亀爺(以下亀)
「今回はアニメの中でも主が苦手としておるライトノベル原作作品じゃが、この作品も見たことはないのかの?」
ブログ主(以下主)
「全くないわけじゃない。1クールぐらいは見たかな?
話題の作品だったし、どんな感じなのかなぁと思って見ていた印象はある。あれでしょ? 中村悠一が早見沙織に尊敬されてチヤホヤされて、それを杉田智和が横目で羨ましそうにじっと眺める作品でしょ?」
亀「……それは間違っておらんが歪んだ見方じゃな」
主「もしくは圧倒的な実力を持つお兄様にみんなが楽しんで『さすがお兄様!』という作品でしょ?」
亀「……ネットの見過ぎじゃの。
ということはそこまでこのアニメについて詳しく無いわけじゃな」
主「まあ、そうね。
だけどいい作品は初見でも伝わってくるよ。
『SAO』なんて今年トップクラスの衝撃だったけれど、あれもテレビシリーズも全く見ていなかったし。
結構昔の作品になるけれど『ラーゼフォン』の劇場版を見たときの衝撃というのは人生が変わるものだった。作品もそうだけど、坂本真綾が歌うEDがすごく良くてね……あれはテレビシリーズも面白いけれど、劇場版だけを見てもいいんじゃないかな?」
亀「ファン向け作品なのは間違いないじゃろうが、それでも伝わってくるものが絶対あるはず、ということじゃな」
主「まあねぇ……いつも言うけれど、ファン向けアニメ映画をファン以外が見ないってもったいないから。SAOの表現の豪華さというのは、今年の映画の中でもトップクラスだと思うけれど、オタク以外は一切相手にしていないだろうし……勿体ないと思うよ。
それはファン向け映画の欠点でもあって、ファン以外は見るな! という雰囲気があるならば、それは間違いだし。というわけで、アニメはなるべく見るようにしているので今作も当然鑑賞した。
なので殆ど今作品について無知な人間の感想です。ファンの感想が読みたい方は他の記事を読んでくださいとしか言えないなぁ」
亀「それでは感想といくかの」
1 『劇場』アニメとして
亀「それでは感想にはいるがの……本作は少し肩透かしなところがあったのもまた事実じゃの」
主「ここ最近のアニメ映画ってトンデモナイ作品が続いていたのよ。例えば上記の『SAO』は同じようにライトノベル原作の大人気作品のアニメ化だけど、音楽や歌のクオリティ、作画の力強さ、派手さなどが全て輝いていた、トンデモナイ大傑作で……派手な映画も今年多く公開されたけれど、この出来はハリウッドの大作作品にも劣らない真正面から戦えるものだった。
他にも『BLAME』などは音響にすっごくこだわり、映像もCGをフルに使って迫力満点なものを作っていた。
じゃあこの作品は? というと……残念ながらそこまでのクオリティだったり、力強さは感じなかったかな」
亀「作画も美しくて、確かにいいシーンもあるのじゃが、では劇場版ということを考えた場合……他の作品と比べた場合、圧倒的に優れているという点は少なかったということじゃな」
主「これは公開規模もあるし、仕方ない面もあるんだけどさ……はっきりと言ってしまえば90分の上映時間と考えればOP,EDなどを含めればテレビシリーズで4回分(4話分)でしょ?
それを劇場用に1まとめにして公開したという印象だったなぁ……」
亀「テレビシリーズとして考えれば確かに豪華であるが、劇場版ということを考えると……ということじゃの」
主「キャラクターのお色気シーン……水着のシーンやお風呂のシーンもあって、見せ場のしっかりとしたかっこいいシーンもあって、やっぱりキャラクターを楽しむ映画なんだな、というのを痛感した。
その意味では……ファン以外の人が見る価値があるのか? と言われると、少し疑問がある。
ただ、やっぱりファンが熱くて根強い作品だろうからさ、これでいいんだろうね」
ファン向け映画として
亀「おそらく本作の制作スタッフの多くもファンが楽しんでくれればいいという姿勢なのじゃろうし、それはそれで正しいものじゃ。
本作を多くの人に……初見の人に届くように作ったとしても、その人たちが見に行くかというと疑問があるからの」
主「日本はアニメ大国でクールジャパンなんて言われているけれど、そんなの極々一部のアニメだけでさ。ジブリについて語る人は多いし、日本歴代興行収入の上位はアニメばかりだけど、実はお客さんが入りにくいのもまたアニメなんだよ。ファンが多いブランドのある制作会社や監督が制作するか、オタク層を狙わないと中々ヒットしない。
で、オタク層を狙った作品に関してはオタク以外はほとんど入らない。実はすっごく間口が狭いジャンルでもあるんだよね」
亀「その意味ではわしらみたいなのがゴチャゴチャ言うこともなく、ファンの人が楽しめたらそれが1番なのじゃろう」
主「だから本作品の制作スタイルは正解なんじゃないの? 公開規模も絞って、お金を湯水のごとく使えばもっと派手で豪華な作品にもできただろうけれど、そうしなかったのは良かったと思う。
その意味では上記の『作画がぁ……』などは多分余計なお世話なんだろうね」
2 葛藤のないキャラクターたち
亀「さて、本作を改めて90分前後と短い時間に圧縮された物語を見て、やはりこの手の物語は評価が難しいの」
主「う〜ん……これはテレビシリーズの時から思うんだけど、この作品との相性がすこぶる悪くてさ……全てが主人公たちに都合のいいように作られていて、そのように動くのが納得できない。
例えば作中では多くの大人たちであったり、特殊部隊の人たちが出てくる。だけどその人たちというのは主人公サイドを引き立てるために存在していて、ほどよく間抜けにできている。
今作で悪役として存在している博士が何を思ったのか? そこに葛藤はあったのか? と考えると……自分は全くそれを感じなかった」
亀「舞台装置としてのキャラクター像じゃな」
主「なぜこんな実験を行っているのか? そこに至る葛藤は多くの人にあるはずだし、その計画を破壊された時の衝撃というのはすごく大きいはずだけど……その感情の変化が小さい。
それは他の人も同じで、いくら魔法がトンデモナイ技術だとしても大人たちがあそこまでコケにされる物語というのは……ねぇ」
亀「それは達也などの主人公サイドも同じじゃの」
主「助けに行くことに何の葛藤もない、達也のやることにほとんど反対することもない、研究者が何年も掛けてきた研究を何の躊躇もなく破壊する……これは誰に感情移入するべきなんだろう? って考えてしまった。
多分、そういう作品じゃないのはわかるよ? 本作は圧倒的無双をする主人公に『スゲェ! さすがお兄様だ!』って叫んでハーレムモードを楽しむ作品なのはわかるけれどさ……」
なぜ本作が人気を集めるのか?
亀「しかし、ここ数年のライトノベルはこのような作品が非常に多く人気を集めておるが、それはなぜなのかの?」
主「ライトノベル全体が先祖返りしているような印象はあるかな?
この『最強の魔法使いが活躍するライトノベル』というと『スレイヤーズ』が連想されるけれど、その時代に戻っているような気がする。ちょっと前の……と言っても10年くらい前だけど、その時代に人気を集めたライトノベルとはまた違う流れがきている。
その理由を考察するのはすごく難しいけれど、なんとなく『ライトノベル=剣と魔法の世界で女の子がたくさん出てくる作品』になりつつある。まあ、最近のライトノベルの流れについて結構無知なところもあるけれど……」
亀「その理由について無理矢理にでも理由を見つけようとすると『現実からの逃避』という話になってくるのかもしれんの」
主「現代って物語の面白さの中でキャラクターが占める割合がすごく大きいのかもしれない。もちろん、面白い作品は登場人物が個性的で魅力的であるというのは重要な条件なんだけれど、最近のライトノベルはその傾向がどんどん強くなっている。
主人公に理想の自分像を重ね合わせて、その人物が理想のように振る舞うことで現実の世界のことを忘れさせる……という効果があるのかも」
亀「この理由は全くわからんの」
主「面白いこと、ブームメントには理由があるはずなんだよ。その理由を見つけるのが自分みたいな人間の役割でもあるんだろうけれど……やっぱり今回鑑賞して改めて相性の悪さを思い知ったし、熱狂する理由がわからなかったなぁ」
最後に
亀「今回は褒めているのか貶しているのかわからないような記事になったの」
主「う〜ん……やっぱりキャラクターの魅力がこの作品の面白さの8割を占めているのだとは思う。確かに可愛らしいキャラクターも多かったし。
早見沙織の声の妹に好かれたら、そりゃ人気が出るのも納得なんだけれどさ! そういうことではないんだろうし……」
亀「ファンの人が楽しめればそれでいいのであろうがの」
主「もしかしたら物語に求めるものが根本から違うのかもしれないねぇ……いつかこの謎が分かる日が来るのかなぁ」

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