物語る亀

ネタバレありの物語批評

灰と幻想のグリムガル 四話までの感想 ファンタジー世界の日常系

 私は正直ライトノベルがそこまで好きではない。

 特に最近のアニメになるほどのライトノベルはほぼファンタジーかゲームの世界に関するもので、可愛い女の子に囲まれたハーレム系ばかり。私が読んでいた頃のライトノベルはキノの旅や、バッカーノ、ダブルブリットなどの女の子の魅力よりは、その厳しい皮肉にも似た現実を映し出した作品が多かった。(バッカーノは少し違うけれど)

 しかし今はそんな作品は鳴りを潜めてしまっている。この辺り、もっとラノベに詳しい人に聞けば「いや、変化したのではなくてスレイヤーズの時代に戻っているんだよ」なんて言われて確かに、と納得した覚えがある。

 何が言いたいかというと、正直名前からしてみるのを後回しにしていたわけだ。

(私が前に書いた今期のアニメランキングにも名前がない)

 

 

monogatarukame.hatenablog.com

 

 なので後回しにしていたのだが、だいたい見終わった後に、では後回しにしていたものを消化していたら……

 これが面白い。

 

 一話から三話まで

 絵が非常に動くことで知られるA-1が制作しているということでとりあえず見るか、という程度。あとは事前知識として落合福嗣が出ていることは知っていたが、元々CMでのナレーションといいそれなりに上手いことは知っていたので、野球好きとしての興味本位で鑑賞を始めた。

 つまりライトノベル、ファンタジー作品とあり、中身自体にはそこまで興味がなかったわけだ。

 そこで一話を見たら、「……なんだこれ?」という感想。

 今期でもファンタジーものはいくつかあるが、そちらがはっきりとデジタルに背景などの絵を描いているのに比べて、手書きのような(手書きなのかな)ぼかし方をすることで童話のような背景の作り方、ファンタジー世界をうまく表現しているし、そこに暮らす人々の世界、生き方が非常に興味深いものに仕上がっている。

 キャラクターたちがこの世界に送り込まれて困惑する様、そして全然雑魚じゃないゴブリンに殺されかける様子。そう、これは生と死のやり取りのお話なのだ。

 そこに救いはなく、ただ弱いものは淘汰されるだけの弱肉強食の社会が描かれていた。特に金がないとパンツも買えないのはいい設定だ。彼らが必死になって戦う意味が非常にわかりやすく描かれていた。

 

 一話の段階では導入ということもありここから無双する可能性もあったが、二話にゴブリンの必死の叫びを聞いて「あーこの作品はそういう無双に対してアンチ的に作られているんだ」と理解してからはのめり込む結果に。

 特に二話でいうと、挿入歌が流れて彼らが街をうろつく部分でこちらの目を引きこまれた。そこでは戦士や鍛冶屋などが普通に生活している一方で、金のない浮浪者になった男たちが道端でホームレスとなっている。それが良曲と共に流れてきた瞬間に非常にいい雰囲気が包んでくれた。

 

 三話で大きく動かしてくるかと思いきや、ここでは彼らが順調に暮らしていく様を描く。そこには成長もあり、仲間意識を深めていく様子が描かれている。三話は特に顕著だったのは、女の子の描き方が非常にフェチを感じさせてくれることだ。この女の子たちの明らさまなサービスカットは少なくして、このようにフェチ的に見せることによって可愛らしさを表現しているのがうまい。

 そしてここで一気に話を動かさず、あえて停滞を選んだことでこちらも長年アニメを見続けているのだ、当然のように次の展開が読めるために覚悟を決めた。

 そして今日、やはりという展開になった。

 

 今のアニメには珍しい『丁寧な作り方』

 アニメに限らず物語を創る際に『三話理論』というものがあり、これは導入の一話、深彫りの二話、裏切りの三話という構成になっている。つまり一話で簡単にこのお話の雰囲気やこれからの見どころを紹介し、二話で一話でできなかった設定紹介、キャラクターの深彫りを行い、その雰囲気を三話でぶち壊すというものだ。

 今作は変則的な三話理論に沿っており、一話が導入ならば、二、三話で深彫りを行い、四話で裏切っている。そのため、二話の挿入歌のシーンが長いのはおそらく雰囲気をより深く視聴者に伝えるためであろう。

 これは本当に丁寧に作られている。

 なぜ三話理論において、『三話』で話を動かせというのかといえば、それ以上は今の視聴者は耐えることができないからだ。一話切りという言葉があるが、一話が良ければ三話まではだいたいの人が見る。でも、不思議なことにやはり『三話』であり、『四話』ではない。

 これは古い映画、特に白黒映画を見て欲しいのだが、昔の物語は今と比べると展開が非常に遅い。例えば黒澤明の『生きる』などは冒頭のシーンは映画史でも屈指の名シーンだが、今の人が見るとあまりにも動きがなさすぎて飽きると思う。

 現代は物語に限らず、なんでもスピードが速いために丁寧に作り込むということが難しくなっている。丁寧というと聞こえがいいが、遅いというリスクを抱えることになる。

 この丁寧さは作画に現れていて、この四話ではみんなの慟哭のシーンは止め絵で表現した。あえて動かさないことで余計にこちらの想像力をかきたて、情緒的な表現となっている。元々動かなさい動画、無言のセリフ、無音の音というのが創作には非常に大事だと思っている私には非常に強く響いた。

 

 私は今期は今作と落語心中が二強だと思う。

 ここからのお話の展開次第では、本当に大化けするかもしれない。

 とても楽しみな作品だ。

 

 しかし、灰と幻想のグリムガル、の灰が遺灰のことだとは……なんと上手いなあ……

 あと中村監督はあいうらの監督だったとは……どうりで足の描写がとんでもなくエロティックだと思ったら、妙に納得してしまった。あれもたった5分の話(OP除いたら2分ぐらい?)にもかかわらずいい雰囲気を出していたなぁ

 

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