物語る亀

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ネタバレありの物語批評

映画『今夜、ロマンス劇場で』感想 設定自体はいいのに、それを活かしきれなかった印象が残る…… ネタバレあり

ブログ主(以下主)

「では、今年初になるのかな? テレビ局主導の大作邦画の感想と行きますか」

 

亀爺(以下亀)

「映画について語った映画ということで、期待値もそれなりに上がっておるのじゃが……」

 

主「やっぱり『映画について語った映画』は自分の中でも刺さるものが多いんだよね。表現論でもあるし、とても強く興味があるものでもある。

 だからこそ、半端なものを出してきた時は大批判になるだろうけれど、さて今作はどうなるかな?」

亀「……テレビ局主導というだけでなんとなくどんな話かはわかるがの」

主「3連休ということもあって多くの映画が公開されるこの週でも、特に注目を集める作品ではあるけれど……さて、どうなるでしょうか?

 では感想記事を始めましょう!」

 

 

 

 

映画チラシ 今夜、ロマンス劇場で 綾瀬はるか

 

作品紹介・あらすじ

 

 白黒映画から飛び出してきた王女と、映画を愛する助監督の恋愛ストーリー。白黒映画から飛び出してくるため、綾瀬はるかが白黒になったり、また鮮やかな色彩などが注目を集めている。

 監督は『テルマエロマエ』『のだめカンタービレ』などフジテレビ主導の作品に多く関わっている武内英樹。また主演には綾瀬はるかと坂口健太郎を迎え、本田翼、北村一輝、柄本明、石橋杏奈など幅広い年代のキャストを起用し、驚くべき役で大物役者が出演している。

 

 映画監督を目指している健司はなじみのロマンス劇場を貸し切って、忘れ去れてしまった古い映画を見るのが趣味としていた。そんなある日、大好きな白黒映画を見ているとその作品の中から王女様である美雪が画面の外へと飛び出してきた。

 驚きながらも彼女を現実世界で世話をしていくうちに、2人は徐々に惹かれあっていくのだが……

 

 


映画『今夜、ロマンス劇場で』予告編【主題歌:シェネル「奇跡」】

 

 

 

 

 

感想

 

主「ではTwitterの短評からスタートです」

 

 

亀「一言で表すともったいない映画じゃの。

 この設定自体はかなり面白くできそうなのであるが、それが全く生かされておらん。

 いや、一部ではいい演出なども見受けられたのじゃが……」

主「なんというかさ、この設定で映画を作る必要があるのか? という疑問すらあると思うんだよ。

 例えば、今作で最大の売りである『綾瀬はるかが白黒』という設定だけれど、実際は白黒で登場するのが割と最初だけで、出番の多くが色付きなんだよね。もちろん、白黒の演出をする方がお金がかかるとか、そういうことはあるんだろうけれど……じゃあこの設定の意味はなんですか? と言いたくなる

 

亀「ふむ……あんまりネタバレをするのもなんじゃが、もっとドタバタ感があっても良かったの。

 本来ならばあってしかるべき描写が何1つとしてなかった印象もある」

主「例えば、白黒の綾瀬はるかが見つかったら大変だ! というシーンがあり、そこから周囲の人にどうやってバレないようにするのか? という工夫を凝らす描写があるけれど……それが後半に全く生きてこないんだよね。

 この作品は『映画に対する愛』『忘れらされていく映画』だったり、古い作品に対する言及ができる作品なのにもかかわらず、その手のメッセージ性も非常に弱い。

 なんというか……失敗したララランドという印象すらあるんだよね」

 

坂口健太郎写真集 25.6

今作の主演を務める坂口健太郎

 

褒める点として

 

亀「しかし、すべてがすべて悪かったわけではないからの。

 まずは豊かな色彩感覚などは見ていて楽しかったの

主「この映画が白黒の表現が効果的だったのが、やはり色彩の演出であり……特になんて事のない自然の緑や風景の赤、それから劇場の色とりどの様子であったり、撮影所の華やかな衣装など、かなりの多くの見所がある映画でもあった」

亀「予告でも使われておるが藤の花が咲き乱れる中で歩いていく綾瀬はるかのシーンなどはとても美しい場面じゃったの」

 

主「ただし、この色彩感覚は見事だった一方で中盤以降では影を潜めてしまう。

 確かにセットは使い回しだろうし、そこまでお金をかけらない上に、主流の物語もあるかもしれない。

 たださ、ここが弱くなると白黒の表現である必要性があまりなくなってしまうんだよね。

 全編にわたって色彩豊かでうっとりさせてくれたら嬉しいんだけれど……そうはならなかったのが残念かな」

 

亀「……ちょっと苦言になってしまったからまた褒めるとすると、セットが非常に凝っていたの。

 今作は昭和35年の撮影所周辺を舞台にしておるが、その当時の街並みや撮影所が再現されており、現代とうまく区別されておった。

 この時代であることを疑うような描写自体はあまりなかったの」

主「……まあ、その割には言葉使いなどが気になったけれどね。『ヒロポン』などは当時の風情を出すために良いとしても『世界観』という言葉は近年に生まれたものだから、これが時代設定に全く合っていなかったりさぁ」

亀「……時代劇での言葉使いのあるあるじゃが、そこまで目くじら立てる必要もないじゃろう」

 

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鮮やかな色彩が映画を彩る

(C)2018 映画「今夜、ロマンス劇場で」製作委員会

 

 

役者について

 

亀「では、役者について語っていくが……う〜む、難しいものがあるの」

主「酷評に近いね、この映画の演技は。

 元々綾瀬はるかって演技がうまいタイプの女優ではなくて、その天真爛漫で天然ボケの雰囲気などが役に合うか合わないかが肝だと思うけれど、本作とは全く合っていない。もう、全部が全部演技演技しているし、はっきり言えば終始見ていて辛かった。

 今作のヒロインは王女様だから生意気で、しかも暴力的なところがあるけれど、それが綾瀬はるかが本来持つふんわりとした優しげな魅力を完全にダメにしている。

 しかもこの暴力が時代が時代とはいえ、もう犯罪クラスです。なので、全く魅力的に見えませんでした」

 

亀「これは役者の演技だけではなくて、キャラクター設定や演出の問題もあるがの」

主「もうさ、坂口健太郎だろうが誰であろうがみんなそうなんだけれど、台本が透けて見えるのよ。

 相手が何を言うか理解していて、それに備えているような演技。緊張感がほとんどない。

 自分が一番苦手なタイプの邦画の演技でさ、人間を演じているんじゃなくて、キャラクターを演じているんだよ。まあ、そういう意図なのかもしれないけれど……もう全然ダメ。

 しかもキャラクターが弱い上に、その存在に意味があるのかないのかもよく分からない

 

亀「北村一輝はキザなスターを見事に演じておったが、あれこそキャラクター演技の典型であるしの」

主「あとは石橋杏奈の派手でぶりっ子のような大げさな演技があって、その相手の加藤剛がそこまで感情を込めない演技になっている。この差があまりにも大きすぎる。

 脚本自体もダメダメだけれど、演技に関しては大ベテランで非常にうまいはずの柄本明も含めて評価することが難しい作品になっていました」

 

以下作中に言及あり

 

 

 

 

改善点をいくつか

 

亀「では、ここからは作中に言及をしながら感想を書いていくとするが、まず何がダメかというと、この白黒という設定をあまり活かせていない部分じゃの。

 例えばこの手の作品で必ずと言っていいほど王道なのが、綾瀬はるかの王女の正体がばれて大騒動! というものがある。しかし、この映画ではそのような要素がほとんどなく、単なる綺麗な女性になってしまっておる」

主「結局さ、この映画においてその設定が効果を発揮するシーンがあまりにも少なすぎるんだよね。

 色のついた綾瀬はるかとの恋愛というならば、もうそれは白黒映画から飛び出してきた意味は全くない。

 自分が思うに、この映画の恋愛の障害を間違えているように思うのよ。

 本来ならばこの『色がない世界』という部分をもっと注目すべきなのに、綾瀬はるかの色が付いてしまっているから、普通の恋愛映画になってしまっている」

 

亀「そして恋愛映画としてみても、そこまでうまい映画にはなっておらんというの……」

主「だってヤキモキしないから。

 恋の鞘当てみたいな描写だったり、三角関係みたいなものもあるけれど、それが非常に弱い。

 例えば坂口健太郎にちょっかいを出す本田翼が、もっと権力をアピールしたりとかさ、卑劣な手段できたり、あるいは献身的な態度で揺さぶってきたら、すこしは変わるかもしれない。

 でも彼女もそこまで押しも強くなく、アピールもしなければただ存在しているだけのように見えてしまって……もうさ、なんのためにいるのかも分からないほどだった

 

亀「キャラクター性が弱すぎるということかもしれん。だったらスターの北村一輝をその強引さで物語に絡ませると面白くなるのじゃろうが、全く絡んでこないというの」

主「もう触れるの触れないの、くっつくだの別れるだの、ただのそこいらのカップルの痴話喧嘩と同じなの。そんなスケールの小さい恋愛を見せられてもねぇ」

 

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鮮やかな色彩はいいが、このシーン以外でももっと見たかった……

(C)2018 映画「今夜、ロマンス劇場で」製作委員会

 

脚本で語りすぎ問題

 

亀「これはもう大作邦画全てに共通する問題であるが……脚本で語りすぎな部分が多く目立ったの。先にもあげたように豊かな色彩など映画でないとできない表現もあったが、それにしても全ての状況をペラペラとよく喋ってくれたの」

主「もう頭を抱えたのがさ、この映画で1番重要な『なぜ2人がくっつけないのか?』という問題を語っている時に、その理由を綾瀬はるかが台詞で説明しちゃった部分だよ。

 それこそ映画なんだから映像で語るべき部分でしょ?

 白黒映画の世界から……カエルでもなんでもいいから小動物だったり、白黒映画界の登場人物の一人が飛び出してきて、うっかり触れてしまい消えてしまったり……5秒考えただけで出てくるような映像表現がなくて、全部台詞で語ってしまっている」

 

亀「本当に映画を見ているのか何を見ているのか、わからなくなってきたの。

 他にもエンタメ性を確保するのであれば、この作品は『映画について語った映画』であるならば、もっとミュージカルであったり、ホラー、ミステリー、サスペンスなどの映画の要素を少しずつ入れることも可能であったと思う。

 結局は作中作の物語でもあるのじゃから、もっと色々な工夫は凝らすことができたと思うがの」

 

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この時代の撮影所のスターをコメディチックに演じた北村一輝は良かった

(C)2018 映画「今夜、ロマンス劇場で」製作委員会

 

名作映画の影響があるのならば……

 

主「本作って多くの名作映画の影響があって、あの女王は誰が見ても『ローマの休日』であるわけで、見た目だけならば綾瀬はるかとオードリーはちょっとだけ似ている部分はあるかもしれない。

 だけれど、その可憐さが雲泥の差で、魅力に関しては月とスッポンほど違う。

 これは綾瀬はるかとオードリーの差だけじゃない。美雪とアン王女の人物描写の差だ。

 

ローマの休日 (字幕版)

 

 他にも虹がどうのこうの言ったりするのは『オズの魔法使い』の虹の彼方へであることだし、だったら歌を入れても良かったよ。

 何のためのお守りなんだよ!

 歌がダメなら楽器を弾けよ!

 

亀「他にもあのラストシーンはわしにはフェリーニの『8 1/2』のようにも見えた。それまでの登場人物が勢ぞろいして、ワチャワチャやっておしまい、というの。

 歴史的名作と比べるのも酷な話かもしれんが、今作のラストは比べてしまうと何段も見劣りする結果となっておるの」

主「『人生は祭りだ、ともに生きよう』というほどの強く印象に残る名言はなかなか難しいかもしれないが、何かあるでしょ?

 全部が弱い!

 脚本、演出、演技、音楽〜どれもこれもが弱すぎる!

亀「……なんでそんなに怒っているのか謎じゃがの」

 

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映画について語った映画なのに

 

亀「最大の不満はここかもしれんの。この作品は『映画について語った映画』であり、映画を愛する青年が映画とともに心中する物語と言えるかもしれん。しかし、余計な恋愛描写を入れてしまったせいで、その要素が弱まってしまった印象もあるかの」

主「自分もよく語るけれど『虚構と現実』についてはこの手の映画ではとても大事だ。

 特に本作は

『なぜ映画を愛するのか?』

『忘れ去られてしまいがちな映画を愛するのか?』

 ということを語っている。昭和の映画黄金期からテレビが台頭してきた時代について扱っているけれど……そのテーマが弱い!

 

亀「映画を擬人化したのは良かったのかもしれんが、余計な恋愛描写がメインになってしまった影響かもしれんの」

主「大名作の『ニューシネマパラダイス』を観ればわかるけれど、あれほど映画について熱く語った映画もほとんどない。

 その熱さだったり、映画に対する思いをもっと込めて欲しかった。

『映画じゃないとダメなんだ!』という思いを込めて欲しかった! 撮影所システムとか、いいアイディアはあるんだよ。あるんだけれど、それが生かしきれたとは全く思えなくて……それが残念だったな」

 

亀「あのラストも白黒映画も好きな人間にはちょっと考えるところがあるの……」

主「白黒映画には白黒の良さもあるのに、そこをまるで無視するかのような演出にも見えてくるよねぇ。

 だいたいさ、フジテレビが主導ということだけれど、あなたたちテレビ局が葬った映画黄金期の話だよ? 

 それがこの映画かい!」

 

 

 

最後に

 

亀「酷評意見が続いたようではあるが、ただ見に行く価値がない映画とまでは言わん。ただ、色々と思い描いたものや、期待したものとは大きな乖離があるように思うの」

主「もうちょっとやりようはあったと思うんだよなぁ。

 何回か語ったけれど、設定自体は結構いいと思うんだよ。ただ、その工夫が弱い。

 これもテレビ局主導弊害なのかなぁ……恋愛映画としても平凡なものになってしまっていたな」

亀「この手の邦画は結構評価が割れるものでもあるが、今回は結構低評価となってしまったの。

 しかし何度も語るように、独特の色彩センスなどは見所もある。この3連休、映画館に向かうきっかけにはなる映画かもしれんの」

 

 

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