銀魂も最終回を迎えて着々と冬アニメも終了していく。これで一息つけるかな、と思いつつ、明日からはまた春作品が次々と始まることを考えれば、アニメを見るのも楽ではないなぁ、なんて訳のわからない呟きから今回はスタート。
1クール、2クールで勝負している他の作品と比べるものでもないのだが、今期では銀魂が1番楽しみにしていた作品だったように思う。
では、ここから『さらば真選組』編の感想と考察を書いていこう。
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1 脚本構成について
今回はさらば真選組編に9話を使って構成されていたが、その細かい内訳を見ていこう。
1〜4話 桂、近藤の投獄から救出行まで
5〜8話 二つの組織の決戦と過去編
9話 エピローグ
こうしてみると、4話にてギャグ調の小話が入ったのは、やはり作画陣の休憩もあるが話数調整もあったのだろう。(この時期は中国が旧正月で止まるため、作画が悪くなりやすいという話もある)
この4話構成というのは今期でいうと『灰と幻想のグリムガル』が顕著で、本来であれば展開の遅さなどが目についてしまい、少しばかり飽きが生じてしまうのだが、銀魂の場合はそうならないように様々な工夫が凝らされている。
例えば1〜4話の段階であっても、1話で将軍暗殺編からの導入、2話でクサる土方や真選組、そして桂が捕まり、3話にて土方復活からの、4話で上陸するという起承転結がしっかりとされている。
また引きも非常にうまく1話は土方の独白で哀愁を漂わせ、2話で捕まった桂と近藤の共闘、3話で脱出するも脱出ルートがないことが発覚し、4話で救出部隊が向かいいよいよ決戦という風に続きが気になる上に丁度いい箇所で切って描いている。
これは週刊誌で連載されている作品だから、切りどころは多くともそれを長丁場に再構成した場合、綺麗に4話完結にするのは非常に難しいだろうが、そこを間延びもさせず、走らせることもなく描き切ったのはさすがである。
また5〜8話で見ると少しずつ真選組、佐々木の回想を入れることでシリアスな雰囲気に少しのほのぼのとギャグでメリハリをつけているし、5、6話にて二つの組織の衝突を描きながらも、7話で新たなる敵を描いた。
この5〜8話だけを起承転結に表すとこうなる。
5話 上陸から戦闘開始(起)
6話 戦闘開始〜キャラの掘り下げ(承)
7話 新たなる大きな敵の登場(転)
8話 脱出と衝撃のラスト(結)
となっている。ここでシリアスと過去話を交互にすることでメリハリをつけながら、魅力があるように描きながらも、しっかりと大きな敵を登場させることで展開が間延びしないように気をつけているのがよくわかる。
原作付きというのもあるのだろうが、こういう上手い構成は中々ないのではないだろうか。
2 決めどころで照れる空知
今回のさらば真選組編というのは真選組を扱いながらも、もう一人の主人公は佐々木であるのは明白である。
そのラストというのは感動して涙が出てきたとツイッターのタイムラインでも多くの人が語っていたが、それほどの感動を呼ぶにも関わらず、涙ばかりではない。
例えば8話のラスト付近の佐々木が名前を考えてメールを送るシーンの奥さんとのやりとりというのは、最初こそ真面目なものであったが、ラストには「じゃあ頑子でいいですよ」に飽き足らず、「いっそ漫●にしましょう」なんてギャグが挟まれるものだった。
本来、このような感動するシーンにおいては、もっと煽るような演出というのはいくらでも方法はある。例えば放送された中で名場面と思えるような過去の回想シーンを流すとか、本来あるべきだった家族の未来像を思い浮かべるとか、そういった演出は私でも簡単に思いつくのだ。
だが、空知はそんなことはしない。
感動を煽るために、より感動を呼び起こす演出をすることなく、ギャグに走るきらいがある。
これは少年漫画であり、感動するシーンもあるかもしれないが、基本は笑いの漫画であるという意思表示とも感じられるのだが、私にはこれは作者の『照れ』のように思うのだ。
男たちが集まってカッコイイ一枚絵を描いて魅せるという演出は銀魂にもよく出てくるし、様になっているのだからそういう決めどころを、あえて決めないということではないと思う。けれども、例えば恋愛話とか、お涙頂戴なお話というのは、書いている作者側も照れるものである。
この辺りは男性諸君ならわかってもらえると思うが、人生を賭けるほどの情熱の籠った試合だったり、夢を追う姿に熱くなることはあるが、例えば恋愛話であったり、しみったれた話というのはギャグで笑い飛ばしてほしいという時もあるであろう。彼女に振られた、こんな悲しいことがあったと友達に言った時にほしい反応は「可哀想に」と頭を撫でられることではなくて、「ばかでぇ」なんていう笑いだったりするのだ。
銀魂のキャラクターというのはそんなキャラクターばかりで、落ち込んだ時に頭を撫でられて喜ぶような男は出てこない。
そんな硬派な雰囲気が感じられるからこそ、私は銀魂が好きなのだろう。
3 ギャグという日常
銀魂の人気の要素はカッコイイ登場人物もあるが、なんといっても攻めるギャグ描写であろう。何者も恐れないようなキレッキレのギャグ描写に我々視聴者、読者というのは笑い転げてこの作品を愛していくようになる。
だが、空知のうまいところはこの何でもないギャグを伏線として引き、さらにそれを日常として扱っているところにあるのではないだろうか。
9話における近藤とお妙のやりとりというのは銀魂ファンならば何度も見飽きた表現だし、銀さんと土方の宇治金時丼とマヨ丼のやり取りというのも何度も見てきたいわば『お約束の日常』の描写である。
だが、そこでギャグに走ることもなく、あくまでもシリアスにさらりと終えてしまうところに本作の日常とそこから乖離するシリアスな非日常の境目がしっかりと付いており、うまく表現されているように感じる。
やっぱりストーリーという面に関しては、相当にうまい漫画家だなと関心させられる。できれば銀魂以外の作品も読んでみたいのだが、この世界が終わってしまうのも惜しい気がしてしまい、ジレンマにかられている。
この後続編がアニメ化されるかはわからないが、是非とも続きを来年くらいには期待したいものだ。(そうなると次が本当の最終回になるのかな?)