物語る亀

ネタバレありの物語批評

落語心中 7話までの感想と脚本構成の考察

 6話は大体1クールの半分だからここで一旦振り返り評論する企画第三弾。今回は諸事情により7話になってしまったが、(単純に先週寝てしまい見逃して、出遅れた)ここまでの作品を振り返っていきたい。

 (ちなみに第一弾はアクティブレイド、第二弾は灰と幻想のグリムガル)

 

 

 

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 ちなみに私はこの過去編が終わるまでは原作既読であるため、この先の展開を知っているが、当然のことながらそのネタバレはしない。(原作の刊行スピードがあまり早くないため、途中で買うのをやめてしまったので中途半端に知っている)

 

 さて、今作の魅力を一言で表すならばこうなる

 圧倒的な声優の演技力に魅せられる

 

 1 声優たちの並々ならぬ思い

 今更説明するまでもないが、実質的に過去編にて主演を務める山寺宏一(石田彰の方が主演なのか?)は今や日本で最高の声優の一人であることに異論を唱える人はいないだろう。

 役者に限らず表現者というのは『馬鹿にした人間が馬鹿にされる』というレベルにまで行けば最高の名人であるが、その域に達している声優の一人で、かの夢の国のアヒルダックさんの声は外国語のものにも関わらず本家に認められ、時計などが贈られたのが山寺宏一である。夢の国に行くとどこもかしこも山寺ワールド全開であり、その声はどこでも聞くことができる。私は一度シーの方で数えたことがあるが、両手の指が足りなくなって、足の指まで使い始めたところで断念した。

(なお、完全に余談ではあるが私は男二人だけでシーにもランドにも行ったことがあるし、USJも男二人で行った。その時の感想はいつか上げようと思う。)

 

 その山寺宏一が元落研の意地を見せ、本気を出してオーディションを勝ちにいったというのが今作である。

 

 その実力はまさしくとんでもないもので、落語は一発録りというから信じられない。また、同期の名人八雲を演ずる石田彰も非常に深くのめり込んでいるのがわかる。一話における名人芸の『鰍沢』には私は落語通ではないが、寄席の静かな雰囲気が感じられて恐れ入る。しかも二話において、わざと下手に演じて聞いてられない落語というのがよく表現されていた。

 その後も女性を演じることにより、独特の色気が漂ってきて、これが中々そそるものがある。昔から歌舞伎などでも男性が女形として演じているが、そこには本物の女性が演じるのとは違う品のような美しさがある。おそらく男性の中の理想の女性像を理解しているからこそできる、色気なのだろう。

 元々銀魂での桂役など、女性っぽさを持つ男性を演じることが多い声優ではあるが、オカマの役を演じれる声優は多くとも、女性らしさを女性以上に演じられる声優は限られている。

 

 

 また、本来の主役である与太郎役の関智一などは立川志ら乃に弟子入りしており、本気で落語を学んでいる人物だ。志ら乃の師匠は立川流四天王の一人、爽やかな風貌と裏腹に毒舌をたんまりと吐く立川志らく、そのまた師匠はあの天才にして狂人立川談志であるというのは、もはや語るまでもないだろう。

 小夏役の小林ゆうもモエオチという創作落語を演じており、若い女性には珍しく落語に対して並々ならぬ興味を抱いている。

 

モエオチ!

モエオチ!

 

 

 元々落語家と声優の関係というのは今に始まった話ではなく、元祖『七色の声を持つ』と称される羽佐間道夫などは落語、講談、浄瑠璃などを追いかけたというのは有名な話だ。日本においてアニメがここまで流行ったのはもちろん手塚治や出崎統などの影響もあるだろうが、落語、講談などの人形や声で魅せる演技が成熟していた文化があったこともあるだろう。

 

 それだけ並々ならぬ覚悟を持った実力派の声優たちの熱演により、本作は非常に魅力的な演技を繰り広げられている。

  だが、この並々ならぬ熱意が、珍しい現象を生み出してしまっているように感じている。

   

 2 声優の演技力がすごすぎる弊害

 これは弊害と言っているが、当然のことながら声優に罪はない。

 落語を主題としている今作は、やはりあまりにも絵の動きがなさすぎる。

 昨今のアニメというのは『ヌルヌル動く』という単語に代表されるように、どれだけ動くかということが評価の一つの基準になっている。だが、この作品は落語を演じているシーンを描いているわけであり、例えば急に空を飛んだり激しい火花を散らしたりしたらおしまいなわけだ。

 

 近年では押井守が『スカイクロラ』において、『動かない動画』というものに挑戦した。これは人物などを派手に動かすことなく、しかし微妙に動かすという禅問答のようなことによって、押井監督曰く「時間を制御した」ものになった。だからスカイクロラにおいて、声優や演出といういうものは抑えめに制御されていて、『イノセンス』のような強い演出は封印された。その結果、絵も演技もストーリーもある一定のレベルで維持された。

 

 だが今作はその演技に対して、その絵が少しばかり負けてしまっているように思う。例えば実際の落語においても、もちろんその発声法などは重要な要素になっているのだが、その演者の持つ身振り手振りで表される世界観もまた重要な要素である。

 その落語家の洗練された演技というものを、派手に動かない絵で魅せるというのは非常に難しいものだ。しかも一週間に一度放送せざるを得ないテレビアニメにおいてはあまりに凝りすぎるわけにもいかず、そのために音楽や絵コンテなどでカバーしている。だが、そのカバーが100%うまくいっているかと言われると、そうは思えないのだ

 

 まあ、ここに関しては半分イチャモンの域であって、元々予算と時間が限られる週間テレビアニメにおいてどこまでを望むのかという問題がある。例えば非常にお金や時間をかけすぎて、他の話数が壊滅的になった作品もたくさんあるし、それを起こさないために皆努力していることはよくわかっている。

 アニメと落語の相性というのは決して悪くはないのだが、その動きを表現する絵のクオリティは難しいものになってしまう。

 

 3 落語心中のここまでの脚本構成

 いつもならばここでがっつりと脚本構成などの話もするのだが、原作のを読んでこの先を知っているため今回は少しだけに収めておく。そうでないと、思わぬネタバレをして怒られそうだからだ。

 

 1話は導入部分であり、1時間で放映された旨味がよく出ていた。あの流れにおいて二話に分けることは難しく、ここで1時間確保できたからこそ魅力を提示することができたと思う。

 そこからの流れは……苦労しただろうなぁ……

 何せ、本作には明確な流れが切れる部分が少ない上に、落語シーンなどもしっかりと魅せねばならないのだから、時間配分も気をくばらなければならない。

 1話は1時間ということで二部構成であると考えた場合、この作品はここまで綺麗に2話ごとにお話を動かしてきている。

 

 2、3話 二人の入門、戦争を経て少年期から青年期への成長

 4、5話 八雲が力をつけるきっかけとなる舞台編

 6、7話 順調に実力を伸ばしていく二人とみよ吉をきっちりと描く日常編

 

 このように2話ずつの構成となっていることによって、1話をエピソード0とした場合、過去編だけで全6部の物語が構成されることになると思う。ただ、この流れを考えた場合、3話、5話に明確な上げ場があるのだが、7話は日常編であり次のお話への伏線を引く回であるのだから、少しばかり弱く感じてしまうのが残念なところか……

 

 しかし本作は絵に関するイチャモンはつけたものの、ここまでは計算通りの作りになっていると思われる。

 新しい落語というジャンルに真正面から挑み続ける製作者の方々の日々に敬意を表し、駄文を締めたい。

 

「昭和元禄落語心中」Blu-ray(限定版)一

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 1話の感想はこちら

 

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