『ねえ知ってる?』
日に日に寒さを増す初冬の夕方に、公園の真ん中に置かれているゾウの滑り台の下の砂場に座りながら、笑顔を見せる望の言葉に朔はそっと小首を傾げた。
『え?』
『初恋の味』
望は時折、こうした謎かけをする。その度にあれこれと考えるのがいつもの朔の役割だった。時々、やり返そうと望に謎かけをし返すこともあるけれど、答えを当てられてしまうこともしばしばで、答えに困った時はクスクスと笑いながらどこかへ走り去ってしまう。それを追いかけるのもまた朔に与えられた役割であり、結局のところいつも振り回されてばかりだった。
けれど望が他の誰かに謎かけをしているところを、朔は一度も見たことがない。いつも他の人の前ではあまり喋ることもなく、じっと本を読んでいるか、外の景色を眺めているばかりだった。
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