物語る亀

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物語愛好者の雑文

映画『甲鉄城のカバネリ 総集編後編 燃える命』感想 荒木監督がカバネリでやりたかったことって?

カエルくん(以下カエル)

「カバネリの総集編も後編を迎えたね」

 

ブログ主(以下主)

「2週間限定公開だから、早く見に行かないとすぐに終わっちゃうな」

 

カエル「総集編だからねぇ……新規カットもあるにはあるけれど、メインはすでに放送された分だし」

主「初見でもとっつきやすいけれど、だいたいこういう映画を見にいくのはテレビシリーズからのファンって形になっちゃうのが勿体無いよなぁ。

 カバネリに関しては作画がテレビアニメとは思えないクオリティだったから、余計にそう思うよ

カエル「前編の時も語ったけれど、他の劇場作品に負けていないもんね」

 

主「もちろん、止め絵があったり、箇所によってはやっぱりテレビアニメだな、という思いもあるけれど……それでもアクションシーンを始めとして、動くときはグリグリと動くしな」

カエル「すごいよね。監督が『特定のカットに関してはやりきったと思っている』って語っているけれど、本当にその通りだと思う。テレビアニメだと考えたら、素晴らしいクオリティだよね」

主「それじゃ、感想記事に入ります。

 ちなみに今回も1度テレビシリーズで放映されていることもあって、ガンガンとネタバレをしていこうと思っているので悪しからず

 

 

 

前編の記事はこちら

blog.monogatarukame.net

 

 

 


「甲鉄城のカバネリ」総集編 全国ロードショー決定!

 

1 前編と比べると?

 

カエル「じゃあ、まずはどうしても比較対象になってしまう前編と比べると……」

主「テレビシリーズの時点でカバネリを語った時と同じ印象。基本的に2話で1つのエピソードという構成で、全12話だから6つのエピソードがあるわけだ。

 

 1つ目が導入とカバネの恐ろしさを扱った脱出編。

 2つ目が山岳地帯を移動中に襲われてしまう……襲撃編とでも言おうか。

 3つ目が荒廃した駅を舞台に繰り広げられる黒煙編。

 ここまでが前編のパートになる」

 

カエル「ずっと語っているのが、ここまでの戦いの相手はカバネなんだよね。だから物語が一貫していると」

主「そう。一方の後編は一気に話が変わる。

 4つ目が美馬との出会いを描いた……邂逅編とでも言おうか。

 5つ目が磐戸駅での反乱を描いた磐戸駅編。

 そしてラストが金剛郭を中心に起こる騒動を描いた締めの動乱編、という構成。

 それを考えると、結構きっちりと作ってはあるんだよ。そんなおかしなことはしていない」

 

カエル「だけど……後半は評判悪いよねぇ。このブログでも結構批判したし」

主「その謎を解明するために今回も使うのが……

 

アニメスタイル010 (メディアパルムック)

アニメスタイル010 (メディアパルムック)

 

 アニメスタイル 010だ!」

 

カエル「あ! これは監督をはじめとしたスタッフのインタビューに加えて50Pを大きく超えるカバネリ大特集! そして設定資料やら原画などが載った、アニメ専門誌でもコアなアニメファン向けのアニメスタイルだ!

 しかも今回は『ポケットモンスターXY&Z』や『NEW GAME!』『モブサイコ100 』『映画 聲の形』も監督をはじめとしたインタビューも載っていて、すごくお得な1冊になっているね!」

 

主「よし、前回と全く同じ文面をコピペしたが、いい宣伝にはなっただろう」

カエル「……まあ、でも実際カバネリファンに特にオススメの特集になっているから、ぜひとも買って読んでほしいね」

 

 

 

 

2 物語の目的

 

カエル「結局のところ、この映画の1番の欠点はここになるんじゃないかな?」

主「物語の目的が一貫していないという点だな。

 当初の目的は『安住の地を求める』というものだった。それを妨害する敵がカバネであり、それを全て駆逐することが必ずしもゴールというわけではないけれど……でもなるべくならば減らそうよ、というスタンスだったわけ。

 だけど、後編に入るとその目的が一貫しない。つまり『勝利条件を見失う』ということになる」

 

カエル「最初は野球をしていたはずが、いつの間にかラグビーになっていた、みたいな話だよね……ホームランを打つこと、完封することを目指していたのに、いつの間にかトライすることが目的になっていた、と」

主「そうかもね。果たすべき勝利条件を見失ってしまうと、物語はそれこそ迷走してしまうわけだ。だから、この映画のラストまで見ても実は状況は全く好転していない。むしろ、作中最強の対カバネ集団を失っているんだから、悪化しているとも言える

カエル「国で最高の機関や街、将軍が倒れてどこ行くんだろう? という疑問があるよね」

 

 

美馬の目的

 

主「さらに言えば……これは個人的な思いかもしれないけれど美馬に全く魅力がないんだよね。

 いや、キャラクターとしての人気はあるかもしれないけれど、その目的もただの私怨だし、しかも結構カリスマ性があるような描写があるけれど、どこがそれだけ魅力的なのかわからないんだよ。宮野真守の声に騙されているだけの気がする」

カエル「なんであの人の部下は何の疑問も持たないのか、謎だよ。それまで命をかけてカバネと戦ってきたのに、そのカバネを増やすことが正しい、という思想のどこに共感したのかな?」

 

主「物語を終わらせるための悪役として美馬が欲しかったのはわかるけれど、その思想の正義や周りが付き従う意味がまるで理解できない」

カエル「アニメやゲームだとよくいるタイプの悪役でもあるけれどね」

主「別に人類全滅を望むというのは、そこまで突飛な悪役像ではない。昔からそういう思想を持つキャラクターもいるし、説得力を持たせることも成功している。

 例えば『天元突破グレンラガン』とか『機動戦士ガンダムSEED』でも似たような描写はあったし。

 だけど、その大元の思想はもっと大きいものから始まっている場合が多いけれど……美馬の場合、本当に小さい考えからスタートしているからさ。だから余計に『なにそれ?』ってなるんだよね」

 

 

 キャラクターデザインが同じ美樹本晴彦の名作!

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主人公サイドについて

 

主「その思いに拍車をかけているのが、主人公サイドの迷走ぶりだと思うんだよね

カエル「相変わらず無名が失敗して、それをカバーするって展開だしねぇ」

主「それもあるけれど、結局彼らが何をしたいのかイマイチ見えてこない。

 主人公の生駒は初めから美馬に対して敵対心を持っていたけれど、それはなぜかというのが……わかりそうでわからない。結局のところ『立派な奴が気にくわねぇ!』っていうヤンキー精神に見えてくるんだよね」

 

カエル「生駒は相変わらず熱血系根暗主人公だしねぇ」

主「めんどくさい文化系オタクがヤンキー化したようにしか見えないんだよなぁ。そして主人公サイドの指導者的役割を果たす菖蒲も大きなビジョンは何もないように見えるからさ、突然巻き起こるトラブルに、理想論で対応するだけのように見えちゃう。

 まあ、金剛閣に辿り着いただけで目的は達成しているということもあるんだけど……」

 

カエル「ずっと迷っているからねぇ」

主「これは目的が迷子になるから、どこに向かえばいいのかビジョンがない、というのもあるだろうね。指導者が大きなビジョンを持てなければどうしようもないのは、よくある話でしょ?

 この作品では自分の役割を果たすことの意味を理解している下の人たち、つまり戦闘役の来栖と、操舵手の侑那は大きな失敗もあまりないキャラクターなんだけど、これは目的が迷子になっていないからだよね」

 

 

 

 

3 荒木監督がこの作品で表現したかったこと

 

カエル「結局、それって脚本家が悪いって話なの?」

主「脚本が悪いとよく脚本家が悪いって話になりがちだけど、今作の場合はそうじゃないと思う。まあ脚本の悪さもあるけれど、もっと大元の……監督のやりたいことと、物語の方向性というか、視聴者が望む形が一致しなかったことにあるんじゃないかな?

 

カエル「方向性が合っていないってことね」

主「間違いとも言えないけれどね。全てが終わってからなら好き放題言える部分でもあるけれど。

 先ほどのアニメスタイルを読んで分かったのは、この作品は『荒木監督=生駒』でもあるんだよね。ということは、この作品で重要なのは『安住の地を探すこと』でも『カバネを駆逐すること』でもないわけ。

 重要なのは生駒がどのような選択をするか、どのように自分という存在と向き合うか、ということだったように思う」

 

カエル「カバネは単なる敵でしかなかったってこと?」

主「そう。それを象徴するセリフが前編では『見ろ! お前たちが蔑んだ男が血を流して死ぬところを!』であり、後編では音楽も流れて徹底的に盛り上げられた『俺の誇れる俺になるんだ!』だったわけだよ。これは変化した生駒を見事に表現した台詞だよね。

 主人公の成長を描くというのは、物語として正しいし」

 

 

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ゾンビものの難しさ

 

カエル「その相手としての美馬がいたわけだね。生まれ持った権力を持ち、カバネと戦う力もある存在と戦うということで、何も持たない生駒との対比になりそうだったし」

主「……後編がこれだけ詰まったものになってしまったのは、主人公サイドの描き方と敵側の描き方を詰め込みすぎたということは、監督も語っているんだよね。キャラクターも多いし。

 さらに前半で描いてきたはずのカバネという敵が、後半はほとんど出てこないから……それも影響していると思う。敵を1から書き直さなければいけないから」

 

カエル「じゃあ、最後まで敵はカバネでいるべきだった?」

主「そう思う一方で、それはそれで難しいよなぁ、って思いもある。

 カバネリに限らずゾンビものってゴールが中々見えてこないのよ。これだけのパンデミックが起こった世界をどうすれば救えるのか、敵を駆逐することがほぼ不可能なわけじゃない?

 普通のモンスタームービーだったら、1体のモンスターを倒せば終わりだけど、ゾンビは無限増殖してくる。まるでベトナム戦争みたいなもので、どこから敵が来るかわからんし、しかも敵は無数にいるし……

 さらに嚙みつかられたおしまいだからさ、もう手の出しようがない」

 

カエル「だからこそ、最後はどうしても人間になってしまうんだね

主「融合群体ですっごい大きいのを出して……という案もあるけれど、それを倒しておしまいです! になるのかどうか……

 ゾンビもの特有の悩みかもしれないね、この終わらせ方っていうのは」

カエル「結局安住の地を見つけたとしても、そんな壁は簡単に破壊されてしまうよ、っていうのは何回も見せられたしねぇ……」

 

 

 

 

最後に

 

カエル「アニメスタイルを読んでいったからかもしれないけれど、確かに後半は特にガンダム要素を感じたかな」

主「そうね。生駒の熱血系根暗って誰かに似ているなぁ、と思ったら、アムロ・レイなんだよね。あの面倒くさい感じがそっくりで。

 しかも乗組員もたくさんいて、指導者もカバネリは女性だけど若くて……憎まれ役でねずみ男ポジションの巣刈はカイ・シデンみたいだなぁ、って思った」

 

カエル「子供3人なんて完全にカツ・レツ・キッカだしね」

主「ガンダムのように明確な敵を倒して、戦争が終わってアムロが成長しました、という物語だったら、もっと評価されたよ。

 今回の劇場版で一気に見たけれど、惜しいなぁって思うよ。この作品のポテンシャルはすごく高くて、2016年テレビアニメトップどころか、アニメ史に残る可能性もあった。

 もちろん、現段階でも部分部分でみたら歴史に残る作品だけど……もっと上を目指せたように思うなぁ」

 

カエル「まあ、そんな簡単に物語ができたら誰も苦労をしないわけで」

主「テレビアニメって予算以外でも時間とか、スタッフの制約も大きいし、オリジナルの難しさもあるだろうから仕方ない部分も大きいと思うけれどね」

 

 

 

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甲鉄城のカバネリ 原画集

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甲鉄城のカバネリ ORIGINAL SOUNDTRACK

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