物語る亀

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物語愛好者の雑文

映画『GODZILLA 怪獣惑星(アニゴジ)』感想 アニメのゴジラは初挑戦! 迫力は満点だけれど……

カエルくん(以下カエル)

「いよいよアニメ映画のゴジラの新作が公開だよ!」

 

ブログ主(以下主)

「……まあ、期待半分、不安半分ってところかなぁ」

 

カエル「もちろん、このブログでもシンゴジラは扱っていて、みんな同じことを思っているだろうけれど、公開初日にあげた感想記事では最も熱く、最も深い記事を書いたという自負があるぐらいにハマったから、その次のゴジラということでハードルはメチャクチャ上がっているけれどね!」

主「シン・ゴジラは今の邦画ができる映画表現の中でも完璧な作品だったと思うんだよ。

 もちろんエンタメとしても面白いけれど、それと同時に恐怖感もある。そして原発や東日本大震災という日本が抱える大きな社会問題を内包する、メッセージ性のある娯楽映画に仕上がっていた。

 それは初代ゴジラが戦争や原爆をテーマにした作品であり、その衝撃を約60年ほど過ぎて再現したという点でも評価が非常に高い、邦画史上に間違いなく残る名作だったな

 

カエル「そのあとに続くゴジラということで、誰もが期待するところだよね」

主「ただ、面食らったところはあるけれど、アニメというのは却ってよかったかもしれない。これがまた実写だったり、特撮だったらたった1年だし間違いなく比べれられることになる。

 シンゴジラは初代ゴジラを見事に現代に復活させたけれど、ゴジラって子供向け映画の要素もあり、また怪獣たちが戦うメチャクチャさも魅力の1つなんだよ。そういった色々な要素がある中で、まだ挑戦されていなかったのがアニメでもある。

 不安はあるよ。だけれど、期待もある。

 アニメだからこそのゴジラを期待したいね

カエル「では感想記事のスタートです!」

 

 

 

 

 

アニメーション映画『GODZILLA 怪獣惑星』 主題歌「WHITE OUT」 (アニメ盤)

 

作品紹介・あらすじ

 

 日本を代表するシリーズである『ゴジラ』を日本では始めて長編アニメとして描いた作品であり、全3部作の1作目に該当する。

 監督はコナンシリーズなどで監督を務める靜野孔文と『BLAME』や『亜人』などCGアニメを多く手掛ける瀬下寛之、脚本には『魔法少女まどかマギカ』シリーズなど多くの人気作を手掛ける虚淵玄。

 キャストには宮野真守、櫻井孝宏、花澤香菜、杉田智和などの人気声優が名を連ねる。

 

 突如地球を襲った巨大生物たち。その中でもひときわ強い力を持っていたのが『ゴジラ』であった。人類はその生存競争に敗れて、地球を背に安住の地を探しに行かなければならないほどに追い詰められていた。

 それから20年……ようやく見つけた新天地は人類が住めるような場所ではなく、これ以上の航海は不可能と判断したクルーたちは地球への帰還を決意する。

 ようやく戻って来た地球……そこでは2万年の歳月が流れており、全くちがう惑星へと生まれ変わっていた……

 


ついにゴジラの姿が!劇場版アニメ「GODZILLA 怪獣惑星」予告編

 

 

 

 

1 感想

 

カエル「では、いつものようにTwitterの短文からスタートです」

 

 

主「一言で表すと全て予想通りです。

 このスタッフでCGアニメを作り、しかもポリゴン・ピクチュアズが制作することを考えると、まあこうなるだろうな、と思う作品がそのまま出てきたって感じかなぁ」

カエル「まずは大事なことだけれど、ゴジラ作品としてはどうだった?」

「う〜ん……これをゴジラ作品と認めていいのだろうか? という思いは中盤までは特に強かったよ。

 いつも語るけれどゴジラって一体なんなのか? ということが大事なんだよね。

 初代ゴジラは戦争や核のモチーフだったけれど、時代は流れていつの間にか正義の存在、地球の守護神となる。それがよりモンスターとなっていき、アメリカ版ゴジラは単なるモンスターの一種のパニック映画になってしまったこともある。

 では本作は? と言われると……残念ながら自分が望んだタイプのゴジラではなかったかな

 

カエル「そもそも宇宙に飛び出して行って帰還するという、SFになっているしね」

主「ただし、本作はあくまでも3部作の第1章である事は加味しないといけない。

 これで全てが片付いたわけではないから、もしかしたら今後大きな意味を持ってくるかもしれない。

 だけれど、それでもやはり今作に対しては自分は『ゴジラ映画』としては若干否定的な態度になってしまうかもなぁ……

 ただ、迫力はあったしつまらない作品ではなかったけれどね」

 

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過去最強!? 圧倒的な実力を誇るゴジラ!

(C)2017 TOHO CO.,LTD.

 

スタッフについて

 

カエル「ではスタッフについて語っていくけれど……まず、この布陣に関してはどう思う?」

主「いつものポリゴン・ピクチュアズらしい布陣だな、という印象。

 静野監督は『劇場版名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)』などの劇場版コナンシリーズを手掛けている。最近のコナンはミステリーよりもアクションが多めで、やはり劇場版はアクションを重視しているようなところもあった。

 そして瀬下監督はそれこそ『BLAME!』や『亜人』など、多くのCGアニメを手掛けているポリゴンピクチャアの看板監督でもある。

 この2人ともアクション要素が強い作品を多く手がけているわけだ

 

BLAME!

 

カエル「ということは、本作はアクション要素が強くなることは予想できるね」

主「そう。ちなみに静野監督は『シドニアの騎士』も担当しているんだよね。

 脚本の虚淵玄はちょっと後述するけれど、村井さだゆきも本作の共同脚本を務めている。村井も『シドニアの騎士』と『BLAME』も手がけていたからさ、つまりこの2作の要素が非常に強い布陣だということが予想できる

カエル「まあ、制作会社も一緒だし、当然といえば当然だけれど」

 

主「虚淵玄だけれど、もちろんご存じの方も多いように今アニメ界を代表する脚本家でもあるし、近年では特撮なども手がけているけれど……結構SFを担当しても面白い作品が多い一方で、ちょっとわかりづらいところもあると思うんだよ。

カエル「『サイコパス』とか、中々独特のお話だしね」

 

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主「じゃあ、本作で虚淵玄の味が出ましたか? と言われると、自分はそれはあまり感じなかった。

 復讐劇という意味では虚淵らしいのかなぁ……? まあ、まだ第1章だからさ、そりゃそうだって話かもしれないけれど……どんでん返しもやりづらいしね。

 よくも悪くも予想通りの作品だったなぁ」

 

カエル「……ちなみにキャラクターデザイン原案はコザキユースケだけれど、これも個人的なことだけれど、実はちょっと引っかかっているんでしょ?」

主「……これはさ、コザキさんが良いか悪いかではないんだけれど、自分は大のFE(ファイアーエムブレム、任天堂の名作ゲームシリーズ)ファンなんだけれど……コザキユースケがキャラクターデザインを務め始めてからのシリーズが正直微妙な作品ばかりで……

 だからちょっと苦手な印象がある。

 ただ、キャラクターデザインがCG向きだというのはわかる気がするけれどね。

 ちなみに声優陣ももちろん安定しているけれど、いつものような演技なので意外性も特になく、MVPも特にいません。宮野真守ももちろん主役としていい演技をしています」

 

 

以下ネタバレあり

 

 

 

2 技術と物語

 

カエル「では、ここからネタバレありで語っていくけれど……まあ、予想通りという話だけれど、それはどういうことで?」

主「なんていうか、ポリゴン・ピクチュアズの作品ってもちろん原作があって、弐瓶勉などの漫画家の味を最大限出さないといけないという制約もある中で制作してきた。

 そしてCGアニメとしてどのようにアプローチしていくかということを考えている会社だとは思う。

 それはもちろん、立派なことだ。

 ただ、そのせいでどの作品も内容が似通っているように見えてくる。

 つまり、アクションを過多にして爆発や戦闘描写で魅せる作品であり、物語よりも映像の迫力などを重視する作品たち。

 これはポリゴンピクチャアだけの問題ではなくて、日本のCGアニメは『ガンバ』などの児童向けのキャラクター作品以外の多くが似たような作品になっているように思えるんだ」

 

カエル「……それは主が元々CGアニメが苦手だからじゃなくて?」

主「言っとくけれど、ポリゴン・ピクチチュアズに対しての恨みや否定的見解を持っているというわけではないからね!?

 もう何年も前だけれど、ポリゴンピクチャアズ初のテレビアニメとなった『デジタル所さん』も好きで長い間見ていたよ。

 だからこそ『本当にこれでいいの?』という思いが抜けないわけだ」

 

デジタル所さん?インディのしつけ? [DVD]

 

カエル「元々頭身の高い日本風のキャラクターデザインだと不気味の谷などがあって難しいという点を克服してきて、今に至るわけだけれど……」

 

主「物語を作る時にまずCGが得意として、アニメーターが好きな爆発やメカなどが活躍するパートがやりたい! という気持ちがすごく伝わってくる。そのこと自体はむしろ当然のことだよ。

 だけれどさ、そのせいで肝心の『物語』がおざなりになっている印象があるんだよ

 

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CGアニメらしいSF描写

(C)2017 TOHO CO.,LTD.

 

中盤までについて

 

カエル「それではその物語についてだけれど……」

主「今作に対して大きく文句がつくのが、中盤までの流れなんだよ。

 なぜゴジラを見に行って、人間同士のワチャワチャを見に行かなければいけないのか?

 自分はSFのガジェットを見に行ったんじゃないの。

 ゴジラを見に行ったの。

 だけれど、ゴジラはほとんど名詞でしか出てこないし、その活躍もない。

 中盤までは本当に人間同士の争いに終始している。

 ただの政治劇だよ」

 

カエル「シンゴジラも政治劇ではあったけれど……」

主「あっちは細かい部分も作りこんで、政治家までもがその描写について言及するほどリアリティがあったじゃない。こちらはリアリティがないSFだし、登場人物に対して感情移入もまだしていない。しかも宇宙人まで絡んできているんだよ?

 別に宇宙人が出てくるのはいいよ。

 ゴジラシリーズでは金星人やらの宇宙人が出てくるのは普通だしさ。ただ、思い入れもないキャラクターたちの政治劇を見せられてもねぇ」

 

カエル「あとはCGだからというのもあるのかもしれないけれど、これが実写や他のアニメであれば、また違う演出方法で、絵や動きだけでも別の面白さを見せることも可能だったかもしれないけれど……」

主「中盤が絶望的に退屈だった。

 しかも出てくるのはSF用語ばっかりでさ、理解できないし、観客を置いてけぼりにしているとすら思った。

 これからのCGアニメの課題だけれど、動くシーンは面白いけれど、動かないシーンをどのように見せるのか? というのはあるんじゃないかな?

 

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戦闘シーンは迫力満点! CGアニメらしい出来になっています! 

(C)2017 TOHO CO.,LTD.

 

ゴジラとは何か?

 

カエル「そして最大の不満だと前述していた、この『ゴジラとは何か?』という問題なわけだね」

主「本作のゴジラはメタファーやアイロニーに満ちた存在ではなく、ただのモンスターである。

 攻撃方法……口から発射される熱線という武器はあるにしろ、ゴジラである理由は特に見当たらなかった。それこそキングコングやバラゴン、ラドンでも、何ならヒディアーズでもいいじゃん。

 なんでゴジラなの?

 ゴジラである必要があるの?

 その意味が全く感じられない。

 ただ単に人類に仇をなす強力な怪獣である……それだけのためのゴジラだとしか思えないし、それなら新しいモンスターを生み出してもいいんじゃない?」

 

カエル「もちろん、まだ1作目でありこの先大きな意味が生まれてくるかもしれないけれど……」

主「つまり本作がやりたかったのは『ゴジラを魅せる』ことではなくて『CGアニメで大怪獣をやっつける物語』になっているように思う。

 さらにいえばあのSF設定は何? なぜ2万年後の地球でないとダメなの? 自衛隊や軍隊ではなくて、ああいう機械類をたくさん出したわけは?

 それはただ単に『画面が映えるし、やりたかったから』としか思えないんだよね」

カエル「繰り返すけれど、まだ1作目だから意味があるかもしれないけれどね!!」

 

主「ゴジラの呪いとも言える初代に対して真っ向から立ち向かい、そして新たな金字塔を打ち立てた『シン・ゴジラ』だけれど、本作はゴジラとの対決を回避してやってこなかったことをやろうという風に見えた。

 特撮はやりつくしたからCGをやろう、それならSFを作ろう……という風にやったことないことを攻めていった結果、生まれた作品が今作である

カエル「その試み自体が間違いだというつもりは毛頭ありません!

 ……なんか今回言い訳みたいなカバーばっかり言っている気がする」

 

 

CGである必要性

 

カエル「結局はここに行き着くのかもしれないね」

主「ゴジラ作品て今までも色々な表現方法があった。

 それこそ着ぐるみもあれば、CGで動かしたり、フィギュアで『ゴジラアイランド』という作品を作ったこともある」

 

ゴジラアイランド DVD-BOX

 

カエル「ゴジラ自体は色々な描き方があるということで、しかも今作が初めてのアニメ化ということでも注目を集めているね」

主「アニメでゴジラを作るという試み自体はわからないでもない。

 じゃあ、なんでCGなわけ?

 手書き作画のアニメでもいいじゃない?

 フィギュアを使ったストップモーションでもいいじゃない?

カエル「ストップモーションは手間かかりすぎだけれど……」

 

主「CGアニメの名作といえば誰もが知っている『トイ・ストーリー』だけれど、この作品が優れているのは、セル画で作られたアニメと違ってコンピュータの中で造形された『CGキャラクター=おもちゃ』と見なして、それが動き出すことによって新しいアニメーションであることを表現している。

 トイ・ストーリーはセル画では意味が半減してしまう表現だろう。

 じゃあ本作は? なぜゴジラをわざわざCGで制作したの?

 その理由が全く見えてこない

 

カエル「一部では『1クールアニメシリーズにするつもりが、シン・ゴジラのヒットもあって劇場3部作になったのでは?』という話もあるけれど……」

主「それはそれでいいけれどさ……確かに次でメカゴジラが出てきそうな雰囲気もあったし、そこでCGである理由がわかるかもしれない。

 だけれど、今のところはただジャングルとSFとバカ強いゴジラが出てきてCGの味は出ているけれど、CGやアニメでなければできない表現になっているとは思えなかった。

 そして繰り返しになるけれど、ただバカ強い怪獣にするのであればゴジラでなくても構わないでしょう?」

 

カエル「小説版の怪獣惑星の出来がとても良いって話だけれど……」

主「じゃあ小説で良いじゃない。なんで映像化したのさ?

 メディアミックスとして成功しているかもしれないけれど、1作の映画として満足させられなかったら、失敗でしょう」

 

カエル「……えー、そろそろまとめに入りましょう」

主「今作に対する不満は一言で表すと『ゴジラを見せてくれ!』ってことなんだよ。

 今作が『シドニアの騎士』や『エイリアン』であったら、こんなことは言わないよ。

 でも、明らかに中盤まではゴジラではない他の作品になっていたよね、という話だ」

 

 

 

最後に

 

カエル「えー、文句の多い記事になってしまいました……」

主「ただ、CGアニメとしての出来はもちろん良いです!

 何度も言うけれど、これが『ゴジラ』ではなくて他の作品だったら、ここまで言わなかったと思います。

 そして自分が面倒くさいゴジラファンであることは重々承知しています。

 観る価値は当然あるし、次回作も公開日の朝一で行って記事を書こうと思っています!」

カエル「……スタッフ側は嫌だろうねぇ」

 

主「でも今後はメカゴジラなども出てきそうだし、大怪獣バトルも見られそうなので、そこには大いに期待したいね。

 ……それから、できればガメラも復活しないかなぁ」

カエル「ゴジラブームにあやかって復活してほしいし、ゴジラが『破壊神』だとしたら、ガメラは『子供たちの味方』であり地球の守護者だからちょっと違うんだけれどね。あと空中戦ができるし!」

 ……あ、でもガメラが復活したら亀爺あたりが色々言いだしそうな気がする。

 となると主と亀爺の記事になりそうだけれど……その記事は地獄でしかないような気が……」

 

主「うん? なんか言った?」

カエル「あ、いや、5月が楽しみだねって話です! ははは……」

 

 

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GODZILLA 怪獣黙示録 (角川文庫)

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アニメーション映画『GODZILLA 怪獣惑星』オリジナルサウンドトラック

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アニメーション映画『GODZILLA 怪獣惑星』 主題歌「WHITE OUT」 (アニメ盤)

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