物語る亀

ネタバレありの物語批評

リトルウィッチアカデミア 22話感想 最大の衝撃にアッコはどう立ち向かうのか?

カエルくん(以下カエル)

「少しだけ間が空いて久々のリトルウィッチアカデミアの感想記事になります。

 18話で書いて以来だからちょうど1月ぶりになるのかな?」

 

ブログ主(以下主)

「今週の展開とか本当、ドキドキだよ……

 あれだけ大上段に構えて『クロワ先生は絶対に悪役ではないし、そういう存在は出てこないアニメだ!』とか言っておいて、今週ノリッノリで悪事? を働くクロエ先生を見て肝を冷やしたというか……」

 

カエル「あれだけ『この作品の主題を理解していると……』とか言っていたのに、赤っ恥だわなぁ」

主「大丈夫! 全部説明できるから!

 自己弁護も兼ねて次々と鮮やかに説明して見せるから!

カエル「今回も22話だけでなく、ダイアコ回だけでなく、名百合回として名高い19、20話に加えて21話のの内容も触れていきます。

 そう考えるとこの4話はどこで記事にしてもいいくらいの高密度だったね

主「毎週公開されていくテレビアニメをどう語るかというのは難しい問題だよねぇ。現在進行形の物語だし、すぐに次のお話しになってしまうし。

 ……もしかしたらそういうお話しも絡ませることができるかも」

カエル「じゃあ、感想記事のスタートだよ」

 

 

 

 

リトルウィッチアカデミア (1) (角川コミックス・エース)

 

1 本作における魔法の説明

 

カエル「ではこれまでの記事で何度も説明したけれど、このブログでのリトルウィッチアカデミアの読み取り方について少しだけお話しよか」

主「もう色々なところで言われているけれど、この作品は魔法学校を舞台にした魔女見習いのアニメ……というだけではない。

 いきなり余談だけど、魔法少女アニメというのは大体2種類に分けられるもので

 

『魔法からの脱却を描く作品』

『魔法の世界に帰る作品』

 

 の大体2つにわけられる。これは魔法というのが『少女の夢想、妄想』というものであり、そこから脱却することで大人になること=成長を示している場合が多い。魔法と共にいる者は成長ではなく、そのまま変わらない日常の世界の中に入るという意味がある」

 

カエル「魔法が持つ意味というのが名作魔法少女アニメだとあるよ、という話だね」

主「では本作における魔法とは何か? というと、それは具体的に言えば『アニメにおける作画技術』であると考える。メタモルフォーゼで動物に変身する=動物の作画が書けるようになり、空を飛ぶ魔法=スピーディな迫力のある作画ができる、という意味があると考える。

 そうなるとルーナノヴァはアニメ会社であり、これだけ多くの魔女は新人アニメーターなどである

カエル「そして伝統と革新のせめぎ合いの中でどのように成長し、魔法界を変えていくのか……ということがこの作品のテーマであるということだね」

 

主「『アニメについて語ったアニメ』というと『SHIROBAKO』が連想されるけれど、SHIROBAKOは直接的に言及することで描けなかったことがある。そして本作はその面……アニメ業界の闇に踏み込んできた。これも暗喩の持つ力だよね。直接的に言及するときな臭くなりがちだけど、このように語ることでエンタメ性との両立もできる」

 

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19、20話のダイアナは本当に美しかった……

© 2017 TRIGGER/吉成曜/「リトルウィッチアカデミア」製作委員会

 

ダイアナの成長

 

カエル「じゃあ19、20話について軽く触れるけれど……」

主「ダイアナというのはすごく優秀で伝統を大切にしている、いわば『伝統の守り手』のような役割を与えられている。そしてそこのお家騒動のお話であったけれど……これってあの会社を連想させるよねぇ」

カエル「ああ、棟梁が復活するの引退するので揺れている、日本中の誰もが知るあの会社ね」

 

主「お家騒動で揉めて、当主がいなくなって代理がそんなに優秀ではなくて傾いていく一方というのがね……まあ、それはあの会社だと思うのは深読みしすぎだけれどさ。

 でも、ここでダイアナが示した姿勢というのはすごく重要なことがある。

 それは『伝統とは何か?』ということなんだよ」

カエル「伝統?」

主「そう。本当に守るべき伝統というのはその箱のことなのか? 家柄のことであったり……アニメでいうと会社なのか? ということでさ。

 そういうことではないよね。その守るべき伝統というのは精神性であったり、その技術であるべきだ。まあ、今のアニメ業界は会社が乱立していて多すぎるくらいという問題はあるけれど……

 それはTRIGGER自体がそうじゃない? 元々ガイナックスという庵野秀明などの新進気鋭の若者が作り上げた文化や熱量を最も強く継承しているアニメスタジオでさ。かなり癖は強いけれど、訴えかけたいメッセージもしっかりとあって独特の地位を築いている

 

カエル「本当の伝統かぁ」

主「日本で伝統文化とか伝統と言い始めると、なんだか流派とかさ、家だ形式だの型の話になりがちじゃない? それもそれで大事だし、意義もあるけれど、最も重要な伝統……それが精神性なんだよ。

『古人の跡を求めず古人の求めしところを求めよ』

 松尾芭蕉の言葉だけど……それを知ったダイアナはまた1つ成長したということを示すエピソードだ」

 

 

 

 

2 クロワとアーシュラ

 

カエル「今回の目玉となる部分に入る前に、21話で示されたあの黒いシャイニーロッドについて語ろうか」

主「黒いシャイニーロッドやクロワ先生がやっていることというのは『新しい技術』に関することだと推測できる。

 作中における魔法界のエネルギーの枯渇というのはそのままアニメ業界の衰退するのではないか? という恐怖心を描いている。それから、単純に有名になってしまったけれど劣悪な環境だったり、低賃金で時間拘束が長いなどの問題は山積みだ。決して儲かる仕事ではない。

 それを改善しようとクロワは新しい技術を使っている」

 

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新しい技術の象徴? 黒いロッド

© 2017 TRIGGER/吉成曜/「リトルウィッチアカデミア」製作委員会

 

カエル「アニメでいうとCGとかだね」

「シャイニーロッドの持つ『伝統的な古の力』とクロワの持つ黒いロッド……つまり『革新的な力』の2本が揃っているわけだ。クロワとアーシュラって対立はしているけれど、その目的は全く同じ。ただやり方が違うだけなんだよね。

 もしかしたらクロワの方が全く新しいものを作るという意味では大変な思いをしているかもしれない」

カエル「無から作り上げるのは大変なことだしねぇ」

主「そしてそのクロワの新しいロッドが示す『新しい技術によるアニメ』がすごくいいタイミングで生まれてきた。

 それこそが湯浅政明監督の『夜明け告げるルーのうた』である」

 

 

blog.monogatarukame.net

 

 

カエル「ここ最近ルーの話ばっかりするくらいの傑作アニメだという評価だけど……それがどう絡んでくるの?」

主「この作品はFlashによって制作されたということが話題で、ほぼ一コマうち、簡単いいうとスッゲェヌルヌル動くアニメーションなわけ。Flashを使用しているけれど、手書きと比べてもアニメとしてのエンタメ性、刺激性、芸術性は決して劣っていない。

 何がすごいって、この作品は12人で基本土日休み、定時退社で作られたんだよ

カエル「中割りなども必要ないらしいね」

 

主「原理についてはよくわかっていないところがあるからあれだけど……でも、これもまた1つのアニメ界に対する革命であり、技術革新の形である。

 これはクロワがやろうとしたことに近いのではないか? というのが自分の考えだ。このように技術が進むことによってアニメ業界は変化していく、環境は少しずつでもよくなっていく。

 最近だとデュラララの作者の成田良悟が明かしているけれど、デュラララの2期が海外展開やグッズが予想以上の売れ行きで結構いい成績を残しているようで……これも直接的なアニメの技術ではないにしろ、販売のやり方の技術革新の成果だよね。

 確かに辛い噂が多い業界だけど、少しずつ改善しようという動きはあるし、それが実を結んできたという印象もある」

カエル「クロワの『新しい、革新的な力』かぁ」

主「アーシュラがシャイニーロッドを持つアッコの指導役であり、学園に残り続けていることを考えれば『伝統の人間』ということもできる。

 一方でクロワは外に出ていた『革新の人間』だ。確かに対立するようだけど……でも、この伝統と革新の融合こそが新しい魔法の世界=アニメ業界を作ることにつながっていくんだよ

 

 

 

 

3 22話の感想

 

カエル「というわけで、ようやく22話のお話に入るわけだけど……でもさ、今回、明らかにクロワは悪役だったよね? 人の負の感情を集めるというのはさすがに悪の行為じゃないの?」

主「う〜ん……まあ、そうなんだけれどさ。あれってブロガーとしては理解しやすい問題なんだよねぇ」

カエル「え? ブロガーとして?」

主「クロワがやろうとしていることは怒りなどを吸い取るということだけど、これって炎上商法っぽいなぁって。

 ブロガーとしての1つの技術なんだよ、炎上商法って。すごく大炎上している記事があるけれど、それって簡単にできるわけじゃない。人々が怒る、不満をぶつけたくなるレベルの暴言を吐きながらも、決して警察などが動き出さないギリギリのところを見つけるというのは、実は難しいことなんだ」

 

カエル「確かに悪い印象があるけれど、どんなに名文を書いても……名作を作っても誰にも認知してもらえなかったら意味がないもんね……」

主「これはアニメに限った話ではないけれど、1番重要なのは宣伝なんだよ。どれほど素晴らしいサービスも、商品も宣伝がないと……注目されないと全く相手にされない。

 スタジオジブリがまさしくその例で『カリオストロの城』だろうが『天空の城ラピュタ』だろうが初期作はあまり売れていない。売れ始めるのはジブリブランドが知れ渡ってからなんだよ」

カエル「『ルーのうた』をはじめとして、近年の素晴らしいアニメ作品……特にアニメ映画もそのクオリティと反して売れていない作品も多いよね」

主「宣伝はたくさんしないといけないけれど、宣伝費用は金がかかる。じゃあどうするか? というと、炎上も1つの手段である。

 アーシュラは人々を喜ばせる方法で魔法界を盛り立てようとして失敗した。だったら、ちょっと炎上してもいいから世間の目を注目させるように仕向けている。すごく現実的で、偽悪的な存在でもあるんじゃないかな?」

 

 

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アッコに襲いかかる最大の試練

© 2017 TRIGGER/吉成曜/「リトルウィッチアカデミア」製作委員会

 

アッコの苦悩

 

カエル「そして誰もが気になるあのアーシュラ先生の告白だけど……」

主「ここはドラマとしても非常にうまいよね。

 アッコの武器は『信じる心は私の魔法!』という言葉だけど、その信じる心を奪ってきたのが実はアーシュラ……シャリオだった。憧れの存在が自分から魔法を奪い、信じる心を奪いそうになるというのが、この回だけど、これほどの絶望感はそうそうないよ。やっぱり名作だと思う

 

カエル「ここって色々な意味があると思うけれど、アニメ論としてどうなのかな?」

主「う〜ん……色々と考えることができるかなぁ。

 Twitterで見たのが『アニメ業界のやりがい搾取を描いた作品だ』ということだった。つまり、好きという気持ちにかこつけて、苦しい思いをさせて作品制作をさせるというアニメ業界の闇に踏み込んだ回であるという意見。

 なるほどなぁ、と思うし、確かにそうだと思う。自分がこの意見を思いついたらドヤ顔で書いていたね!」

カエル「さて、これで別の意見を模索することになったわけだけど……答えは見つかった?」

 

主「なんていうかさ……やっぱりなんだかんだ言ってもアッコって『才能のない者の象徴』だと思うんだよね。好きという気持ち、信じる、やる気になれば、根性という精神論だけでここまで来てしまった人。

 魔法を奪ったというのは物語的なドラマ性を生み出す比喩表現でもあるけれど……自分は『スターに憧れて才能のない子がこの業界に来てしまった』という意味に受け取った」

カエル「アニメ業界って生き抜くだけでも大変で、サラリーマンのように会社が守ったり育ててくれる気配があまりないよね……じゃあ、アッコがこのまま魔女=アニメーターになったとして、食べていけるのか? というとそれもまた難しい話で……」

 

主「物語を提示するということは実はリスキーなことなんだよ。現実を忘れさせるけれど、それは結局空想でしかないから。その空想に一生を賭けることもある。もちろん、才能があって楽しめる人はいいよ? だけどそういう人ばかりじゃない。

 楽しませてエンタメ業界に夢を持たせてしまった……その子が他のあるべき未来や可能性を奪ってしまった。その価値があるのだろうか? それに応えられるような業界や体制なのか? ということを問うているように思う」

カエル「どちらにしろアニメ業界の闇に踏み込んできたね」

 

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シャリオは何を思うのか……

© 2017 TRIGGER/吉成曜/「リトルウィッチアカデミア」製作委員会

 

もう1人の主人公(今後の展開予想)

 

カエル「さて、ここからは展開予想なので正解したらネタバレになるので嫌な人は読まないでください」

主「全部妄想と予想だけどね。

 自分は過去にもいったけれど、この作品はアッコが主人公なのは間違いない。だけど裏主人公がいて、それは紛れもなくアーシュラ先生であるわけだ。

 この作品はアッコとアーシュラの物語でもある。それと同じようにダイアナ=クロエという構図も成り立つ。ライバルであり親友というポジションだね」

カエル「影の主役はアーシュラであり、そのアーシュラの成長物語になるのではないか? ということは以前にも語ったね」

 

主「本作のキーワードは間違いなく『信じる心は私の魔法』なんだよ。だけど、実はアーシュラが1番魔法やアッコを信じていない。この事実を教えてしまったらこの子は潰れてしまうかもしれない、この子の才能は未来を奪ったのは私であり、潰れてしまうかもしれない、という思いに駆られている。

 それは当然のことなんだろうけれどさ……でもアッコってその状況をすでに超えていると思うんだよね」

カエル「6話のポラリスの泉のお話で『シャリオみたいになりたい!』って。『自分で努力してなるものなんですね』って答えているということある」

 

主「そうそう。アッコは『できないことにめげないこと』というのがしっかりとできている。『信じる心が私の魔法』という言葉を誰よりも実践してきた。そんなアッコの力を1番信じていないのが、アーシュラのわけ。

 本作はもうすでにアッコよりも……アーシュラがどうするのか? という段階に来ているんじゃないかな?

 そしてそれはアーシュラが指導役のアニメーターの象徴だと考えれば、どれほどの思いと自問自答を監督などのベテランクリエイターが重ねて本作を制作しているのか伝わってくると思うんだよ。

 本作はアッコが象徴する『新人クリエイターの頑張りや努力、成長』を描いている一方で、アーシュラが象徴するベテランクリエイターの『新人クリエイターにどう向き合うか、彼らをどう導くか』ということに対する葛藤もテーマに組み込まれているんじゃないかな?

 

 

 

最後に

 

カエル「さて、ここまで語ってきて……おそらく次は最終回後になるのかなぁ?」

主「ここ数話はいつも涙腺が緩んでいる気がする。ここまで大きな意味合いを持つアニメになるとは思ってもみなかったよ……

 そして最後に大事なお知らせ!

カエル「え? 大事なお知らせ? 急に?」

 

主「角川のリトルウィッチアカデミアの漫画も読んでみたけれど、これも中々面白いよ!

 基本はアニメシリーズに沿った内容だけど、ロッテと精霊のお話であったり、スーシィの家族のお話なども入っている! ダイアナが少し嫌みな女の子になっていたりもするけれどそれもまた1つの味になっているので、是非買って読んでね!

 できればこの下のリンクから買ってね!」

カエル「……宣伝でおしまいかい!」

 

 

 

リトルウィッチアカデミア (1) (角川コミックス・エース)

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『リトルウィッチアカデミア』サウンドトラック集

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アニメを仕事に! トリガー流アニメ制作進行読本 (星海社新書)

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