……ついにプリキュアに手を出すときが来たのね
一回語っておいたほうがいい作品なのは間違いないからね
カエル「……なんで急にプリキュアを見始めたの?」
主「う〜ん……色々な記事を書いていくうちに、幼児向けアニメと女児向けアニメに檄弱なことを痛感してね。それだったら、ちょっと見ていこうと思って追っかけていったら、これがまたすごい話でね。ものすごく引き込まれた。
あとは……やっぱりキャラクターデザインが見やすい感じなのも大きいかなぁ」
カエル「作画クオリティの高さなどは言わずもがなだしね。多くの大きなお友だちがハマるのも納得だけれど……
というわけで、今回はHUGプリの話をしていきます!
……ひかないでね?」
主「今更引かれることもないんじゃない?
じゃあ、記事の始まりです」
【新番組】2017年2月4日(日)スタート!「HUGっと!プリキュア」
HUGプリの挑戦
まずは何故そこまで大絶賛するのか、作品を見ていない人にもわかるように簡単に説明しようか
女児向けアニメでこの作品はとても大きな事を描いているんだ
カエル「まず、今回のプリキュアで大きなテーマとして目につくのが『子育てをするプリキュア』であり、そして『敵役がブラック企業』というところだよね」
主「まず、ここをテーマに選んだということが非常に面白い。
もちろん、子育て要素はニチアサだけで見ても『おジャ魔女どれみ』などでも描かれている。また、子供向け作品としては育児は、おままごとのように昔から女の子の遊びとして馴染みがあるというのも大きな理由かもしれない。
だけれど、それ以上に女性の問題で最も現代社会で重要なテーマを選んでいる。
それは何かと言うと『女性のライフワークバランス』の問題だ」
カエル「育児と働き方の両立の問題って、今とても重要な問題だもんね。多くの人が共感するところもあるんじゃないかな?」
主「子供向けアニメというのはこれからの時代を作る子供たちに対して、どのようなメッセージを送るのか? が大事になってくる。
その中でも、女児たちへのメッセージに『女性のライフワークバランス』を選んだというのは、とても意義があることだというのは同意する人も多いのではないかな?」
働くことと育児の両立は可能なのか?(可能にするためにどうするべきか?)という問題は現代でも重要なテーマ
『家族』や『育児』を描くアニメ
カエル「この育児を描いたアニメというと、最近だと細田守作品を連想するよね。
『おおかみこどもの雨と雪』なんて育児の物語だし、今度公開される『未来のミライ』も幼い少年が主人公ということで、その要素があるように見受けられるけれど……」
主「他にも今年公開した『さよならの朝に約束の花を飾ろう』というアニメ映画は、古き社会に束縛される女性の苦悩と、育児も描いているファンタジーアニメだ。
ただし、今あげた作品は子供の成長を描いているのに対して、HUGプリはまだ赤ちゃんのままの育児を描いているという点において、他の作品と差別化されている」
カエル「もちろん、映画作品と1年間放送されるテレビアニメは全く違うし、この先ハグちゃんもものすごく成長するかもしれないけれどね。
ちなみに……『おジャ魔女どれみ』との違いは?」
主「おジャ魔女は確かに育児を描いているけれど、根本的には『一人前の魔女=大人の女性に成長する!』という成長の物語である。
そして、魔法少女ものではこれも多いけれど『魔法からの決別』を……つまり、現実を受け入れて大人になる、ということを描いている作品と言える。
その過程の1つにあるのが育児であって、社会との関連性についてはそこまで強くないかなぁ。
その意味で、今回のHUGプリとはちょっと視点が違うと考えている」
ニチアサと育児といえばやはりこの作品を連想するか
『応援する』プリキュア
カエル「同じニチアサでも時代が変わると描くものも若干変わるんだね」
主「そして上記の作品は……例えば個人の内面であったり、育児は描くけれど子供や育児を取り巻く社会を深く掘り下げることはあまりなかった。もちろん、そういう描写はあるけれど、それが主体ではない。
その意味ではHUGプリも社会を……つまり働く女性をそのまま描いているのか? というと、そこまでは言えない。
結局、主人公たちは中学生だしね」
カエル「まあ、子供向け作品の中でどこまで社会に出て働く女性を描くのか、というのは難しいバランスが求められるだろうし……」
主「本作は『なんでもなれる! なんでもできる!』をテーマにしていて、OPやED曲にもあるように、色々な職業に就く可能性を提示しながらも、育児を描いている。
つまり『社会で働く事』と『育児』というのは決して対立軸ではない、両立できるものであるという描き方をしているわけだ。
そして今作は『応援するプリキュア』である。
なりたい仕事や夢に就くことを応援するだけでなく、育児に頑張っているお母さん世代も応援している面もあったりと、親と子供で観ることが多いプリキュア作品において、大人にも響くメッセージを選択していると思うよ」
魔法少女の歴史
子供向け作品に共通するもの
ここから先を説明する前に、少しだけ魔法少女作品の歴史について振り返ります
では、ここでまずクイズを出します
カエル「……クイズ?」
主「とても単純な問題で、難しく考えなくていい。
ヒーロー戦隊、仮面ライダー、ウルトラマン、秘密のアッコちゃん、セーラームーン、プリキュアに共通するものといえば?」
カエル「……子供向け作品の代表作ばかりだね。
えっと……秘密のアッコちゃんは戦わないし……特撮も含んでいるからアニメ縛りでもない、根強い人気のあるシリーズばかりだけれど……」
主「正解は『変身する』ということ。
ここで重要なのは、上記の作品のように子供向けのアニメや特撮では『変身』を描いている場合が多い。
つまり、子供の中にある変身願望を満たすものが、子供向け作品には多く描かれている。
ただ、これは子供向け作品特有のものではない。
例えば『ドラゴンボール』で悟空がスーパーサイヤ人になるのも変身の1つだし、大人も大好きなマーベルをはじめとしたアメリカのヒーロー映画だって変身している。
変身願望を満たしてくれるというというのは、娯楽作品の中でも重要な要素なんだ」
カエル「ふむふむ……それを言えば大人が『どこか遠くに行きたい』というのも、今の自分から変わりたい! という意味では変身願望と言えるのかもね。
それに中年で急にそれまでと違う生活を送るようになる『中年の危機』を描いた作品だってたくさんあるし……」
主「これは他の作品でも言えることで……例えば、今ライトノベル業界では現世から転生した主人公が大活躍する『異世界もの』がとても流行っている。これだって変身願望を満たしてくれるものであり、現代の世知辛い世の中に対しての逃避として機能しているからでもあるだろうな。
児童向けであれば特撮ヒーローやプリキュア、少年向けならばドラゴンボール、青年層向けならば異世界転生ライトノベル、大人向けならばアメコミヒーローなどのように、変身ヒーローの住み分けがされているけれど、大元の『変身願望を満たす』という意味では同じようなものでもある」
変身ヒーローを描くという意味ではアベンジャーズも同じだろう
男の子向け作品と女の子向け作品の違い
カエル「でもさ、男の子向け作品と女の子向け作品ってまた違うの?」
主「違うね。
同じ変身願望でも男の子向け作品は『強いもの、大きいもの』に憧れている傾向がある。
わかりやすい長所であり『変身して強くなる、大きくなる=かっこいい!』ということもできる。
一方で女の子向け作品は……例えば『秘密のアッコちゃん』は女の子の変身願望の中でも、大人の女性や色々な職業だったり、あるいは動物などに変身するけれど、決して悪をくじくという作品ではない。
アッコちゃんに限定すると、手鏡というオシャレ道具で変身するその姿は、大人の女性への憧れなどを満たしてくれる変身魔法少女といえる」
カエル「えっと……女性が変身して戦うというと『キューティーハニー』があるけれど、それは?」
主「キューティーハニーは元々少女向け作品ではなくて、永井豪が少年に向けて書いたお色気漫画の1つでもあるから、今回は除外する。
もちろん、女性が変身して戦うという1つの定型を作り出した偉大な作品だよ。
それは永井豪らしい……言うなれば手塚治虫などのレジェンドが王道ならば、その反対のいく邪道の発想から生まれている作品だ」
カエル「じゃあ、魔法少女が戦うというと……やっぱり『セーラームーン』が最初ということになるの?」
主「エポックメイキングな作品であるのは間違いないよね。
セーラームーンは『魔法少女+戦隊もの』であり、それが男女を問わずに大ヒットした。
ここから『女性だって戦うんだ!』という女児むけの物語が重要な時代になっていく」
魔法少女が戦うという視点で、とても重要な作品
プリキュアが成し遂げた変化
じゃあ、プリキュアっていったいどんな作品と言えるの?
やはりシリーズ初期から続くように『女の子が肉弾戦で戦う』ことが最大の特徴ではないかな?
主「自分の言葉で語るならば、プリキュアは『魔法少女+ドラゴンボール』である。
やはり、それまでの女児向けの魔法少女ものというのは戦闘があるにしろ、肉弾戦はあまりなかった。
だけれど、プリキュアは殴る蹴るなどの激しい肉弾戦があり、サブミッションまで登場するなどの激しいバトル描写がある作品が生まれている。
これはとても画期的なことであるけれど……その大きな変化として、主に2点をあげたい」
- 女の子が肉弾戦を行う
- 恋愛が主体ではない物語
カエル「ふむふむ……どちらもプリキュアの特徴として語られることだね」
主「女児向けのアニメとなると、恋愛が主体となっている作品も多い。もちろん、すべてがすべてとは言わないし、プリキュアの中でも恋愛要素もある作品もあるけれど……でも、それがメインではないよねって話だ。
では、なぜ恋愛要素が女児向けアニメには多かったのか?
その理由は……ウテナの記事の時も書いたけれど、簡単に言えば『女性を取り巻く環境からの解放=お家制度からの脱却』がテーマとしてあり、そのために自由恋愛が革命の手段だったということがある」
カエル「結婚が家の都合で行われるものだったのに対して、自由恋愛でそれを否定する物語が少女漫画や女性向け作品では増えていく、という話だよね」
主「でも、自由恋愛を描くことで女性は本当に解放されたのか? というと、必ずしもそうではないんじゃないの? というのが今の世界のトレンドである。そして隆盛を迎えるのが女性の社会進出を描いた作品だ」
現在の女児向けアニメの動向
世界のアニメ(ーション)が描くこと
カエル「ちなみに、この記事内では
『アニメ=日本国内で作られたアニメ作品』
『アニメーション=日本以外で作られているアニメ作品』
というように区別しています。理由としては長くなるので割愛しますが、簡単に言えばアニメって世界のアニメーション徒比べても独特の変化を遂げているため、という意味です」
主「ここ近年の世界の表現は……特に映画などの物語表現は『女性の解放(社会進出)』をテーマにしている作品も非常に多い。
例えばディズニー作品でいうと近年の作品では
- 恋愛の解放を描いた『アナと雪の女王』
- ウサギの女性警察官が大活躍する『ズートピア』
- 女性主人公が海へと大冒険を繰り広げる『モアナと伝説の海』
これらの作品は大ヒットし、中には社会現象となったけれど、そのテーマは女性の社会進出を描いた作品だ。
一方で、アメリカ以外の国に目を向けると『生きのびるために』というアカデミー長編アニメーション賞にもノミネートした作品がある」
カエル「簡単にあらすじを話すと、過激派イスラム組織が統治する社会で強烈な男尊女卑に苦しめられる女性を描いていて、女性だけでは外を出歩くこと、物を買うこともできないし、教育も受けられてない。
そんな過酷な環境で男性が家庭からいなくなってしまい、生きのびるために男装して生活する女の子を主人公とした作品です」
主「これも1つの……つまり、過激派が支配するイスラム社会で過酷な生活を送る女性を解放するという運動の一環である。
他にも台湾のアニメーションである『幸福路上/On Happiness Road』なども同じように女性の解放もテーマの1つとして抱えており、これは世界の流れでもあるんだ」
根本は同じ物語
こうやってみるとプリキュアはやはり子供向けな印象があるね
だけれど、決して子供騙しな作品ではない
主「もちろん、これは映画とテレビシリーズの描き方の違いでもあるし、作品のターゲット層となる対象年齢も違うこともあるだろう。
だけれど、描いている内容は同じ。
つまり『女性の解放(社会進出)』である。
プリキュアというと『え〜? 子供向けだし浅い物語なんじゃないの?』と思われるかもしれないけれど、とんでもない!
むしろ、15年前から最先端の物語を提示しているというのがお分かりいただけるのではないかな?」
カエル「大人向けの映像作品と子供向けのアニメで表現していることは特に変わらない、むしろ子供向けアニメの作品の方が深いのでは? というのは何度か指摘していることだよね」
主「それこそ『女の子だってヒーローになれる!』なんて『ワンダーウーマン』をはじめとしてアメリカで今最もホットなトレンドじゃない? それを日本は15年前にプリキュアが行っているんだから。
他にも、例えば『アナと雪の女王』は恋愛否定して『ありのままの私で生きるのよ』と歌っているけれど、これは女児向け作品で恋愛をメインで描かないという意味ではプリキュアも同じだよね。
つまり、女児向け作品の恋愛(男性依存)からの脱却だ。
これを見ても、プリキュアには女性を扱う物語が最も重要だと世界中で思われているテーマをいくつも内包していることがわかる」
プリキュアが描く『進歩したジェンダー』
『男の子だってお姫様になれる!』 とセリフが話題だね
ここが本当に素晴らしい!
主「これは世界の作品の多くが描いていない、ある重要な問題点について語っている」
カエル「それは何?」
主「……あんまり言いたくないんだけれど、言わなくちゃダメ? 自分の創作のテーマにしようと思っているんだけれど……」
カエル「どうせ量産しないでしょ? さっさと開示したら?」
主「女性の解放運動は多くの作品が描いている。
でも、それと同時に行われなくてはいけないのが『男性の解放運動』なんだよ。
つまり、現代社会では女性がバリバリ働く事=女性がヒーローになることはむしろ奨励されるようになり始めている。
だけれど、男性の家庭進出は世間の逆風がまだまだ吹き荒れている」
カエル「……あれ? でもイクメンブームなどもあるじゃない?」
主「だけれどイクメンって前提として『社会に出て働いているお父さんが家庭でも活躍する』という話でしょ? もちろん、育休などの制度もきっちりと使うべきだけれど、基本的には主夫ではない。
例えば、年収は今でも男性の価値をはかる上でとても重要視される。
年収が高ければ高いほどいい男、という風潮はある。女性が結婚相手に望むことでも年収は常に上位に位置する。
これは言い方を変えると『男性は社会に束縛されている』という言い方もできるんだ」
物語における男性の描き方
カエル「その点でいうとHUGプリは結構攻めているよね。今回の妖精であるハリーは男性の格好をしているけれど、お店を経営する一方で赤ちゃんのハグたんの面倒も見ているわけで……」
主「これが女性の社会進出に対する1つの回答でもある。
男女両方社会に進出するのではなく、男性が家庭に進出するというやり方もあり。
もちろん、そういう描き方をしてきた作品もあるけれど……現代の男性の物語はかなり変節している部分もある」
カエル「昔はアメリカも日本もマッチョでワイルドな男性が男らしさの象徴だったけれど……それこそ日本では三船敏郎とか、小林旭とかね。
だけど現代はそんな男性像はあまりなくて、むしろ情けない年配の男性を描く作品が多い印象かなぁ」
主「女性の解放(社会進出など)と男性の解放(家庭進出など)はセットになるのではないか? というのが持論。
そうでないと、単純に男性の居場所に女性が進出しておしまい、ということになりかねないからね。いや、今はもう既にそういう時代なのかな?
だけれど、男女の平等化はあまりうまくいっているとは言えない状況がある。
それを象徴するのがジェンダーの描き方である」
ジェンダーについて重要なことを描き続ける志村貴子
日本におけるジェンダーの問題
日本におけるジェンダーの問題かぁ……ちょっと難しいお話かも……
この表現に関してはやはり漫画家の志村貴子作品を例にあげたい
主「自分が大絶賛する漫画もアニメも名作の作品として『放浪息子』があるけれど、この作品の中で『女の子が男装する』ことは特に違和感なく描かれている。
だけれど『男の子が女装する』ことにはとてもシビアなこととして扱われており、学校中が騒ぎ出す大問題にも発展しているんだ」
カエル「……その感覚はわかるかなぁ。女性がショートカットでGパンなどを履いている、いわゆる男性的な服装でも何も思わないけれど、男性が長髪でスカートを履いていたらギョッとするというか……」
主「そしてHUGプリでは『男性が女装することは全くおかしくない』ということを描いている。
自分はHUGプリをとても高く評価する1番の理由がここで、本作は『女性の解放』を描いている、もしくは描いてきたシリーズでありながらも、今回はハリーが主に育児をすることも含めて『男性の解放』も描いている点だ。
この両者をセットで描きながらも、女性のライフワークバランスを意識させて、社会問題を絡ませながらも、もちろん面白い作品に仕上げている……これはとてつもないことだ」
カエル「ふむふむ……」
主「我々は無意識のうちに刷り込まれた概念、いわゆる『常識とされる考え方』がたくさんある。
例えば『女性は家庭にいるもの、男性は社会で働くもの』という意識などがそれにあたる。でも、そこから解放することが物語の役割でもあるし、今後の社会を考える上では重要なんだよ。
その社会がイスラム社会であれば『生きのびるために』になるし、生まれによる偏見がある社会であれば『ズートピア』になる。
今年のプリキュアは日本社会に対してとても重要なことを描いているというのは、ここで強く語っておきたいかな」
まとめ
では、この記事のまとめです!
- 女性の育児と働き方のライフワークバランスに着目した作品!
- 女性だってヒーローになれる! は世界中で今最も重要な視点!
- 女性解放は同時に男性解放でもある! それを描くプリキュア!
女児向けアニメだからといって馬鹿にできない作品だね
カエル「そもそも、女児向けだから男の子が見てはいけないというのも偏見だしねぇ……
それを言ったら時代劇を見る若者はダメなのか?
男性アイドルグループのテレビ番組を見ているおばさんはダメなのか? って話だし……」
主「自分だってそういう偏見はあるけれどね。間違いなくこのブログを書いていなければプリキュアも見ていないし、いい歳した大人がプリキュア見てます! というと偏見を抱くよ。
でも実際見てみると全く印象が違う。
とても面白い物語であるし、意義も意味も大いにある作品だ。
ぜひぜひプリキュアファンのみならず、多くの大人にも鑑賞してほしい作品だね」