カエルくん(以下カエル)
「みんな大好きヒーロー映画の新作が公開されたね。
ちなみに、マイティ・ソーって何者なんだろうね?」
亀爺(以下亀)
「さあの……
きっととっても強いヒーローなんじゃろうな」
カエル「ご存じの方もいるかもしれませんが、このブログは本作のようなヒーロー映画はあまり強くありません。むしろ、初めて見たヒーロー映画が今年の1月に公開された『ドクター・ストレンジ』という有様で……
なので、ソーが一体何者なのかというのもせいぜいウィキペディアなどの各種説明記事で軽く知っているくらいになります」
亀「北欧神話にあるロキやオーディンの神話が元になっておるのはわかるがの。
マイティ・ソーの作品だけでも3作品目という話であるが、そのようなヒーロー映画音痴であっても楽しめるのか? ということを考えて観に行っているので、熱いファンの感想や考察が読みたい方は他の記事を探したほうがいいの」
カエル「でもさ、本当に面白いとそれでも楽しめるものだと思うんだよね。
ちょっと特殊だけれど『ローガン』なんかはすごく面白かったし。あれはいい映画だったよね、ヒーロー映画に見慣れてなくてもすぐにわかる」
亀「今年はこの手の作品が非常に多いからの……ジャスティスリーグまではどうするか迷うところではあるが、アメリカの考える『正義』について考える上でもぜひとも鑑賞しておきたいところじゃったのでな」
カエル「では感想記事に入ります」
作品紹介・あらすじ
マーベルコミックのヒーローたちを映画化している『アベンジャーズ』の1員である雷神ソーの戦いを描いたシリーズ3作品目。
監督はコメディアンでもあるタイカ・ワイティティが担当しており、軽妙な掛け合いは見所の1つ。ソー役にはクリス・ヘムズワーズ、弟のロキの役にはトム・ヒドルストン、父のオーディンにはアンソニー・ホプキンスを続投しているほか、今作から登場する女戦士にはテッサ・トンプソン、敵のヘラにはケイト・ブランシェットを起用している。
人工知能ウルトロンとアベンジャーズの戦いから2年、アスガルドからいなくなってしまった父を探してロキとともに地球に降り立ったソー。しかし、そこに突如現れたヘラの手によって2人は遠く離れた惑星に送られてしまい、闘技場の戦士として囚われてしまう。
そのバトルロイヤルを勝ち抜き、そしてヘラを倒すことは果たしてできるのであろうか……
「マイティ・ソー バトルロイヤル」クリップ:ソーとロキの作戦”助けて”(字幕版)
1 感想
カエル「ではTwitterの短評はこちらになります」
#マイティソーバトルロイヤル
— 井中カエル@物語るカメ/映画・アニメ系VTuber(初書籍発売中!) (@monogatarukame) 2017年11月2日
初めてのソーはさすがにキツイかなぁ? と思ったけれど、いやいや結構楽しめた!
全体的にディズニー臭が強いのが気になったし、言いたいこともあったけれどラストで全てモーマンタイ!
あと初めてユニバースが繋がるのを観たけれど、なるほどファンは嬉しいわな
カエル「いやいや、初めてとか関係なく面白かったよね!
色々と……0時上映の最速上映を見てきたけれど、やはり熱いファンがとても多くてなんで笑っているのかわからないところもあったけれどさ、でもそんなことも関係ないくらい熱い物語でもあって!
場内では終始笑い声が響いているような空間で!」
亀「まあ、この場に集まっているのは熱いファンが多かったということもあるのじゃろうが……それなりの高得点を叩き出したのではないかの?
しかし、色々な映画のごった煮感はすごかったの」
カエル「なんというかさ、ディズニー臭がすごいよね。
SF描写もあるけれど、それがどう見てもスターウォーズであって、しかも敵のヘラもどちらかというとディズニーの実写映画の敵に近いような風体をしているし……たくさん出てくる異星人たちもどこか既視感があって『あれ? これヒーロー映画だよね?』と疑ってしまうような内容でもあった」
亀「みんなが好きなものをとにかくごった煮にして、混ぜ合わせました! という作品でもあったが……それは馬鹿にしているわけではなくの。しっかりとヒーロー映画としてもちゃんとしておる。
正直思うところもあったわけじゃが……最後のカタルシスで全て忘れてしまったというのが本音かの」
ラグナロク? バトルロイヤル?
カエル「このタイトルでもまた一悶着あったわけだけれど……実際見てみると、どちらでも間違いではないという印象があるかな。それこそ、原題通りでもいいじゃん! という意見もわかるけれど、バトルロイヤルの方が合っているのでは? と思うところも多くて……」
亀「ラグナロクが一般的かどうかというのは難しいところじゃの。わしらはゲームなどで親しみを感じる言葉ではあるが、あくまでも北欧神話に由来する言葉であるから一般的ではないかもしれないと言われたら納得ができないこともない……かの」
カエル「中盤のコロシアム描写などを考えてもバトルロイヤル感は確かにあるんだよね。
『誰が生き残るのか?』という意味で考えれば、確かにバトルロイヤルでも間違いではない。だけれど作品からするとラグナロクで問題があると思えなくて……」
亀「どちらでも構わんじゃろう。
しかし、あくまでも興行収入に少しでもこだわるのであれば、やはりわかりやすい原題の方がいい。変な話じゃが、そうやってTwitterなどを中心に話題になってくれれば、メディアも取り上げてくれたり宣伝効果も期待できるかもしれん。
宣伝は何よりも大事じゃからな……特に配給する側にとってはそれが全てであり、どんな名作も見られなければ意味がない。
日本ではマーベル作品はそこまでヒットしない……という言い方はあれじゃが、メガ大ヒットシリーズ! とまでは言いづらいのも現状じゃ。そのために苦心した結果としてみるのがいいのではないかの?」
以下ネタバレあり
2 脚本構成について
カエル「では、ここからはネタバレありで語っていくけれど……まずは本作の脚本構成について語っていくんだよね?」
亀「そうじゃな。
本作をディズニーらしいな、と感じた理由の1つがこの脚本構成にある。
これはもはや多くの映画でおなじみの構成になっておるのじゃが……
詳しくはこちらの本を読んでほしい」
カエル「簡単に言うと3幕構成になっていて、1幕では冒険の旅たちから次の目的地まで、2幕ではその中でのゴタゴタや最大の危機までを描き、3幕ではライバルや大いなる敵との対決を描く、ということでもある。
スターウォーズのEP4が顕著だけれど、冒険の旅たちからハン・ソロなどの仲間を得て惑星を飛び出すまでが1幕、デス・スター内でのゴタゴタから脱出までが2幕、そして最後ラストまでの勝負が3幕というようになっているわけだね」
亀「もちろんそのメソッド自体は多くの映画が取り入れており、今ではハリウッド映画界の常識のようなものになっておるようじゃが、ここで注目したいのはこのメソッドは元々神話の研究から生まれたものである。
長い間語り継がれてきた神話を研究していたら、共通するパターンを見つけた。それがこの3幕構成であったり、様々なフェイズを経るシステムである。実際にエンタメとしても優れておるのじゃが……今回重要なのは『神話』ということじゃな」
カエル「結局神話のお話なんだよね。
北欧神話に描かれている『ラグナロク』が実際に起きてしまったよ、というお話で……」
亀「本作がなんとなく既視感があるのは映像がディズニー資本の元で作られておるという意識もあるのじゃろうが、その構造そのものが強固な神話の物語になっておる。
それはソーの物語として、新たなる神話の始まりとして、これほどわかりやすくしてきたのは良かったのではないかの?」
今作の敵のヘラ
ただ……この造形には思うところがあり
ちょっと思うところも……
カエル「では、不満点を上げていくと……まずさ、衣装やデザインが絶望的にダサいよね。これは原作もあるからしょうがないところもあるけれどさ……」
亀「特殊効果などはうまくハマっておる。今回は3Dで鑑賞したこともあるが、中盤のペガサスの描写などは非常に美しかった。確かにそれは素晴らしいのじゃが……わしが気になったのがヘラの服装じゃの」
カエル「ケイト・ブランシェットだから歳はあれだけれど、でもやっぱり美人さんじゃない? 髪を下ろした時は美女という風体なんだけれど、角ができてしまうと『なんじゃこりゃ?』ってなってしまって、一気にダサくなる。
もしかしたら今回賛否があるかもしれないけれど、ソーも髪が切られるけれどさ、絶対切ったほうがかっこいいって!
あのロン毛も似合っていないわけではないけれど、そこまでカッコイイとは思えなかったかなぁ」
亀「この辺りはファンの心理もあるじゃろうから難しいところであるが……どうしても映像的にも既視感がある分、色々とゴチャゴチャしている印象はあったかの」
カエル「あとはみんな心変わりが早すぎで、結構ご都合主義はあったよね。
ハルクが心変わりしたのはそれまでの作品で語られてきた絆とかさ、まあ色々な事情があるんだろうなって思うけれど……ヴァルキリーの変わり身の早さですよ!
何かあったの!? って!
あの恨みは相当深いはずであり、そう簡単に割り切れるものではないだろうし、あの子にしてみたらヘラとオーディンは復讐の対象であって、その家族のソーもまたそこまですぐに心許せる存在とは思えないんだよねぇ」
亀「若干のご都合主義はあったが、尺に収めるためにも仕方ないのかもしれんな。
変な恋愛描写などがないのは高得点なのじゃがな」
浅野忠信も登場!
日本人俳優にはもっと海外に飛び出して行って欲しいなぁ……
そんなことは関係ない! 楽しいラストへ!
カエル「でもさ、そんなこと関係なく最後の戦いが本当に最高だった!
ソーたちの覚醒であったり、仲間たちが次々と活躍していく様などは見ていて爽快感があったし、そのための雑魚たちを次々と倒していくのはテンション上がるよね!
あの音楽と一緒に暴れまわるシーンを見たとき、ヒーロー映画を愛する人の気持ちがわかった気がする!」
亀「特に今作はヘイムダルでいいのかの? あの門番がとても良かったの。
それまでは悪党のように振舞っておきながら、実は心残りがあり……最後は『門番』としてギャグのように語っていた銃を手に取り戦う姿……それに感動すら覚えたの」
カエル「……でもさ、あの場にいた人たちが全員ではないはずなんだよね。逃げずにあの街に残っていた住民もいたと思うけれど、その人たちは逃げ切れていないんじゃないの? って疑問もあるけれど……」
亀「細かいことは忘れるのじゃ!
そのあとのあいつの復活からのラストもとても良かったではないか!
ヒーロー映画としての……正義が悪党を倒すという物語では厳密に言うとないのかもしれんが、それまでいがみ合っていたロキと共闘し、それまでの過去の歴史を一度壊して新たなる神話を……ソーの神話を作り出す。
その意気込みを感じた作品であったの」
カエル「……うん? 何か色々と思い返すと引っかかるポイントがいくつか出てきたような……」
亀「いいのじゃ!
それでいい! ラストが美しく、エンタメとして楽しいのだからそれで満点じゃろ!」
カエル「……まあ、ファンの人が喜んでいればそれでいいか!」
最後に
カエル「今作で初めて作品がリンクしていくさまを見たんだけれどさ、確かにこれは面白いね!
あ、ドクター・ストレンジのあのシーンってここで意味を持つんだってわかって!」
亀「にわかなりに色々と語ってきたがの、今作は『新たなる神話の創造』という意味でも意義がある作品に仕上がっておる。ファンタジー要素の多い作品に、あえてSFを打ち込む……その結果が新たなる神話となる。
その気概は確かに素晴らしい。新しいものを作ろうという意識に満ちておる思うの」
カエル「これを機にマーベルもチェックしたいって思った作品でもあるし、近くにいたマーベルは見たことなかったってお客さんも良かったと語っていたから、ぜひとも鑑賞してほしい1作だね!」
亀「苦手意識がある映画を見に行くというのも時には重要じゃからな……」