カエルくん(以下カエル)
「今回は食漫画の中でも、食事を作る側ではなくて、食べる側の漫画だね」
亀爺(以下亀)
「主は食漫画大好きじゃからのぉ……」
カエル「最近は少し落ち着いた感もあるけれど、依然食漫画って大人気だね」
亀「食漫画には幾つか分けることができるが……
『クッキングパパ』や『包丁人味平』『食戟のソーマ』などの調理系漫画。
『美味しんぼ』『築地魚河岸三代目」のような食の知識を探求する漫画。
『くーねるまるた』『孤独のグルメ』そして今作のような食べる漫画じゃな。」
カエル「大雑把に分けているから複合的な作品も当然あるけれど、そこに日常的に描写だったり、バトルだったりを足してそれぞれの脚色をつけているよね」
亀「その中でも最近人気なのは、3つ目の食べる漫画じゃな。特に可愛い女の子が食べるというだけでヒットする要因があるように思うの」
カエル「そうね。そこも含めてこれから話していこうか」
キャラクター紹介
百瀬 千早
今作の主人公であり、食べることが何よりも好きな女子高生。
ストレス解消は食べることであるが、ダイエットをしたいと悩み中。ダイエットを始めてみるも、大体1日も持たずに何かを食べてしまう日々。
確かに少しポチャっとした描かれ方をしているが、他の女子と比べても(男子と比べても)身長が高く描かれているので、バランスを考えたら本人が気にするほどではない……と思う。
志真くんとは幼なじみであり、志真くんの実家の定食屋の常連であり、ふたりの関係性は果たしてどうなる?
犬塚 志真
今作の男役。千早さんが食べてしまう元凶の一人である。
なおスリムな子よりはぼっちゃりの女の子が好きな模様。
実家が定食屋を営んでおり、その手伝いをしてきたためか料理がうまい。それで夜分遅くに料理をして、作ったものを千早さんにあげている。そのため千早さんに怒られることもしばしば。
しっかり者の妹がいる。
岸辺 いちご
千早さんの最大の親友であり、スリムな体型といくら食べても太らない体質、そして千早さんをからかうのが趣味と、ダイエットの最大の敵である。
本作の中で最も男前でコミュ力も高く、サバサバとした性格をしている。
千早さんと志真の関係性を進展させたいと思いながら眺めている。
作品感想
カエル「やっぱりこの作品の魅力は、何と言っても千早さんやキャラクターの魅力だよね!」
亀「可愛らしさも過剰なものではなくていいキャラクターじゃの。
それから、いきなり話は変わるがこの作品の魅力と、こういった作品が最近流行っておるのと理由は同じなのかもしれん」
カエル「……というと?」
亀「基本的に美味しそうに食べている姿というのは男も女も問わずに魅力的に見えるものなんじゃよ。ほれ、食いっぷりの良い人を見ると、それだけでスカッとしているような気分になるというじゃろう?」
カエル「『たくさん食べる人が好き』っていう人は男女問わず多いもんね」
亀「江戸時代以降には『男は少し肥えておる方が良い』なんていう格言もあってじゃな……まあ、それは食事情があまり良くない時代じゃから、肥えるような生活をしておる人はそれだけ裕福な、お金を持っている人ということもあるんじゃな」
カエル「そうね。太る人って現代ではあまり美徳ではない風潮があるけれど、昔はそもそも太れないもんね。アスリートとかも一番大変なのは食事で、体を大きくするのが大変っていうのは良く聞くよね」
亀「たくさん食べるとか、美味しく見えるように食べるというのは、実は才能なんじゃよ。現代では評価されることは少ない才能じゃがな」
美女の条件
カエル「でもさ、太っていることを女性……だけではないけれど、若い人ほど結構気にするじゃない? 不健康だから痩せたいじゃなくて、見た目が良くないから痩せたい人ってすごく多いし……」
亀「これは男女の差とも言えるかもしれんが……
女性が憧れる女性の代表というと、モデルみたいなスラリとした女性が多い印象じゃが、男性が好む女性というのはグラビアみたいなグラマーな体型の女性というのが多い印象じゃな。
もちろん、性格とかも絡んでくるから一概には言えんが……」
カエル「軽視されがちだけど重要な問題だよねぇ……日本人全体の『普通』が結構痩せ型の傾向にあるというか……」
亀「骨格が太かったり、筋肉質な人は大変じゃの……
それでは日本人全体が痩せている人が好きなのかというと……まあ、当然のようにそんな訳ではない。少しくらいならポッチャリとしておる方が魅力的という人もおるし、それが売りのアイドルなどもおるからな」
カエル「で、それが千早さんだと」
亀「そうじゃの。大体作品は千早さん達の日常パートを4コマで扱い、ラスト付近に2ページほど割いて食べるシーンを入れるわけじゃが……この食べるシーンがわしも結構好きでの。
最近は食事漫画の中でも食べるシーンというのは賛否が分かれる部分でもあるが、ある程度ネットリと描きながらも、官能的に描かれておると思う」
食漫画と萌え
カエル「最近、こういう漫画ってすごく多いじゃない? かわいい女の子が食べるだけという食漫画がさ」
亀「『食べる』という行為は3大欲求の1つであるし、当然のように誰もが毎日行うものじゃ。キャラクター性をつけるためにも食というのは大切なものでな……
キャラクターの好きな食べ物、嫌いな食べ物を設定する作家も多い。それは何よりも、キャラクターの魅力を雄弁に語ることができるからじゃな」
カエル「可愛い女の子が激辛料理が好きだったり、強面のおじさんがスイーツ大好きだったりってやつね」
亀「そう言ったギャップや性格を演出することもできるしの。さらに言えば、先ほど挙げた通り、可愛い女の子がご飯を食べるということで萌えを表現しておったりするの。
そして何よりも大きいのが『ストーリー性』を先延ばしすることだと、わしは思っておる」
カエル「ストーリー性の先延ばし?」
亀「これは良し悪しもあるが……近年の、漫画に限らず物語全般に言えるのは『人物像、キャラクター性』をより重視しておる。
それが一番大切であり、読者にとって魅力的なキャラクターを生み出すことが何よりも大事という作家も多い。わしはその流れに違和感があるが……しかし、この手の作品というのは『登場キャラクターがかわいい』で成り立っておるからな」
カエル「この作品に限って言っても、2巻が終わっても大筋は変わらないしね。2人の恋愛は停滞したまんまだし」
亀「そうじゃの。この恋愛が進展すれば終わるだけだから、それでいいのじゃが、そのストーリー性の薄さをキャラクター性で補っておる。
むしろそれは正解なんじゃよ。恋愛作品で一番ドキドキするのは『くっつきそうなのにくっつかない』という関係性じゃろうからな。そこを先延ばしにするのはどの恋愛作品でもやることじゃろう。
その1話1話の魅力を、食事をキャラクターでカバーしておるの。だから作品自体は永遠に作ることができると思う。あとはキャラクターを随時追加していくしの」
カエル「逆にキャラクターに愛を持てないと面白みがわからないわけだ」
亀「そうじゃの。その意味ではこのブログではストーリーの解説などはできんが……そういう日常系漫画として楽しんで読んで欲しいの」
最後に
カエル「それから……最後になったけれど、単行本と雑誌では少し変わっている部分もあったよね。すぐに雑誌を捨てちゃうから、もう確認できないんだけど……28kcalの団子屋さんのラストって、後日談がなくて寂しいラストだったように記憶しているなぁ」
亀「この作品には珍しく……余韻のあるというか、寂しい終わり方だったからの。コミックスにする際に修正したのかもしれんま」
カエル「紙面で見るとこういう4コマ漫画って大事だよね。シリアス長編の中にある……張った気持ちを緩めてくれる存在でさ」
亀「それで余計に千早さんがかわいらしくみえるのかもしれんの」
カエル「それにしても……この漫画を読んで『ポッチャリでもいいんだ!!』ってうちのウシガエルが言っていたけれど、限度があるって知ってほしいよ」
亀「かわいいのも限度があるからの」
カエル「ましてやうちのウシガエルときたら、可愛らしさは0なんだからさぁ……」
主「はぁ……腹減ったなぁ、夕飯前だけどからあげクンでも買ってこようっと」
カエル「お前は痩せなさい!!」