カエルくん(以下カエル)
「では、今月1番の注目作でもある『レディ・プレイヤー1』の感想記事と参ります!」
主
「とてつもなく面白くて、今年最も話題になる映画かもしれないな……」
カエル「一刻も早くこの映画の感想を伝えたい! と思わせるほどの力を持った作品でもあるよね!」
主「では、感想記事のスタートです」
作品紹介・あらすじ
100億ドル(約1兆円)を稼ぎ出した世界一の大ヒットメーカーである映画監督、スティーブン・スピルバーグが監督を務めた、アーネスト・クラインによる小説『ゲームウォーズ』を原作としたSF作品。
VR技術が進むことによって登場した『OASIS』と呼ばれるゲームの世界に入り、そこでコインを稼ぐことが多くの人の趣味となっている世界を舞台に活躍する少年少女の物語。
作中では世界中で知られている有名なキャラクターが多く登場しており、日本が生み出したキャラクターも多く登場することが話題に。
オアシスを開発した大富豪、ジェームズ・ハリデーの死去の際、重要な発表がされた。ゲーム内に隠された3つの謎を解明して、鍵を手に入れて扉を開けた者には遺産とオアシスの運営権をプレゼントするというものだった。
世界一の大企業の運営権と富を手に入れるために、多くの人が躍起になって探すが1つも見つかることがないまま時代は過ぎていく。
17歳の少年、ウェイドもその財宝を探しまあっていたのだが、そんな彼は謎めいた美女であるアルテミスと出会うことで大きな転換を迎えるのだった……
映画『レディ・プレイヤー1』特別映像(ストーリー編)【HD】2018年4月20日(金)公開
1 感想
カエル「では、まずはTwitterでの短評からスタート!」
#レディプレイヤー1
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2018年4月20日
全てのオタクに告げる
今すぐ劇場に行くのだ!
これはオタクの、オタクによる、オタクのための完璧な映画である!
世界よ、これがオタクだ!
本作の愛に君はむせび泣くこと間違いなし! pic.twitter.com/JYQ0qbLqJw
主「もう大絶賛ですよ!
スピルバーグという100億ドルの監督が作り出す究極のエンタメ映画だからさ、素晴らしいのはわかりきっていたけれど、今作は本当にケチのつけるポイントが少ない!
強いて言うならあれだね、字幕が邪魔だね!」
カエル「……それはもう吹き替え版を見ろ! という話だよね。
でも本当に字幕を読む暇もないくらい画面が盛り上がっていて、日本どころか世界を代表する超人気キャラクターが総出演しているけれど、みんながみんなピックアップされているわけではなくて……
あれ? もしかして今チラリと〇〇がいなかった? ということの連続でもあります」
主「だからこそ、本作は何度も鑑賞して『あ、ここにあのキャラクターがいたんだ!』となること間違いなしだよね。
特にこの手の『いろいろなオタク要素を詰め込みました』って作品は一般の観客……そんなにアニメや映画に詳しく無い観客を置いてけぼりにすることもあるじゃない?」
カエル「ファンからすると知っていて当然だけれど、一般的な人には知られていないコアな作品をピックアップしたりね……」
主「オタクだからこそ『これくらいは知っているだろう』と思ってしまうけれど、それはオタクの中の小さな世界での常識でもある。
本作は世界中の人が知っているであろう超有名作品などをピックアップしながらも、細かいオタク愛は画面の端々などで表現している。
まさしくオタク以外の人にも愛される作品です!」
作中で出てくる作品について
カエル「もうさ、1から10まで上げていくとキリがないよね。もちろん、1度の鑑賞では見落としてしまった部分も山ほどあるだろうし、知らない作品もあるだろうけれど、それ以上に本当に多すぎて書ききれないほど!
その中でも日本の作品が非常に多かったのが印象的だったね」
主「予告でも登場している中ではガンダムとか、本当にいい場所で使われているし……あとは『AKIRA』の金田バイクとかね。
もしかしたら『AKIRA』ももう30年ほど前の作品になるから、若いアニメファンの愛では知られていない作品かもしれないけれど、いまだにアメリカを中心に世界中でファンを多く獲得している作品だと痛感したよ」
カエル「もちろん、アニメも多いけれどゲームもたくさん!
特に古いゲームを愛する人には、ニヤリとしてしまう場面や『わかっている!』と言いたくなるシーンも山盛りなんじゃないかな?」
主「他にも映画もたくさん含まれていて……
予告で出てきた『キングコング』なんて特にそうだよね。もちろん、それ以外でもアイアンジャイアントであったり、ヒーローたちであったり……また超有名なシーンのオマージュも完備!
そしてスタートから世界一有名な車が登場するだけでテンションMAX!」
カエル「先にも行ったけれど、本当に超有名作品ばかりで……中にはオタク映画ではない、有名なホラー映画が重要なシーンで使われていたりと、多くの映画ファンを虜にすること間違い無い作品です!」
主「本当に、全てと言ってもいいほどオタクに対して向かい合った見事な作品だよね。
それから、予告でも使われているヴァン・ヘイレンの『Jump』などを始めとして、洋楽ファンも歓喜するような音楽も完備。特に終盤のとても盛り上がる熱いシーンでは音楽の力によって、自分も涙しました!
ぜひ画面だけでなく、音楽も注目してください!」
アニメーション? 実写?
カエル「もちろん、本作はCGでの表現も多いけれど、基本は実写映画ではあるんだよ。だけれど『オアシス』の中で行われるゲームの画面は基本的にCGであり、しかもキャラクターもCGキャラクターなんだよね……」
主「自分なんかはマーベルをはじめとした海外のヒーロー映画はアニメの延長線にあると思っているし、そういう視点でずっと見ている。
あれだけCGてんこ盛りで作られると、もはや実写とアニメの壁ってなんだろう? という思いにかられる。
背景や視覚効果などもCGで、役者だけが実写ということだって多くあるわけじゃない?」
カエル「どうしてもアニメと実写って対立するように考えてしまうけれど、実際はその壁って相当薄くなってはいるんだよね」
主「そして本作はいよいよその壁をぶち壊したかもしれない。
ゲーム画面(ヴァーチャル)はCGアニメのようであり、現実世界は実写映画のように撮られている。
この境目がない世界、というのも魅力の1つだね」
カエル「正直、ゲーム画面はCGの粗が結構見えていたりもするんだけれど、でも逆にそれがヴァーチャルな世界だと説明されているからこそ、それが説得力にもつながってくるんだよね」
主「VR技術は今まさに盛り上がり始めている産業でもあり、ここから一気に世間でも認知されてくる可能性も大いにありうる。作中で登場した……例えば全方向に歩けるように作られた装置なども、実際に製作されているわけだ。
映画館も3Dや体験型のシアターが多く増えていっている。今、映画を鑑賞するということが大きく変わっている時代でもある。
そんな流れの中で CGと実写の融合が進むと、この先アニメーションと実写を分ける必要がなくなるのではないか? と、そんなことを考える作品でもあったな」
以下ネタバレあり
2 深読み? 作品考察!
スタートからガンガン盛り上がる!
カエル「ではここからは作中に言及しながら考察していくけれど……まずは、スタートからガンガン盛り上がる作品だよね!
先にも語ったけれど、あの有名なヴァン・ヘイレンの『Jump』が流れた瞬間にすでにテンションが MAXで!」
主「ここでうまいなぁ、と思ったのが、主人公たちが貧しくて劣悪な環境下にいるけれど、この描写をアトラクションのようにしてワクワクするように描いたことだよね。
それと同時に、狭い家の中でヴァーチャルの世界で遊ぶ姿を見て、どこか異常なようにも感じさせる……
この彼らの生活とヴァーチャル世界の恐ろしさを視覚的に見せたこと、これがまず賞賛するべき点だろう」
カエル「あの積み重なったバロック小屋も九龍城を連想させるし、それはそれでワクワクすんだよね。あのどうやって作っているのかもわからない、廃墟のような世界がとても面白いし」
主「結構序盤は説明が多いけれど、それも視覚的に飽きないような工夫に満ちていて、例えばドローン宅急便とかね。アメリカとだと存在しているという話も聞いた事あるかな?
日本では事件以降、あまり都内を飛び回る事が出来なくなってしまったドローンだけれど、やはり既視感がありながらも未来の技術、という様子が感じられてとても考えられたスタートだと感じたな」
色々と深読みしすぎ? なオマージュたち
カエル「もちろん、明らかに有名作品から登場している作品もたくさんあるんだけれど、ちょっとこれだけ多いと色々な深読みもしてしまうよね……」
主「序盤、レースシーンが始まる前に賛美歌風の音楽が流れるんだけれど……自分は洋楽に全く明るくないので、もしかしたら誰もが知る名曲なのかもしれないけれど、それを聞いたときに『あれ? Fateっぽい……』という気もしてしまう。梶浦由記サウンドのようにも聞こえてくるというね。
あとはハリデーの遺言が『ワンピース』のゴールドロジャーのセリフに似ているような気がしたり……スピルバーグがどれだけ最近のポップカルチャーに明るいのかわからないけれど、影響力はガンダム並だし、おかしな話ではない。
こういう、その人の好きなジャンルによって『あれ? 実は〇〇のオマージュじゃないの?』と思うシーンって結構多いように感じたかな」
カエル「ふむふむ……他には?」
主「自分が主に感じたのは『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』と、やはり自分が押井ファンだからかもしれないけれど『攻殻機動隊』の要素はあったように感じた。
インディ・ジョーンズは特に最後の聖戦を選んだのは、3つの試練を乗り越えた後、最後に訪れる課題やその周囲の環境がなんとなくの状況に似ているかな、という印象なんだよ。
もちろん、この作品の監督でもあるから、自ずと似てしまった可能性も大いにあるけれど……これはあえての作為的なものじゃないかな?」
カエル「ふむふむ……それと攻殻機動隊に関しては?」
主「これはそのままで、最後のキーマンの正体などに関してはどことなく攻殻機動隊のようじゃない?
草薙素子の最後の状態に近い気がする。
もちろん、この2つは考えすぎかもしれないけれど……でもオタク知識に深く、これだけの愛が込められた作品であれば、ありえない話ではないよね」
3 訴えかけてきたテーマ
本作だからできるテーマ
カエル「じゃあ、何も中身のないハリウッドアクション大作なの? と問われるとそんなこともなくて、ちゃんとしたメッセージ性も内包した映画なんだよね」
主「本作が抱える『ゲーム=虚構』といかに向き合うべきなのだろうか? というのは今後非常に重要な問題になってくる。
それこそ日本だと少し前だけれど『ポケモンGO』が多くの問題を露呈させてしまった。あれもヴァーチャルなスマホの世界と、現実の道や場所がリンクすることになった。その結果、多くの事故や問題が発生してしまったのも事実だ」
カエル「ヴァーチャルな世界に現実が侵食されている! なんてことを言う記事もあったよね……悪いのはゲームではないんだけれど……」
主「実際、それは問題だとも自分も思う。
我々が生きるのは現実であって、ヴァーチャルな世界ではない。
そのヴァーチャルな世界というのはあくまでも一時的な逃避でしかないんだ。
だけれど、それを受け入れずに現実を逃避してしまった何の意味もない……
この手のオタク映画で1番気をつけなければいけないのは、そこだと自分は思っている」
スピルバーグとデル・トロ
カエル「今年はデルトロが『シェイプ・オブ・ウォーター』がアカデミー賞を受賞するなど高い評価を受けたじゃない? 同じオタク映画でもそのアプローチが全く違うという話だけれど……」
主「どちらも知識の深いオタクであり、自分を育ててくれた多くの作品たちに最大の敬意を払っているところは同じだよ。
もはやオタクというよりも、文化人と呼ぶべき知性を兼ね備えて映画を製作しているのも同じだし、どちらも大ヒットメーカーでもある。
だけれど、この2人がこのオタク映画2作で決定的に違ったな、と思ったのが……ラストなんだよね」
カエル「あんまり直線的にネタバレはしないようにするのが難しいけれど、デルトロは理想(愛するもの)と共に……というエンディングを選ぶ、本作はまた違う現実とヴァーチャルに対して一定の距離感を選ぶエンドだよね」
主「正直に言えば、デルトロの考え方は自分には違和感があるし、危険だとも思っている。あくまでも物語は物語であり、オタク知識はオタク知識なんだよ。それが現実にはあまり関係がない。
もちろん、我々オタクは『物語(虚構)の中にも真実がある!』と強く主張するし、実際に虚構だからこそ描ける真実もある。
だけれど、だからといって現実をないがしろにしていいのか? という思いは……どうしてもあるんだよ」
カエル「幻想を抱いて溺死することが正しいのか……かぁ」
主「その難しい問題もきちんと一定の回答を示したこと、これが本作を高く評価する理由の1つだね」
本作の欠点
カエル「……あれ? これだけ大絶賛しているのにもかかわらず、何か欠点があるの?」
主「ここでもデル・トロとスピルバーグの差が出たな、というポイントでもあるんだけれどさ……この設定を活かしきれているとは思えないんだよ」
カエル「……というと?」
主「自分は世代的にもこのVR空間に飛び込む、というと『.hack』を連想する。15年くらい前に流行した日本のゲームだけれど、設定自体はやはり似ている。まあ、VR空間をテーマにした作品だと、どうしてもこの設定になってしまうような部分はあるけれどね。
で、何が言いたいのかというと……なぜ全員美男美女にしてしまったのか? ということだ」
カエル「顔にあざがあったりと色々な事情は抱えていても、基本的には映画らしいイケメン美女だもんね……はっきり言えば、サマンサくらい美しかったら、あの顔の傷も気にならないかも……」
主「つい最近『.hack』の特集があったけれど、そこでは視力を失う青年が最後にプレイしたいゲームがこの作品だった、という感動の話がある。このシステムがあれば自分も将来、景色を見ることができるっていうね。
これはアニメの『.hack』でも障害を抱えたヒロインが、ゲームの世界では大きな組織のトップになっているという描写がある。ゲームと現実の差を最も描写することができるよね。
だけれど、この映画はリアルでも五体満足で見目麗しい少年少女を仲間にしてしまったことが、個人的には甘いと思うんだ」
人間は外見か? 中身か?
カエル「アバターも厨二病間満載で……FFみたいでカッコイイけれど、中身もそれなりにカッコイイものね」
主「もちろん、映画的な事情は理解できる。
現実世界でのアクションもあるし、映画としても美男美女でないと興行収入に関わるかもしれない。
だけれど、だからこそ様々な人を仲間に欲しかったかな、という思いがあって……
誰も相手にしないような太ったおばちゃんとかさ、ハゲたおっさん、重度の障害を抱えた人、そういう外見的なハンデを抱えた人たち全てが、輝ける社会としてのVRという描き方ができたら、自分は今年TOPの評価を下していたかもしれない」
カエル「現実での権力者と力のない若者、という対比もしているけれど、もう一歩踏み込んでほしいということだね」
主「世界ではこの外見と中身をテーマとした作品って名作も多く存在しており、それこそ『シラノ・ド・ベルジュラック』というエドモン・ロスタンの名作戯曲も100年以上前から存在している。
人間が人間を評価するのは外見なのか? 中身なのか? もちろん、その両方であるという考え方が一般的だろうし、当然のことだろう。
そのテーマを現代で最も効果的に発揮できるもの……それがVR空間なんだよね。
現実に生きなさい、というテーマ性は見事。だからこそ、その描き方も美しいものではなくて、過酷な現実でもゲームを通して理解しあえる人間たちをもっと描いて欲しかった……
デル・トロはすごく魅力的だけれど、決して美人とは言えないおばちゃんを主人公にして、気持ち悪いと称されるようなモンスターを恋愛相手にした。
スピルバーグはイケメンの少年や美女を主人公やヒロインにした。
この差はとても大きいと思うよ……もちろん、作品のテイストはあるにしろね」
最後に
カエル「では、速報の感想記事のラストだけれど……」
主「やっぱり自分はアニメをメインで鑑賞してきた人間だからさ、既視感がある描写が出るたびに嬉しくなったし、涙を浮かべる作品に仕上がっていると思う。
それと同時に、日本のコンテンツ産業の力も思い知ったけれど……日本がもうちょっと頑張らなければいけないな、とも思った」
カエル「これだけ素晴らしいコンテンツを抱えながらも、生かしきれていていない感もあるよね……」
主「このコンテンツ産業は日本の大きな武器です!
願わくば、本作のような映画は日本から生まれて欲しかった……そんな思いもどうしても抱えてしまう作品でもあったな」
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