物語る亀

ネタバレありの物語批評

劇場版ラストエグザイル 銀翼のファム 感想 (LASTEXILE)

 『ラストエグザイル 銀翼のファム』の映画版を鑑賞してきたので、その感想を書いていく。

 

 

 

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 1  GONZOの思い出

 10年以上アニメを見続けているオタクには特別な制作会社というものがある。例えばサンライズといえばロボットアニメの大手だし、ガイナックスといえば若きクリエイターたちが尖った作品を次々と発表していく会社だというように、それぞれの特色があり、それに合わせて好きな会社というものができていく。

 その中でもGONZOという制作会社は特に私の中で強く印象に残っていて、若い日にその作品群をたくさん見ていたものだ。

 

 ネット界隈では独特の地位を築き上げたと言われることが多いが、では名作を多く作り上げた優秀なアニメ制作会社かというと、「う〜ん」と首をかしげてしまう。確かに制作本数は少なくないし、私も好きな作品は多いのだが、名作と言われると『カレイドスター』がそれに該当するかもしれないが、他の作品は名作とまでは言わないように思っている。

 それでも『岩窟王』であったり、『N・H・Kにようこそ』のような意欲に溢れた良作があるし、共同制作ではあるが『ガドガード』などは夢中になって見ていた。(二週続けて同じ話数を放送したり、20話くらいで地上波では放送打ち切りなど数々の伝説は残した)

 

ラストエグザイルの立ち位置

 そんなGONZOファンの中でもラストエグザイルという作品は特別な位置にある。

 手放しに褒められるか、というと……絶対見とかなければ損ということもないのだが、深夜に独特のテンションで放送されて、眠くなってくるんだけどもなんとなく面白いという、今までにない体験をさせてもらった。(雰囲気アニメと言われたらそうなのだろう。逆に言うと、それだけ雰囲気は非常にいい)

 

 村田蓮爾のキャラクターデザインも良くて、少女は可愛らしく、おじさんは渋く書かれているのが非常に好きだった。

 また本作は今をときめく花澤香菜、喜多村英梨の声優デビュー作であり、ちょい役の花澤はともかく、中学生か高校生の喜多村を重要な役どころで起用したというのも中々冒険心にあふれている。斎藤千和も二作目ということで声優人生の転換点となった作品とのこと。

 多分ファン以上にスタッフも思い入れが強い作品になっているのではないのだろうか。(それだけに過大評価されやすいとも言える)

 

 そんなラストエグザイルが続編を作ると聞いた時、私は驚愕した。

 

 「いや、そんな……大丈夫?」

 

テレビ版『銀翼のファム』

 当然嬉しいは嬉しいのだが、名作で続編を待望される作品でもなければ、続編がなければおかしい作品でもない。むしろ綺麗に終えたのに何やるの? と思ったりGONZOが倒産直前までいったという報道もあって、確かにファンが多い作品だけれども、十年近く前の作品でもあるし、そこまでネームバリューがあるわけでもないじゃんなどという思いを抱えながらファムのテレビシリーズを、見るとまあ、悪くはない。

 

 悪くはないのだが、非常に面白いかというかと疑問がつく。

 

 さらに21話と話数も微妙で、後半の走りようを見ると本来はもっと話数があったのに諸事情により打ち切りのような形になったのだろうな……と想像してしまった。ファンの私がそう思うのだから、ファムから入った人はもっと強くそれを感じたのではないだろうか。

 

 そんなファムが映画化すると聞いた時(つい最近の話)「……マジで?」と少し耳を疑った。総集編の劇場版って、もっと大ヒットして誰もが噂をするような作品がやるようなものではないのだろうか? と疑問を持ってしまった。

 勘違いしないでほしいのは、私はラストエグザイルのファンであり、小説版は何度も読み返したし、漫画版も読んでいるし、劇場公開初日に映画館に観に行くほどに好きなのだ。そんな人間でも今回の事態は疑問に思うことだった。

 

ではようやく感想(ネタバレあり)

 これは初めての体験だ!

 先ほども言った通りに普通の総集編は圧倒的に面白いテレビシリーズを総集編にする。そのため、本来重要なエピソードなどもカットされてしまうことがあり、「まあ、総集編だしな」と納得することも多々ある。

 だがラストエグザイル、特に銀翼のファムは疑問点も多い作品だったが、それが総集編として再編集されたことによって展開は早かったが、話がすっきりとして、非常にわかりやすく、また面白い作品になっていた。テレビシリーズよりも面白い総集編などというものは今までにない体験だった。

 

2 元々主人公が弱い作品

 ラストエグザイルという作品は一期もファムも、主人公は軍人ではないため銃を撃つ、人を殺すことに抵抗が強い。そもそも一期は主人公たちの本業はただの運送屋、二期は空賊ではあるが誰かを傷つける、殺すという場面は無い。

 そんな中で魅力的なのは一期でいえば謎の艦長であるアレックスであったり、ファムならばルスキニアなどの大事を成そうとする人物である。主人公はそれに巻き込まれて右往左往する場面が多く、つまり能動的に行動するのではなく、受動的に行動する。

 

 これは例えばエヴァのシンジなどもそうだが、こう言った性格の主人公はあまりに状況が見えていなかったり、やりたくない! ばかりで視聴者がイライラとする場合も多い。ファムのテレビ版でもそれはあって、いまいち主人公サイドの思惑などがわかりづらいこともあった。

 だが本作はミリアの国再興を主軸にすることにより、ファム達の行動に明確な意思を感じられるようになった。ただの空賊が重要な会議に出席するなどの疑問点はあるものの、まとまりはできたように思う。

 

3 むしろ主人公の外の設定が面白い

 本作の設定は前作から引き継いでいることもあって、中々魅力的なものも多い。例えば超兵器と思われている『エグザイル』ではあるが、その真の目的は人類救済における一時避難のための宇宙船だったりする。その能力を軍事的に活用しているにすぎない。

 前作において帰還が可能になったが、他の星からの帰還民と地球? に残った民の間の確執や、土地や資源の奪い合い、それに伴う国同士の思惑なども複雑にこんがらがっている中に、前女王の暗殺事件なども絡んでくるわけだ。

 

 さらに味方のトゥランは滅んでいるために登場人物が少ないが、敵であるアデス連邦はその内部構造(象徴的な誰もが崇める君主がいて、強大な力を持つ総統がいて、その下に各軍団長がいるという構図)加えて、その帰還民に土地を奪われた民を思いやる思想性などもあり、よくある侵略者による野望に燃える国取物語ではないことが面白い。

 しかも仲の良かった姉妹であるトゥランの王女達が敵味方に分かれて、どちらが国の覇権を握るか戸惑いながら争い合うのも中々いい。

 こういった魅力的な設定があるため、どうしても国と関係ないために、そこから蚊帳の外にならざるを得ない主人公達というのは、実は物語を展開させる上では扱いづらい存在でもある。

 

   

 

 

4 もうアビス連邦の内部のゴタゴタをやるだけでもいいや

 何を言ってるんだと思われるかもしれないが、とりあえず読み進めてほしい。

 

 連邦は元々忠誠心に厚い面々が強大な力を持っていたために、相手国からしたらエグザイルを使う以外に対抗手段がない。(連邦は帰還民ではないため、エグザイルを持っていないようだ)エグザイルという強力な武器を手に入れて、侵攻作戦を開始したのはいいが、あまりの破壊力の強さに連邦内でも意見の衝突が起きる。

 特に君主であるサーラの側近であるヴァサントはこのままでは虐殺皇女の汚名を着せられてしまうと戦闘停止を強く直訴、サーラはそれを呑み、他国との講和条約締結を指示する。

 

 一方、総統として幼い君主に変わり実質的に国を運営しているルスキニアは戦争継続という強硬策を主張、ヴァサントの穏健派と、ルスキニアの強硬派は対立してしまう。しかも亡国のトゥランも姉が強硬派、妹が穏健派というおまけ付き。

 この天皇をかけた貴族VS将軍のような対立構造だけでワクワクしてきてしまう。

 

 結局はサーラの言葉により講和条約は成るものの、調印式にて総統暗殺事件が発生、それは未然に防がれるも講話は破談になってしまう。ルスキニアは穏健派のトップだったヴァサントを暗殺し、サーラを連れて出て行ってしまう。

 そして無理やりエグザイルを起動させて、強硬派VS反強硬派の各国連合軍との対決になるのである……

 

 いや、これだけで十分面白い!

 

 そして何度も言うようであるが主人公が絡む余地なし!

 無理にでも絡ませようとしたら、顔は広いからトゥランの外交官にでもなって講和条約を成すために奔走するのもありだが、あの性格では難しいかもしれない。

 

 というわけで、巨大な国をどうするか、そのための権力争いが面白かった。

 特に強硬派のルスキニアが私心がなく、本当に強大な軍事力を武器に平和にするという国を思っての行動だったのがポイント高い。(ギアスにも似た様な事があったな)

 

5 特に良かったところ、悪かったところ

 特に見返してから行ったわけではないので、どこが新規カットかわからないぐらいの人間ではあるが、特に良かったのは以下の点。

 

 ●余計な部分がカットされてすっきりした(ジゼルの闇落ち、ファムの出生の謎など)

 ●エグザイルVSエグザイル戦が追加された(テレビでは一番盛り上がるシーンなのに、エグザイルが出ていった次の話では冒頭で決着がついていて一週見逃したかと思った)

 ●上記の様にお話がわかりやすくなっていた。

 ●黒石ひとみの音楽

 ●タチアナ、アリスはやっぱりいい(可愛いというより美人)

 

 悪かったところ、気になったとこは以下の点。

 

 ●総集編のため展開が早すぎた(これは仕方ないかな)

 ●おっさん成分が少ない!(ラスエグはおっさんがカッコイイ作品でもあるのに)

 ●一期のキャラをもっと!(一期の技師は出てきたが、整備士連中のゴドウィンやゲイル、イーサンだったり、あとは銃兵のモランが出てきてくれたら嬉しかった。クラウス、ラヴィはしょうがないけど、脱出シーンで先導役で出てきたらテンションMAXだったろうな)

 ●ルスキニアの思惑がわかりづらい

 ●空を飛んでいる時はゴーグルをしよう(こういう細かいところが気になる作品でもあり、勿体無いと感じてしまう)

 

 

 

 元々アニメの総集編映画なんて九割方ファンしか見ないものではあるが、それを考えてもなかなか良かった。

 あとパンフレットも900円ではあるが、キャラクター設定資料なども載っており、ファンなら買って損はない。

 いい作品だった。

 

 

   ちなみにラストエグザイルの主題歌も入っている黒石ひとみ(hitomi)のこのアルバムはヒーリングとしてもおすすめ

 

 

Angel Feather Voice

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