物語る亀

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物語愛好者の雑文

リトルウィッチアカデミア 12話の感想と考察 文化祭が示す晴れ舞台の意味 (11話の感想も少し)

カエルくん(以下カエル)

「さて! リトルウィッチアカデミアの感想の時間だよ!」

 

ブログ主(以下主)

いやー、やっぱりこのアニメすごいわ……

 ここに来てこの話が来るか! って思っていて……本当は先週(11話)も記事にしたかったけれど、ちょっとやることが多くてさ」

 

カエル「良作ぞろいと呼ばれる今期の中でも数少ない感想記事をあげている作品だしねぇ」

主「本当は『落語心中』とかさ、あとは話題の『けものフレンズ』『幼女戦記』『ガンダム』『鬼平』あたりも超見たいんだけど! 映画を見てブログを書いてだと時間がなくて……

 そうこうしているうちに来週から春アニメが始まって……春以降は少し時間が取れるから、そこでどれだけ消化できるかの勝負になってくるね」

カエル「来期もすごく面白そうなのがあるんだよねぇ。

 『アトムザビギニング』『有頂天家族2』もあるし、岸誠二監督の『月がきれい』もすごく楽しみだし……」

 

主「しかもリトルウィッチアカデミアも継続だし、しばらくはアニメも安泰だねぇ……これに劇場アニメも大量に公開されるし、大忙しの毎日だわ。できれば話題になったテレビドラマくらいはチェックしたいけれど、それも難しいだろうなぁ」

カエル「それじゃ、序文はこの程度にして感想記事を始めるよ」

主「ちなみにこのブログではリトルウィッチアカデミアに1番近いアニメは『SHIROBAKO』であり、本作は『アニメについて語ったアニメ』であるという論調なので、この記事もその論調に沿って語っていきます。

 なぜそうなるのかはこの過去記事を読んでください」

 

blog.monogatarukame.net

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1 11話の感想

 

カエル「じゃあ、まず12話について語る前に10話、11話の感想について軽く触れておこうか」

主「10話はこの先の伏線を張りに来たよね。アンドリューとアッコの繋がりをより強化してきたし、それが重要になってくると思う。

 アンドリューって何かというと『スポンサー』なんだよ。アニメを制作する上では1番重要なお金を出してくれる存在であり、そしてアニメーターなどの育成を支援してくれる存在。だけど、今は手書きアニメよりもCGアニメの方が世界的には主流になりつつもあって……父親は手を引きたがっているけれど、アッコは手書きの素晴らしさを伝えたいと奮闘しているわけだ」

 

カエル「それが今後に活きてくるという話だね」

主「そして11話だけど……正直、ここは見誤ってしまったなぁ

カエル「……何が?」

主「自分は3月末だし、12話という3話構成の区切りとして今週にすごい回がくるのかな? と思っていたら、実は先週が1つの区切りだったみたいだね。もしくは2話連続ということで13話が1つの区切りになるのかな?

 その意味では先週感想記事を書いて、来週12、13話の記事をアップというのが1番美しい流れだったかもしれないなぁって思って

 

カエル「全部で25話らしいから、13話で1つ大きな区切りをつけるんだろうね」

主「でもそうなると10話と11話について語る機会がなくなるから今週書くけれどね! 特に11話はすごく大事な回だから!」

 

 

 

ここまでの物語の構成について

 

カエル「じゃあ、ここで1回物語の構成について考えてみようか」

主「まず、過去記事でも書いたけれど……

 

1〜3話 学園やキャラクターの紹介

4〜6話 キャラの深堀と学園を取り巻く環境の説明

 

 というのは以前から述べてきた。ここまでは見事な3話構成だったんだよ。

 特に4〜6話って素晴らしくて、実はアニメを作る現場や環境についても言及していた。じゃあ、問題は7話以降はなんだったのか? という話なんだけれど……」

カエル「7話以降は明確なものが見えづらくなって、ちょっと困惑していたよね」

主「だけど、今回までを見て何がやりたかったのかよくわかった。

 それを書いていくと……

 

7話 アッコとアーシュラ先生の深掘り

8話 スーシィの深堀り

9話 校長と歴史的設定の深堀り

10話 アンドリューたちの深堀り

11話 その総括

 

 となっている」

カエル「あれ? ここで5話構成になっているの?

主「そう。大体のアニメが1クール13話ほどで構成されていて、3話構成だと1話余ってしまう計算になる。だから大体のアニメが3話構成のラスト、4部目とでも言おうか、ここを10話〜13話の4話構成にして、結構大きな物語を描ききってしまうというのが結構多いかな。

 特に1クールアニメだとこれが常道だよね。

 だけど、リトルウィッチアカデミアはそこをいじってきて、7〜11話までを日常回、そしてキャラクターの深堀と物語の設定を開示することに努めてきた」

 

カエル「独特な作りだね」

主「だけど理には適っているよ。11話の感動が大きいのも、ここまで丁寧にギャグと感動を重ねながらアッコの手に入れてきたものをしっかりと描きつつ、さらなる成長を描いたことにあるから」

 

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アッコがなりたいのはシャリオ? 魔女?

© 2017 TRIGGER/吉成曜/「リトルウィッチアカデミア」製作委員会 

 

 

11話の成長

 

カエル「ちょっと11話の話が多いけれど、もう少し続けるね」

主「6話においてアッコはポラリスの泉において『私はシャリオみたいになりたい!』と大きな決意をする。だけど、11話においては『じゃあシャリオにしてあげようか?』というウッドワード先生の問いに対して『なれる! 自分で頑張ってすごい魔女になる!』という決意を抱いている。

 実はこの違いって大きくて……アッコの目標が『シャリオになること』から『すごい魔女になる』に少しだけ変化している。

 もちろん、アッコの中ではシャリオ=すごい魔女であるけれど、この変化って実はすごく大事なんだよ」

 

カエル「ふむふむ……」

主「そうね、例えるなら『イチローになる!』って言っていた子供が『すごい野球選手になる!』と言ったようなもので、目標が人物から職業に変化している。

 これはシャリオのコピーになるという意味ではなく、オリジナルのすごい魔女アッコになる! という決意でもある。自分が目指される存在になるという決意だよ。これって細かいようだけどすごく大きな変化だよね」

カエル「ふ〜ん……なるほどねぇ」

 

主「だからアッコって技術的にはそんなに大したことなさそうだけど、実はすごく大きな成長をしている。そして6話、11話とそれを見守るために必ずアーシュラ先生がいる。

 だからあれだけ付き添ってくれるんじゃないかな?」

カエル「7話においてかばっていたのも、それが理由だろうね」

 

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物語はこの2人の関係に終始する

© 2017 TRIGGER/吉成曜/「リトルウィッチアカデミア」製作委員会 

 

 

 

 

 

2 12話について

 

カエル「じゃあ、いよいよ12話についてだけど……」

主「文化祭の始まりだ! ということだけど……じゃあこの文化祭とは何か? ということになる。ここでアッコの目標になるのが月光の魔女になることだ。

 ではこの月光の魔女とは何かということでもある」

カエル「そうだよね。文化祭は以前劇場版でもやっていたけれど、今回は結構意味合いが違うようだし……」

 

主「そうだよ。劇場版とはまた意味が違う。

 これまでアッコは魔法=アニメーターの訓練を重ねてきた。空を飛ぶ魔法=空を飛ぶ作画をクリアして、今は変身魔法=動物など何でも描くことができる作画技術について勉強している最中だ。

 じゅあ、その発表の場といえば?

カエル「あー……アニメ制作とか?」

主「そう! ここで描かれている文化祭というのは、アニメ制作そのものなんだよね。そして同時に発表する場でもある。

 文化祭っていわばコンテストの役割を果たしていて、そこに呼ばれる権威的な先生たちというのは審査員だ。

 この発想はとてもうまくて、おそらく12話と13話がセットの扱いになるけれど、もうここまで来たら保証してもいい。

 次の13話はとんでもない神回になる!

 もしかしたら10年代のアニメの歴史に残るかもしれないよ」

 

カエル「それもここまでのお話を見ていればなんとなく想像できるよね」

 

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過去のシャリオもガムシャラだった

© 2017 TRIGGER/吉成曜/「リトルウィッチアカデミア」製作委員会 

 

 

くじ引きの意味

 

カエル「あのくじ引きってどんな意味があるの?」

主「アッコはすごく楽しみにしていたけれど、実はそんなにいいものじゃないよ、というのはアニメ制作について語っている。確かに視聴者はアニメを観るとき、華々しい部分ばかりに注目をしがちだけど、結構地味な作業も多い。

 1万呪文暗記とかは声優のことかな? とか、古代暗黒舞踊はセル画のリミテッドの地味な作画のことかな? と連想することができる」

 

カエル「見ていて面白い部分は記憶に残るけれど、その作品の華々しいシーンなんて全体のほんの1割というところだもんね。その多くのシーンは印象に残らない」

主「そして、あのくじ引きはどこの作画を担当するか? ということでもある。

 花火係はわかりやすくて、そのまま花火を担当する人たち。結構華々しいシーンの前後に使われることが多い、派手なシーンだよね。爆発のエフェクトが使えるし、好きな人はとことん好きな作画。もしかしたら背景ということかもしれないね。

 飾り付け係は美術かな?」

カエル「その視点で見ると召喚術というのはそのアニメの1番の見せ場になる派手なシーンということだよね

 

主「そしてアッコたちの生贄係ってなんだろう? と考えると、すっごい地味なみんな嫌になる作画か、もしくは……シンゴジラでいう神山健治の果たした役割みたいなもので、脚本を作る際の下地とでもいうのかな?

 時には明確に名前がのらない時もあるけれど、だけど土台としてすごく大事な部分。まあ、地味な作業だよね」

カエル「みんなが嫌がるような役割だね……」

主「だけど、集団でものを作るアニメ作りには絶対必要なんだよ。掃除係だって花形ではないかもしれないけれど……掃除はなんだろう、検査とかかな? 確かに地味で誰も話題にしないような部署かもしれないけれど、でも絶対に必要な事!

 視聴者としてアニメを見ていると声優や有名アニメーターのすごい作画ばかりに目が行きがちだけど、実際はこういう地味な仕事、注目を集めない仕事をする人もたくさんいる。その人たちの上に成り立っているのがアニメであるということだよね」

 

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ダイアナアッコもこれはこれでアリでしょう!

© 2017 TRIGGER/吉成曜/「リトルウィッチアカデミア」製作委員会 

 

 

 ダイアナの苦労

 

カエル「じゃあ、ダイアナの魔法祭実行委員長って?

主「あれは監督なんだよ。史上最年少で監督に選ばれた、天才だよね。だからこそみんな彼女に何でもかんでも聞く。迷ったら監督に相談して、決めてもらうというのは大切なことだよ。

 その代わり仕事は多いし、責任は多いし、しかも自分の持ち場も果たさなければいけない。少しだけだけどアッコも同じ役割になってそれをこなすダイアナの優秀さがわかったでしょ?

 自分もアニメを語るとき、特にアニメ映画を語るときは監督に注目しがちだけど、やっぱりそれだけ大変な仕事なんだよね」

 

カエル「みんな何かあるとすぐにダイアナの元に駆け寄ってきていたもんね」

主「もう1つの見方をするとアッコとダイアナの関係って実はライバル関係のようでもありながらライバルでもなくて……いがみあっているわけではないからね。技術と知識が完璧なダイアナに対して、情熱だけは誰にも負けないアッコの対比がさてどうなるのかな?

『箒にも乗れないアッコが……』なんて言うけれど、普通はそうなるんだよ。自分に技術がないことで落ち込んで、勝手にダメになる。アッコもそういう時があったけれど、でも持ち前の熱意でここまでやってきた」

カエル「それで色々な騒動を巻き起こした挙句にダイアナに叱られてしまうわけだ」

 

主「だけどダイアナがいうことは正しいよ。地味な仕事だからヤダ! って言っていたら文化祭は……アニメ作りは成り立たない。そんなに地味な仕事だとしても工夫次第でいくらでも素晴らしいことができるということでもあるんだよ。

 その先に月光の魔女=最優秀アニメーターの賞がある。だけど、賞狙いでいくんじゃなくて、賞はあくまでも結果に過ぎないから!

 賞が欲しい! という気持ちを捨てるべきなんだよね」

カエル「じゃあその結果がどうなるかは来週のお楽しみってことだろうね」

 

 

 

 

最後に

 

カエル「今週も密度の濃い回だったね!」

主「できれば2週にわたる物語だから来週語りたかったけれど、そうなると11話までを語る機会がないしなぁ……

 今回は最初の変身魔法の作画がすごく良かったよね! 象のアッコとかすごく可愛かった!

 あとは日笠陽子の演技力もさすがというか……あっちがいつもの日笠陽子っぽいというか……」

カエル「シャリオのシーンも可愛らしかったしね」

 

主「1クールの区切りに向けて色々と練り上げていて、技術と構成も素晴らしい。久々にオリジナルアニメーションでこのレベルの作品を見ているような気がする。まあ、今期はあんまり見れていないんだけどね……」

カエル「アニメだけじゃなくて、面白いものが多すぎて消化しきれないよね……」

主「本当に時間が1番足りないわ」

 

 

ねんどろいど リトルウィッチアカデミア アツコ・カガリ ノンスケール ABS&PVC製 塗装済み可動フィギュア

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月刊MdN 2017年5月号(特集:TRIGGER?若きアニメスタジオ「トリガー」の5年半史)

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