ブログ主(以下主)
「……う……うぅ……」
亀爺(以下亀)
「……なんじゃ、主よ。またゴジラを見て泣いておるのか?」
主「いや、ゴジラもそうなんだけどさ……これはゴジラ公開前に読んだハイスコアガールの最新刊の内容に感動して泣いているんだよ……」
亀「……情緒が安定しない人間じゃの」
主「ここ最近、なんだかそんな作品ばかりに出会う気がする。それこそ森達也の『Fake』とか、『シング・ストリート 未来へのうた』があってのこれだからさ、あれ、もう死期が近いのかな? って思うほどに激しく乱高下して疲れるよね。公開から2日間、完全にゴジラ一色になっているし」
亀「ここは一回リフレッシュも兼ねて漫画レビューじゃな」
主「これも相当熱いレビューになるけどね……」
あらすじ
ハルオと小春……
ゲームにおける師弟関係であり、そして小春からしたら憧れの、片思いの相手であるハルオとの決闘にも似たゲーム対決はいよいよ始まった。
何としても勝ち、そしてその思いを伝えたい小春は、猛特訓の成果を見せ圧倒的なキャリアの差を埋め、ハルオを追い詰める。しかし、当の相手であるハルオは不気味なほどに静かだった……
一方、ゲームを取り上げられて勉強尽くしの日々を送る大野には息をつく暇すら与えられなかった。その様子を不憫に思った姉はある行動に出る……
以下ネタバレあり
ハルオと小春の戦い
亀「この対戦こそ最大の見せ場でもあり、読者の誰もが気になっていた部分じゃの」
主「もう、ここで一気に引き込まれたし、すごくびっくりした!
『あれ、押切蓮介ってこんなに漫画が上手かったっけ?』と思うほどね」
亀「それまでは晶が黙って戦い、ハルオが解説をしながら戦うのがメインだったからの。その違いもあるのかもしれんが……」
主「この戦いではハルオは一切言葉を発しないんだよね。いつもの通りゲームキャラクターは話すんだけど、ハルオ自身は一切言葉を発しない。ハルオの別人格とも言えるゲームキャラクターがいるし、周囲の解説に加えて小春の独白もあるから説明としては必要ないんだけど、ここが驚いた」
亀「その代わり、一番描写されていたのが『目』のカットじゃな」
主「目だけでハルオの気持ちが描写されているから、何も語らずに伝わってくるんだよ。その上、ハルオが結局は勝つけれどさ、その理由は何かと言ったら、『楽しむ』というゲームをする上で一番大切なものじゃない。この勝つためのロジックも良かった」
亀「この漫画ではずっと楽しいからゲームをしているハルオの姿が描かれてきたらの。楽しいものが勝つというのは、まさにこの漫画の趣旨にあっておる」
押切蓮介の苦難
亀「あの騒動が起きる前に、6巻の内容は書き上げていたようじゃが、それはわかった上で読んでおったのか?」
主「全然。あの騒動で連載中止したのは知っているけれど、どこまで書いていて、どこから連載再開したのか全く知らなかった。読み終わって調べたら、この巻の内容は全て連載されていたらしい。
それでもさ、やっぱり思うところがあるわけよ」
亀「主などは特に、作者の気持ちだったり作品のテーマ、それから人生観や歴史など『作品の外』にも注目する人間だから、作品自体の評論とは少し離れるかもしれんの」
主「その一連の知識込みで読んでいるからさ、やっぱり読んでいて晶と押切蓮介が被ってくるんだよね。もちろん、騒動前に発表されているから関係ないといえば関係ないのは重々承知なんだけど。その意味ではこれから書く内容は、勝手に作り上げた物語(妄想)と言われても仕方ないね」
亀「まあ、個人ブログじゃから好きにすればよかろう」
主「まずさ、個人的に押切蓮介を知ったのは割と最近で、杉田智和のラジオにゲストで出ている時だったんだよね。たぶん100回前後のやつ。元々ホラーは苦手だからチェックしてなかった。友達のゲーマーは『ピコピコ少年』を知っていたけどね。
杉田智和もそうだけど、すげぇゲームの知識が豊富でさ、自分なんかが逆立ちしても勝てる相手じゃなかった」
亀「……よくわからん勝敗じゃな。別に勝たんでもよかろうに」
主「ゲームに対する大きな愛を感じたんだよね。それは『ハイスコアガール』でもそうだけど、単なるゲームを題材とした漫画やドラマとは訳が違うのはよくわかった。
そんな人がさ、一番好きなゲームを題材とした漫画を書いて、それがヒットして、アニメ化も決まっていた矢先にあんなことになったわけじゃない。本人や出版社の自業自得といえばそうかもしれないけれど、最も愛したゲームに……追い詰められたわけじゃない」
亀「……法律的にどうこうはわしらがいうのは辞めておくにしても、決して作品中でゲームを貶したわけでもなかったからの。専門家でも意見の分かれる微妙な問題ではあるらしいが……」
主「それでアニメ化も中止して、連載も全て中止してさ、容疑者、被疑者なんて言われて……コミックスも全部回収だよ。そこまでやるか? って思ったね。
でもさ、一部書店では……良し悪しは別として、それでも押切蓮介フェアをやっていて、ハイスコアガールも回収しないで置いたままだったんだよね。これだけで一連の騒動の渦中にある押切蓮介の立場に同情しているっていうのもわかってさ、結構胸にきたんだよね」
亀「本来は良くないことかもしれんが……ピコピコ少年SUPERの最後の話なんて、涙なしでは読めなかったと、当時の主は言っていたの」
主「みんなわかってるんだよ、押切蓮介という人間のゲームに対する愛を。
だからさ、大好きな漫画を書けなくなって、その原因が大好きなゲームで、しかも大好きなメーカーからの著作権の訴訟、そして今こうして和解して、ゲームに対する漫画も書けて、その思いはいかほどのものか……想像もできないよね」
晶と押切蓮介
主「だからさ、晶がゲームを取り上げられた時っていうのは、『これは押切蓮介なんだな』ってすごく被って見えたんだよ。ハルオが拙くても一生懸命作って、それを楽しんでいたところに、急に取り上げられて捨てられてしまうという現実……それでさ晶は別にそれで戦うわけでも、暴れるわけでもないんだよね。ただ外に出て行くの。
この辺りも押切蓮介という人間が出ているんだなって思った」
亀「……どこまでがリニューアルで、どこまでが同じなのかコミック派にはわからんが、不思議と作者とリンクしてしまったの」
主「ハルオと再会して、またゲームに触れることができた晶がさ、どれだけ嬉しかったかと思うと、もう泣けてくるんだよね」
亀「押切蓮介の象徴はハルオであるのは間違いないじゃろうが、まさか大野晶にも被ってくるとはの……」
漫画としての『リアリティ』
主「本来はこの漫画ってリアリティなんて皆無だよ。晶や小春みたいな女の子はいるわけないし、いたとしてもハルオのような……いい奴だけどゴマンといる『普通のオタク』に惹かれるわけがない。積極性があるわけでもないし、ハルオがモテるならオタクは肉食系ばかりになる。
でもさ、この漫画にリアリティを引き込んでいるものは、紛れもなく『ゲーム』なんだよな。そのゲーム描写が物語の根幹に結びついている」
亀「……そうじゃの。恋愛パートは嘘だとしても、ゲームセンターやゲーム機に対する表現がリアルだから、この如何にも『オタクの妄想』みたいな漫画が面白くなるんじゃろうな」
最後に
亀「この巻も相当面白かったようじゃな」
主「それもあるけれどさ、やっぱりこれから先の押切蓮介に注目だよね」
亀「ほお? というと?」
主「やっぱりさ、これだけ大きな挫折を味わった人の表現はさらに深くなるものだから。ほら、ちはやふるの末次由紀とかもそうでしょ?」
亀「小説家では病気と事情が違うが、伊藤計劃であったり、寺山修司なども書けない苦しみを知っているからこその、昇華された作家じゃったな」
主「そういう苦しみを知る人は強いよ。表現者として、さらに一段高いところに行けると思う。まあ、そんな苦しみを知らないのが一番いいんだろうけれどね」
亀「そうじゃな。それでも受けてしまった苦しみは消えんから、漫画で昇華して欲しいものじゃの。どれ、ここいらで主も何か病気とか、ブログ大炎上でもしたらいい小説が……」
主「だからそういうのは嫌だって言ったばっかじゃん!!」
ハイスコアガール 6巻 (デジタル版ビッグガンガンコミックスSUPER)
- 作者: 押切蓮介
- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
- 発売日: 2016/07/25
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る