りである怪獣と、そして役者の演技に関しては文句がないかな」

 

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ダメダメで間抜けなんだけれど可愛らしいのはアン・ハサウェイだから!

(C)2016 COLOSSAL MOVIE PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

 

一方で難点も……

 

カエル「でもねぇ……ちょっと評価が困る部分もあって……」

亀「本作では怪獣が出てこないパートもそれなりに多いのではあるがの、そこがあまり面白いとは思えなかった。特にわしなどはカッコイイ怪獣のドタバタコメディだと思って鑑賞したが、実はそうでもないからの」

カエル「低予算っぽいから、怪獣が暴れまわるシーンというのはそんなに多くないんだよね。だけれど、工夫に満ちた演出もあって、怪獣を暴れさせらない分、それを想像できるような演出もあるんだけれど……

 それ以外の人間ドラマのパートが退屈でしょうがないんだよねぇ……

 

亀「物語としてはとても大事なのはわかるしの、それが重要な意味をもたらしているから必要な描写ではあるのじゃが、それがあまり面白いとは思えないのが致命的じゃったの。

 特に中盤のゴタゴタに関してはだいぶ眠くなってしまった部分もある

カエル「特にコメディパートも影を潜めてしまった部分もあるし、キャッチーな魅力が減ってしまった印象かなぁ。ただ、この作品のもう1人の主人公が徐々に変わっていくところなども見どころではあるんだけれど、やっぱ地味な部分で……悪いってわけではないんだけれどね」

亀「わしなどはむしろあの人物の方に感情移入してしまったの。

 なんだかかわいそうになってきて……あのような行動をとりたいという理由もよく分かるものになってしまった」

 

カエル「あとは物語としてはちょっと強引なところもあったかなぁ」

亀「予算などもあって仕方ないところもあるんじゃろうが、ちょっと言葉に困る部分も多かったの」

 

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ちょっと間の抜けた顔が可愛らしい怪獣の造形も◎!

(C)2016 COLOSSAL MOVIE PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. 

 

本作が描いたテーマ

 

カエル「直接的なネタバレは避けながらも本作のテーマを語るという、奥歯に物が挟まったようなことになりそうな……」

亀「それは置いておくとして、本作は地域のコミュニティといかに向き合うか、ということを描いておる。グロリアは1度大都会へ行き、帰って来た女性じゃ。もちろん、そっちでそれなりに活躍もしておった。

 その人物が帰って来たというのは小さなコミュニティには大事件である。例えば、幼馴染のオスカーなどはそれにちょっと安心しているところがあるの」

 

カエル「結局、小さいコミュニティで生きるということに対して絶望感すらあるわけで……その気持ちはよく分かるなぁ」

亀「それが大きな力を持ってしまった時の万能感というのはとても強いものであるじゃろうな。だからこそ、あのような行動を起こした。

 グロリアは外の世界を知っているからこそ、それがどのような行為なのかも想像できるし、そこに快楽性もない。だけれどあの人にとってみたらそれは世界を革命するような全能感に包まれていることじゃろう……例え、それが小さな砂場遊びであってもの」

 

カエル「だからこそ最後はああいう形になるんだね……」

亀「しかし、わしにとってはその気持ちもよくわかる……というよりもグロリアの心情よりもグッと来てしまった。

 別に好きでこの小さなコミュニティにいるわけでもないし、それなりに努力もしておったのじゃが……それをグロリアに否定されたような状況になってしまうわけじゃからな。

 小さなコミュニティからの独立を描いている作品でありながらも、そのコミュニティに残らざるを得ない人に感情移入してしまったのは……果たして製作者の思惑通りなのか」

カエル「案外計算通りなのかもねぇ」

 

 

 

星空

 

星空 The Starry Starry Night

 

作品紹介・あらすじ

 

 台湾で人気絵本作家の作品を実写映画化し、 2011年に公開された作品が日本で小規模公開された中台合作先品。

 監督は今年日本公開された『百日告別』などのトム・リンが務める。 主役は『ミラクル7号』で女の子ながらも男の子の役を演じたシュー・チャオ。

 

 美術品に囲まれた家に暮らす13歳の女の子、シンメイは両親が毎日喧嘩するような不和に加えて、唯一の信頼できる大人だった祖父も亡くなってしまう。孤独感を増しているシンメイは、学校に転校してきたスケッチブックを抱えて絵を描く男子生徒、ユージエに徐々に惹かれていく。

 2人で学校の展覧会の飾り付けを任されることになるのだが、あるトラブルが発生してしまい……

 


映画『星空』日本版予告

 

感想

 

カエル「では続いては小規模公開の映画の話題になります!」

亀「やはり、この小学校高学年から中学生の子供たちはいいのぉ

カエル「……いや、ちょっと今はるろうに剣心などの問題があるから、発言には気をつけてね……趣味は人それぞれだけれど、犯罪になるようなことは……」

亀「そういう意味ではないわ!

 恋愛映画を描くときにこの年頃の子供達だと、その純粋性に惹かれていくという話じゃ。これがもっと幼いとそもそも恋愛として成り立たず、ちょっと歳を重ねてしまうと……高校生だとセックスなどが絡んでくる。そして大人になると職業や収入などが絡んできて、お互いが好きであればオールOKtというわけにはいかなくなってくるものじゃ。

 おそらく、相手に対して何の打算もなく人を愛することができる年齢……少なくともその物語に説得力が宿る年齢がこの年頃なんじゃろうな

 

カエル「まあ、でもこの作品の主演であるシュー・チャオが本当に可愛らしくてさ、当時だとそれこそ13歳とかなのかな? 透明な美しさとか、前髪パッツンでちょっと孤独な雰囲気の漂っていて、見ていてため息すら漏れてきそうだったよね。

 それから、教会に泊まるシーンがあるんだけれど、そのシーンのチャオは今年で1番ドキドキした!

亀「年齢もあって特に肌をさらすわけではないのじゃが、あの演出は本当に上手かったの。相手役のユージエがドキドキしてしまうのもよく分かるシーンであった。

 あの中学生くらいの、何も考えることなく相手を想う心などをよく描写した作品であったの」

 

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途中からこの2人がとても可愛らしくて自分の子供のように見えてきたり……

(C)HUAYI BROTHERS MEDIA CORPORATION TOMSON INTERNATIONAL ENTERTAINMENT DISTRIBUTION LIMITED FRANKLIN CULTURAL CREATIVITY CAPITAL CO., LTD ATOM CINEMA CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED

 

演出の味

 

カエル「本作は絵本作家の作品が元になっているという話だけれど、それも納得するような幻想的な演出が目立っていたね」

亀「孤独な少女がどのように感じていたのか、そしてユージエにどれだけ惹かれるのかというのがよく伝わってきた。

 ユージエはその絵かきの趣味ゆえにいじめられてしまったりもするのじゃが、そこを助けてくれるのがシンメイである。その時に壁伝いに歩くシンメイをカメラも一緒になって追いかけるのであるが、交差点の奥の道でいじめられているユージエを発見し、また戻るわけじゃ。

 そしてそこでイジメを止めるわけであるが、その時シンメイの影がドラゴンになるわけじゃな」

 

カエル「ここで自分の仲間を守ろうとする強い絆と、そして暴力性などを表していてよかったよねぇ」

亀「それから、本作を象徴するアイテムがゴッホの絵画である『星空』であるが、このジクソーパズルの使い方もとてもよかった。

 1ピースだけ抜けた星空が、そのまま彼女たちの喪失感などを表しておったの

カエル「そのゴッホの絵画を基にして銀河鉄道の夜のように飛んでいく様だったり、それから教会での拙いダンスとか……本当に1つ1つの描写が美しく、可愛らしくて、ずっと見ていたいなぁという気分にさせられたよね

 

亀「物語としてはそこまで優しい作品ではない。むしろ、大人の都合に翻弄される子供達という意味では、自分の自由がない年頃の子供達の苦悩の物語ということもできる。

 しかし、本作は絵本を基にしていて、とても幻想的であり、優しい物語になっている。それは監督の演出が観客をあの時代へと引き戻し、そしてそれがたった一瞬しかない貴重な時間を切り取ることに成功しているからであろうな」

カエル「こちらも小規模公開で気軽に見に行ける作品ではないでしょうが、とてもいい作品なので機会があればぜひ鑑賞してください!」

 

 

 

最後に

 

カエル「今回は小規模公開の作品を2つ、特に星空はあまり見に行きづらい人が多いであろうけれど、とてもお勧めしたい作品でした!」

 亀「やはり少年少女の物語というのはいいものじゃな」

カエル「……うん、その言葉の意味を聞いても、変質者のようにしか思えないのはなんでだろう?」

亀「いやいやいや、変な意味ではないからの。この時代の子供達というのは実際にいたら生意気盛りでしかも反抗期という、人生の中でも最も扱いづらい年頃であるじゃろうが、こうやって映画の中であれば魅力的だという話じゃからな」

 

カエル「いや、それはわかっているんだけれど……」

亀「そうやって人の言葉を疑うから可愛げないんじゃ」

カエル「……むっ。それなら亀爺だってもっと好々爺としての可愛げってものを身につけてもいいんじゃないの?」

亀「いやいや、ワシはすでにピチピチギャルにモテモテじゃからの……」

カエル「その言葉使い自体がすでに可愛げないんだよなぁ……」

 

 

星空 The Starry Starry Night

星空 The Starry Starry Night